これ買いました平成20年1月

 

20.1.21 今日も20時間ぐらい寝てしまっていけない。

三浦洸一

踊子

2CD ビクター VICL62687〜8

自分が歌謡曲に深く興味をもったきっかけになった歌手がこの人。その切っ掛けとなったカセットテープ以上のものがようやく出たので喜び勇んで購入。歌手生活55年記念盤。改めてじっくりと聞いてみると解説にもあるとおり、低音部の伸びがよく、流行歌としては非常に音域の広いものを苦にせず実直に築き上げているのは、音楽学校出の人らしい技術の裏打ちを感じる。しかし、流行歌の歌手になるために音楽学校に行ったというのはすごい経歴だと思う。一本線の入った歌唱の人であるだけに似た路線の曲が多いが、寧ろやや反則気味に入った「弁天小僧」「踊子」といった異色作が大ヒットしておって、正統派歌手に変化球を歌わせる場合のギャップの楽しさをもっと強調するべきであったのかもしれない。いやまあこの当時ビクターで一番売れていた歌手に言うのも変な話だが。その「踊子」は朝日放送のホームソングの音源が復刻されているが、これがブリッジにサビのメロディーが使われているもので、その後に収録されているレコードバージョンとどちらが良いか好みが分かれるところであろう。「異国の丘」はオリジナルを完全に凌駕する出来。ところで創唱という言い方はもう完全に定着したものなのだろうか。もう一つのカバーの傑作「月よりの使者」も入れて欲しかった。ディスク2の最後の方には比較的最近の曲が収録されているようだが、なるほどしっかりしておって、色々と話題もあって真面目に取り組んでくれる人なのだから周りがもっと色々とこの人でチャレンジしてみなければならなかったのではないか、と思われて残念。何にせよ大歌手なり、見直すべし。

V.A.

東京の夜は楽し

2CD ビクター VICL62693〜4

フランク永井、マヒナ、松尾和子らによる初CD化曲を含む東京の夜を歌う都会派歌謡集。一枚目はモノラル録音時代のもの、二枚目はステレオ録音時代のものと斬新な分け方。まあ、リリース順に並べてそうしたものだが。通して聴くと都会派歌謡の伸張というよりも、むしろどう衰退していったかが感じられるコンピになっている。昭和30年代の曲はジャズやラテンをベースにして、よく聞けば今の感覚でも「ヤバい」歌詞の曲が多く瑞々しいが、昭和40年代の声を聞くと同時に都会派らしい前衛さや瑞々しさが失われ古色の目立つものが多くなっていく。これは都会派歌謡のリスナーが高齢化・保守化し、また旧来の都会民とはまた違った層がサブカルチャーの担い手になったことから、「東京」が進歩の象徴でなくより欧米を感じられるエレキやフォーク、より青年の気持ちに近い青春歌謡などが台頭していったからだろう。だから、特に新進の部分が強調されているわけでないジャズ・ラテンをベースにした歌謡曲であるムード歌謡ともっと切実な先端性のあるこのあたりの都会派歌謡を一緒に一くくりにしてしまうのはあまりよくない。自分がマヒナをムードコーラスグループでないというのも、ムードコーラスとムード歌謡もまた違うということは一先ず置いといて、ムード歌謡的なものがない時分の都会派歌謡を支えたグループであることから出てくる論なのであります。大体が考証としてこの時代にこれらの曲を「都会派歌謡」でなく「ムード歌謡」と称せられた事というのはあるのだろうか。ムードのある楽曲とは言われていただろうが。大体英語の「ムード」は日本で言うムードの意味とは違うしな。ちなみに、だからマヒナには価値がないと言っているわけでなくて、その逆でムードコーラスという枠に閉じ込めてしまうとその価値と本質を誤るのではないか、言っておるのであります。

 

20.1.20 どうも休みの日となると20時間ぐらい寝てしまっていけない。

シャープ・ファイブ

軍歌に挑戦《同期の桜》

LP キャニオン CAL1012

軍歌・戦時歌謡の有名曲をエレキ・インスト化。挑戦というよりもこなすと言った方がよい演奏で、安定している。有名曲ばかりの中に「進軍の歌」がぽつんと妙にマイナーな選曲だが、これが最も出色。軍隊ラッパを思わせるトランペットが勇壮に全体をリードしており、これだけがこなすという感覚でない演奏になっている。この曲をやりたいがために他の十何曲をやってアルバムに仕上げたかのような印象も受ける。

井上宗孝とシャープ・ファイブ

シャープ・ファイブ ハワイアンに挑戦

LP キャニオン CAL1017

本体入手。ハワイアンをエレキ・インスト化。

井上宗孝とシャープ・ファイブ

ロシアン・フォーク

LP キャニオン C1038

本体入手。ロシア民謡をエレキ・インスト化。

シャープ・ファイブ

ロックン・ロール

LP キャニオン C1075

ロックンロールカバー集でボーカルを多めにフィーチャーした彼らのアルバムとしては珍しいもの。唯一かもしれない。自作オリジナルボーカル曲二曲を含む意欲的な一枚か。出色なのは冒頭を飾る「ジョニーBグッド」で41年ごろのシャープホークスのバックをしていた頃の勢いの有る演奏が聞ける。もともとロッカビリーの歌手であった三根を始め泥臭いながらも鋭角な歌を歌える人たちなだけに、同時期のニューロックバンドによる同趣旨のアルバムと互角の出来。オリジナル曲は頑張ってはいるが流石に曲調の違いが目立ち、やや溶け込んでおらないが努力は認める。ジャケットがサイケ調でかっこいい。

シャープ・ファイブ

サーフ・ウェイブ・ロック

LP テイチク BH1079

サーフミュージックの名曲をずらり16曲並べた営業のりのアルバムで曲間を波の音で繋いである。リードギターは三根色が強く、リズムの取り方もこのバンドらしいのでシャープ・ファイブらしい音がしているとは言えるが、キーボードの音があまりにも近代的で涙を誘う。特に冒頭を飾る「サーフィンUSA」の間奏で弾かれるアドリブのギターフレーズは三根信宏にしか出来ない弾き倒し方で印象深い。ロマンティックな楽曲でのギター音のまろやかさもこのバンドの伝統に則っている。それにしても、テイチクにもいた事があったとは知らなかった。BGM用レコードとしてはまとまっているが、シャープファイブのレコードとしては凡庸としか言いようがない。

ロイヤル・ロック・ビーツ

ゴールデン・グループ・サウンズ

LP 東芝 TP1088

ありがちな歌謡インスト・アルバムだが、全曲グループサウンド関係の曲なのは比較的珍しい。ジャケットとサウンドを売りにしたシリーズと銘打っているだけに録音にかなり金をかけているようである。鋭いビートと聞きやすいエレキも抜群にいかしておるけれども、全編に被さるスキャットが何とも印象深い。演奏自体、投げやり感がなくバイオリン奏法が入ったり妙に気合を感じる。自分の持っているこれは針飛びしているけれども、今まで聞いた「ブルー・シャトウ」のカバーの中では随一級の素晴らしい出来で、意外な拾い物。「教えておくれ」はオリジナルのカラオケをそのまま流用したか、そうでなくてもトラに同じメンバーを使っていると思われるきらびやかさがあって、豪華の一言。「ケメ子の歌」は解説ではダーツの悪口になっているがアレンジはジャイアンツのバージョンが元になっている。アレンジはオリジナルをそのまま生かしたものが多い。「レッツゴー運命」は流石に粗いがビートはこちらのほうが丁寧だ。豪華なジャケットが売りになっているが、うーん。どうでもいいが賀茂亮二による曲目解説が「スパイダースは最近ヒットがない」とか(意訳)無茶苦茶ネガティブだが物凄く当を得たもので面白い。

V.A.

懐かしのヒット・パレード

LP キャニオン C3011

シャープ・ファイブをバックにして槇みちる、パラキン、鹿内孝、ほりまさゆき、フランツ・フリーデルがカバーポップスやロカビリーを吹き込み直した盤。ロックンロール・リバイバルの流行に乗ろうとした一枚だろう。バックをシャープ・ファイブがつけているとはいえ、サックスやフルートがリードを取ったりしてエレキエレキした印象はない。「GIブルース」にファズが使われている以外は70年代のバンドの音そのまま。そのこともあるのか歌手と曲との配慮もなされているが、70年代に作成された企画物の枠に留まる。大体男声は英語で、女声は日本語で歌われている。ただ、初めからシャープ・ファイブがバックを務めているということについて過剰な期待をせずにそういうものだと思って聞けば、それなりのクウォリティーを持ってよく奮闘した一枚ともいえるか。とりわけ「悲しき足あと」などはパラキンの小気味いいコーラスなどもあってポップに仕上がっておって出来も良い。全体的には手堅いという印象。

井上宗孝とシャープ・ファイヴ

網走子守唄

EP コロムビア P25

本体入手。コロムビアでの演歌路線第二弾。B面はシャープらしい泥臭い歌謡曲で両面とも心地好い。

三上ツカサとハミング・バーズ

恋のティー・フォー・ツー

EP キング TOP719

このバンドは、有名な太田幸雄とハミング・バーズとは別のグループで、元ブルーファイヤの野島らがいたコーラスグループ。そのデビュー曲。このころキングが押していたソフトコーラス路線の一環でデビューしたものか。蓋し西千曲のバックをつけているのもこのグループか。A面は水森英夫の「たった二年と二ヶ月で」やハニーシークレッツの「どうしたの」を思わせるパープルシャドウズっぽいハネるリズムを使ったしっとりした歌謡ポップス。思った以上にしっかりとしたボーカルが物語を紡ぐ。コーラスもファルセットがよく効いていて非常に綺麗である。B面はチェンバロとギターの掛け合いの間にハニーナイツがフォーセインツの曲を唄っているような感じで、コーラスには「天才バカボンのパパなのだ」を思わせる部分もある。この曲が示すようなGSなのかフォークなのかムードコーラスなのかジャズコーラスなのかよくわからないニュートラルと言うか中途半端な立ち位置のバンドだったのであろう。

ローズ・アンド・ビーズ

憎い雨

EP コロムビア D75

大映のムードコーラスグループ。もともとは女性ばかりのバンドだったが、この頃には女性はスティールギターでリーダーの柴田だけになっている。43年初めに改編したように紹介されている。ジャケットを見ると「幻の名盤百科全書」でこのバンドに付けられたコメントの意味がわかった。シャデラックスの人に似てる。大仰なキャバレーサウンドと言ってよい編曲で、しっかりとした男声ボーカルに非常によく均整の取れたコーラスが咽びつく、じとじととしたブルース歌謡。B面はロス・プリモスの「新潟ブルース」を思わせるスティールのソロのイントロで始まりサックスが咽び泣くジャズ系ブルース歌謡。こちらも非常に均整の取れたコーラスが素晴らしい。B面は「恋の雨女」ってタイトルが凄い。

堤こういちとナイト・エコーズ

夜と蝶

EP クラウン PW92

A面はCD化されている。彼らの唯一のレコード。ジャケットがやる気があるのかないのかよくわからないサイケ。B面は同時期にクラウンでヒットを叩き出したサムソナイツの「港町ホテル」を思わせるサザンソウル要素の高い曲で、おそらく似たようなメンバーのトラを使っているものと思われる。A面よりも格段に出来が良い。

 

20.1.5 明けましておめでとうございます。買い初めであります。

楠トシエ

楠トシエ大全

2CD キング KICS1349/50

元祖コマソンの女王、「ビンちゃん」の残したCMソングとその他一般的な楽曲を取り纏めた画期的なベスト。一枚目は大滝詠一にも評価され名盤の誉れ高い「みんなが知ってるコマーシャルソング集」をそのまま復刻し、前後をその他のCMソングでサンドウィッチしたもの。その大滝らのライナーがついたカードの内容が濃密だが、これによれば、「みんなが・・・」のジャケットデザインは楠自身が手掛けたという。この才能には頭が下がる。再掲にはなるが、本人のインタビュー記事などもあり、まことに充実したものでこれだけでも価値あり。一枚目のハイライトは冒頭の黄桜の「かっぱの唄」か。これは緩急や曲の表情の付け方が出色。この唄が最後まで生き残った理由もそこにあるだろう。二枚目はシングルを含めたそれ以外の音源を取り纏めたもの。「すうじのうた」などは誰でも聞いたことがあるのではないか。コロンコロンと陽気に転げまわる声がまことに微笑ましくある種の安堵感を与えてくれるのだが、一方でこれは楽譜をみてその場で歌えるという基礎素養と、自分の方を見てもくれない客の前で行なったステージでの度胸に由来しておるのであって、単純に感性がどうのこうのということに由来するのではないことに注意が必要か。榎本健一や田谷力三といった大物を向こうに回した音源(過去にCD化されているものもある。)でも全く引けを取らないが、これも大物と似たような経歴を踏んでいるからこその壮挙であろう。NHK専属という箍がはめられておったが、これがなく最初から流行歌主としてヒットを狙える立場であったらどのように展開されていたのか、想像せずにはいられない。「おーい体操だい」は、オリジナルレコードとタイトルが違うが、音源は一緒で本来のタイトルに戻したもの。

楠トシエ

ビンちゃんの四季

CD コロムビア JXCP1028

昭和33年度芸術祭賞を受賞したコンセプトアルバムの復刻。朝日放送のホームソングなどで構成されており、戦前の国民歌謡、戦後のラジオ歌謡の系統の曲が多く、いわば芸術祭賞を狙った内容であって、オビには「Jポップ芸術祭賞に輝く!」などという煽り文句があるけれども、これはちょっとミスリードをさせるコピーではないか。もっとも日本ウェストミンスターなどというマイナーレーベルから出した一応ポピュラー歌手のアルバムが芸術祭賞に輝いたというのは快挙であるけれども、楠トシエを普通の流行歌手と並べるのも何か違う気がする。

天地総子

天地総子大全

CD ウルトラヴァイヴ CDSOL1187

この人もCMの女王で、一般シングルやアニメ主題歌等こそ収録されていないがコマソンや取り上げられにくい番組主題歌などを取り纏めたもの。とにかく器用で七色の声色と言われた少年ぽいものから女性的なものまでさまざまな表情をつける声色と哀愁を含む技巧的なものからコミカルなものまでとにかく上手い歌唱法が強烈で、舞台で徹底的に鍛え上げられた臨機応変力が爆発している。次から次へと急展開する曲では特にそれが利いており、とめどなく溢れる歌声という形容がぴったり。「全国こども電話相談室テーマソング」「アート引越しセンター」「八木山ベニーランド」等やはり残るものにはそれなりの理由があるもの、と納得できる。横森良造作曲(演奏も)の曲が3曲収録されているが、これらは時代を反映した立派な歌謡曲で、こちらの方面が前面に出ても成功したのであろうか、などと夢想。ライナーでは桜井順のコメントに冷戦構造と文化人の共通言語(以上のものでない)としての左翼思想というものに思いを馳せてしまった。所詮ファッションに過ぎぬ。

マモル・マヌー

長い髪の少女 ソロ・コレクション 1970〜1974

CD ヤマト YRCL6003

元ゴールデンカップスのドラムス、マモル・マヌーが別名義で出したものを含め主に70年代前半にソロとして残した作品を取りまとめたもの。ほぼ初CD化なのがいろいろと感慨深い。歌手の軌跡を尋ねれば、ソロになりたての頃は音程が不安定だが次第に堂に入った歌唱になっていくのが手に取るようにわかる。シャンソン、ベンチャーズ歌謡、筒美京平作品、カップス時代の作品のセルフ・カバーとジャンルは多岐に及び、とりわけ「もう一度人生を」はオリジナルを完全に凌駕しておって曲のよさを再認識したりしたが、歌謡曲としてみると全体的にややドライでハードに過ぎるものが多く、この辺りが商業的にあまり成功しなかった所以だろう。声質としては硬さが残るけれども、このせいで明るいポップスものの方が緊張感があっていい結果になっているので、その路線を追求した方がよかったのかもしれない。

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