これ買いました平成20年4月

 

20.4.15 違った来週からだった。

沢田駿吾=村岡健グループ

ヒット・アンド・ヒット・イン・ボサノバ

CD コロムビア COCP34684

腕ききミュージシャンによるGS時代リアルタイムの歌謡曲ボサノバ歌謡集。沢田駿吾のギターと村岡健のアルトサックスがフィーチャーされているがドラムがキーを握っている曲もあり、またソフトロックがニューリズムの取り扱いをされていたことが偲ばせる曲などもあるなどボサノバと一言で括れぬ状況を呈している。復刻者の意図はともかく、こういうものの楽しみは如何に意表をついたアレンジが施されているかが楽しみだが、突拍子もないものはなく、かなりスマートにまとまっている。あえて言えば全くハワイアンの風味を払拭した「天使の誘惑」が耳目を集めたが、さてさて他にも当時流行の洋楽のリフを持ってきたりと遊びが随所に見える。「悲しくってやりきれない」は別のレコードでもこの演奏を聞いたことがあるような気がするがどこで聞いたのやら思い出せない。

ミルト・ロジャース

七色のしあわせ〜ゴールデン・ピアノ・タッチ〜

CD コロムビア COCP34688

ビリーヴォーン楽団のピアニストのミルト・ロジャースが44年にリアルタイムで歌謡曲をカバーしたアルバム。丁寧に作られたアルバムで日本の匿名スタジオミュージシャン楽団にありがちなやっつけ加減がない。いうなれば優しく下から両手で支えられているような感覚を覚える。また、外国人の手によるアルバムでありながら、いや、却ってそうであるからこそ日本の曲であるからということではないその曲本来の持つメロディーの魅力に対する真摯な態度が清清しい。強烈さではなく寝がけにそのやさしさを楽しむ類のアルバムで、素敵な小さな宝石箱の趣。その中では「帰り道は遠かった」だけが強いビート感を打ち出していて倭的な泥臭さをファンキーに捉えたるか。また最後を飾る「涙の季節」の二番に入ったところのピアノの崩し方が、それまでの慎重に慎重を重ねてきた「安定感」のようなものを見事に逆手に取った一本取られたというしかない意表をついたものでまるで奇襲にあったような錯覚を覚え印象的。選曲が謎といえば謎ではあるが、流麗で、却って同時代の日本の沢田駿吾らのアレンジの洗練され具合に気付ける。

ジュヌ・エトワール

ニュー・ヤング・コーラス

CD コロムビア COCP34690

知っている人は知っているが知らない人は知らない名グループのアルバム。もともと将来を嘱望されていた国立音大生やシャンソン歌手などが集められているだけに流麗。コーラスは全編に被さるのではなく多くは楽器の一パートのように使われているが灰汁がなくあくまでも開明的。選曲は当時の洋楽ポップスのヒット曲を核にシャンソン、クラシック曲、日本古楽までやっているが自分たちのテリトリーに取り込んでいる。既に有名な「バイエル91番」がもっとも出来がよく、これに匹敵するようなものはないがよくまとまっていて耳障りがよい。本来BGM用に作られたアルバムだろうからその限りでは宜しく過不足ない出来といえるか。

三波春夫

ルパン三世を唄う

CD テイチク TECE18755

昔からその存在だけは知られていた三波春夫が吹き込んだ映画ルパン三世用の楽曲群だが、これは既に世に流布している「ルパン音頭」「銭形マーチ」と蔵出し二曲と各曲のカラオケをつけた半マキシ。もっと大量にあると言われていたので、もしかしたらもっとあるのかもしれないが、とりあえず目出度い。「ルパン音頭」と「銭形マーチ」は大野雄二が作編曲をしているが、未発表曲の2曲は中山大三郎が作詞作曲しており、この辺りが実際に映画に使われたか使われなかったかの線引きになったのかとも思うがセッションが同じ人なのか音のセンスがよく、いかにもルパン三世の映画の音楽らしいものに仕上がっている。ただし、曲としては平凡であり、「チャイナドレスの不二子」は曲のメロウさと三波春夫の切符のよさが上手く調和しておらない。

 

20.4.12 本当に再来週から二週間ほどいなくなるのであります。

榎本健一

唄うエノケン大全集〜蘇る戦前録音編〜

2CD ユニヴァーサル UICZ4080/1

歌謡曲の戦前の音源の価値を東海林太郎と上原敏を除き全く認めないポリドールがビクターグループに移ってようやく出されたベスト。生誕100年記念だが本来なら20年ぐらい前に出ていて当然の内容ともいえる。ようやくものがわかる会社に管理されることになってめでたい、待望の一枚。榎本健一は全盛期の戦前の録音は意外に少ないが、それでも全部とは行かなかったのは残念。しかし待望の一枚であることには変わりない。ジャズ・ソングをコミックソングとしてカバーするパターンが多いが、後半には戦前ポリドールの二枚看板・上原敏と東海林太郎のヒット曲をコミックソングとしてカバーするなど、先端的な歌手にありがちなパターンが踏襲されているのがわかる。同じ劇団で看板を張り合った二村定一大先生との共演である「民謡六大学」が収録されているが、これを聴くと全国の津々浦々にまで爆発的なブームを巻き起こした二村節と都会においてのみ受けたが現在もなお評価され続けるエノケン節のそれぞれの「受け」のポイントの違いがわかって面白い。自分は圧倒的に前者が好きなのだが、後から聞く人には断然後者だろう。これはGSのサニーファイブとダイナマイツの関係に似る。

ずうとるび

ベストアルバム

2CD ジェネオン GNCL1286

弱小エレックレコードの最大の功績者、コミカルなアイドルバンドのベスト。ボーカルの山田隆夫を中心とした意外な音楽性の高さも魅力だが、山田の作品と佐瀬寿一を中心とした職業作家の曲がバランスよく収録されている。アイドルであり、お笑い出身であり、かつ自作能力も高く演奏もこなすロックバンドでしかも他の一癖も二癖もある歌手を抱えるエレックという会社自体を双肩に担っているという特殊すぎる立場がその多面的な曲群に反映されていたのがよくわかる。この多彩な面を一つにぶち込んでショーをやっていたのだから、その破天荒さはそこらの前衛アングラバンドなぞ足元にも及ばない狂った磁場が流れているのが偲ばれる。聞き所は二枚目冒頭の有名外国曲を下敷きとしたアレンジが施された曲三連発か。他にも途中で長いブレイクがあるがグルーヴィーな「寿限無」もなかなか面白い。

ザ・ピーナッツ

シングス・アレンジャー・宮川泰

2CD キング KICS1359〜60

未発表曲、初CD化曲各一曲を含む、宮川泰が編曲したザ・ピーナッツの曲を集めた企画ものアルバム。わざと外国曲のカバーだけを集めており初期から引退ライヴまでの幅広い音源を集める。特に初期の編曲はゴム毬のような弾力性溢れる張りがあるアレンジになっており、ピーナッツの抜き差し自在なボーカルも含め魅力的。発表年が下るにつれ次第にバックがオーケストラやビックバンドからロックコンボへ移っていき、弾力性よりも鋭さが富んでくるが、それでもピーナッツの次第に円熟していくボーカルもあり魅力は衰えない。気になったがメドレーの「ダンス天国」で被さるコーラスがタイガースっぽい。レコード会社は違うが同じ事務所だし特別な位置づけのアルバムに収録されていた曲なのでありえないこともないと思うが、どうか。

電気グルーヴ

J−POP

CD+DVD キューン KSCL1228〜9

気になる人達ではあるが、たまたま店頭でかかっていたPVの出来が尋常でなくいい出来であったため感動して買ってしまった。石野卓球と言う人はまことに道理がついている曲を組み立てる。思いもつかぬところをついてくる驚きと言うものが彼らの音楽には溢れており、それが十年以上続いておってまことに物尽きない。これはいま売れている人の中では余人がない。曲は例による。自分はこの手の音楽はベンチャーズの後裔だと思っているが、これは人に言っても容易に納得されないだろうし自分も納得させる気がないので詳しくは書かない。タイトルが皮肉になっているようにこれを歌謡というには苦しいけれども曲は情があって大変に宜しい。このような曲が一定程度に溢れることがまことに望まれるのである。DVDはしかし実に昭和50〜60年代のアイドルとか妖怪漫画(水木しげるだけでなくてつのだじろうとかも入っている)に対する皮肉が利いていて改めて出来のよさに感嘆。特に「モノノケダンス」のオチは全部の合点がいく驚天動地のもの。

まりもみ

星になる!/ランランラン/シアワセのカケラ

マキシ+DVD キャニオン PCCA02475

日記の方にちらっと書いたがこの人たちは雰囲気が宜しい。いつ化けてもおかしくない(ガールグループについては甘いので聞き流すこと。)。曲の出来は可もなく不可もなくだが、上に書いたとおり映像の一部の雰囲気が大変に宜しい。ただし冒頭曲はやりようによっては非常に魅力的になると思うので、円熟してから再度やればまた宜しかるべし。

V.A.

阿久ちゃんねる

CD コロムビア COCP34858

阿久悠の残したCMソングやテレビ番組主題歌を集めたコンピ。殆どCD化されている曲ばかりで、これ、という目玉はないがピンポンパン体操が三種並べて聞けるのはありがたい。この手の曲でも手抜かりなしで特に「ウルトラマンレオ」のノストラダムスブームを背景にした世紀末感溢れる歌詞は何度聞いても素晴らしい。個人的にはノンストップのオリジナル版「ワイルドセブン」が手に入ったのが吉だが、小林亜星やボブ佐久間らの素晴らしい作・編曲に改めて唸らされる。こういう企画ならば、別の会社ではあるが傑作「星の王子さま プチ・プランス」を入れて欲しかった。

O.S.T

ハレンチ学園実写・劇場版オリジナル・サウンドトラック

CD キング NECA30222

DVDボックスの発売と関連して出せるか、「ハレンチ学園」シリーズのオリジナル・サウンドトラック。主題歌等も収録している。山本直純、鏑木創の手によるものだが、当時のジャズロックの系統を引いたチューンが多く、想像以上にグルーヴィーなチューンもあり、当時の最新のサウンドよりはやや(半年とか二年とかだが)遅れているようにも聞こえるが総じて映画の格よりも上の曲になっている。それがいいことなのか悪いことなのかは知らない。月亭可朝の「嘆きのボイン」がフィーチャーされているほか実は児島美ゆきがリードボーカルをとるものを含むハレンチ学園コーラス部とモラルマイナス1の楽曲もまとまって聴けるが、昔からこのモラルマイナス1という人たちはどういう人たちなのか気になってしょうがない。リードの人の歌い方に味があってムードコーラスに通じるものがあるが、専門の歌手でないか或いはシンガーソングライターではないかと思われるが少なくともこのCDだけを眺めていても何も書かれておらないのである。

(追記)つらつらと考えておったが、ワカとヒロのワカ、若小内悦郎ではなかろうかとの結論に至った。理由は山本正之に声質や歌い方が良く似ておって、そういった歌手でドラマの主題歌などに比較的自由に歌の吹込みが出来そうな歌手は若小内悦郎が最も有力であり、かつ彼が当時モラルマイナスワンと同じ東芝所属であったからである。

 

20.4.9 CDR7枚を頂く。こういうページをやっていてよかった。珍品珍品。真に有難いことです。

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