謎の未認定GSたち

 Unknown GS’s


 ここまで読まれた方にはこのページが黒沢進氏の名著「日本ロック紀 GS編」を参考に記されていることに気づかれた方もあるかもしれない。ここではその本に載っていない謎の未認定GSについて少し。

 まずコロムビアのフォア・ジェッツ。テレビアニメ「ファイトだ!ピュー太」の主題歌等を残して忽然と消えたグループ。何人組編成かとかよりもそもそも本当にバンドなのかもわからない。多分四人だろうけど。しかし、ファズを使用した荒々しい演奏にのって荒削りなコーラスがかぶさる同名主題歌はなかなかのガレージ・フォーク・ロック(学生のバンドっぽく、傾向は多少異なるがダーツの「ブーケをそえて」を彷彿とさせる)。多分コロムビアの数ある録音の中でも一等格のものだろう。クレージーキャッツの楽曲でおなじみ萩原哲晶の作編曲でブラスが入っているが充分かっこいい。何よりすごいのは途中で片チャンネルの音が吹っ飛ぶところ。「テレビまんが主題歌の歩み」という二枚組のCDなどに入っている。GSファンは必聴だ。各社から同一音源でリリースされたらしい。しかし、東芝では異名のフォー・バブルスとしてリリースされていて、スリーバブルスとの関連性が気になるが、どう考えてもコーラスグループのグルーヴではなく、謎多し。ちなみにコロムビア盤が原盤らしい。長らくこの一曲だけが知られていたが、平成20年になって少年シンドバッドの主題歌「少年シンドバッド」がCD化され、彼らがやっていることが明らかになったが、単に話がややこしくなっただけだった。というのも、こちらの音源はどう聞いてもシャープホークスだからだ。結局原盤の都合でちゃんとクレジットできないGSバンドの共同匿名名義がフォア・ジェッツの正体なのだろう。

 対して完全に正体が分かっているのがポリドールのザ・レンチャーズ。バンド名は破廉恥からとられたが、このバンドはムード歌謡のハニービーツの変名プロジェクト(とは言っても俺このバンド知らない。或いはハニーシークレッツとの説もあるが大分雰囲気が違う。個人的にはハニーナイツではないかとも思うが、だとしたら粗い仕事だ。ポリドールの倉庫に入っている原盤には「正体」の名前で保管されているらしいので誰か確かめるべし。)という。声優による変な怪獣寸劇が導入され、あんまりバンドがやっているように感じない(実際やってないのだが。)がやけにファズギターのフレーズがかっこいいコミック・ソング「サイケ・カッポレ/ミックスモンスターズ)」(ポリドールSDR1370)を残した。売れても番組などには出ずテープだけで押し通すというプロジェクトだったが、そんなことをしなくてもメンバーを呼んでくれる番組などなかった。トップはCD「アングラカーニバル」で聞ける。

 次はテイチクのザ・ファニーズタイガースの前身の同名バンドではなく、ロック・パイロットの前身のバンド(でもないという情報も)。上記の本ではレコードデビューしていないとされているが、実はタイガースの京都時代のバンド名であり、ロック・パイロットの前身バンドの名前でもあるが、このファニーズはこれらとは別のバンドである。自主制作盤を出していてテイチク(制作はサガゼン企画)から「淋しいの/恋の涙」(43−119)をリリースしており、いる。レコード番号から推測するに昭和43年の夏から秋春から初夏にかけてのリリースか。このレコードのジャケットによれば、メンバーは佐々木ヒデオ(LG)、清水アキラ(SG)、横谷シゲル(B)、佐藤エイジ(D)、木村タカシ(V)。なお、担当ディレクターとして長島史幸がクレジットされている。このレコードはサカゼン企画が制作としてクレジットされているが、同時に新宿の紳士服店「サカゼン」の広告が入っており、東京のバンドであったことが推察される。また「英ちゃんの店ニューカッスル」の広告も入っているが、この「英ちゃん」とは佐々木ヒデオのことだと推察できるから、GSというよりも飲み屋のハコバンであったのではないだろうか。肝心の曲のほうは、A面は作詞曲・佐々木英男による「ヨットと少年」をもっとアイドルにしたような甘ったるい中道歌謡。B面は、ビートはまあまああるが東京ロマンチカ風のムードコーラス。上の推察が正しいのであればGSというべきではない。実際にルックスもGSらしくないという。ロック・パイロットの前身であるファニーズとの関係から昭和44年の遅くても夏にはもういなかったものと思われる。というかこれはGSなのだろうか。(情報提供・howlさま)

 立川札幌のGS・キックスもコロムビアから「ふたりの愛/ロンサム・チャイルド」(PRE1526)を出している。A面はオリーヴがムードコーラス曲を歌っているような曲。B面はセンスが鋭い、特に間奏のトリップ感が素晴らしい全英語詩によるアシッド・サイケ曲。なお、このレコードには以下のような事情からジャケットがない。
(このバンドについて平成19年5月頃からより掲示板に「ピーターさま」から情報が寄せられましたので、適宜以下に取り纏めました。)
 このバンドは札幌のGSでポルーリヴィアとレイダースの曲からバンド名を取った。「ふたりの愛/ロンサム・チャイルド」は1968年末から1969年初頭頃にHBC(北海道放送)のスタジオで録音され、コロムビアの札幌の特販で製作され、有線での放送もされたが、ジャケットが仕上がる前に、とある事情により発売がお蔵入りになり、厚紙に入ったままの原盤数百枚が残ってしまったという。なお、このレコードでの使用楽器はオルガンがエーストーンでギターがエルク。「ロンサム・チャイルド」の深いエコーは、ビンソンとのこと。このレコードの他にもメンバー以外の人物による作品でレコードを出す話があった。「ヤング720」に出演しゴールデン・カップスと共演したこともあるという。同じ北海道のインディーGSであるラ・シャロレーズとは現在まで続く交流があるそう。

 自主制作GSといえばザ・ハンバーグだが、彼らも有名な日本芸能クラブ盤のほかにテイチクからも「すてきなプレゼント/プディの詩」(44−44)を出している。昭和44年の春先から4月頃のリリースだろう。なぜかAB面がジャケット及び日本芸能クラブ盤とは反対になっている。ちなみに編成が変わり3ピースのバンドになっているがどちらも音源は同じと思われる。ちなみにうちのサイト以外ネット上で詳しい情報がないようなので追記しておくと、日本芸能クラブ盤(O1022)「プディの詩」(作詞・浅見一郎 作曲・坂岡正二)はオルガンを中心に据えたガレージパンクの大快作。強烈な叫び声も聴ける。もちろんこの曲からハンドルネームを採りました。B面(作詞曲・浅見一郎)もオルガン主戦のパンク・バラード。メンバーは園憲治(ボーカル)、坂岡正二(リード・ギター)、宮しげる(ドラムス)、浅見一郎(ベース・ボーカル)。と言うことはいなくなったのはボーカルの人かな。よく見るとレコードジャケットのデザインは写真とバンド名のかしがり具合以外両盤とも同じということでレコードとジャケットでAB面の扱いが逆になっているのだと思う。おそらく日本芸能クラブ盤のリリース前後にメンバーチェンジがあり、改めてテイチク盤をリリースしたものと思われるからほとんど同時期に出たものだろう。音源も同じである。元メンバーの方とかいらしたらメールを頂きたいです。バンド名はプロコム・ハルムの同名の曲から取ったものだと思われるから、ブルースをやりたかったものと思われる。なお、日本芸能クラブ盤はザ・サイレンサーの「恋の夜汽車」とカタログ番号が続きになっており、これも結局関西の日本マーキュリーからリリースされたものではないかと言われている。この日本マーキュリーはこれ以前、以後にも同名の会社があるが、基本的には無関係と言ってよいので、よく体せよ。

 ほかに自主制作GSではサブ・アンド・ビートという3人組が43年に「帰り道は遠かった/愛していると」(キングNC230)のカバーというか競作盤というか(これがオリジナル盤らしい)をリリースしている。付き合いで盆踊りしてるみたいなやけくそ感があってよい。「あーどっこい」というGSとしては掟破りな合いの手に驚愕。B面は歌謡曲だがリフをA面から流用した流麗なギターとハイテンションなボーカルが光る胸のすくビート曲。博多のチェリーサウンズという五人組バンドも45年に入ってだが「機嫌を直してもう一度/面影の渚」(日本シュアSR1015)というレコードをリリースしている。A面は青春歌謡的な台詞の独白部分が導入されているのが独創的なカバーもの。B面はシェリーズやヤング&フレッシュを思わせる前期GS的なマイナービート歌謡。変なタイミングで波の音が入っている。両面ともとても70年の声を聞いているとは思えないグッドなビートチューンで演奏歌唱とも頗る上手い。自分好み

ザ・サイレンサー、ラ・シャロレーズ、サニーズその他については「一枚屋GS」のページをご覧下さい。

 テイチクさま、無理なのはわかっています。けれどもファニーズ、ハンバーグ等の歴史的資料価値のある音源をほっとく手はないと思います。どうかCD化検討お願いします。

 ほかにも末期のクールキャッツ(「恋の花」)、東京ベンチャーズ(「九段の母」)、東京ビートルズ(「オール・オブ・ザ・ナイト」)、チコとビーグルズ(「帰り道は遠かった」)、ドンキーカルテット(「宮本武蔵」)、ジャックス(「マリアンヌ」!)とか有名どころのファジー組もいる。

 逆にローズエンジェルズというレコード未発売GSの映画用楽曲がCD化されている。詳しくはGSCDのページを参照せよ。エンジェルズは西野バレエ団のGSでガロへ行く堀内護が在籍していた。のちにバロネッツがリリースする「白夜のカリーナ」でデビューする予定だったが、流れた。彼らがこれをちゃんとリリースしていたらガロを含めて評価がかなり変ったかもしれない。

 どさくさ紛れにここに書くがレコード未発売GSのオリジナル曲が海外でカバーされている。それは渡辺プロのGSアストロジェットの「海浜へ行こう」という曲。ボーカルが在日韓国人であった縁で韓国のグループサウンド祭へ招かれたが倭色文化追放のため急遽韓国語訳して披露された。これをのちに当地の人気GSキーボーイズが吹き込み大ヒット。「ヘビニュロ・カヨ」というタイトルで知られ、韓国におけるスタンダードとなった。永らく作詞作曲及びオリジナル歌手について混乱していたが、一連の経緯が朝鮮日報に掲載され、また元ボーカルのインタビューが掲載されるなどしてルーツが究明された。(このことについて、ことが掲載される半年ほど前に朝鮮日報の記者らしい韓国人の方から鄭重な英文の質問メールを頂き、アストロジェットについて多少説明をしたが、あれが役に立ったのであれば嬉しい。)


 (※ここにジャイアンツとクーガーズの謎のアルバムの話を載せていたが、菅田様からジャイアンツは「ケメ子」と同じ、クーガーズは別バンドという情報をいただきました。有難うございました。ご本の宣伝もそのうちさせてもらいます。また、辻村様からフォア・ジェッツについての情報をいただきましたが、新たな謎が出てきたのでまた別の機会に。)

 

 

↓時は流れて別の機会。


 というわけで菅田様の著作「プレミアレコード図鑑」と某「超カルトGSコレクション」(謎)からGSの新種(「日本ロック紀」にのってないやつで↑で触れてないやつ)を。

アウト・サイダース・・・詳細不明。日本にもアウト・サイダースがいた!ディックミネの「ゆかりの唄」を思わせる長大な女性の語りの入る賛美歌の様なタイトル不明の曲と妙に生音っぽいサックスをフィーチャーしたサベージや加山雄三風の三連フォークバラード「たそがれの浜辺」を残している。GSというよりもグリークラブやフォークグループの曲を聞いているような印象を受ける。

アップルパイ・・・詳細不明。「ハローベイビー/可愛い君」(東芝4R182)。もう身も蓋もない自主制作番号帯。両面とも「グッドナイトベイビー」を始めとしたキングトーンズの楽曲に雰囲気がそっくりな暖かいR&Bで、自主GS的な闇雲さは全くなく、よく練られている。楽曲の完成度で言えば自主GSのうちでも屈指のグループであろう。

アルファード・・・「涙の想い出/帰らぬ少年」(日本CACNC711)タイガースの岸部おさみ(一徳)のお店の常連バンド。両面タイガースの森本太郎/岸部おさみによる作品。A面は60年代の無邪気さは影を潜め70年代の香りが漂ってくる、グループサウンドとしては極端に覇気に欠ける作品。イントロは松田優作の「プラチアム・ナイト」を髣髴とさせる。B面は「青い鳥」が精気を失ったような反戦歌で、いかにもタイガースメンバー作品といった曲調。
カバース「涙の想い出」ジェフ、バーヴ安田とニューオックス


平成16年2月14日、もとアルファードのメンバー・丸山芳春様より丁重なメールを頂きましたので、御了解の元そのまま転載いたします。

 返信遅くなってすみません。まず、「岸部おさみの店のレギユラーバンド」ではありません。その店はタイガース・ファンを対象にした「のっぽ」という喫茶店で、ライブは無し。そこで僕はアルバイトをしていたのですが、当時タイガースのローディーをしていた平本佳紀や、他のメンバーとも、ここで出会いました。
 
 《初代メンバー》
☆丸山芳春(アニキ・リードボーカル)      このほか、ケント・ヨーチン・ツトムが
☆佐藤満博(タロー・リードギター)       メンバーとして活躍した時期もありました
☆佐藤道夫(グー・サイドギター)
☆市原峰幸(イチ・ベースギター)        初代メンバーとは今でも毎年会っています
☆平本佳紀(ヨシノリ・ドラムス)

《主な演奏ナンバー》
 始めたきっかけがタイガースだったので、彼らのステージを見る機会も多かったため、タイガースのライブ・レパートリーと重なったものが多かったですね。

☆メロディーフエア ☆ジョーク ☆オー・ダーリン ☆オブラディ・オブラダ ☆ゲット・バック
☆アズ・ティアーズ・ゴーバイ ☆ヘイ・ジュテーム ☆ブラック・マジック・ウーマン
☆エニバディーズ・アンサー ☆コットン・フィールズ ☆ギミー・シェルターetc

《オリジナル》
☆「涙の想い出」「帰らぬ少年」・・・岸部おさみ作詞・森本太郎作曲
 当時、何度か二人が練習会場まで足を運んでくれ、B面用だった「帰らぬ少年」はその場で、即興でイントロを考えたせいか、「青い鳥」を連想させる。森本太郎さんも駆けつけたテイチクのスタジオで、レコーディングしたが、これはCACというマイナー・レーベルで、数百枚しかプレスされていない。後に、ビクターで再レコーディングとなったが、発売日はなかなか決まらず、最終的には、編成会議という厚い壁にはばまれてオクラ行きとなってしまった。

☆「ひとりゆくさすらい旅」・・・新藤兼人作詞・ベンチャーズ作曲
  B面「名もない銭もない」・・・・新藤兼人作詞・作曲
 「混血児リカ・ひとりゆくさすらい旅」の主題歌。主役の青木リカ&アルファードとして、CBSソニーから発売された。映画にも演奏場面で出演。A面の原曲は「エンドレス・ジャーニー」

☆「風は知らない」「シェルビー」・・・荒木一郎作詞作曲、レコーディングにはいたらず

《出演した場所》
☆ニユーACB ☆池袋ACB ☆ラ・セーヌ
GО・GО・ACB ☆サンダーバード ☆新宿ムゲン ☆JACK ☆赤阪メイム

《エピソード》
1970年12月のある日。タイガースの「ニューACB」でのラスト・ステージが、超満員の中で行われていた。ちょうど僕達も下の階にあった「GO・GO・ACB」に出演していたが、その休憩時間を利用して、待望の「ニューACB」のステージに登ることができた。それも憧れのタイガースのステージに。これもヨシノリが動いてくれたからこそ実現したこと。まず、ジュリーからの紹介があって全員が登場したが、完全にあがりまくっていた。タローさんに似ているということで、うちのタローにも黄色い声援があがっていた。タイガースの楽器をそのまま使わせてもらったのは幸運だったが、やはり使いなれていない楽器なので、演奏した「涙の想い出」の出来も良くなかった。後ろで、タイガースのメンバーがニヤニヤしながら見ている中での演奏だった。こんなにも大勢の観客の前での演奏も始めての経験で、想い出に残る1日だった。タイガースと同じステージに立ったグループも、多分、他にはいないと思う。これ以降、「ニューACB」にも出演できるようになり、好きだったハプニングス・フォー、ゴールデン・カップス、モップス、ジャガーズ等とも共演できるようになった。楽しかった反面、恥ずかしさもあった。まだまだ下手だったから・・・・。デビューの頃、一緒に練習したロック・パイロットも、すでに、かなりの人気者になっていた。

以上、思いつくままに書き綴ってみました。

 ということで、アルファードの情報について一部修正いたしました。御本人の証言というものは重いです。お店のバンドというのは誤りで、しかもかなり後期まで活躍されていた事など興味深いお話しです。あの青木リカのレコードのバッキングがこのアルファードだったというのは何とも驚きであります。(CD化されていませんが「エレキ・インスト大全」でジャケット写真が見られます!CD化希望。)タイガースの他、ロックパイロットとの人脈的繋がりがあったことなどは日本のロック史的にかなり重要な証言なのではないかと思います。タイガースデビュー後にジャズ喫茶のタイガースのステージへゲスト的に出演したというのは驚きのエピソードであります。何はともあれ、丸山様(ワイルドピースト→アルファード)、貴重な証言を頂き有難うございました。(なお、その後再結成ライヴが行なわれました。さらにこのバンドのライヴ音源が残っている模様。その音源に残っていたオリジナル曲を聞いてカバーしたバンドがあったが、そのカバーを聴く限りヒューマンルネッサンス期のタイガースの影響がかなり強いバンドのようである。)

 なお、このバンドのオリジナルとしてはシングル曲のほかに「美しい瞳」(丸山芳春)、「心の花愛の花」(佐藤道夫)、「愛の子守唄」(佐藤道夫)、「旅立ちのワルツ」(佐藤道夫)、「君と僕のプー太郎」(作者不詳)などがあったとのこと。「風になりたい」「シェルビー」については荒木一郎のパーティーに呼ばれたときに荒木一郎の母荒木道子(女優)から勧められたからだという。おって、「涙の想い出」は本人たちが全く預かり知らないところでテレビ東京のボウリング番組の主題歌に採用されていたことがあるほか上にあるタイガースのステージへの客演の音源も残っているという。映画「混血児リカ」への出演などを経て、昭和48年3月31日に解散。再結成は34年後の同日に行なわれた。一時期はビクターからのデビューも予定されていたようで「涙の思い出」と「帰らぬ少年」はレコーディングまで終わっていた。こちらの方が出来がよい。(情報提供・名古屋の中山さま)関係者の交流が未だに続いており、しかも記録が大量に残っているため下手なメジャーバンドよりも当時の詳細が判りやすいようである。


ジ・オアシス・・・詳細不詳。バンド名も本当にこれなのかもよくわからない。まとまった一ステージ分のライヴ音源(?或いはジャズ喫茶やレコード会社へ提出するためにとったデモテープか。)が残っている。それを聴く限りでは、間の取り方が稚拙で営業臭もあまりないので、名もない学生バンドのような気もする。さびれているがニューロックの足音を感じる演奏。途中で「アホや、あの人変なことやってはる」という掛け声が入るから大阪か京都近辺のバンドだろう。演歌紛いも一曲やっている。(松本さまありがとうございました。)

ザ・カーニバルス・・・ジョー山中が491とFTBの間にいたバンドだが45年に至ってテイチク・ブラックから「光をさがそう/帰らぬ日々」「生きのびるために/いのちある世界」というレコードを出している。全曲聴いた人によると「光をさがそう」は自分たちの演奏らしいキーボードを中心にしたバンドサウンド、「帰らぬ日々」はザ・バンドの「ウェイト」風、「生きのびるために」「いのちある世界」はバンドサウンドではないが完成された曲との評あり。また、別に「光をさがそう/帰らぬ日々」はフォークにムードコーラスと演歌が混ざったような曲との証言もあるが、聞いた限りではいかにも70年代な暗く精気のない曲をジョー山中そっくりなボーカルが歌い上げる、GSははるか地平の向こうといった曲と感じた。これも「遅れてきたGS」というべきか。なお、同名のネオGSがいる。

ザ・クライシス・・・詳細不詳。しゅうとまさるの自主制作盤「ベカベガ・ぴあぴあ/小さな森に逢いに行きたい」のバックを勤めたあと、ポリドールから出たメジャー盤(DP2077)でもバックをつけている。どうもあまりGSらしくない。

宮西渡とザ・スナッキーズ・・・宮西渡(P)高橋桂吾(G)西内健一郎(B)大井川昌弘(D)渡辺正文(V,Et)。昭和43年1月15日結成。もともとはブルーサンダースという名前であったが、行き詰まりを感じて船村徹門下となり、ムードコーラスグループとなったと書いてあるから、ムードコーラスとして扱うのが正解か。43年ごろに「星の海に(二条冬詩夫/船村徹)/酒場の女(宮西渡/高橋桂吾)」(コロムビアPES7107)というシングルを出している。「星の海に」はこのバンドをGSと言っても皆が納得できるビート歌謡だが、船村徹作品と言うこともありロックっぽい感じではない。ビートとロックは全然別物ということがわかる作品。B面はセカンドシングルでも取り上げる自作曲だが、こちらは自分たちの演奏だけで通している。ガレージというより貧乏臭い。つづいて44年の春頃やはりコロムビアの特販から「酒場の女(宮西渡/高橋桂吾/栗田俊夫)/若い花園(後藤花代/宮西渡/栗田俊夫)」(PES7138)というレコードをリリースしている。ブルコメ風歌謡という触れ込みだが、多少B面の詩がGSっぽいというだけのコアーなムードコーラス曲。なおセカンドシングルのジャケットでの表記によれば宮西は32歳(ファーストシングルでは24歳と書いてある。サバ読み。)と飛びぬけたベテランであり、他のメンバーは22〜18歳となっている。一応ステージでは演歌からR&Bまでをレパートリーにしていたそうだから、ルナ・ジェーナあたりと同じような取り扱いでいいのだろう。「酒場の女」は秀樹と影武者が有名な「夜・・・酒組」のB面で「どうせ私は」というタイトルでカバーしている。

ザ・シャーウッド・・・関口豊(V)西脇サダオ(LG)守山輝樹(B)すゞきひでき(D)。岐阜県中津川市出身で高校中退後、名古屋のジャズ喫茶「オスカー」で活躍していたバンド。「二人の渚(西脇サダオ/西脇サダオ)/ベドリボの恋(ザ・シャーウッド/大村賀津男)」(ナゴヤS44213)は69年の春から夏にかけてリリースされたレコードで典型的GSビートの佳曲。マイナーキーで押し捲る闇雲なコーラスとシャープなギターにのった名曲。B面もタイトルこそ意味不明だが、出来のいいパンク・バラード。薬やってそうでよい。両面とも非常に素晴らしいので、是非機会があればコンピに入れて欲しい。なお、西脇氏は現役ジャズプレーヤーで沢村まみ(和子)らとセッションを披露したりしている。なお、出回っている音源はピッチが早く調整されているので注意。また「二人の渚」の他にもう一枚レコードがあるとの情報も。しかしこちらの曲は未聴。彼らのレコードは中京地方では割合に簡単に手に入るらしい。

ジャック・ファイブ・・・詳細不明。いかにもアマチュア的な素朴な歌謡曲的ビートソング「愛の絆」を残している。

ザ・ジュピターズ・・・テイチクのメジャーレーベルで正規発売されながらいままでGSとしては紹介されることがなかったバンド。42年1月にエレキ・インストの「グリーン・ホーネット/庭の木蔭で」(テイチクUS517)をリリースしたあと、44年にいたって「結婚しよう(なかにし礼/河屋薫)/ワインカラーの涙(石井志都子/河屋薫)」(テイチクUS618)を残した。「結婚しよう」の際のメンバーはロジェ滋野(ドラムス)、土田洋一(エレクトーン、ホーン)、鈴木美民(ギター、フルート)、杉村たかし(ギター)、ジョージ岡(ベース、元東京ビートルズ)、三和真由美(ボーカル)。そのジャケを見ると三和がウェディングドレスを着て写っている。なお、エレキバンドとして活躍していた頃の作品にも、女声コーラスが入っているので、おそらくメンバーであろう。(情報提供・帰宅部さま。)参加オムニバスあり。なお「グリーン・ホーネット」(もちろんブルース・リーが出演していたことで有名なドラマの主題歌のカバーである。)はエレキ・インストのコンピの中でついにCD化された。「庭の木蔭で」も日本のエレキインストでも屈指の雰囲気のあるインストなので、CD化してほしい。「結婚しよう」はGSという雰囲気ではないが、50年ぐらいにニューミュージック系のグループが出した曲だと言っても通用しそうな曲でシモンズやジャネッツなどのフォークデュオ(三和のボーカルをダビングしているものと思われる。)かと間違えそうなフォーク・ポップ。「ワインカラーの涙」もGSの面影なきボサノバを使ったフォークバラードでサビは「白鳥の湖」を流用しているが、ニューミュージック的で44年にこんな曲をやっていることが驚き。残した楽曲の完全CD化希望。

ザ・チェインズ・・・未聴。昭和41年(初夏ごろ?)段階で自主制作の4曲入り17cmLP「ミート・ザ・チェインズ」(テイチク4182)を出していたというオーパーツ的なGS。どういう風体かとかは一切解らない。ちなみに内容は「アイ・ウォント・トゥー・ウィスパー・イン・ユア・エア/チャンス・アゲイン/シーズ・ア・フィックル・ガール/マイ・フォーリング・ティアーズ」という英詩オリジナル曲。カタカナ英語が微笑ましい。というか何でテイチクはこんなに訳の分からないバンドがやたらにリリースしているのか、そっちの方が却って謎。

ザ・チェファーズ・・・鈴木二朗(D)池田克比古(G)小野美嘉子(O)椿哲也(V)宮崎重夫(B)。全部は未聴。なんとフェニックスの前身!黒沢進先生もひっくり返った極上品だという。プロモ用と思われる4曲入り17cmLP「僕の初恋/ホワット・アイ・セイ/さくら・さくら/ユカ」(ビクトリー番号なし)が伝わっている。「僕の初恋」は、見事なビート歌謡で、リード・ギターを押さえオルガンを前面に押し出したサウンドと破壊的なドラムが力押しする迫力の演奏に驚愕。ミックスが異常によかった。GSでないとありえないサウンドだろう。「ホワッド・アイ・セイ」はR&Bのカバーだが激しいビートにチープなオルガンを被せてGSらしいカバーに仕上げている。これがメジャーでそのまま出ていたら伝説になっていたであろう。「さくらさくら」と「ユカ」はインストで北欧系のサウンドにまとめられており、とりわけ「ユカ」は映画音楽の様なドリーミーな味わいがある。「さくらさくら」はシャープファイブの「春の海」のような構成だが、ガレージバンドのインストという情緒が色濃く出ており、これも好印象。どの曲もフェニックスのような捻ったサウンドエフェクトはなく度胸一本で押し切っているが、その実力の高さが伺え、インディーGSの王者と言っても過言でないかもしれない。

ザ・ヴァインズ・・・ポニーズの前身バンドの一つ。メンバーは佐藤俊樹(G)、谷田部進(B)、籠利達郎(D)で昭和42年当時は全員高校2年生だった。ただし本来はもう一人ギターがいたらしいが幽霊メンバーの状態であったそうだ。ファントムギフトなどもカバーした、かの有名な早川義夫作品「海と女の子」の初演をラジオ「バイタリス・フォーク・ビレッジ」で披露した音源が現在も残っているが、レコードはおそらく残していない。「海と女の子」にはアイドル流れのGSサウンドだが無垢な故の悲しさが充満している。昭和42年の夏にはメディア露出もあったが、その年の秋には「フォーク・ビレッジ」の吉田社長の手により他のグループと合併してポニーズになった。バインズとの表記は訛。この項はくらげさんのブログにほぼ完全に依拠しています。

ザ・バーンズ・・・「神の使い/リメンバーソング」(バーンズNCS163)。未聴。「R&Bin東京」のグループとは別。昭和41年に結成された新潟のGS。メンバーは遠藤三雄(リードギター)、布川聡(ベース)、小島信(エレクトーン)、山際武(ドラムス)。昭和44年の5月から6月にかけて録音されたというから夏以降のリリースだろう。このジャケは雰囲気があってかっこいい。A面はクラシカル・ロック、B面はシャドウズ的なインストという。キングの自主制作のカタログ番号であるNCSには製作者が勝手にレーベルを設定することがあり、有名なものにはIOKらの「アイドル」があるが、このバーンズもその類だろう。現在もジ・エルダーという名前で活動中とのこと。この項もくらげさんのブログにほぼ完全に依拠しています。

ビロージュ・・・詳細不明。相沢行夫(元イーグルス、のち矢沢ファミリー、NOBODY/ノーバディ)、松田良一、石田斉らがいたフォークロックバンド。「お前の目を見るだけで」「一人で行くさ」(インターTS1001)という曲を残している。前者はハーモニカから始まる、オルガンをフィーチャーした青春歌謡。青春歌謡ではあるがビート感があり、コーラスも上手く、演奏もよくまとまっている。ウーマントーンが使われているから45年以降にリリースされた曲かもしれない。「一人で行くさ」はカントリーフォーク調だがサビがホリーズっぽい。上にあるカーニバルスあたりに通じるものがあるから或いはこれと同時期のリリースか。昭和46年リリースと言うから全く時季外れなのでGSではないとするのが良いと思う。このバンドはNORAに発展した。ちなみにNORAはあとで「マッハバロン」で強烈なボーカルを残すことになる杉浦芳博がいたことでも有名。。

しのぶとおさみ&フォーハーモニー・・・詳細不明。「恋のカナリア(松井ひさし)/花びらの涙」(クレインHMO1001)を残している。「恋のカナリア」は中ワタルの「愛のペンダント」を思わせる荒んだド・ガレージ歌謡。荒々しい演奏で湿っぽい楽曲が熱っぽく歌われるGSの醍醐味の詰まった歌。「花びらの涙」は更にビートが強調され、「タックスマン」の様なベースラインの上をジャニーズのグループが駆け抜けているような溌剌さが溢れている。タイガースの「割れた地球」の高尚さを俗っぽさに変えたような曲。ともに自主GS屈指の名曲。ジャケ写真が「秘蔵シングル盤天国邦楽編」に載っている。

本田一也とフリーポップス・・・詳細不明。ビートタンゴとでも言えばよいような佳曲「夜霧に消えた恋」と「一人ぼっちの黒人」というとんでもないタイトルの情緒深いララバイ調のムードコーラス曲を残している。(コロムビアPES7095、42年秋ごろか。)

モモ太郎&キン太郎・・・詳細不明。ベースがやけに目立つ加山雄三の影響がかなり強いR&B「マイダーリン」を残している(キャラクターズの曲とは別の曲)。(クラウン7LPR192 但し四曲入りカレッジ・フォーク・オムニバス17cmLPのうちの一曲。)GS人気投票にあるキンタローと同一グループなのかもしれない。或いはティアビームスに似たカレッジ・フォーク・グループか。


上記のグループについては「日本ロック紀GS編コンプリート」において、大分フォローされ「未認定」ではなくなったものが多いが、なお、これにもれたものも多い。なお、同書では上記以外のグループとして以下のグループが紹介されている。さらに名古屋ではこれ以外のインディーGSのレコードが割合に多く見つかるという。

ザ・ファイヤ・ストーンズ・・・来歴不明の謎のGS。「君の気持ちはわからない」(詩・曲・ザ・ファイヤ・ストーンズ)/「いつも2人」(東芝4RS133)を残している。A面はファズが唸りをあげるインディーGS屈指のガレージビートチューンという。未聴。

坪田政博とザ・ロネッツ・・・札幌の6人組GS。43年に結成され翌年には「愛の終り」(PES7124P)をコロムビアからリリースした。フルートとオルガンが強調されたナンバーだというが未聴。片面はナーヴィス「海辺の村にて」という歌が収録されている。こちらは、案、カレッジフォークかと思ったが、聞いた人によると案外にビートが聞いていたという。。これも新居一芳氏が関係しているのだろうか。

スリーピー・エンゼルス・・・ポリドールから4曲入り17cmLP(SKI1017)を出している6人組。見かけは学生フォークグループだが音はミノルフォンGSに近いという。未聴。

ザ・トロイヤーズ・・・マッシュルームカットの6人組という。「バラを返して」「なにもいらない」(ともに作詞作曲・荻原健 補作・荻原経袈(?))(TCKTCK101)というパンク・バラードを残しているという。未聴。このバンドのマネージャーを務めていたという人物が存命で、その人からものすごいバンドだったという証言を聞いた人がいる。


更にこんなバンドもレコードを出しているらしい。

ジ・ウィリアムス・・・ナゴヤディスクから「サリー」という曲を出しているとのこと。未聴。

ジ・オーム・・・三重県出身、とのこと。未聴。

ザ・サリーズ・・・これも東海地方のGSか。未聴。

ブルドッグス・・・未聴。

バジャーズ・・・不詳。菅田泰二著「プレミアレコード図鑑」の第二版に「砂浜で・・・/北国の想い出」(東芝4R149)のジャケットが載っているらしいが未確認。平成22年の春にこのレコードがヤフオクで取引された模様。

マザーズ・・・日本CACから「ザ・ランド・オブ・セブン・サンズ」「」アイアム・ア・フォーフレッシャー」(両面とも作詞マサオ・カツタ 作曲・カズオ・サイトウ)というレコードをリリースしており、某音楽評論家がツイッターで画像をさらしていた。

フォーク・チェンバローズ・・・未聴。

 これらのバンドについては何も知らないので、ご存知の方は些細なことで宜しいのでどんなバンドなのか教えていただければ幸いです。

このページにつきまして、特にもられすさま、名古屋の中山さま、くらげさま有難うございました。

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