これ買いました平成18年12月

18.12.24 約一年ぶりに親不知を抜いたが、腫れはあるのに痛みがない…。

清水道夫 ヴィレッジ・シンガーズ

 

恋と女とむせび泣き

LP ソニー SOND66028

究極のGS、グループサウンドの貴公子のムードコーラス化したラスト・アルバム。完全転向した、と言い切ってよい出来で、音を聞いただけでは全くヴィレッジと結びつかない。オリジナルもムードコーラス色が大変に濃く、カバー曲も藤圭子やクールファイブなどの曲でグループサウンズのグの字も見当たらない過激すぎるアルバム。清水道夫の歌の上手さはここでもしみじみと感じ入られ、特に「逢わずに愛して」では咽ぶような歌い方の前川清と正面から激突するような折り目の正しいボーカルを披露しており、前川清が唯一の回答ではないことがよくわかる。ちなみにサウンド面ではボンゴが使われたりしてこれの3年ほど前のクラウンのムードコーラスグループと非常に近いものを感じる。
 とにもかくにもGSの歌物アルバムで音が揃っていないのはあとモップスの一枚だけだ。

木村好夫とそのグループ

若いサウンド(2)嵐を呼ぶエレキ・ギター

LP コロムビア ALS4135

こんな燃えるタイトルだが、「君恋し」とかのような懐メロをエレキ化したムード音楽盤です。ジャケットがかっこいい。それ以上にテケテケ多様のこれぞエレキというべき鋭いビート感覚を持った曲がずらりと揃っていてザ・スペイスメンを思わせるクールなサウンドを聞かせる。「君恋し」「緑の地平線」「雨に咲く花」「りんご追分」「宵待草」「船頭可愛や」「裏町人生」「なみだ船」「南国土佐を後にして」「並木の雨」「何日君再来」「別れの磯千鳥」と全曲名演。どれも本ネタを知らないとこういうラテン系サーフ曲があると誤解させてしまうほどの凄まじい白熱したサーフ・サウンドだ。演歌ギターと全く無縁のとんでもないパワーで押し切る演奏で、タイトルに全く誇張がない。普通はムードに流しそうな曲も全部ビートに正面からぶつけて成功しているのは恐れ入るとしか言いようがない。まさに嵐を呼ぶサウンドだ。年末に来て今年一番強烈な印象を残すアルバムになったかもしれない。これは紛れもない名盤だ。是非CD化して欲しい。100枚ぐらいしか売れないかもしれないが、サーフが好きな人には衝撃を与えるはずだ。ロックじゃないかもしれないが、これはとんでもない。それにしてもギターとベースが合わせて五人もいる・・・。

ジム・ヘンダーソン楽団

太陽の花

LP テイチク UPS1060

サックスによるムード音楽盤。バニーズ「太陽の花」(ライナーではアンディ藤本によるヒット曲と言い張っている)のほか、ブルコメ、スウィングウエスト、小畑ミキ(←何故か三曲も入っている。)らの曲をインスト化。テイチク偏重かつ妙な選曲なので多分突貫で作ったアルバムだろう。表題曲の「太陽の花」はサックスとファズが入り混じるまだらサイケとでもいうような妙な迫力があるが、あとはまあ、ポップス向けのこんなものだろうという感じのトロめの演奏で、他の名前のテイチクのスタジオ系エレキバンド(ニーショップスやサンダーズなど)と共通する特徴があり、相当人数演奏している人は同じなのではないかと思われる。

ザ・ファイブ・サンズ

9500万人のゴールデン・ベスト・ヒット〜第3集

LP ビクター SJET7874

66年ごろのコロムビアの和製ポップス陣の曲を中心とした流行歌をエレキインスト化したムード盤。有名曲ばかりだが、このグループにしてはシャープなサウンドで、フォークタッチのほのぼのとした原曲を考えるとそれ以上にビート化しておる作品も多く、ロカビリー以来の伝統の技の重みが感じられる。このバンドでテケテケ奏法が聞けるとは思わなかった。「お嫁においで」はラテンがかっていてハワイアン調の原曲とは全く異なる味になっていて興味深い。「恋のエンジェル・フィッシュ」はエレキインストでも何でもカバーされているのがそもそも珍しいが、印象的なホーンセクションが取り払われており、ラテン味が全く感じられない、スパイ音楽的なアレンジになっている。全体的には時代を反映したテケテケが派手に使われてはいるがシックで落ち着いたムードが支配しており、それなりに着実な演奏でバンドのカラーまでは変えられないと言った所か。

麻里圭子 横田年昭とリオ・アルマ

朝にサヨナラ

EP ビクター SV902

新録音CDをリリースしたりして今話題の麻里圭子。嘗てのスキャンダラスなイメージは全て計算づくでやっていたことと先ごろのイベントで告白されておったと言うことであります。

これはリオ・アルマ時代のそれほどあまり注目されていないシングルで、「コンクリート・アンド・クレイ」を思わせるパーカッションとリズムパターンに彩られたラテン歌謡。ただどうにも盛り上がるところもなく地味で目鼻立ちが余りよくない。哀愁に訴えるウエットさもコーラスの掛け合いを楽しむ様なカラッとしたところもなく、麻里のキュートさもあまり生きていない非常に惜しい作品。B面はこれが一年早いか二年遅かったら確実にフォークとして処理されていたであろうなという曲で、これをサンバアレンジで処理しているところは当時のラテン/ボサノバブームの強烈さを物語っている。一箇所だけささやきになるのは工夫だが、どうもアレンジと曲調に齟齬があるのと、麻里と基本的にキーがあっておらないようで無理のある抑揚になっているのが気になる。これはあまり注目されないのも仕方ないかもしれない。

 

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