ベースキャンプの第三の王者
ザ・キングス
The Kings
これで中身がムード歌謡なのでビックリするデビュー盤。
もうこの辺になってくるとマイナーすぎて知ってるかとかという問題じゃなくなってるような気がしますが書きます。
キングスは関西最古のGSの一つで、大津の幼なじみが集まって作った「ザ・キング・オブ・ダイヤモンズ」に起源を持つ。39年末頃から本格的に大阪や京都のジャズ喫茶などで活動し始めた。後輩タイガースの成功を見て42年に上京、タイガースと同じポリドールからその年の9月「アイ・ラブ・ユー」でデビューした。しかし同時期、メンバーの一部が分裂して帰阪してしまった。この帰阪メンバーがのちにオックスに繋がるのだが、ここではおいときます。とにかく脱退メンバーを補充してしばらく活動したが成功は得られず、オックスの成功の影で消えていってしまった。全員ボーカルがとれるというのが強みだった。
このバンドは渋いということに尽きます。全く派手ではない。ダイナマイツのようにロッキンであるということもなければヴォルテージのように黒いわけでもない。ましてタイガースのようにアイドル性があるわけでもない。とにかく地味なバンドで、同じく地味だといわれているアウト・キャストの比ではないぐらい地味である。しかし、あまりにもひなびたサウンドは心にしみいるところがあり日本的なわびさび・枯淡の境地に連れて行ってくれる。当時の米軍基地ではダイナマイツ、ボルテージと並ぶ人気を誇っていたらしいが、現在他の二つのバンドに比べ評価が全くないのが悲しい。もっとも米軍基地でも巧いから人気があったわけではないみたいだが。やっぱりロックバンドに最も必要な物はテクニックとかより味であるということをとても感じさせてくれる、そんなバンドである。
パーソネル
上田耕三 リード・ギター
平信史矩 サイド・ギター
福井利男 ベース(42年まで、のち・オックス)
西村晃 オルガン
岩田裕二 ドラムス(42年まで、のち・オックス)
田中淳 ベース
渡辺進 ドラムス
ボビー・ライト ボーカル
ディスコグラフィー(シングル・タイトル変色は既CD化)
発売日 |
カタログ番号 |
タイトル |
作詞 |
作曲 |
編曲 |
オリコン順位 |
備考 |
42.9.5 |
ポリドールSDP2009 |
アイ・ラヴ・ユー |
清水芳夫 |
福井利男 |
山室紘一 |
ランク外 |
松平ケメ子版の「別れても好きな人」を思わせるサウンドで始まり、当時最先端のムードコーラスの体裁をとっているが中身はもっと古く林伊佐緒の「ダンスパーティーの夜」みたいな歌。早くもわびさびのキングスサウンドの発芽が見られる。一応湘南サウンド? |
空と海 |
松田篝 |
松田篝 |
松田篝 |
オルガンとギターの掛け合いが見事な澱んだビート歌謡。確かに良くできたビートものなのだが、とにかく曲それ自体やサウンドメイクの感覚が異常に古い。と言って、これがしょうもないのかと言うと、まずまず格好いいから困ってしまう。戦前から昭和30年代ぐらいに日本にロックバンドがいたらこんな音になるだろうな、という曲。コーラスが独特。matさまありがとうございました。 |
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43.3.15 |
ポリドールSDP2019 |
真夏の星のように |
利根常昭 |
利根常昭 |
利根常昭 |
ランク外 |
寂れまくったオルガンに日本的情緒を感じるガレージ・スロー・バラード。交互にとられるボーカルとコーラスもわびさびの世界。このバンドのファズは前面に出ない分ほんとに枯れてる印象が強い。ちょっぴりR&B風味。 |
心の底から |
利根常昭 |
利根常昭 |
利根常昭 |
これも寂れたわびさびガレージ・スロー・バラード。他のバンドがやったら血管ぶち切れんばかりに盛り上げることもできるだろうに、このバンドはシャウトし、サイケ演奏しているのにもかかわらず淡々と演奏しているように感じる。それもこれも音が寂れすぎているからなのだが。この虚無感こそが当時血気盛んなベトナム行米兵に支持された原因だろう。 |
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43.10.5 |
ポリドールSDP2028 |
ララの秘密 |
中西れい |
村井邦彦 |
村井邦彦 |
ランク外 |
クラシカルな歌謡曲。女性的で地味な歌だがキングスにかかってはこれも枯淡の境地。ピーコックスがやっていたらもっと似合いそう。 |
ファニーの恋人 |
渡辺研一 |
村井邦彦 |
村井邦彦 |
クーガーズあたりがやろうものならスカスカガレージロックンロールになりそうなこぢんまりとしたガレージチューン。厚いファズを使っているにも関わらず、ワイルドなガレージ的な側面よりわびさびが強調されキングス独特な世界へ誘う。 |