これ買いました平成19年12月

19.12.28 俺が歌えば全部解決するわけだが。

ザ・ジャイアンツ

可愛いスーチャン 懐かしの軍歌集

LP ビクター SJV397

彼らのセカンドアルバム。何故か歌入りの軍歌集。軍歌といっても勇壮な曲ではなく、所謂反戦軍歌の系統の曲が並ぶ。おそらく彼ら自身によると思われる演奏で通していて、ファズを使用したリ彼ららしい細かいギタープレイが随所に聞けてなかなか味わい深い。ややボーカルが弛緩しているが、まあ、このバンドのボーカルとしてはこんなものだろう。サイケでもロックでもないが、ガレージであることには間違いない。一曲目の表題曲こそ多分その場で楽譜を渡されて演奏させられたんだろうなという感じのする微妙な出来だが、その後はファズとハードボイルドが合体して妙な迫力のある演奏が聞ける「ズンドコ節」とこの時代らしいブルース・ロックの影響が濃厚な「ダンチョネ節」、ビートバンドの演奏にちゃんとなっている「荒鷲の歌」、「特幹の歌」、「麦の兵隊」本当に一瞬だがバニラファッジのようなイントロからいきなり土砂崩れのように泥臭くなる「ハバロフスク小唄」とGSのボーカル&インスツルメンタルの水準をちゃんと保っている。オルガンが入っているトラックも多いが、これは編曲の近藤進によるものか。全体としては発売日が隔たっているのにもかかわらず「涙のエンゼル」の時の音に近い。似た選曲のドリフターズと比べてみるのも一興かも。楽しいアルバムだが、何故ジャイアンツがやらなければならなかったのか、建前すら立てなかったのはいさぎがよすぎるかもしれない。ビクターのGSで一番凄いのはやはり彼らなのかもしれない。

ザ・ハイウェイズ、クレイジー・ビートルズ

狂熱のエレキギター

LP エルム AL1809

多作で正体が今ひとつわからないB級エレキバンド、ザ・ハイウェイズと和製ビートルズの一つ、クレイジー・ビートルズの演奏で聴くエレキインスト名曲集。ただクレジットが雑なのでどの曲をどっちがやっているのかよくわからない。よく聞くと今までにもハイウェイズの音源として聞き馴染んだ音源も混じっており、(とはいえ、例えばサウンズ・エースとの名義のかねあいの問題はあるが。)それから判断するとA面の全ての曲とB面の大体の曲はハイウェイズの音源のようである。「クルーエルシー」は生き急ぐような妙なビート感がある上独特なアレンジがされており、和製ビートルズたるクレイジー・ビートルズの音源に相応しい音だと思われる。これと音が良く似ている「宇宙の彼方に」は確実にクレイジー・ビートルズの演奏だろうが、その後の「ゴールド・フィンガー」は何ともいえない。結局この二曲だけがクレイジー・ビートルズの音源だろう。ハイウェイズも二曲ほど聞いたことのなかった音源が聞けて満足。自分は意外にハイウェイズを評価していたりするのがわかった。

寺内タケシとバニーズ

寺内タケシとバニーズショー

17cmLP キング SAMPLE3

「レッツ・ゴー・運命」の予約特典として抽選で配られた42年7月24日池袋ドラムでのライヴ盤。のちにリリースされた「ゴールデン・コンサート」と同じく「テリーのテーマ」で始まり、「ジングルベル」と似たような感じでメンバー紹介があり、これに続きにぎやかな演奏と壮絶な井上のボーカルの他では聞いたことのないアレンジの「ダンス天国」(これは豪州産の海賊盤のGSコンピCDに収録されている。なお「悪魔のベビー」も同様。)、そしてハイテンションなMCで一気に「レッツゴーシェイク」に突入。これもライブ用に短縮されているが、日本のサーフの名曲に相応しいワイルドな演奏。ここまで火の出るような演奏で目眩がするような濃厚な6分間。B面では「ゴールデン・コンサート」の「日本古謡メドレー」とほぼ同じような感じで民謡三曲のインストを披露、最後はまた井上がテンションの高いボーカルをとり「悪魔のベビー」へ突入。合間に寺内が礼儀正しくメンバーを紹介するという、全盛期のバニーズの恐ろしいテンションの高いステージの様子がまるきり残っているという恐ろしい一枚である。なお、同封の挨拶状に今後一切この音源は再発しない旨が書かれている。Pヴァインがこれを復刻できなかったのは、このときのファンとの約束を愚直に守った赤心の現われだと思われる。しかし、埋没させるには大変に惜しい音源である。

宮西渡とザ・スナッキーズ

酒場の女

EP コロムビア PES7138

ブルコメ風自主制作GSという触れ込みだが、これをブルコメ風歌謡というのはなかなか辛いもっとコアーなムードコーラス曲。これをブルコメ歌謡と言ってしまってはちょっとブルコメが可哀想である。宮西渡は後にもムードコーラスグループの曲を作ったりしているようなので、これはインディームードコーラスとした方がよかろう。A面はトランペットとストリングス入りの侘しいラテン系ムードコーラス曲で西川ひろし辺りを連想させる。B面は詩は確かにGSらしい若さを歌い上げた曲だが寧ろ布施明の「愛の園」辺りの影響下にあるようである。いずれにしてもルーツも音も曲もルックスもその後も含めてGSとはちょっと言い難い。ムードコーラスとしては共に派手ではないが渋いところを狙ったなかなかよく出来た曲であると思われる。なお、番号からいうと昭和44年前半のリリースと推測されるという。(丸芽さまご教示ありがとうございました。)

伊達晃、寺内タケシとブルー・ジーンズ

樅の木音頭

EP キング NCS203

これも事情がさっぱりわからない作詞募集(何の?)第1位入選作に寺内が曲をつけて第二次ブルージーンズがバックをつけた民謡系音頭。新潟の新発田市の何かのイベントの記念曲だとは思われるが「樅の木は残った」は関係なさそうだしよくわからない。演奏はバンドの音だけで済ませているが手拍子やドンドコドラム、「ソーレ」などの掛け声があって音頭として真っ当であり、よくも出来ているが自主制作の域に留まるといってしまえばそれまでか。B面はエレキ民謡ものののりでA面をインスト化しており、ややテンポも速い。三味線的といわれる寺内のギターだが、ここでは琴的な音で主旋律がオーバーダビングされている。後半にはテリーシュなソロがあり寺内自作曲のインストとしてもなかなか聞き応えのある曲になっている。

19.12.23 天長節に喜び三つ。その一つ。

浅草ジンタ

スカイ・ゼロ

CD バッド・アディクション 番号なし

余りにも素晴らしいライヴを見たので思わず購入。激しいホーンアクションが前面には出ているのだが、アコーディオンと切れのいいリズム隊のせいでゾーズダーンアコーディオンズを思わせるところが多く見られる。外国仕様の盤でちょっと日本を意識しすぎるところが見受けられるが、良くも悪くもアングラらしい雰囲気が漂っておる。メロディーにはハワイアンの影響が見受けられたが、何故か。また、「美しき天然」はもともと向こうの曲なのだが、敢えて和題をローマ字表記にした意図は何なんだろう。

(社)落語芸術協会×浅草ジンタ

芸協音づくし

CD テイチク TECH20092

同上。落語芸術協会の三遊亭小遊三らがやっているラグバンドにゅうおいらんずとの兼ね合いで彼らが協会のマスコットキャラクターのテーマなどを担当した盤。桂歌丸(会長)と小遊三の曲に関する対談などを挟みながら進行していく。協会の意図がそういうものだったのかもしれないが、奔放さよりも慎重さを選んだ演奏であろうという推測は立つが、これも曲や演奏に良くも悪くもアングラな雰囲気が充満している。落語家の名前を織り込んだ「芸協賛歌」は、今後メンバーが増えたり減ったりした時はどうするのか気になる。キャラクターのテーマソングもこのバンドの個性に物凄く寄りかかった曲なので、今後このバンドの手から曲が離れた時にどうするのか物凄く気がかり。

 

19.12.22 歌謡曲の歌手もそうで、自分が歌謡曲と思っているもののコアーがあるネオ歌謡の歌手というものも一人としていない。

ヘドバとダビデ

ヘドバとダビデ

CD ヘリコン HL0294138

「ナオミの夢」で日本でも名を知られたイスラエル陸軍出身男女デュオのアルバムにシングル曲などを追加したもの。ヘブライ語で書いてあるのでさっぱり曲名がわからん。(あとで曲目表を頂いたのであります。)聴くと、「ナオミの夢」はこのグループにとって例外的な楽曲であることがわかった。初期はアコースティック・ギターをバックに東欧民謡調のイスラエルの歌謡曲らしい曲を歌っておって、まるで派手な印象は受けない。「ナオミの夢」は現地のCM用に作った曲だったが、いきなりこれがグルーヴィーな曲で、実に前から聞いていくと劇的な印象を受ける。このグルーヴィー路線は「ナオミの夢」の日本でのヒット直後の録音では貫かれているものの、その後はまたもとの地味な東欧民謡調のデュオグループに回帰していったようである。なお「ナオミの夢」は日本でのレコードではB面だったオリジナルバージョンのみが収録されているなど基本的にはイスラエル国内音源で構成されているが、日本では英語バージョンがリリースされた「幸せは夢でなく」が一部日本語で歌われており、当時の熱気となんでこれが当時日本でリリースされなかったのかという疑問を感じる。

ヘ・シックス

ゴーゴーサウンド‘71

CD ビートボール BMRC0007

大韓GS。71年発売のアルバム二枚の復刻ものだが、ファズギターが冴えるガレージ・サイケの代表的名盤と言われ、ファズギターとチープなオルガンやフルートをフィーチャーしたインストアルバムとなっている。日本のGSにはなかなか見られないクールなサイケデリックな世界を展開しており、同じ韓国の代表的なGSであるサヌリムの繰り出す音世界にも通じるものがある。キーボーイズとはちょっと系統が異なるか。タイトルに反してゴーゴーサウンドとは言い難い。「テーマ3」(スウェーデンの発売元でハングルが読めないのでこういうタイトルにしているだけだと思う。)は今のザ・シロップ辺りを髣髴とさせるがそれをやや長閑にしたようないかした長時間に及ぶニューロック的なサイケインストでこのCDの白眉。全体的にお洒落なサウンドメイクのものが多く、こちらの代表は「カミン・ホームベイビー」のカバーか。最後を飾る「イン・ア・ガダダ・ヴィダ」のみボーカルものだがこれもファズと単音オルガンが醸しだすサイケ風味が非常に素晴らしい。日本のムスタングの「ムスタングベイビー」や南米のサイケグループを髣髴とさせる。なかなか面白い。韓国のGSというのはやはり油断できない。

 ほかにイスラエルものと(ポーランド?の)クリスマスもののCDRを各一枚頂く。特色あり。前者は69年の複数のバンドによるライヴを含む音源集で日本のGSよりよほどアメリカ風ポップスで意外と言えば意外、そのままと言えばそのまま。もっとも「悲しき天使」等での蓮っ葉さなどは世界共通。選曲は日本のGSよりやや流行が遅いかもしれない。またオリジナルになると哀愁歌謡になるのも可愛らしい。後者はバンドものばかりでなくいかにもクリスマスらしい少女合唱団がボーカルをとるものがあってスタンダードの風情。

 

19.12.18 自分の憎むべきものがグループサウンズとかと言っていてちやほやされているのを見ると、自分はこんなもののために頑張ってきたのかなぁとえらく落ち込む。

タモリ

タモリ

CD ソニー MHCL1238

彼のファーストの復刻。前にCD化されたときに買えなかったのであり難や。当時の大ネタ「ハナモゲラ語」と「インチキ外国語」を大フィーチャーしており、今や幻の至芸とされているネタが触りだけとはいえ聞けるのが大変にありがたい。前半はラジオをジャミングしている設定でこれらのネタが次々に現れる。後半は武蔵と小次郎ネタを挟みながら音楽ネタが続くが、当時アフリカ音楽に傾倒していた石川晶を使って「アフリカ民俗音楽”ソバヤ“」とやっているのは出色。同じアルファから出ることになるスネークマンショーや大滝詠一の多羅尾伴内楽団と繋がるネタがあって興味深い。

タモリ

タモリ2

CD ソニー MHCL1239

彼のセカンドの復刻。同上。レコードでのA面全体を使った中州産業大学森田助教授による「音楽の変遷」は、確かにシャンソン、朝鮮民謡、C&W、ボサノバ、歌謡曲、クラシックなど17曲にもわたるそれらしい楽曲と物まねを披露しながらのテレビ教養講座のパロディ巨編だが、全て一つのフレーズを使っており、ギャグの範疇を越えて普通に音楽の捉え方の一提示になっている。タモリと編曲担当のクニ河内の音楽に対する造詣の深さから沸き起こるパロディを超えたパロディと言えようか。B面はややベタな信州へのバスツアーコントを挟みつつファーストと同じような「ハナモゲラ」ネタなどを再び披露。安定感のあるアルバムといえるか。

タモリ

ラジカル・ヒステリー・ツアー

CD ソニー MHCL1240

「タモリ3」を挟んで出した第4弾の復刻。ちなみに「タモリ3」は発売元がそういうことにしたいという気持ちはわかるが、未発表アルバムでもなんでもない。

これは楽曲間をハードボイルド調の芝居で繋いだ普通の音楽アルバム。しかし、流石に前作でのゴタゴタが響いているのか全体的に切れがなく、また、制作自体についてある程度の妥協があったことを感じさせるアルバムであり、なんとも言い難い不安感が広がる。大いなる蛇足と言わざるを得ず。

19.12.8 バタバタしておって家におれないのであります。

V.A.

男と女・昭和編 阿久悠作品集

CD キング KICX706

実は買ってないのでありますが、これも縁があるによる。既にCD化されている曲も多いが、恭、改めて言葉に注目して聞けば、梓みちよの「二日酔い」と井手せつ子、みなみらんぼうの「男と女・昭和編」が並んで収録されているけれども、これなどは酒の持つ色々な側面をそれぞれ極端な面から照射しておって、やはり言葉に精通していないと何とも出来ないものであります。コンピとしては極普通のものであります。

19.12.1 世界が違う。

スウィート・バケーション

ドゥー・ザ・バケーション

CD ボウンディー UGCA1017

東京エスムジカの人が立ち上げた新しいユニット。マイスペースで売れているとかと云々。縁あるによりて色々とまつわる話を聴くことが出来たが、詳しくはあえて書けず。

80年代のポップスの復古色が強い。グーニーズのテーマをカバーしたりしているが、選曲ばかりでなく、音が完全に80年代のテクノポップバンドのそれになっていて、頭にフライングミミバンドが浮かんだ。逆に言うとあまりにもそのまま過ぎて、これに反応する層というのは自分よりやや上ぐらいの年代の人たちに限られてしまうだろう。ヒットを狙うには、多少デフォルメしてやって、80年代テクノと今の歌謡曲を混ぜて上から下まで何をやりたいのかがわかるような翻訳のような作業がないといけないと思うが、あまりに「原液」すぎる。こういう作業は自分は妥協ではないと思うが、人によっては単なる妥協としか取らないかもしれない。日本はやはり歌謡の御国にある習い。

そういえば、世の中には非日本語話者が日本語で歌を歌うということに目がないという人もいるけれども、このボーカルの人は日本語の発音が普通すぎてその手の人には物足りないかもしれない。

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