これ買いました14年7月

ザ・ワイルド・キャッツ/同名

 かっこいいとはこういうことではないかもしれないけど少なくとも宮崎アニメよりは核心を突いている。

14.7.29

くず

ムーンライト

マキシ ポニーキャニオンPCCA01572

 いかにも素人が作った素朴なアイデアを生かしたカレッジフォークの正統的な後胤。楽曲的にはもっとラテン色が強いので音楽的には繋がりはないけども。後半のボーカルは苦しいがここまでやれれば合格点。カップリング「お前からの手紙」はいきなり限界が提示されてしまっているのが気になるがあくまで余技だと思えば腹もたたない、後半コントのコミックソングの中道曲。「赤とんぼ」は普通の埋め草だが、完成度は結構高い。コントと物まねバージョン「ムーンライト」つきというか普通に独立したシークレットトラックにすればいいのに。なんだかんだいっても本家ゆずよりは素朴な分切り口が鋭い。

鹿嶋寅之助

聖戦

CDS センチュリーCEDC10645

 イスラム圏ならやばそうなタイトル。しかも演歌。本職は気功師らしい。とてつもなく下手というほどではなく結構いい声はしているが、はっきりいってこれで金取ったら怒られます。曲もピアノ主体の演奏も面白みに欠ける。カップリングも似たようなもんだが出だしが遥か遠くで「ルージュの伝言」に似ている。それにしてもセンチュリーってむちゃくちゃなレーベルだ。

森進一

女ごころを唄う

LP ビクターSJX4

 フミヤマウチさんがコンピに収録しようとして所属事務所に思いっきり怒られたとかいう噂の「恋のシャロック」収録。演歌的なタイトルに反していわゆるひとりGS系作品が多い。バッキングはあのチャーリー石黒でさすがよくわかった演奏だ。噂の「恋のシャロック」はファズが強烈だが想像していたほどではなくて肩透かし。結局粒はそろっているが「虹色の湖」が一番良かった。合格。この人の場合演歌発想の曲の方がやっぱり合っているな。

真木ひでと

カモン

EP CBSソニー419

 元オックスのボーカルの野口ヒデトのソロ。柳ジョージ作曲・演奏レイニーウッドのGS人脈。トップはブラス入りのハードなブルースロック(ちょっとポップスより)のいかにもレイニーウッドな曲だが、森進一がやけくそでシャウトしているかのようなボーカルが激しくミスマッチで意表をつく。少し押しが弱いけど。ボトムは同じ路線の曲だがよりブルース色が強く、こじんまりとまとまっている。ただし言ってみれば普通なので魅力に欠ける。中の広告見ると「夢よもう一度」とかのあとのようでこの人のソロでこんな洋楽的な作品があるとは驚き。

寺内タケシとブルージーンズ

寺内タケシのDJ

EP キング17A37

 非売品。御大のMC入りと書いてあるがこれがCM入れるは例の茨城弁だわでやけくそ。肝心の曲は両面ともボーカル入りだがあんまり大したことはない。というかギターが物足らない。この時期はまだバニーズの夢を追っていたみたい。

秋本薫/ポリドールオーケストラ

おんな

17cmLP ポリドールKR2098

 当たりか外れか!サックスによる歌のない歌謡曲。しばし結果を待て!・・・外れました。「恋の奴隷」が惜しいけど。ポリドールのレコードの癖に森進一が半分を占め自社作品は「ひとり寝の子守唄」ぐらいしかないのは何故だ。

14.7.25

CDR一枚頂く。クエスツが強烈だった。

14.7.20 京都ヴァージン閉店セールにつき

オ・ウンジュ

ゴールデン・ヒット・アルバム

CD アジア ACD892

 ポンチャックじゃなかった。花村菊恵やこまどり姉妹といった昭和20年代の後半から30年代前半位にかけてのコロムビアの女性歌手のサウンドに極めて近い曲群が並ぶ。まあ、「紅孔雀」みたいな少年向けラジオドラマの主題歌にも聞こえるし、「馬」とか「ハバロフスク小唄」みたいな戦時歌謡にも聞こえる歌もあるにはあるのだが。曲調のわりに演奏が近代的なので再録音かとも思ったが、声も張りがあって若いのでどうも70年代(以降)に活躍した歌手ではないかと思われる。マドロスものがやけに多いので日本でいったらコロムビア時代の小林幸子あたりが近いのかな。ハングルが読めなくて申し訳ないが、普通の人が聞いても面白いとは思えないと思うのでどうでもいいね。10曲目の「サンキュー」「グッバイ」の掛け声が唐突。曲がやけに短いな。

ヒョンエ

爆発花火娘 申重鉉特集号

CD Pヴァイン PCD3452

 完璧!!参りました。

イ・パクサ

クッコリ

CD TGR CMCD1088

 不遇の韓国時代のアルバムの再発。もちろんポンチャック。ただし、日本時代のとにかく高いテンションでではなく、押さえ気味に歌唱され、肩透かしを食らわされる。緩く単調なビート、ワンコード(!)の黙々としたバックのカシオトーンがディスコサウンドではなくむしろレゲエに近いのりをもたせており、ポンチャックのイメージが少し覆った。これだけ緩いビートなのに眠気が襲ってくるどころか覚醒させてしまうところが李博士の李博士たる所以であろう。ただポンチャックで最初に手をとってしまうとそれは不幸だと思う。

サヌリム

ザ・ベスト・オブ・サヌリム Vol.3ラブ・ソング

CD ソウル SRCD3021

 1と2は無かった。韓国のグレイトロック/ポップバンド・サヌリムのラブ・ソングを集めたもの。といっても韓国語全然わからんのだが。乾き、暗くうだつの上がらない、それでいて儚くダイナミックで絶妙な人を引きつけずにいられない演奏と、情念がテクニックを上回るボーカルがそれに被さる典型的サヌリムサウンド。ただしやや音は厚め。日本のアダルトテイストの歌謡ロックが音的には近いのかもしれないが、根本的なところが深い。より素朴な自然の感情がそのまま上ってきているような楽曲がずらりと並ぶ。ただしちょっと期待と違っていたので戸惑った。

サヌリム

ザ・ベスト・オブ・サヌリム Vol.4ホーム・ソング

CD ソウル SRCD3021

 同。ホームソングということで唱歌風のメロディーの楽曲が多く並び、穏やかなアコースティック演奏で奏でられるものが結構多い。ずっとその手の曲が続く中、最後の楽曲だけがディスコティックで異質だがそれでいて浮いているわけではないのが素晴らしい。この手の剥き出しのロック魂を彼らに期待していただけに嬉しい収穫。よく見たら13年も前のCDだったうえ、幻の名盤解放同盟の面々がスタッフとして関わったアメリカプレス盤らしい。本国では評価されてないのかな?「カジマオー」(↑3に収録)って大ヒットのはずだが。

消防車

オジェパメン ソバンチャBEST

CD ミジェウム MUCD013

 今から15年程前の大韓3人組アイドルグループ。はっきりいって歌は下手だが作り手の作品に対する誠意が感じられる。ワイルドなギターやペナペナのキーボードが同時期の日本のシブがき隊あたりのサウンドに極めて近い感触があるが、こちらのほうが朴訥とした風情がある。甘ったるくてよい。
  どうでもいいが裏のクレジットが<歌・踊し ソバンチャ>。踊し?大体踊られてもCDじゃわからんじゃない。

ザ・ワイルド・キャッツ

マウムヤケソ/ニリリマンボ/別れの釜山停車場

CD 会社名判読不出来(現代?) HYCD00181

 これも最高!クリエイションのサウンドにハニーシックスとビートフォークがのったようなコーラスが炸裂する。祭りによる躁状態という言葉がぴったりとくる。日本でも有名な「マウムヤケソ」はあのカバーバージョンは多少ディフォルメが入っているもんだとばかり思っていたが、何のことはない、そのまま。しかもオリジナルの方がもっといい意味で得体の知れないパワーが渦巻いている。ほかにもハングルが読めないのでどれと言えないのが申し訳ないのだがかなり高いレベルでまとまっている。後半はややだれるが、目先を変えた曲等もあり、最初から最後まで吃驚し通しで聞くことができた。とても寝がけにはテンションが高くなりすぎるので聞けません。キャラクターズみたいなジャケ。この曲がかかったときに「韓国を馬鹿にしてる」とか抗議した奴は何も解っちゃいない。

ワルジナー

ケケッ・レゲェ

CD Pヴァイン PCD2221

 伝統的ジャワ歌謡ミーツ・レゲェ。インドネシア歌謡は地方・人種によって細分化されており、このワルジナーという人はその中でもジャワ歌謡の第一人者、国民的大歌手らしい。もっとももともとはクロンチョンから出てそれが俗に崩れた人のようだ。そのジャワ歌謡の大御所が果敢にレゲェに挑戦という訳で、のりとしては江利チエミの「チエミの民謡」シリーズに近いのかもしれない。83年に発表されたアルバムで当時はレゲェを弾きこなす人間が彼の地に居らず録音には苦労したようだ。その割りにまったく歌にニューリズムに対する戸惑いがないのは大御所の大御所たる所以であろう。内容的にはなかなかどうしてレゲェの色がかなり強く出ており、音それ自体の質もかなり高く本場で録音しましたといっても普通に信じられる。軽いタッチではねるように歌うワルジナーも安心して聞ける。破綻とかまるでないのがすばらしい。究極のエキゾの体現のひとつ。曲による出来不出来がないのは前述のとおりだが、特に後半のバックフロント一丸となった表情豊かな熱演「トゥリトゥリプティー」や掛け声が楽しい「アンブロップ」が印象に残った。

マキシマム

マキシマム・ホット

CD ショーボート SWAX36

 もとザ・キューピッツの復活カルト盤にして最後っ屁。なんだか異常にかっこいいアレンジで聞く昭和40年代後半の雑多な広い意味での歌謡曲のカバー。プロデューサーのミッキーカーチスの関連作品が多いが普通に聞いたらどういう基準で選んだのか訳がわからないと思う。井上陽水、はっぴいえんど、DTBWB、成田賢、キャロル、左とん平、夕焼け楽団・・・。どれも原曲を上回る出来のトラックとそれを最大限に生かした歌唱が爆発しているが、その中でも「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」に至ってはあまりにもファンキーなぶっ壊し方に痛快どころかこっちのほうが必然じゃねぇかとか思ってしまう。「人間の醜さが・・・」(長いんで略)もとてつもない編曲でニューロックの時代のいい方のエッセンスが凝縮している。「ヘイユーブルース」ほかの語りもお手の物だ。本当に素晴らし過ぎる。いや「ヘイユーブルース」は「ヘイユーブルース」じゃなくても全然いいような気がする。こう聞くと俺が70年代のニューロック/フォーク/ニューミュージック嫌いなのはやっぱり編曲のただ一点に懸かっているのかな。・・・はっぴいえんどはおいといて。
 それにしても彼女たちどんどん獣のような声になっていくな。とても「ミスタームーンライト」と同じ人たちだとは思えん。

サザンクロス

パラレルショット

CD ヴィヴィッド CHOPD071

 ムードコーラスじゃない方のサザンクロス。山下達郎関連だと記憶していたが、そうか結局は無関係なのか。典型的80年代ロック。何故かCCBあたりのサウンドに極めて近しい感触がある。別に普通。どうということもなし。やっぱりこの辺がまるで理解できないのは問題ありだな。唯一「恋人と呼ばないで」の終わり方だけが面白かった。

反重力音楽グループジョニー

ド宇宙ロック

CD RD RDR1010

 京都のミューズとかで逆さ釣りになってライブやってた人たち。曲自体は真っ当なパンクロック。といっても歌謡色がかなり強くて詩も阿呆がかなり入っているが。曲自体の出来はさびがないような曲などいくらパンクといっても正直少し盛り上がりにかけるきらいがあり練りこみが足りない印象を受けた。また、演奏面でものりだけで乗り切れない曲では演奏歌唱ともに少しボロが出るのが残念。しかしトータルとして見るとまずまずだと思う。前述のとおり歌謡色が強いためか、この手のもののわりに途中で聞いているのが苦痛にならなかった。ただどうしてもパンチに欠ける印象が先にたち、天井からぶら下がっているという強烈なヴィジュアルにもかかわらず商業にブレークしなかったのも頷けると思う。

ワイルド・アンド・スキニー

カヤノ博士の脳未来革命

CD 一口坂スタジオ BOSJ001

 ぁゃιぃ。
 脳生理学者の栢野藤章なるひとが監修でむやみにスケールが大きい解説を書いておられ、その解説によればいわゆる不可聴域の周波と打楽器音に人類を活性化させ、陶酔感と安心感を得る鍵があるとのことです。
 ・・・えっと、CDはそういう聞こえないような周波のところの音はカットされて録音される特性があったと思いますが、きっと我々が無闇に陶酔したりしないようにした博士なりの配慮なのでしょう。きっと、そうに決まっています。そうじゃなければこれを聞いて糞だななどと思い不安感でいっぱいになったりする訳がありません。ねぇ、フジサンケイグループさん。
 ・・・というかこれマジ?本当に医学博士なの?単なるアルバムの設定じゃなくて?存在意味不明のCD。(曲自体は普通のメタル崩れのビジュアル曲で別にどうと言う事もない程度というかはっきり言って色々な点で商品的魅力に欠ける出来です。)

カヒミ・カリィ

タイニー・キング・コング

マキシ 東芝 KYTHMAK029D

 一世を風靡したウィスパークイーンの平成10年に出したマキシ。今何してはるんだろう。一曲目の表題曲はいかにもクラブっぽい編曲にいかにもなウィスパーボイスが絡む。作曲者のコバと思しきアコーディオンが効果的にフィーチャーされている。お洒落でBGM向け。佳曲。二曲目は書き下ろしかカバーか知識がなくても申しわけないがモームスによる「バラが咲いた」がクラブに転んだような歌だが、こっちはちょぼちょぼ。以下、コバによる憂いを含んだ平均的な出来のアコーディオン主戦のボッサ、再びモームスによる昭和40年代的な歌謡テイストが中途半端に鼻につくが結構いけるポールモーリアあたりを狙ったようなポップスと続く。一定の水準はクリアしているが何かが足らない。まずまず。

東京牛パラダイスオーストリア

K.O.G.Aメロディー

マキシ K.O.G.A K.O.G.A.035

 気になってた人らだが、そうかK.O.G.Aか。ハードロックです。詩は下らない、曲は平板、演奏特にリズム隊がもっさり、メインボーカルに魅力なし(おまけに意味なく引っ込んでる)といいとこなし。ただし、ルックスがわからないので何とも言えないが、たまに絡んでくる女性ボーカルはこの手の曲じゃなかったら何とかなったようないい下手さがある。何故か3曲目「包丁一本」は佐竹雅昭作詩だが、せっかくのシュールな詩とテクノ的ななかなかいけてる編曲(電気グルーヴっぽい)をボーカルがぶち壊し。馬鹿野郎、俺に歌わせろ。

V.A.

エレキ・ギター・ゴールデン・ヒット・ベスト24

2LP RCA SRA9336〜37

 スパイダース、キングスロード、アストロノウツとか。ビクターの手持ちの駒を使ったやる気のない編集盤だがアストロノウツ以外はほとんどCD化されてないバンドばかりなのでありがたい。キングス・ロードはおそらく日本のスタジオミュージシャン集団だと思われるが、むちゃくちゃかっちりとした上手さがあり、その上豪いグルーヴがあったのでびっくりした。しかも哀愁ものもいける。正体が気になる。拾い物。あと、スクランブラーズも収録されているがこのスクランブラーズはどうもスペイスメンとは違うバンドのようだ。どうにもギターの突っ込みの鋭さが浅くてえらく音が違う(「十番街の殺人」は少し似ているが・・・。)。一曲プラネッツなるバンドが「霧のカレリア」をやっているがこれはあの慶応プラネッツなのかしら。音も妙に古いけど、レコードを残したなんて聞いたこともないし・・・。さらにこれでレコード音源に関してはスパはあと一曲「ブルドッグ・ツイスト」だけ。全体的に情緒のある演奏ばかりだったので非常に満足。カネボウ協賛。

スクランブラーズ

ガール・ハッピー フロリダ万才

EP ビクター SS1554

 エレキインスト。A面はプレスリー、B面はシルヴィ・バルタン。洋盤を装っているが実はスペイスメンらしい。全くライナーにグループのことが書いていないのはまあこのころのレコードでは普通だが音や選曲がいかにもスペイスメン。A面はこれがスペイスメンでなくて何かという豪快なテケテケから始まる軽快なナンバー。B面では弦こすりのサウンドエフェクトから始まるブラスやピアノも入るやや重めのナンバー。

14.7.13 机が聞いてないCDだらけ。でも、買うんだよ!血反吐吐くまで!飯食えなくても!

ザ・シロップ

ザ・シロップの世界

CD ジ・アザー TOTR002

 GS若しくは昭和40’sサウンドを標榜したバンドはネオGS以来数多に昇るが、その音を完璧に、そして超越して再現し俺を激震せしめたのはザ・ファントム・ギフトの一部の楽曲とこのザ・シロップのメンバーがバックをつけたスキャッツのアルバムだけである。そういうわけで実に2年遅れながら彼らの音を追体験。
 いわゆるGS系バンドとして捉えた場合、異色な点はフルートが入っていることで、編成的にはラブロックスを髣髴とさせる。しかしそれとは全く離れた硬派な当時のジャズ系スタジオミュージャン的なサウンドである。驚くべきことにあのスキャッツのアルバムで見せた最高にイカシたサウンドは実にこの時点で既に完成されていたのだ。眩暈するようなグルーヴをたたき出すドラムとベース、迫力満点ながら奇妙に丹精なファズギター、そして研究し尽くされたハモンド・オルガン。ただ一つ残念なのはボーカルで、気だるさという狙いは解るが、切れと張りと広がりと伸びがなく、この素晴らしい演奏の中で実力不足が目立ち、結果として激しく攻撃的なサウンドになす術もなく浮いており、完成度を下げていてとてつもなく惜しい。
 楽曲毎にみていくとどれも完成度が高く、全て合格点はクリアしているが、中でも頬擦りをしたいぐらいかっこいいファズギターがぐいぐいと引っ張る「イントロダクション」と歌謡情緒満点の天幕に覆われたような気持ちに襲われる「サイケな夢で」が特に完成度が高く素晴らしい。本当にどれも惚れ惚れとする演奏がそろっている。「愛の孤島」ではスキャッツのスキャットも聞けるがこれもボーカルが気になってしゃあない。
 しかしプラッツ近鉄の新星堂は何故あんなに昭和歌謡組に力を入れているのか。その隣で鴨川なんぞ売っている場合じゃないと思うぞ。なかなか。

羅生門

インディアン・死よりも赤を選ぶ

CD ワーナー WPC68457

 近田春夫らがいた「ことになっている」70年代前半のロックバンドのセカンド。典型的なバブルガム・サウンド。サックスなど明らかにジャズ流れのスタジオミューシャンの影が見え隠れしたりして、純粋な意味でのバンドのグルーヴはここには存在しないし、ボーカル、コーラスもそれほど上手いもんでもない。このアルバムの正体は前作とまったく同じく、ただ歌い上げる内容が憲法の条文からインデアンの悲哀に移っただけのしろものに過ぎない。それが後付解釈の中でメッセージと誤解され、肥大化したというだけのことである。クニ河内のプロジェクトで元ハーフブリードのポール湯川の自作曲があるので、GSファンは要チェック。でも普通。

V.A,

ガールグループ天国Vol.2

CD 新星堂 SPW10035

 新星堂のフラワーシリーズ。前作の「ガールグループ天国」がいい感じだったのとゴールデンハーフスペシャルの「月影のドンチュッチュッ」が収録されているのとで一応手をつけたが、既に、しかも最近CD化された曲が多く、ネタ切れっぽいと感じた。初めて聞いた曲ではアダルトポップスと色物演歌を右往左往するザ・チェリーズ「?Question」、演歌なのかお色気なのか微妙なボーカルの中道退廃歌謡ゼット「恋はイライラ」、そして微妙に下手な演奏が(ほんとにそうかは置いとくとして)自演の魂を浮かび上がらせるガールズの「LOVE JACK」が印象に残った。ほかにピーマンとか。しかし結局一番印象に残ったのが何度も聞いたキャンディーズが比較的演歌よりのボーカルをみせるグルーヴ歌謡「危ない土曜日」と元から大好きなトライアングルの「0のメルヘン」、ギャル「薔薇とピストル」だったのはなんとも。
 どうでもいいがこのシリーズは既にCD化されている作品を平気で初CD化と書くなど不誠実。こういうCDを監修する人間は業界人かマニアであるだろうに俺みたいなアイドルは門外漢な人間に指摘されるような凡ミスは止めて欲しい。

V.A.

ぺブルスVol.10

CD AIP CD5027

 60’s米国を包み込んだすっとこどっこいたちの熱い傷跡。ざらざらした録音とファズの嵐。度胸だけで演奏しているのはやはり素晴らしい。
 ブルーザーズ「バッド・ウェイ・トゥ・ゴー」は東欧民謡調のメロディーにやけくそなコーラス、死に急ぐようなビート、鳴り捲る安いギター、ぶっ壊れたボーカルと何拍子もそろった名曲。クロックワークオレンジ「ユア・ゴールデン・タッチ」はいわゆるGS曲だがむちゃくちゃな展開が聞くものを感動に陥れる。これも音がいい。スティーブ・ウォーカーとボウルド「トレイン・ケプト・ア・ローリン」はあの歌とは別だが、混沌とした典型的ビートガレージ。テディーボーイズはガレージに嵌るきっかけになったバンドだが収録された「モナー」はまずまずといったところ。タイトルがタイトルなので2ちゃんねるのテーマにどうか。キッズ「ネイチャーズ・チルドレン」は泣きのビートで俺の壷だが、ファズとサックスの二重使用が独特の雰囲気を醸し出す。
 ガレージはポップスあり、民謡あり、ロックあり、実はオーケストラ入りありと一くくりに出来ない音楽。なにしろある程度の統一性を持たせようとしているコンピでこれだから。だが、音とは別の奇妙な統一感があるのも事実で、それが魅力になっている。個人的にはガレージものはビートか歌謡情緒がないとあんまりぐっとこないな。「ルイルイ」を元にしたらしい曲が多く、その偉大さを再認識する。

CoCo

ウゴウゴ・ルーガ/モダンどうよう

マキシ キャニオン PCCG00239

 史上最も出鱈目な子供番組ウゴウゴルーガを体現していた童謡コーナーで流れていたもの。童謡のカバー4曲入り。
 反復される不気味で無機質な打ち込みビート。どんよりと暗く、どこまでも救いのないサイケデリックの悪夢の中を彷徨うが如き退廃的なことこの上ないトラック。希望のきの字もそこにはない。そして、そこに被さる場違いにあほみたいで軽く非力で元気でしかも消え入りそうなばらけたCoCoのボーカル。特に「てるてるぼうず」では日本的メロディーのもつ土着的なシャーマニズムから引き出される地獄の釜から聞こえる呪文のごとき攻撃性がCoCoにも乗移り、自殺したくなるような荒涼感を醸し出す。どれも傑作。ダウナーなテクノ系やる人は必聴事。歌詞カードも気持ち悪くてよし。いい。

ぴちょんくん

もーどーにでもしてー

マキシ ユニバーサル UMCK5068

 話題の癒し系。ムシ声を駆使したややスローテンポのボサノバ。平板といえば平板な歌ではあるが、結構アコギとピアノを中心に本格的に作られたバックトラックが効いていて日本においてボサノバに期待される感傷的なのりは充分堪能できる。演奏者に関するクレジットがまったくなく、主唱者もいったいどんな人なのかまったくわからないが、これが実に惜しいと思う反面、その企画匿名性を際立たせている一面も。それにしても実はここまで売れた本格的ボサノバ歌謡はないと思うので、日本を代表するボサノバとなったと言ってしまう。まずまず。

V.A.

世界はピーポー

マキシ コロムビア COCC15381

 テレビ東京系の子供番組「のりスタ」の関係。表題曲はパラパラ歌謡名曲中の名曲で、二年ぐらい探してた曲。やっぱり出てた。泣きの純歌謡の系譜である。情緒に勝る名曲。典型的なユーロビート的編曲で音的には発表時点で2、3年位遅れている感もあるが、虚飾を殺ぎ落としたようなわびさびを感じる簡潔明瞭っぷりがいさぎよい。もしこれがキングかエイベックスかキャニオンから出ていたら少しは好事家の話題となっていただろう。「くるまにあっく」もよく出来たヒップホップ歌謡でつくづく番組自体のマイナーぶりに泣かされた曲群である。これを聞くと流行歌系のヒップホップものがいかに工夫のないものかわかる。この暴走っぷりは初めて番組を見たとき度肝を抜かされた。ここまで実にいわゆるコロムビア色全く無し。最後はいかにも教育番組の主題歌なスカ・ロックンロール。一見いい歌だけどあまりに教条的で面白くない。オッケー。

14.7.12

浜村美智子

バナナボート

CD Pヴァイン PCD1537

 カリプソ娘のベスト盤。「バナナボート」の大ヒットで知られるが、一挙に集めて聞いてみるとあまり売れ線を狙っていないような曲が多く、あまりに小ぢんまりとしている印象を受けた。特に大ヒットを受けた追撃弾の調子が悪いのが実に惜しい。「恋しい(可愛い)スーちゃん」や北原白秋の「恋の鳥」なんぞをカバーされた日にゃリバイバルブームを差し引いても迷走という言葉しか浮かばない。しかし知ってた曲だが退廃娘の面目躍如の「監獄ロック」や気だるい「トンテンカン・ロック」などはやはり面白い。あと。

朱里エイコ

全曲集

CD ワーナー WPC68021

 「北国行きで」「白い小鳩」とご本人を差し置いて楽曲だけが最近引っ張りだこの朱里エイコのワーナー時代のベスト盤。つーか取得順が逆だろ、俺。前半はオリジナル、後半はカバーで固めてある。オリジナルは時代を反映してディスコアレンジが施してあるものが多く、そうでなくてもウーマントーンを使用したギターが唸りをあげるいわゆるグルーヴものが並ぶ。↓の人と比べるとそのボーカルの実力の程は歴然としたものがある。テクニックとしてのハスキーと結果としての擦れというものはまったく違うのだ。とにかく圧倒的なグルーヴにしびれる。70年代の橋本淳作品の割に珍しく完成している「ジェット最終便」もいい。「ディスコじょんがら節」を思わせる「Ah So」は三味線を導入したディスコチューンだが、タイトルがアメリカ人に誤解されるかも。(まあ、先帝さんで世界的に有名だったのだろうが。)ちなみに本人作詞。カバーものもヒットした「サムライ・ニッポン」をはじめいかにも東海林修な楽器の使い方が楽しいグルーヴチューンが並ぶ。よい。

14.7.7

エゴ・ラッピン

ナイト・フード

CD ユニバーサル UPCM1003

 「私立探偵濱マイク」の主題歌を聞いてバックがめちゃくちゃいいけどボーカルが無理してるな、誰だ、と思ったら・・・また、こいつらか!
 印象は前回とまったく変わらず。相変わらず演奏の情緒が素晴らしいものと、今回については別にどうでもいいものの差が激しい。その中では特にマフネカツヒロというひとのベースが壷にきた。結論を先に言うとこの人のベースプレイを聞くためだけのアルバムといっても過言ではないと思う。また、ボーカルの最終的なところでの詰めの甘さもなまじ周りの完成度が高いだけに目立つ。これは歌い上げものもウィスパーものも共通している。(ただ、ここでいう詰めの甘さというのは、例えば重要な部分の欠落に伴う根本的な詰めの甘さではなく、いわば精密が第一とされる鏡面における微小な傷というような意味なのだが。)ギターもちょっと浮いてるというか、音色がこの手の音楽の俺の趣味に合わない。やはり同系統なら大西ユカリや西田佐知子の方が全面において出来が良いし、まだ分を弁えているという意味では倉橋ヨエコの方に好感が持てる。ただし、趣味のいい音楽であることは確か。ジャズ系のバックがついた曲が続く中「5月のクローバー」は打ち込み主体の緻密さが先にたつ楽曲で異質だが、むしろこちらの方が声質に合っている。結論的には厳しいね。ママ!ミルクもいいと思ってたけど・・・。

三上寛

船頭小唄/三上寛えん歌の世界

CD コロムビア COCA15244

 異色のフォーク歌手で今俳優の三上寛(一応言っとくと、三上博史とは別人ね。)の演歌カバーアルバム。ちゃんとオケがバックをつけていることもあり、感情が剥き出しに迫ってくるのは確かだが、別に普通。どういう意図でこんなもんを作ったのか不明だが、本家に歌唱力が見劣りするところも多く技術的には旗色悪し。特に「ざんげの値打ちもない」は残念無念。捻った解釈とかも特になし。聞き手の解釈次第でどうとも言えるアルバム。

ザ・キンクス

シングルズ・コレクション

CD ビクター VICP61375

 本物に挑戦。実は本当に初めて聞きました。偉大なるリフロックの親玉。今までこの辺のビッグ・ネームまで手がまわらなったのが残念なぐらいビンと来た曲も。このランクのグループとしては珍しく猥雑さが抜け切れていないのが新鮮だった。ベタだが「ユー・リアリー・ガット・ミー」と「エンド・オブ・ザ・ディ」がなかなか気に入った。「オール・オブ・ザ・ナイト」は東京ビートルズのほうがチャチでいいな。ここでも後半に行くに従って丸くなっていって手の届かぬ音に。まずまず。

V.A.

大韓ロー・ファイ・キャバレーサウンド 決定版!!

CD Pヴァイン PCD5665

 韓国のインディー・レーベル「キャバレー」のオムニバス。ジャケのセンスとかは日本のそれにかなり近い。オーブラザーズはこの現代にこのサウンドを出せるバンドがいたことに驚き!韓国ロック独特の軍歌味もかなり薫るが肩肘を張らないサイケ以前のサックス入り60年代ビートポップスサウンドがかなりのレベルで再現されているのだ。ここをストレートに狙った日本のバンドはないのでかなり楽しめた。詩もいい!レディフィッシュのバックをつけたものも収録されているがこれもまたすばらしい出来(レディフィッシュ本体は小畑ミキっぽいけどちょぼちょぼな出来。)。オリジナルアルバム買おうかしら。ウニエ・ノウルも甘ったるいポップスで日本では絶滅した種類の音楽、かと思ったら後半に収録された曲は内省的なニューミュージックサウンドで腰砕けした。うーん。ポンパルガンはポンチャックを再現しているが、これがまた出来が良かったりする。昆虫僧侶ユンキは楽しみにしてたが凡庸なミクスチャーでがっくり。大韓インディーズの古参ココアは伝統的韓国ロックの流れだが無茶なさび等日本のインディーズとの共通性をひしひしと感じる。メリーゴーランドはつじあやのを思わせるサウンドでどうでもいい。コーラスグループらしいが全くのソロ。マイ・ロー・アウェイはノイジーなフォークだが特になし。どうでもいいが何だか一人バンドだらけだなこのレーベル。ウィッチ・ウィルは解説どおり、英国トラッドの味あるアシッドフォークグループでなかなかいい感じだ。ラストはレーべルオーナーによるノスタルジックポップで〆。韓国人はバカ音楽とかいうと本気で怒る人が多いらしいので言わないが、それが褒め言葉の一つとして受け入れられるようになったときにこの手の楽曲がどのような命運になっているか心配だ。まあまあ。

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