これ買いました平成20年8月

20.8.28 私を裏切らぬものは、人でなくして唯歌謡曲耳。

E.S.アイランド

ファニー・インスピレイション・フロム・ソーラー・ミュージック

CD Pヴァイン PCD1337

テクノブームの頃に「みんなのうた」で沖縄民謡とスカとテクノを混ぜ合わせて「ブロンディ」みたいな近未来生活を描いた「テクテクマミー」を披露して度肝を抜いたグループの唯一のアルバム。唯一のシングルはこれからカットされたものだから事実上唯一のレコードである。ボーカルは元のじゅん&ネネのネネ、ギターが元のズーニーヴーの高橋でこの二人は夫婦でありアマテラスというグループを組んでおったところ、そこから発展したのがこのグループなのである。バンド名はやたらに南方のことを歌った曲が多いということもあるが、今はこの二人は八丈島に住んでおられるから、要は伊豆諸島のことであろう。

さて、一聴して南方志向の歌が多く、「テクテクマミー」の沖縄民謡的なフィーリングの他にも「ジャカルタ」「バナナ」「アラビヤ」と言ったようなエキゾの線を狙ったフレーズが頻出する。これがこのバンドの本質なのか、このアルバムということでそういうものを取り揃えたのかは良くわからないが、結果としては細野晴臣が路線をば露払いしているようなものである。音はシンセサイザーがやたらに目だっておってその意味ではテクノ的ではあるけれども、元々はソフト・メタルと言われておったようだし、非常に人力的で、本人たちもヒッピー的な思想があるようであるし、更に言えばタブラ等を本当は目立つ音にしたかったのではないかとも思われるから、時代がテクノを求めていたということによる結果に過ぎないものであろう。ニューウエーブとまで言い切っていいのか、むしろエキゾモンドバンドだろう。ただし、「ジャパニーズ・ガーデン」は中華風のアレンジではあるが重苦しいビートと荒涼とした音世界が支配しておって「ソフト・メタル」と言われた普段の音に一番近いと思われる。ボーカルの高橋早苗(元の梢ネネ)はわざと多くの歌で調子っ外れで歌っておるけれども本来上手い人であるので芯の強さが残っておって意図的な崩し方であることが端々で表面に出ておる。この時代に一般的なヒットを狙うには力を入れるべき部分が間違っておるけれども、完成度は高く、どんな時代にも栄える音と言えるか。しかし、「テクテクマミー」はテクノの濃度が極端に高い上に出来のよさが突出しているとしか言いようがない。

20.8.22 CDR2枚を頂く。1、成程殿キンは何をどうやっても殿キンの曲になるなあ。泥臭い曲が多いとはいえ全部が全部そういうものが元になっている訳ではないからやはり歌手の個性が傑出しているのだろう。2、日本語の曲を歌う外国人と一言で言っても技術もスタンスも全然違う。一堂に集まって大変楽しかった。古い時代は「お金」の臭いがせず、ネタとして取り上げてみました、という「愛」のようなものを感じる。

20.8.20 CDR1枚を頂く。東南アジアガレージの熱帯っぷりとロックではなくビートに傾いた選曲が夏の友にぴったりだった。

20.8.16 人の繋がりとこういうページをやってて良かったなぁと思う瞬間。

真木ひでと

ヒット全曲集

LP ソニー 25AH92

元オックスのボーカルがソロ転向し改名した後のベスト盤。演歌歌手になった、と言われており、自分も「雨の東京」を聞いてそう思ってきたが、こう聞いてみると演歌らしい演歌ではなく所謂アダルトポップス、しかもディスコティックやポールアンカの曲を下敷きにしたアレンジが多く、グループサウンド出身というイメージを壊さない、最低限の洋楽っぽさが残されているのがわかる。主だった作品は山口洋子―浜圭介作品なのでこれはやはり配慮されておる、ということだろう。アレンジは竜崎孝路であり、根がロックのひとだから相通じておったのだろう。物凄く強烈な曲はないが、藤圭子とかあの辺りの路線をとろうとしていたのが伝わってくる。

20.8.10 乱れた日常生活。

大橋節夫とハニー・アイランダース

大橋節夫の幸せはここに

17cmLP コロムビア ASS67

日本の誇る代表的ハワイアンバンドのオリジナル曲を集めたコンパクト盤。全て大橋節夫の作品。このバンドはタイトル曲のようなゆったりとしたハワイアンムード歌謡の典型のような曲もするのだけれども、パープル・シャドウズや加山雄三に大きな影響を与えていることからも判る通り、ハワイアンバンドとしてはかなりスリリングでハードな演奏もする。「赤いレイ」はそのハードなハニー・アイランダースの面が良く出ている。一方「月の出る頃」はオリジナルながら純ハワイアンと言っても皆が信じてしまうような素晴らしい正統的な楽曲で「カイマナ・ヒラ」風の堂々としたもの。どんな曲調でも余技では終わらせないという姿勢が見える。四曲ながら彼らの技量をまざまざと示し、日本のトップバンドの貫禄が出ている横綱相撲の一枚。

20.8.9 お通じがないな。

たんぽぽ

セルフ・セレクション

CD ソニー DQCL62

このたんぽぽは姉妹デュオで「嵯峨野さやさや」や「ホテル・カリフォルニア」のカバーで有名な方。いろいろと微妙な問題があって難しい中を荒業でリリースしたベスト盤。ただし「ホテルカリフォルニア」は入っていない。

この人たちは形態こそシモンズやチューインガムのようなフォークデュオではあるけれども、自作曲が極端に少なく、その意味では正統派なフォークファンには低く見られると思うが、しかしこの形態の歌手という楽器と考えると自分のなかでの理想の形にかなり近い。可憐で透き通っておってかつ触っただけで崩れてしまいそうな儚さがある。シモンズと声質等がよく似ているがあちらはやや芯が強く、この聴くだけで胸が潰れそうになる切なさというのは彼らが随一である。シモンズにしろ、ハニーズにしろ、ジャネッツにしろ、アコギを持った女性デュオというのはそれだけで情緒があるものが殆ど(チューインガムは公式ページで態々リンクまで張られて生半可が戯言を言っていると(そのファンの人に)言われたので敢て入れない。判っていない人間に褒められるほど屈辱的なことはなかろう。)だが、その中でもこの人たちの儚さは突出している。アップテンポな曲もあるがなおその明るさの中に儚さが潜んでいる。そういうわけで今までどうしてもまとめて聞けなかった彼女らの素晴らしいサウンドがこうして一枚のCDで聞けることは画期的であります。儚さ炸裂。この儚さ、可憐さと言ったものが最大に発揮されているのはやはり「初恋少女」であろう。お勧めいたします(と言っても殆ど手に入る機会はないと思われるけれど・・・。)。本人が作った曲は一曲「私の心はダーク・ブルー」だけが収録されているが、これは所謂シティポップスで本人たちは一連のシングルに違和感があったのではないかとも思うが、このCDの選曲が本人たちによるものということを考えると、複雑である。これを含めてシティポップス路線はやや落ちる。これは儚さよりも芯の強さが先に立つからである。なお、タイガースの「花の首飾り」のカバーあり。オリジナルには及ばないが、もともとの作者であるすぎやまこういちの意図を最大限に拾ってバロック風味を強調して組み立ててあり、なかなか好感の持てる解釈。

このCDはオーダーメイドファクトリーという形式でリリースされたものですが、画期的な方法ですのでソニーにあってはますますこの方式の充実を図るよう切に願います。(本当は以前にも頼むつもりだったがたまたま入院に当ってしまって頼むことが出来なかった。)

20.8.6 今月も駄目だな。

狩人

ベスト&ベスト

CD ケイエスクリエイト KB19

所謂駅売りCD。「ブラックサンシャイン」を収録したとんがった選曲のベスト盤。この手の歌謡曲とポップスの間を歩む路線の男声デュオは結構あったのになぜに彼らだけが成功できたのかといえば、実にその激しさと言う事に尽きる。それ以前のグループは何故かまったりとした曲をやるグループばかりで彼らのように力で押すような曲をやった例と言うのは殆どない。「あずさ2号」以下メロディーを殆ど作らない都倉俊一が珍しくメロディックにやっているが、この型破りさが新鮮に見られたのであろう。しかもこの手のグループの伝統か兄弟親族ゆえか重ね方は上手い。基本的にはスローテンポからサビで堰を切ったように盛り上げるパターンが多いが後から考えると取り上げる素材が日本的なものに偏りすぎていたような気もする。もっと都会的なものやエキゾチックなものでもちゃんと歌いこなせていただろうし、幅が広がっていただろうが、大きいヒットを放った代償とも言えるか。やはり「ブラックサンシャイン」は異常な曲としかいいようがない。こういうものがちゃんと商業としてリリース出来ていたのだから昔は懐が広い。

アストラッド・ジルベルト

ゴールデン・ジャパニーズ・アルバム

CD ユニバーサル UCCV3023

彼女のラストアルバム。日本語で日本のバンドの演奏に乗って歌う幻の名盤。「ストリート・サンバ」「白い波」などの有名和製楽曲や「マシュケナダ」「イパネマの娘」などのスタンダードをカバーしており、全て日本語で歌われている。編曲の山木幸三郎が所属していたニューハードと思われるバックの演奏に、親しみやすくまた案外に聞き易いアストラッド・ジルベルトの可愛らしい歌声がのっており、違和感もない。冒頭の「ストリート・サンバ」はすでに「ソフトロック・ドライヴィン」シリーズにも収録されており、その出来については定評があるが、これ以外の曲も同様の質を保っており、この人の自然体の地力の強さがよく出ている。佳也。解説はボサノバものについては詳しい人なのかとも思うがそれ以外の部分ではかなり不安な記述が多いので眉に唾をつけながら読むのが吉。

ピーチー

スーパー・ジェット・シューズ〜未来を歩くくつ〜

マキシ BMG FHCF5018

パフュームがカバーして有名になった曲のオリジナル。「ヘイ・ミスター・ベースマン」を下敷きにしたせわしないパンクポップス。奥井香作詞・作曲・編曲。特になし。カップリングはアラビアサウンドを取り入れたサイケデリック風味のゴーゴー歌謡。これもせわしないがもう少し下手なメンバーでレコーディングしていたらカーナビーツっぽいガレージものになったかもしれない。何れも今の視点で50〜60年代風の曲をやろうとしているという文脈の中では成功している。ただし、残念ながら売れ線という意味では外れていると言わざるを得ない。

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