これ買いました平成20年6月

 

20.6.29 久しぶりにぶらっと入った店でぶらっと買ったという正しい形で買った。

森山加代子

加代ちゃんのヒット・キット・パレード

2CD 東芝 TOCT6903・04

東芝、カバーポップス時代の森山加代子のベスト盤。パラキンやシックス・ジョーズをバックにしたナンバーもあり。初期にコーラスとしてローヤル・ガーズというコーラスをつけているが、このグループはロイヤル・ナイツと同じ人たちなのだろうか。上手いのだが、判で押したような歌唱も多く、一つの方向にしか歌唱が広がっておらないように見受けられる。段々失速して行ったことやコロムビア移籍直後に何故当ったのかの理由もつまるところそこにあるのだろう。ティーンのポップス歌手でどちらかといえばおっとりとしたイメージがあったとはいえ、悲劇的なバラードやパワーで押し切るような歌も歌っておればもう少し曲ごとの表情もつきもう少し底が上がるようなこともあったかもしれない。最後を飾る「月へ帰ろう」は「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」の日本語カバー。GSが出てくるまであと3年ほどあるのにここでとりあえず一区切りが付いてしまったのは惜しいというしかない。

さて、あとこのシリーズで手元にないのはパラキンだけだ。

ハーパース・ビザール

エニシング・ゴーズ

CD ワーナー WPCP4702

昭和43年に出た、「チャタヌガ・チューチュー」などを含む彼らのセカンド。華麗なコーラスで知られ今日本で言うソフトロックの源流に当る人たちであるだけに、ここでも荘厳な雰囲気が横溢する。一方演奏には「生」の雰囲気がなく、この点でもソフトロックの魁をなすグループであることが示されている。曲の繋ぎにはSP時代の音源と思しきスクラッチ入りの古い音源が使われており、スパイダースの「明治百年、すぱいだーす七年」へ応用されたものの原型の一つであろう。

坂本スミ子

定番ベスト

CD テイチク TECE1030

この人のはマニアックな選曲のCDしか持っておらず、ベタなベストはカセットでしか持っていなかったので買い足し。前半はオリジナルヒットで古川益雄・加藤ヒロシ作品が4曲、他に利根常昭作品が2曲。真ん中はラテンもののカバー、最後にはポップスのカバーが少し入っている。ややゴツゴツしたところはあるけれどもラテン歌手としては非常に正統的な人なので安心して聞ける。編曲も綺麗なボサノバになっていたりしてBGMにも使えそうな感じ。「それもそうだわネ」は阿波踊りを下敷きにした妙なテンションの曲。「フォー・ミー」の編曲(北野タダオ)が素晴らしい。全体としては凡也。何故最近編曲のことを厚く書くかと言えば、余り世の中で編曲の価値を認めておらないような事象を悉く痛感させられたからであります。

20.6.25 良かったような気がする。

アストロノウツ

真夏のリズム〜サーフィン!!

CD BMG BVCM35377

この一連は、昔一度CD化されているのだが、その時分には手が出なかったので大変にあり難い。日本で怒涛の大ブームを巻き起こした内陸サーフバンドのファーストアルバムで、本国での唯一のヒット「サーフィンNo.1」やのちに大滝詠一によって仏教の輪廻転生思想を表していると(冗談で)称えられた世紀の名曲「太陽の彼方に」を収録している。ボーカル曲も含むが、基本的にはサーフをなぞったらこういうものが出来上がります、というのを上手い塩梅で示している。ドラムが意外に鋭いせいか、同じく擬似サーフバンドの気があるヴィレッジ・シンガーズを彷彿とさせ、ボーカルも寧ろこちらが本職とばかりに非常に壷をついたものを持って情熱的に歌い倒しており、彼らの深い所でルーツ音楽としてロックを持っている様子が伝わってきて素晴らしい。ビートルズ旋風が漂い始めた米国西海岸の空気がパックされている。解説が懇切丁寧で、以前の「太陽の彼方に」でははっきりしておらなかったこのバンドのロック史での位置づけやサウンドメイクの方針について、やや贔屓の引き倒しの感もなくはないが、妥当と思われる見解が示されており、卓見と思われる。要するにサーフと高校生バンドというお題を使った高度な職業ミュージシャンによるワークがこのバンドの肝だったのだ。

アストロノウツ

若さで行こう!

CD BMG BVCM35378

同、地元デンバーでのライヴアルバム。ロックンロールナンバーなどが多く、彼らが別にサーフインストバンドでもなんでもない迫力のあるロックンロールバンドであることが如実に現れたる一枚。特にドラムのリズムの取り方が自分には心地いい。サーフの曲は一曲もなく、出てくる音はビートバンドのそれである。しかも音は高校生バンドとは思えぬプロフェッショナルなもので、所謂ガレージバンドとは異なる、当時の「まともな」音をしている。だが、逆に言えばそのようなサウンドであったから当時の本国では受けず、日本では非常に歪んだ形で伝えられ、またそのまともさ故に一応日本では成功を収められたのであろう。小さめな会場で行なわれたのであろう、人数と反比例する反応が妙な臨場感を醸しだす。このバンドが別に色物でなくちゃんとブルースやプレスリーなどを踏まえアメリカのロックの歴史の中から出てきたバンドであることが痛感させられる。日本でのアストロノウツしかイメージにないと、ショックを受けるかもしれないビートの名盤。

アストロノウツ

ホット・ロッド!!

CD BMG BVCM35379

これもインストばかりでない、ボーカル入り曲を多く含むものでホッド・ロッドをお題にしたサードアルバム。シングルヒットこそないが、アルバムでは本国でもヒットを連発し矢継ぎ早にアルバムをリリースしていた、いわば最も乗っていた時期の作品だけにテンションが高い。インストものは既に御馴染みのものが多いが、ボーカルものも堂に入っている。ホットロッドといってもギター偏重に陥らず、却ってバンドの演奏にサックスを加えるなどプラスアルファの演奏者の影がちらつくのが独特の雰囲気に結びついている。やはりここでもアマチュアリズムとは遠く離れた良く計算されたポップ・ビート・サウンドの世界が繰り広げられている。このバンドはフェンダーのギターに結び付けられることが多いけれども、一気に通して聞いてみるとキーになっているのは寧ろドラムのビート感であり、コーラス主体の歌唱能力もかなり見るべきものがあることがわかり、回りのお膳立てがギターサウンドなどの要素であったということが痛感させられる。つくづくここまで実際に残したものと世間で残っていることが全く違うバンドというのもないだろう。のちの来日時の落胆が大きかったのもこの作られた部分と実物との差が大きかったからだろう。

アストロノウツ

アストロノウツだ!!若さだ!!ビートだ!!

CD BMG BVCM35380

メンバー自作の色が強いアルバムで、ここでもプロフェッショナルなサウンドによるポップナンバーが並ぶ。微塵もアマチュア臭さがない。中に「ユー・ゴッタ・レット・ミー・ゴー」のような哀愁ナンバーや続く「オールモスト・グロウン」のようなのりのいいナンバーもあるけれども、その全てはかっきりとした意図の下に組み立てられており、同時期のガレージバンドや翌年辺りからのサイケバンドのもつ闇雲さや根性だけでやっている気合のりのようなものは縁遠い。一方ポップスの鬼に徹しているかというと、そこがなかなかそこまで思いつめられなかったのだろう、所謂A級のつくりには、今一歩、もどかしくも届いておらない。良けれども、隔靴掻痒。よく考えればトラを自分たちでやらないというのはGSにも通じる。あちらはモンキーズを直接の起源にしておったのかもしれないが、無意識的なところではこのバンドのことが頭のどこかにあったのではないか。マイナーチューンなのに最後だけメジャーコードを弾いて終わるような曲があったりする。とりわけ「ゴーゴーゴー」はスパイダースを思わせるところがあるが、いや、これはビートルズの受容が明らかに前提にあるのだろう。正にアメリカのバンド、アメリカのポップス界におけるブリティッシュ・インベンションに対する一つの回答と言えるか。

アストロノウツ

イン・ジャパン

CD BMG BVCM35381

日本での大爆発に応えて来日を果たした彼らの文京公会堂での公演を収録したもの。史実ではこの来日公演ですっかり評判を落として人気にいきなり止めが刺されてしまうのだが・・・。聞くとまず日本の観客が期待したであろうインストものの出来が非常に悪い。冒頭を飾る「サーフパーティー」ではリードギターが変なフレーズを弾いたり、後のほうで出てくる「ホット・ドッキン」でもスタジオ録音盤で聞けるような煽りまくるベースが全く冴えていない。一方やや物足りなくはあるにしてもボーカルものはそれなりに健闘している。ただ、何とも燃えない。まず、ビートが今ひとつ甘い。もうこれで致命的なような気もするが、さらに選曲もこれでよかったのだろうか。ビートルズとレパートリーが被るが、当時の日本人にR&Bをやっても食いつきが悪かっただろうし、何と言ってもビートルズの方がこの手の曲は一枚も二枚も上手である。メンバーが不慣れであったこともあるかもしれないが、結局彼らは日本において客が求めていることを把握し切れなかったのではないか。これに若さから出た傍若無人ぶりが加わり、ものを奉ることが出来なかったとしか言いようがない。ああ、なんたる不運!もしこの時に分かっている日米のスタッフが付いていたなら少なくとも日本においてはまだもう少し生きながらえていたかもしれないし、ビートルズを見据えてGS陣の鑑となれたかもしれない。歴史というのはなんとも残酷である。

 

20.6.24 明日は健康診断なので早く寝るよ。

ナポレオン14世

狂ったナポレオン、ヒヒ、ハハ・・・

CD イーストウエスト AMCY969

世紀の奇曲「狂ったナポレオン、ヒヒ、ハハ・・・」を中心としたファーストアルバムにセカンドアルバムの曲などを追加した全曲集。あれが世紀の一発だったことが判る。古いCD也。

いとのりかずこ

小説女の旅路

CD キング KICS8168

元ピンキーチックスのボーカルの人がソロになってから出したコンセプトアルバムの復刻。こういうものまでCDで出るのはすごい。ちあき哲也による小説が付いており、これに沿った楽曲が歌われるというコンセプトアルバムではあるのだが、シングル曲+ヒット曲のカバーということで普通に聞けば普通の選曲。この時代の不幸な女性の表す楽曲といえば西田佐智子を置いて他になく、このほかカンツォーネやシャンソンのカバーが多い。いとのりかずこはこの時代にありがちといっては、そうなのだが、素晴らしい伸びを見せる歌声が人間の暗部を抉るようで、とりわけオリジナル曲での演劇的な搾り出し方が真に迫っている。小説の方は陳腐であるけれども、各楽曲の理由付けには一応なっており薬味的に効いている。アレンジなどは、そのままといったところ。それにしても、キングアーカイブシリーズの今後に期待。

20.6.22 昨日のテレビは、要するに歌謡曲「オタク」というものがいかにテレビで放映しても差し障りのない人間がいないかということを、如実に表したものだろう。恥を曝さなくて良かった。

寺内タケシとブルージーンズ

続エレキ一本演歌で勝負!

LP キング SKD43

演歌というが戦前、戦後辺りの所謂「懐メロ」をエレキ・インスト化したアルバム。B面の選曲がいかにもキングレコードのお家事情。岡晴夫の「東京の花売娘」や「憧れのハワイ航路」ではスチールギター風のギター使いをしているのが面白く、前者はこのように聞かせられるとなるほどハワイアンに通じる。後者は間奏に「アロハオエ」を導入するのがベタでよい。ベタというものは実に大事なことであって、正統的なものが滅べば異端的なものもまたその意義を失うのであります。第二次ブルージーンズらしい荒々しさも残るが所謂テリーシュなギターは「祇園小唄」で聴けるのみ。だがこれが凄絶。ほかに「雨に咲く花」がこれに類するか。シャープファイブ的な琴を意識したプレイが聴ける一方、原曲で三味線が使われている「野崎小唄」では案外あっさりとしたプレイで、やや期待はずれ。これを含めて全体的にはやや淡白なプレイが目立つ。

寺内タケシとブルージーンズ

明日へ行く汽車

LP キング SKD66

彼らのキャリアの中では極めて珍しい、ボーカルものばかりを集めた第三次ブルージーンズ初期のアルバム。アコーディオンの名手横森良三が作曲している二曲はベースがブンブン唸りまくるアレンジがぶっ飛んでいるが、メロディーが淡白で曲としてはつめられておらないのが惜しい。「太陽の誘惑」を思わせる。表題曲はかなり好きな歌だが、これもやや淡白。全般的に淡白なメロディーとセンスが良いとは言えない詩で、ボーカル入りのアルバムということを差し引いても、これが寺内ファンの間で余り良くは言われないのも納得。歌というものはやはり時代ということが大きくものを言うようで、このアルバムは時宣を得られておらないのである。「ユニヴァース」が以前「寺内タケシの真実」でCD化されているが、このアルバムを聴く限りでははかなり出来が良い方とは言えるもののそれはこのアルバムに限ってということであって、他のアルバムやシングルにはもっといい曲など無数にある。この曲の出来がもっとも良いところにこのアルバムの物足りなさが表れている。

ジンとガイ

モトマチ

EP ビクター SV2363

昭和48年当時、調布アメリカンハイスクールに在校しておったという白人姉妹ユニット。ベイビーツの「愛のモトマチ」の歌詞替えカバー。なお日本語詞。本名と芸名が全く結びつかないので、ユニット名は外人から取ったるものならん。童謡風のアルペジオを導入するなど妙に日本趣味を強調したアレンジだが、どうもしっくりと言っておらぬ。余り上手くメロディに歌詞が乗っているように聞こえないが、これは詩の方に原因がありそう。三枝伸作品はもっとファンキーなアレンジのほうが栄える。両面作戦が裏目に出たか。B面はピアノが軽快に飛び歩きブンブンベースが走り回るえらくファンキーなアレンジの純歌謡、のはずがホーンセクションやウーマントーンが控えめで全般的には地味に聞こえてしまうのが残念。声質からするともっとフォークっぽい曲の方があっていたかもしれない。発音は綺麗である。こちらも三枝伸作品である。

山内賢・鍵山珠理

ヤングエコー

EP 東芝 4RS150

有名盤。作詩曲・鈴木邦彦によるトランシーバーのCMソング。「アロハオエ」風のスチール風ギターで導入され、同時期の「天使の誘惑」と同じ路線上にある曲。所謂キューティーポップスとして情緒満点。多分アイドルズの「夕陽よ燃えろ」はこういうものにしたかったんだろうなあとしみじみと偲ぶ。やや軽くあっさりとした曲ではあるが、CMソングに当時そんなに灰汁が求められていたとも思えないから、その意味では良く出来ている。自主制作盤でプレゼント盤と聞く。B面は黛ジュンのヒット曲「乙女の祈り」。音源はシングルと同じと思う。ジャケットは「秘蔵シングル盤天国邦楽編」に載っているので参照のこと。

 

20.6.14 梅雨の晴れ間。

V.A.

おもしろコミックソング大全集

5CD ビクター  VZS1012

名前の通り、コミックソングを集めたボックスセットで東芝ファミリークから出ている「笑ケース」ほかに対する迎撃弾。とはいっても東芝のボックスを意識しすぎた選曲で植木等の「スーダラ節」が落ちているなど、大ヒットしたコミックソングが落ちているのはこれだけ手に取った人には訳がわからない選曲。何故かダーツの「ケメ子の歌」など重複している曲もあって徹底的でない。東芝のボックスやその後出たコミックソングコンピは芸人が歌うだけの哀愁演歌も収録されていたが、このボックスは予備知識がなくてもコミックソングと判る歌ばかりで(例外はある)集められており、その点好感。また、菊池正夫のオリジナル版「スタコイ東京」や市丸の「聞いて下さいロケットさん」などの珍しい選曲が取られており貴重。とりわけ一人GS風味の榎本健一「破れハートに風が吹く」はよく時代を映した歌で、ファズギターとスクールメイツとエノケンという風情が奇矯。ただし、上に述べたる事情に拠るらん、ド派手な歌は少ない。解説も過不足なくよし。この解説に拠れば氷川きよしは「ズンドコ節」にするか「スタコイ東京」にするかで悩んだそうだが、もし後者を取っておればかなりその後の道が変ったであろう。

寺内タケシとブルージーンズ、内田裕也、尾藤イサオ、ジャッキー吉川とブルー・コメッツ、ジミー竹内とエキサイターズ

レッツ・ゴー・エレキ

5CD EMI GSD20601〜05

こちらはEMIファミリークラブの通販商品だが、実はブルージンズの「ブルージン・ヒット・パーティ」「これぞサーフィン」「ベスト・オブ・ブルージンズ」「太陽の下のブルージンズ」「トランペット・イン・ブルージンズ」「ブルージンズ・イン・ハワイ」と内田裕也・尾藤イサオの「ロック・サーフィン・ホッドロッド」「レッツ・ゴー・サーフィン」の全曲にエクサイターズ、尾藤イサオの数曲を復刻したもの。東芝時代のブルージンズ(横棒が入らないのが東芝時代の正式。)は寺内タケシの全キャリアの中でも最も素晴らしい演奏が繰り広げられていた時代と言うことが殆ど定説になっており。この時代の他の国まで見渡してみてもここまで強烈なビート感のあるバンドはないというくらい鋭いドラムが突き刺さりハード。例えば「キャラバン」は寺内の演奏技術見本市のような曲だがそのバックの高速ビートぶりはすごい。東芝時代のブルージーンズのキャリアの多くが約20年ぶりにまとめてカタログに帰ってきたのだから英断だ。内田・尾藤のアルバムはつい最近復刻したばかりだが、これで全部聞けるので、それを買うのだったら多少お高いがこちらを買ったほうがよい。日本のエレキバンドやGSを馬鹿にしている人はもちろん、そういうものをカバーしている若いバンドマンたちにも是非聞いてもらいたい珠玉のボックスセット。素晴らしいの一言。お勧めする。

この際、EMIには東芝のGSの中で唯一取り残されているモップスのコンプリートボックスを出して欲しい。

ちなみにこれで何枚か全曲ダブったCDが出たのでそちらは売り払います。

20.6.10 やあ、目がおかしい。

V.A.

懐カヴァ

CD ユニバーサル UICZ8040

女性アイドルによる洋楽カバー集。ヒット曲が多い。と言っても収録曲は70年代から2000年代までに及び、寄せ集め感が強い。ユニバーサルから出たCDだが、他社の音源もかなり多く何故この選曲なのかは謎。先日ベストアルバムが出たばかりの麻生よう子だが、そのCDには会社の垣根の問題から収録されなかった「恋のナイトライフ」「恋のサバイバル2」「同1」が、要するにこの集め方にも関わらず何故か3曲も収録されている。他のアイドルの歌曲がロック的であるといってもアイドル歌謡の域に留まっている中、麻生よう子だけが退廃感満載の爪を立てたような危うい歌唱を披露して気を吐いている。25年に及ばんとする発表年代の開きはやはり大きく、Kirari(この人のことは恥ずかしながら知らず。)の「Toy Soldier」が激しく浮いている。これは「恋のサバイバル2」の両面をCD化するための方便として企画されたCDなのだろうか。

V.A.

昭和ガールズ歌謡 レアシングルコレクション〜ミッドナイト・ローズ/謎の女B〜

CD クラウン/ブリッジ BRIDGE122

昭和40年代クラウンレーベルに残された音源から集めた広義のガールズ・ポップコンピ。謳う通り初CD化多し。昔発売された「60’sキューティーポップコレクション」に対する裏盤のような印象を受ける。というよりも件のCDで選曲されている曲のレコードの裏側だった曲を選曲しているから受ける印象かもしれない。しかし、これを聞いて、もう自分の歌謡曲感に沿っているような選曲のCDコンピはもう生まれないのだろうなという何とも言えない絶望感に襲われた。歌謡曲にロック中心史観、和モノグルーヴ史観が持ち込まれる限り、自分はただただ置いていかれるだけであろう。歌謡曲の本統が滅び、スタイルと根性はそれぞれ生き残るも、それを継ぐ者が分離して、形ばかりが残るものを歌謡曲として推す時代の見方が圧倒的にこの手のCDの編み手をも絡めており、もはや歌謡曲のスタイルと歌謡曲の根性(これがライヴに対した時に歌手に対して自分が技術と儀容というのに連なるが。)に固執しながら破天荒なコンピが編まれることはありえないのかもしれない。廃れる趣味は趣味にあらずと言うけれども、このままでは自分の血を吐いて聞いてきた歌謡曲趣味も廃れるか、又はどこかに潜るしかないのかもしれない。淋しい限り。お色気歌謡というのも、そこにお色気を超える儀容がないものはハリボテの戦車のようなもので、そのような歌謡の本義がないものを過度に重んずると、やがて歌謡曲を真綿で絞め殺すことになる。一体歌謡の本義とは何なのだろう。自分のいう本義が人皆に共通するものでもないとは思うが、自分が提示される側としてどうもそういった本義を共有して理解する人が提示側におらず、自分もそちら側におらないのが悔しくてたまらない。

ぱっとしない曲が多い中、黒田ゆかりの「真夜中のパンチ」は命を燃やすような激しい体当たりの歌唱が素晴らしい。

V.A.

喫茶ロック 〜愛色の季節〜 ポニーキャニオン編

CD ポニーキャニオン PCCA01631

このシリーズはかなり昔にリリースされている。その中のポニーキャニオン編。70年代の喫茶店で聞かれていそうな曲を集めたもの、という建前だが、こんな喫茶店はありえない。素直に洋楽をかけるだろう。

自分の日本で一番嫌いなバンドははっぴいえんどなのだが、これのからみでばかり展開され、また紹介もはっぴいえんどをとにかく前面に出してなされていたので、自分には聞く価値もないし理解も出来ない(音楽は楽しむものであって聞いてむかつくためのものではない。)ものと判断し、今まで聞かず嫌いで来ていた。某レコード屋に行ったらぽつんと淋しそうに一枚だけ置いてあったので慈悲心から思わず買ってしまったが、やはり合わず。何も特に感じなかった。整ってはいるが、ひたすら画一化されており歌謡曲を聴くときの自分の世界観が崩れる感覚など臨むべくもない、極めて一点を墨守するだけの曲群にしか聞こえなかった。やはり自分はこのシリーズに手を出さない方がいいのだろう。人には趣味というもの侍る。これをよしと思うものは聴いておればよいし、よく整っている曲という意味ではよく発掘してきたという労いたい気分になるのは確か。

 

20.6.1 ムードコーラスに目覚めたからといってサイケデリックのレコードを全部捨てるような人とは友達になれない。

V.A.

地下世界の悪夢

2CD キャプテントリップ CTCD270/271

60年代カナダサイケロック集。グレート・スコッツの「お前に夢中さ」所収。出来は伍する。他は特になし。歌謡というよりもロックやね。

V.A.

アンダーグラウンド・レディオ・ヒッツVol.2

CD キャプテントリップ CTCD307

60〜70年代オリジナルサイケロック集。数年のずれはあるが日本の昭和43年後半ごろのGSに音が似ている。ボーカルが小汚いことを除けばゴールデンカップスだと言っても信用されそうな曲もある。カリオペの「夢のカリフォルニア」は香港のテディ・ロビンとプレイボーイズの「マジックカラーズ」に通じており、サイケの汎世界性に思いを至らす。他にクラウン時代のブルージーンズ風の曲などもあって驚くが、歌謡味は鮮し。

V.A.

モーターサイクルU・S・A

CD キャプテントリップ CTCD426

日本で言えば昭和38年の作品を中心にして、ライザーズとホーネッツ、ベンチャーズらのサイクルもの等を集めた一枚だが、殆どの作品が全体的にキングスメンやトラッシュメンの作品に似た雰囲気を持っており、リフやフィルインにはいかにも両バンドがやりそうなフレーズが散見されており、所謂「トラッシュメン・キングスメン期」の典型的な作品群と言えるか。特にホーネッツの作品にはファズとサックスの両方が使われており、素朴なサーフ・ホッドロットとビートの時代からガレージ・サイケの時代へと移り変わっていく時代の風が偲べる。有名バンドの曲が挟みこまれているのは薬味のようなものか。

V.A.

続・レア・サーフ・コンピレーション

CD キャプテントリップ CTCD486

レア・サーフ音源集というタイトルだが、グレン・キャンベル他で米キャピタル音源を集めたもので、スーザンリンネの二曲がえらくサーフ(でもタイトルは「もうお薬はやらないで」だったりするが。)だがそれ以外ははっきり言ってサーフ系の曲はそれほど多くない。それもそのはずで原題は「サーフ時代の稀少曲とホットロッドとブライアンウィルソン制作作品集」。このタイトルなら、そのままの曲が並んでいる。というかあまりにも落穂拾いのようなものでまとまりがないぞ。黒沢大人曰く、ガレージものよりもサイケものの方がGSっぽい曲があるとのことだが、これは思うにアメリカだろうが日本だろうがある程度のプロ志向がある限りにおいて、B級テイストには共通点があるゆえにそう感じられるのではないか。これはメロンキャラメルというから買って食ってみたらジンギスカンキャラメルだったような、そんな感想。

V.A.

ホット・ロッド・レジェンド

CD キャプテントリップ CTCD487

これもホットロッド曲集のようなタイトルだが、原題を読む限りではエリミネイターズほか全3バンドの単なる全曲集。いや原曲をもうちょっとエレキっぽくしただけの「ブルーヴェルベット」とかどこがホットロッドなのかと。僅かに数曲エンジン音が入ったものがエリミネイターズのものにある程度。そのエリミネイターズは擬似ライブのビートルズのカバーで始まったあとビーチボーイズやジャンとディーンを思わせる曲が並んでおって、いろいろと手を出そうとしてそれなりによくは出来ているが今一つブレイクしきれない風情があってよい。最もよく出来ているのは哀愁のハミング入りサーフインスト「ロンリーサーフギター」。初期のジャガーズに通じる物悲しさがある。あとで寺内タケシとブルージンズがカバーしている。ジップ・コーズも似た系統のバンドだがもう少しガレージ寄りで情緒少な目で所謂うだつが上がらない音をしておって薄い。ウエスタン風インストの「レッドライン」がえらくいなたい。最後のスタチューズはメンタルが60年代のロックではなく50年代のコーラスグループかよくてエルヴィス・プレスリーのバックバンドのそれで止まっている。

というか、エリミネイターズとジップコーズは同じスタッフと思われるスタジオミュージシャンを集めたそれぞれレコード一枚こっきりのセッションらしい。

前の月 次の月 最新

 

inserted by FC2 system