旧「これ買いました」的記事雑類集

旧音楽雑感からCD・レコード評の部分を抜き出しました。

ザ・イーグルスほか/アングラカーニバル(CD)


「ワイルドワンズボックス」「ムードコーラススペシャル」他

 ここ一ヶ月も結構いろんなものを買った。「ワイルドワンズボックス」はもちろん大収穫。ワンズというのはあまりトチ狂ったようなことをしなかったバンドなので素直に衰退していくさまが見られ、興味深い。スパイダースも似た傾向がある。(ブルコメとかカップスとかほかのメジャーGSは路線変更とか突然変異があるんで、一概に衰退してるとは言い切れないところがある。)解散コンサートもタイガースはマジで涙が出てくるときもあるが、ワンズのは「今もある」という知識があるためかそこまででもない。「ムードコーラス・スペシャル」は通販専用六枚組みボックス。知らんバンドがかなりあった。さすがに俺みたいに片手間にやっている人とそれで食っている人は違う。「幻の名盤・・・」シリーズを意識しているのかこれと重なる曲はたったの二曲(アンジェラス「ヨコハマ物語」とトリオ・ロス・チカノス「コンドルは飛んでゆく」)。内容はすばらしいの一言。一番の収穫はザ・メンズ・トリオの「おてもやん」。グルーヴィー。関西ロックバンドナンバーワンのブルータッシュ(当時の関西ロック関係者の方、知ってますか?)やらこれを元に名鑑を大幅に追加しなければ。コロムビアの音源や中堅ヒット(「思案橋のひと」とか「夫婦きどり」とか)がごっそり抜けているので、続編を望む。10人祭「ダンシング夏祭り」は最初聞いたときは(いい方向に)わけわからんという印象だったが、しっかり聞いたら美空ひばりの「お祭りマンボ」の改変もの。しかし絵つきで見るとやっぱり最初の印象通りわけわからん感が。安部なつみがすばらしい。そのボーカルにはロックの本質が垣間見える。モーニング娘。の楽曲にちらちら見える剥き出しのロック魂の源泉が判って嬉しい。(自己満足)深田恭子「スイミング」はレディ・メイド・サウンドを意識した曲だが、合格点。カップリングは説教くさくてダメ。「ソング・イン・キー・オブ・ゼット」も買ったがどうも実は俺はそんなに下手物好きじゃないのでないかとおもわせたが、どうなのだろう。シャッグスとジョーミーク以外は普通だ(何処に何の衝撃があるのか?)と思った。しかしキャプテンビーフハートを最初に聞いたときも俺の中じゃ何の変哲もない普通のバンドという感想しかなかったしな。音楽を聞く人間の感想としてどうなんだろう。


バニーズ「シングルス1」「2」「荒木一郎全曲集」他

 ここ小一ヶ月(5月5日以降)でCD「バニーズシングルス1」「同2」「荒木一郎全曲集」「カレッジ・フォークの秘宝」「カレッジ・ポップス・クロニクル」「トリビュート・トゥ・ニッポン」「フロム・リヴァプール・トウ・トウキョー」、LP「レッツ・ゴー軍歌」「ムーンライト・セレナーデ」「四つの明星」「青い果実」シングル「二人の新宿」「女の夢はひとつだけ」を買いました。

 バニーズやっぱかっこいいす。バニーズ最高。寺内タケシに正一位勲一等瑞宝章を。荒木一郎とダイナマイツの「ブルーレター」はかっこいいけど「朝まで踊ろう」のやきなおし。ワイルドワンズは実は純フォークが似合わない。もう東芝本体からのやる気のないカレッジ・フォークものはいらん。東芝ファミリークラブ偉い。渚にての「おやすみ大阪」はGSのカバーとしては珍しくオリジナルの出来に並ぶめっけもん。俺クールキャッツ大好きなんでよいです。別にビートルズをえらいと思ってない。(アニマルズとかストーンズのほうが重要)英語でのカバーより、キューピッツとか東京ビートルズとかの日本語もののほうがいい。別にビートルズの曲と日本語があってないなんて思わない。ビートルズに限らず洋楽の大メジャーは精気がないので好きじゃない。レインボーズとかスウィンギンブルージーンズとかのほうがいい。「軍艦」ほかの穂口雄右のオルガンは相変わらずかっこいい。「君が代」を聞くとやっぱりあの忌野バージョンの出来が最低だったことがわかる。何であの程度のものを騒ぐのか。フェイクな。同時期にピチカートファイブもやってるんだぜ、しかもむっちゃかっこよく。シャープ・ファイブはなかなか良かった.カップスの「花首」と「エメ伝」は人がいうほどやる気がないもんじゃなかったが本人たちの演奏じゃなかろう。ヴィレッジ・シンガースは意味のわからんアルバムだ。GSじゃなきゃ買ってない。あとは「恋と女とむせび泣き」だけだ。悪かったな、ヴィレッジ大好きなんだよ。ビューティフル・ロマンが売れなかったのはルックスと女性ボーカルのせいだろう。ジェノバの後身は買って失敗。以上。

 最近このページに関して、知り合い以外の方からのメールをいただくようになりました。ありがとうございます。


「君が代のすべて」

 むちゃくちゃに詳しい君が代の解説が読めて、しかも伝説のキングレコード発売第一号を収録しているだけでもかなりすごいのに、薩摩藩で作った旧「君が代」とか宮城道夫の驚異の琴が聞ける「君が代変奏曲」とか西洋人が見たエキゾとしての日本の変な解釈の元で生まれた君が代使用曲とか盛りだくさん。録音レベルが低いのが惜しまれるが素材自体のレベルが低いのでしょうがない。もちろん名曲「君が代行進曲」も収録。雅楽ものとかあって濃い濃い。しかしA面「独逸国ナチス党党歌」他B面「君が代」っていうシングルはそれ以上に濃いなぁ。全然関係ないけど「リメンバーパールハーバー行進曲」ってCD化してないの?これも濃い?

 あと前回以降ではシャープ・ファイブ4.9.1のCDとか石野卓球の新作とかマイナーなムードコーラスとか有田弘二の青春ものとか買いました。半分しか聞いてません。漫画もポコポコ買いました。まあ、そのうちに書きます。GSはそのバンドのところ参照。 


バニーズ「世界はテリーを待っている」、ワンギャル「花吹雪BANG!BANG!BANG!」他

 9日に引っ越した。でインターネットになぜかつながらない日々。そんな中でも買ってる私。引越し直前にレコードでジュークボックス「君にいかれて」ほかをゲット。さらに今日シャープ・ファイブ「ベンチャーズに挑戦」やらミッキーやらベルサイユやら買ったがまだ聞いてない。

 CDはちゃんと聞けるのでバニーズの唯一CD化されていなかった「世界は・・・」ほかを聞いた。バニーズのほうに書いたのでそっち参照。

 今回の主役はワンギャルだ。セカンドシングル「花吹雪バンバンバン」。佳曲。モーニング娘。の「恋のダンスサイト」以来の大当たり、歌っている映像(ライブ映像じゃなくて歌番組で歌っている映像)一発で衝撃を受けた。太いギターサウンドにモンキーで踊り狂う下世話な女集団。次々にソロを取るメンバーの退廃的この上ない歌い方。磁場が狂ってる。最初誰かわからなかった。関西じゃ全く意味不明なこの方々こそワンギャルなのです。曲調はハードロック+渡辺宙明+山本正之+「キューティーハニー」。要はアニメ系ダンス曲。退廃的な歌い方自体は椎名林檎・宇多田ヒカル・小柳ゆき・ラブサイケデリコ・シルバといった今流行の系統の声への便乗だと思うのだが、悪意がこもっている分えらい事になっている。歌詞には自虐的にミニモニ。が引用されるは、やりたい放題でテレビ東京時代のモー娘。が甦ったような出来。立派な上等品或いは低年齢層向けとなったグループでは出来なくなってしまったことを鬱憤晴らしのように盛り込みまくったつんくの渾身の一撃ただし下世話。以前のつんく作品もこいつらに歌わせてみたい。(例「恋のダンスサイト」)TBSのセンスは悪いと前に書いたが少なくともTBSの深夜はテレ東のゴールデンタイム程度のセンスは持っていることを実証してくれた。今年のオレレコ大の大賞はもう決まりました。(去年はキーヤキッス)歌詞は案外60年代風です。


「Mera...Mera Mera」他

 ビーバーズとシャープホークスのCDを買いにいったんだけどさ・・・。何ですかこれは。「ゴーシネマニア」シリーズの第9弾。

 これはなんとGSの映画の中でだけ使われた音源を集めたオムニバス。といってもやたらスパイダースが多いんだけど。はっきり言って全GSファンにとって大事件ですよ。あの「進めジャガーズの唄」やら「なればいい」のファズサイケバージョンやらレコード未発売GSザ・ローズの歌やらフラワーズのちゃんとした演奏やら全曲初音盤化というとんでもないしろもの。ちゃんと広告うてよ、ポリスター株式会社。「宣伝したものが売れないことはあるけど宣伝しないものは絶対売れない」(近田春夫)という言葉を忘れるな。

 個人的には大好きな日活ヤング&フレッシュのイカレポンチなファズサイケやタイトな「チビのジュリー」が聞けただけでも満足だが、ピーターパンの未発表曲はピーナッツや倍賞美津子みたいなキングの一昔前の和製ポップスみたいで印象に残ったし、とにかく一番かっこいいころの田辺昭知のドラミングが堪能できて最高。スパイダースのレコード化されていない曲も2曲。「アヒルの行進」は作詞家を磔にしてやれ。(笑)でもこれシャデラックスもやってるな。

 バニーズ・ジェノバ・クーガ―ズ・モップスの入ったGSシネマもの第3弾は出るか。期待。

 Pヴァインのビーバーズとシャープホークスの2枚もちゃんと買いました。唯一聞いたことのなかった「波うつ心」は評判どおりなかなか今っぽくてかっこいい歌でした。


野猿「Fish Fight!」他

 うーん、また一ヶ月何も書かなんでしまった。この一ヶ月はリバプール・ファイブやらジンギスカンやら「GSポップカバース」やら「おしえてアイドル」やら色々買ったが、一枚だけ。野猿の「Fish Fight!」。

 ラストシングルです。今まで上手いとは言ってても全く食指が動かされることがなかった野猿だが、ここ二枚は歌謡曲として素晴らしい出来のものを叩き込み、ついにシングルをおれに買わせてしまった。

 とんねるずの楽曲というとどうしても石橋貴明のボーカルが邪魔になることがおおく、それはこの野猿の各シングルでも同様だった。野猿のトップボーカル二人は十分実力があるので、特にその思いは強かった。もっと言うなら別にとんねるずが野猿に入る必要もなかったのではとすら思う。一方木梨憲武は実力があるといえる。最近なんかの雑誌で木梨は何もしていないのに年収五億という記事があったのだが、違和感があった。むしろこの人のほうが歌手として芸人としてとんねるずを支えてきたのではと思えるのだが。それはおいといて今回は珍しく木梨憲武のボーカルが邪魔になっているのが惜しい。逆に石橋のボーカルの冴えが素晴らしい(あくまで今回は。)コミカルなイメージがあるわりにその手の唄が前面に出てくることのなかった野猿にとっては待望の一曲となった。のたうちまわるベースラインがかっこよく、元べーシストの面目躍如の快作となった。

 ところでこのマキシ、3曲入ってて作編曲はすべて後藤次利なのだが、作詞はみんな違ってそれぞれ後藤次利、秋本康、石橋貴明・木梨憲武となっている。この中で一番出来がいいのはもちろん後藤次利の表題曲なのだが、一番ひどいのが秋本作品というのが・・・。とにかく精彩がなく、説教くさい。この人の見せかけのメッセージソングというのは昔からどうも1ブロック違う道を行っているような感じがしてしっくりこない。この人は、じめっとした正統派歌謡や気弱なアイドルソングの方が似合っているような気がする。この人余り嫌いじゃないだけにたまにある玉砕的な作品を聞くと悲しくなる…ということもないな。まあ、次に期待します。とんねるずのご両人の作詞の唄はおニャン子クラブの「会員番号の唄」を思い出しました。おなつかしや。


ザ・イーグルス他「アングラ・カーニバル」

 いい。びっくり。すごいぜイーグルス。ひねり具合がすばらしいレディ・ジェーンを導入した「ケメ子の歌」や強烈なテープ操作を導入した「結婚してチョ」と深遠そうなアングラ「あー神様」などおなかいっぱい。(「結婚してチョ」は「カルトGSコレクション」とバージョン違いで今回のほうがクレイジー。)例のラジオでオン・エアされていた「好きだったペチャ子」と原曲「あの日の恋」もめでたく同じ板にCD化。田舎ビート(って東京出身だけど)が効いたすばらしいガレージ感覚とチップマンクスが同居するイーグルスサウンドはちょっと病的なGSマニアは絶対聞いたほうがいいわ。

 イーグルス以外ではジャイアンツの初期シングル二枚のA面が収録されたのが収穫。さらにレンチャーズ「サイケカッポレ」が市販CDに初登場、GSで一番しょーもないルート・ファイヴ「俺は天下の色男」の再CD化もうれしい。GS以外ではもはや古典の松平ケメ子「私がケメ子よ」や高木門「浪人ブルース」などの再CD化も果たされたが、なんと言ってもカレッジ・フォーク陣も脳が煮詰まってて素晴らしい。

 ロビンフッズの「落第生バンザイ」はこれいい歌だと思ってたんで高リマスタリングでのCD化はうれしい。彼らのパーソネルはわからないんですかね。放送禁止王フォーク・キャンパースやクラウンらしいかっこ良いジャケに冴えないルックス破綻した歌というハングリィ・ボーイズなども注目だが、その中でもキザーズだ。「オケラの唄」は本当に45年かと思わせる騒々しいナンバーで下ネタ、駄洒落、ギミック、パロディと全部詰め込もうとして成功してしまっているのが素晴らしい。バッキングが阿波踊りなのも素晴らしいし「オーケイ」「佐渡おけさ」「オクラホマ・ミキサー」への雪崩れ込み方もしょーもなさすぎて素晴らしい。この一曲のために買っても損はないはず。

 アイドラーズのメンバーの写真はうちのページに張ったありますので見て下さい。(「タコには骨がない」のジャケはファンキーすぎて買わなかったんだよな、ムード歌謡ともGSとも思わなくて。)あ、このアルバム軍歌知らないとわかんないネタが結構多いので注意。

 同時発売の「スパイダース・ポップ・カバース」は初めてスパイダースを買う人にはお勧めです。


日野皓正/寺内タケシとブルージンズ「トランペット・イン・ブルージーンズ」、ゴーグル・エース「太陽ピチガイ」、ザ・ブルーマグノリア「黒バラは夜開く」

 一発目はブルージーンズの名作アルバム「トランペット・イン・ブルージンズ」。日野皓正と寺内タケシのバトル盤である。テリーさんバトル盤好きやね。対三橋美智也とか対ノーキーエドワーズとか。10年ぐらい前に出たCD盤でちょっとプレミア程度で入手できた。一番すごいのは「十番街の殺人」である。あとは「クルーエルシー」とかか。全体的にヒノテルさんの出来不出来がありすぎる。「朝日があたる家」とかは何であんなふうになってしまったのだろう。全面的にテリーさんの大勝利。とはいえ、ブルージンズがかなり安定していて、安心して聞ける。東芝時代のブルージンズの再CD化が求められる。

 次はゴーグル・エースの「太陽ピチガイ」。何かみんな俺に薦めるので買ってみた。感想はKOGAのバンドらしく良い線までいってるけど不合格(多分世間と俺の間のロックとしてのGS感に開きがあるんだと思う。)。エモンズよりは全然いいけど。どこにムード歌謡の要素があるのかわかんない。もっとむやみにコーラスが入るかオーケストラを使えば気に入ったかも。とはいえ、知子のロックの次ぐらいには入るかも。やっぱりファントムギフト以上のGS直系バンドなんてのはそうそう見付かんねっす。でもこういうバンドに限って数ヵ月後に聞き返して気に入ったりするんだよな、もっと評価悪くなるときもあるけどさ。

 さあ、とりはブルーマグノリア。「黒バラは夜開く」はCD化が流産したこともあって一部のマニアには幻の名盤といわれている。いやあ、まさかあんなとこでみつかるとは。全体的には沈鬱で、ぱっとしないグループだが、買った価値があった。このグループの音は典型的なラテン系ムード歌謡のそれだが一部の曲で入る鋸のぴよよよよよよおという音が浮遊感いっぱい。胡弓みたいな音が入ったり、女声コーラス主体のハモリが珍しい。ついつい聞きほれた。ムード歌謡というのはこういうのを言うのだ。ライブハウスで歌っているようなバンドがムード歌謡云々いうのはやめてほしい。といいながらシャ乱Qが出てきたときは狂喜したけどさ、キャバレーでうたってるっぽくて。

 どうも最近ヒットものが好きで、キーヤキッス、ピチカート・ファイブ、野猿とかそんなの買っててマイナーなのが買えない。相変わらず全く食指が動かないのもあるけどね。

 ああっ矢井田瞳が一層偽林檎に。


「カルトGSコンプリートシングルス4」、「クリスマス・ア・ゴーゴー」、「GSア・ゴーゴー」、ブルーシャルム「抱きしめたくて」他

 さて、この一ヶ月色々買ったが一番良かったのはデイ&ナイツの「涙の東京」か。躍動感のあるムード歌謡ほど私をうきうきさせるものはないのだ。あとは藤木孝の「聖夜」。レンジャーズの「赤く赤くハートが」に並ぶ破壊力抜群の名曲である。こんなロカビリー時代の人のほうが今より卑猥な表現が出来るというのはえらいことである。中牟礼貞則の「愛のリメンバー」も名演だ。原曲に勝るとも劣らない哀愁味がある。レコードだがブルーシャルムの「抱きしめたくて」も手に入れられたが、B面の「トウキョウ・アフター・ダーク」は肩透かしを食らわせるようなさびが良かった。さすがスマップ以下ジャニーズ系の師匠様である。歌詞の中で霞ヶ関が恋愛スポットとして織り込まれるというのはいかに霞ヶ関ビル建築直後とはいえ珍しい。

 糞も多かったけど書きません。


ザ・ドリフターズ「赤盤」「青盤」

 グルーヴがある。特にベースがかっこいい。軍歌もののアレンジが結構面白かった。

 ドリフというと加藤茶の歌唱と志村けんのシャウト、演奏のグルーヴ感ばかりが強調されるが、俺が今回注目したのは仲本工事である。仲本工事の歌唱ははっきりいって下手だが端々に俺は歌手という主張があってソウルがある。特に「ドリフの早口言葉」では和製プレスリーとしての荒々しいロッキンな仲本工事が楽しめる。「のってる音頭」では文字どうりのってるとしか言いようのない歌唱。さすが第一回プロロックバンド選手権最優秀歌唱賞受賞者である。伊達にビートルズの前座で「のっぽのサリー」は歌ってないのである。カーナビーツの臼井啓吉とともにもっとも有名な歌わないボーカリストの意地を見た。

 初めて聞いた曲では「八木節」と「会津磐梯山」が良かった。前者はドリフがクレイジーキャッツの後継者であることを明示している。後者はヒップホップ歌謡〜ラップ歌謡はザ・フーエイフォーの「みっちゃんとキョーちゃんの場合」といわれていたが案外秋田音頭がドリフを通して開花したものかもしれないという感慨がある。

 それはそうとなんていい加減なライナーなのか。ビートルズの日本公演ではドリフの他ブルコメやブルージーンズといった面々も出演しているのに。


ブルーコメッツ「ボックス」

 五日もかかってようやく聞き終えた。素晴らしい内容充実ぶりである。もしこれが10年早く出ていたら今のGS評価は全く違ったものになっていただろう。

 一枚目、二枚目はシングルス。「ジングルベル/ブルー・クリスマス」(8枚目に収録)以外のコロムビア時代の全てのシングルAB面が収められている。モッド的楽団からビートバンドへ、そしてGS、ムード歌謡、再ビート化という彼らの商業戦略がたどった道のりがよくわかる。後期のシングルのB面がCD化されたのはうれしい。(ムード歌謡の佳作が多い。)三枚目はオリジナル楽曲集。オリジナル曲は全てその時期のシングルの戦略に追従しているのが解る。やはり「オリジナルヒット第二集」収録曲のテンションの高さが目立つ。四枚目は二枚のコンセプトアルバム「ヨーロッパのブルーコメッツ」「アメリカのブルーコメッツ」をまとめたもので以前出ていたものと同形式。コンセプトアルバムをボックスやベスト盤にまとめるときに曲順を乱すということに対する気配りでこういう形で復刻したのは正解だ。

 さて、このボックスの真骨頂はここからである。五枚目・六枚目は洋楽のカバーもの。当時8トラの音源が大フィーチャーされている。この二枚を聴くとブルコメのカバー能力の豊かさを思い知らされる。今まで彼らの洋楽ものの評価が低かったのは企画ものや中身とタイトルが違うものとかそんな外見から出てきた偏見だったのではないか。まあ確かにアウト・キャストやカップス、スパイダースのカバー姿勢より渋すぎるという点もあるのだが。8トラの音源が出来のよいのに驚かされる。うーん「ヤングビート」ってアルバムは渋いなぁ。ホントにゴールデンヒッツみたいなタイトルだったら評価は異なっていただろうなぁ。七枚目はGSと歌謡曲のカバー。「GSR」収録曲ははじめからひねってやろうという気があるので聴きごたえ充分。ひどいトラックもあるけど。特に「エメラルドの伝説」のかっこよさが再認識させられた。しかし後半の「花のように」だの「出発の歌」だのを聴くとまとまっちゃいるがとにかく悲しい。ブルコメにはやって欲しくなかったような曲ばかり。とにかく実際どうかは別にして時代についてってまーすというアピールっぽくて転落感いっぱい。しかし、なぜ一番出来のいい「この手のひらに愛を」が落とされたのか意図不明。8枚目のインストものは和もののエレキインストとしては傍流っぽい。あえていうならダイナミックサウンズに近い感触。とはいえダイナミックサウンズよりもラテン的な哀愁の表現に優れている。また日本のロックがエレキからGSへいったという歴史的な経緯を如実に表す初期のハミング(合いの手)いりの作品群も興味深い。9枚目は未発表ライブ。これが事実上のこのボックスのツボだ。ツボのツボは後半の44年の録音でシングルが実にムード歌謡化していた時期だけにさてと思って聴くとおいおいおい何じゃこりゃ。ゴールデンカップスのライブ盤なんか吹き飛んでしまうようなえらい内容である。出出しのジャズ3連発も目眩がするような出来の良さだが「紫のけむり」が特に強烈。ブルーコメッツの「ジジコメ」「ブルーシャトウ」「歌謡曲」のイメージとは正反対のフリーキーさ。このライブ盤がもし当時出ていたなら売れなかったとしても(というか売れなかったと思う)30年にわたるブルコメの真の姿に対する誤解はなかっただろう。10枚目はバッキングとおこぼれ集。「ハチハニーの歌」がムードいっぱいでかっこいい。フランツ・フリーデルの音源や「年ごろ」のサウンドトラック音源が聞けて良し。とくに「ユー・ローズ」のかっこいいこと。

 もう20世紀の最後に相応しい大企画であった。ちあきなおみに感謝。ちあきなおみのボックスはレコ大企画賞なんだろうな。


「おしえてアイドル」

 このCDの選者と俺とのアイドル感が全く異なっている。何か納得できないことだらけ。CD4枚買っていい曲が石坂圭子の「デジタル・ナイト・ララバイ」一曲だけ。

 追記・結局新たに聞いたものでめぼしいのはありませんでした。「恐怖のやっちゃん」ってたいしたことのない曲だったのね。きゃんきゃんとヒーローキャリーが聞けたので、ええ、満足ですよ。


オールスターズワゴン「エレキ・ギター・ヒット速報」

 日本のエレキシーンを最後まで支えたオールスターワゴンの穂口雄右在籍時のアルバム「エレキ・ギター・ヒット速報」を中古で購入した。感想は・・・かっこいい。名前の通り発売当時のヒット歌謡をインストにしたものだが、所謂和製ポップス・GS系の作品ばかり。彼らがバッキングを勤めた作品も新録音で納められている。特に素晴らしいのはタイガースの「君だけに愛を」。穂口雄右のオルガンが過激に爆発しまくっていてタイガースの(実はアウトキャストらしいが)の演奏を完全に凌駕している。あとは橋幸夫の「想い出のカテリーナ」のセルフ・カバーも過激だ。美空ひばりの「むらさきの夜明け」のセルフ・カバーも大成功。それ以外ではブルーコメッツの「こころの虹」が意外やポップス系統の発想から出た曲だということが解って発見。全体にはオーケストラを被せた作品が多いがシャープ・ファイブのアルバムのような邪魔さがなくてよかった。ついでに第2集も買ったがこっちは「銀河のロマンス」のカバーが素晴らしかった。コロムビアからCD出してほしいねぇ。


「笑ウインドー」

 あんまり面白くなかった。ただWAHAHA本舗の「酒飲みカッポレ」が完成度の高い勢い任せのプレ・ヒップ・ホップ歌謡でかっこよかった。どうもノベルティ・ソングものにヒカシューやらゲルニカやらが入っているのはちょっと違う気がする。あと時事ネタのコミックソングというのはどうも色あせるのが早くて「おじゃまむし’81」なんか聞いていられない。でもまあ聴きたかった曲が結構多くて満足。


「ブルー・コメッツ・パスト・マスターズ1966−1972」

 ブルーコメッツは日本最大の音楽的遺産である。はっぴいえんどなんぞ彼らの遺産の剽窃者に過ぎない。そのブルコメの本格的再評価が始まろうとしている。その第一弾がこのCDである。

 ぱっと見テイチクのGSリイシューものみたいだったが同じデザイナーの人が手がけていた。ディスク1はシングルス。しかしかつてそのものズバリの「ブルーコメッツ・シングルス」というCDがあったためか、それに収録されていた「さよならのあと」で以前は軽めの扱い。だが、「だから今すぐ」のようなよくできたムード歌謡が収録されなかったのが不満だが、つまらないと言われていた後期の純歌謡曲路線(という表現が誤りであることはこちらで説明済み)のシングルの宝石のような輝きが十分に堪能できる好選曲である。とくに屈指の佳曲「雨の賛美歌」「津軽の海」が手軽に聞けるようになったことは喜ばしい。聞いたことのなかったB面の名曲も聞けて非常に満足できた。ディスク2はレア曲、隠れた名曲を集めたレリティー編。CD化が流産していた「ヘルプ・ミー・ロンダ」とデビューシングルのB面「ミスター・キス・キス・バンバン」というエレキバンド時代の2曲がまず嬉しい。特に「ミスター・・・」のジャッキーさんのドラムは当時としては非常にレベルが高いだけでなく、現在においてもなお色あせない格好の良さにしびれてしまう。あとはブルコメの「隠れた名曲」としては定番の曲を並べるなか、初登場のライブ音源の「ダンス天国」「バラ・バラ」は活きの良さにほれぼれとさせられた。スパイダースやカップスと比べても全く謙遜はなく、ジジコメなどと揶揄されたのがウソのようなロッキーな演奏である。ブルコメもディスコティック音楽としてのGSという側面を持っていたと認識できるどころか、その道の帝王なのではと思わせる。またブルースもの2曲も黒いブルコメの魅力が爆発している。特に「トライ・ア・リトル・テンダーネス」は目眩がするほどの気っ風のよさでブルース・バンドとなっても成功したのではという気にさせられる。しかし一番凄いのは最後の「キャント・ターン・ユー・ルーズ」で日野皓正・稲垣次郎の二人の名手を向こうに回し全く負けていない大熱演で「ネオGS」以来のガレージ一辺倒GS評価の枠では決して日の当たることのなかったブルーコメッツの真の姿、魅力を爆発させている。ジャズあがりのガレージの底力である。

 もしブルコメが独自のジャズ・ロックを完成させでもして、ニューロックの波の中でも一定の勢力を保ち続けていたのならば70年当時の音楽状況はかなり変わったものとなり、数多くのバンドが海外進出できるような状況になっていたのではなかろうか。ビートルズがロックの縦軸になったように、ブルコメは横軸として存在しうるバンドである。GSという点としてのみ存在するというのにはあまりにも偉大過ぎるバンドであり、多くの日本人はそのかっこよさにいままでついていけなかった。ようやく時代が真のブルコメに追いついた。そういう意味ではブルコメはこれからのバンドなのである。

 結論・ブルコメはロックバンドなのではなくブルコメそれ自体がロックのすべてを内包しているのである。


「幻の名盤お色気ボックス」

 買ったよ「幻の名盤お色気ボックス」。6枚組だが4枚までは既発のものと同じ。真骨頂はあとの二枚。「大映お色気編」は今まで出た「幻の名盤解放歌集」の大映編二枚からのチョイスと新追加。そしてテイチクお色気編は全くの新編集である。前に流産したキング編を入れてくれればなおよかったが残念。大映編の新収録曲は麻里エチコの「コリャマタスゴーイ」がひとりGS感満点で素晴らしかったがあとは大したことはない曲だった。なんだよ、速水ユリの「悪たれマリア」が入るとばかり思ってたのに。

 そういうわけでテイチク編が今回最大の目玉である。一番手は珍しい女性だけのハワイアン系ムードコーラスグループであるダイアモンド・ファニーだがウクレレシスターズの「好き好き好き」によく似た雰囲気の曲だった。溜息溢れる佳曲だが、ただ一発目の曲としてはどうか。ちなみにこの歌、レコジャケがアウト・キャストの「愛なき夜明け」にそっくりである。次の路加奈子はさすがに時代を感じる。初代の「白日夢」の主演女優でありその主題歌が収録されているのだが西田佐知子の影響が大きすぎ。厳しい。次は藤本卓也の門下生・佐々木早苗の登場。おお、やっと盛り上がった。「金メダルへのターン!」とそのB面。これはメジャータイトルで安心して聞ける。渡辺岳夫の曲だし絡みつくベースラインがかっこいい。歌詞もときめいている。うん、これは納得だ、いい歌だ。次は密かに期待していたあおきあい。一部で非常にいろんな意味で評価のある人である。「アンドロメダの宇宙人」を聞いてみる。・・・反則だわ。無意識でおかしいとか狙っておかしいってんではなく、本人だけがおかしいというのは。一方では思ったより普通の曲なので驚いた。あの評判を聞けばこんな普通の曲だなんて思いませんがな。「クスグルジョーのサンバ」はどこがサンバなんだとか言うことはさておいて普通に聞ける歌。物まねをちょびちょび挿入しているのが健気だが、いかんせん本人がこの世のものでないのであっちに行ってしまいすぎ、えらいことになっているという感じが強い。笑い声の挿入はまあいいけど。次は谷口美千代「三味線師ロンリーブルー」。これもカルトな人気のある曲であるが、はっきり言って普通の歌ですね。もっとバリバリ三味線が入っているかと思ってた。普通のアイドルポップスを歌詞を崩して無理に演歌調に唄わせたという感じが強く、作り物のゲテ物感以上のものは感じられなかった。「ハートブレーク太陽族」には遠く及ばず。曲メロは山本正之の「大嘘忠臣蔵」にそっくりだが・・・。続く恵美の「ファイヤー」は欧陽菲菲発のプレデスメタル歌謡タヒチアン入り。歌唱が落ち着き払っているのが気に入らないが合格点の出来。次は浅丘ルリ子。「シャム猫を抱いて」はおしゃれである。灰汁はないがこの盤で最も完成度が高い。「悲しみは女だけに」はセリフにより爆裂する感情が見事に表現されており最もかつての「幻の名盤解放歌集」の曲群に近い作品。一歩間違えれば「君は人のために死ねるか」だが。三条愛はストリングスによるブレイク以外別に面白いところはなかった。じつにここまであんまりフェロモンずぶずぶな曲がない上、ここからはコアな「幻の名盤解放歌集」の世界なのだ。そのコア部分の初段、原ひろしとアルバトロス「東京待ちぼうけ」は実に素晴らしい。「悲しくないわ」を思わせるまったりとしたムードコーラスの大傑作。これですよ、これ。このさりげなさがいいんですよ。これは何故売れなかったのと言う感じがあってよい。あとは転落感いっぱいのあすかみき「高校生えんか」がハイロウズのガテンのCMソングの演歌盤といった感じで特筆の価値あり。

 しかし、本当に一番凄いのはラスト2曲である。堀井清水の「0―ゼロ―(電気三味線による哲学浪曲)」と「0―ゼロ―」。まだ前者は変形したおふざけ浪曲の域にとどまっているとも言えるが後者はそうはいかない。真のサイケである。真の虚無である。真の生身である。歌謡曲と表現は手に余り暴走するというのが最も理想的なバランスであるが、この歌は手に余りの部分がまるでない。あるのは暴走だけである。ではその黄金律が崩れているから歌自体の宇宙が破綻しているのかと言えばそうではなく、そのすべてを確実に表現する技巧が暴走という先端を支えているのである。一部のロックバンドしか到達し得ない境地にこの男は到達したのである。はっきり言ってこの一曲はそれ以外のすべての収録曲と同等かそれ以上のショックを与えてくれたのである。

 はっきり言ってお色気ものは私に向かない。よくわかりました。しかしこのボックス、お色気を騙りながら、その実、そうでないものをアピールしているのではないかと思えてならなかった。しかし最近幻の名盤解放歌集のパワーが落ち気味なのがとても残念だ。Pヴァインの邦楽レーベルは流産が多いが特に好きなレーベルだし、面接を受けに行ったりもしたのでがんばって欲しい。そういうことなので徳間の担当者の方はGSの権利関係を早くきれいにして「カルトGSコレクション・ミノルフォン編」をだしてください。

 結論・おしえてアイドルシリーズ買います。だから「テクノ歌謡」のコロムビア編を再構築してください。


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