これ買いました平成20年9月

20.9.28 今月は波乱万丈。

山川登とベストセラーズ

世間知らず

LP ワーナー L12028W

夏純子のナレーションで曲間を繋いだ、「世間知らず」のヒットにあわせて出したアルバム。「ガッカリしてるの」ほか計3曲以外は他の歌手によるヒット曲のカバーだが、間奏にナレーションが被るなど斬新な構成である女の恋愛模様を描く。この話自体は陳腐だが耳新しい。ベストセラーズ自体は所謂ホスト系の歌い方だが、辺り具合がやたらにソフトで、あえて言えばサザンクロスに近いのかもしれないが、他にあまり類型がなく、このバンドの系統がムードコーラス界で一つの勢力になっているのはこの特殊性によるものだろう。

どうでもいいが自分の買うアルバムはどうしてこうも針とびが多いのか。3曲も針とびで真っ当に聴けないとは思わなかった。

アンディ鈴木

ポート・ヨコハマ

EP コロムビア LL10063J

もとコニー・アイランダーズの人が自身のバンド「フェニックス」を引き連れて歌う。このフェニックスはGSのフェニックスやニューフェニックスとは関係ない。単音オルガンが泣ける、クールファイブ出現前の古典的なムードコーラスの教科書に忠実というようなもったりとした作品。ポートヨコハマと二度繰り返すコーラスが惜しい。B面も同様でこちらは吉田正の都会派歌謡の系譜に属する曲。サックスが咽び泣く。自分たちで演奏しているのにもかかわらず両面とも出自のハワイアンの色が殆どない。2番の殆どをオルガンとサックスのソロにコーラスを絡めて処理をしているのが珍しい。

ジ・アーズ

長崎の夜

EP ビクター SV2141

アーズのジャケットはかっこいいのが多い。A面はクールファイブ風だが、時折ボーカルが暴走してお得意の絶叫調になるのが利き所。このグループのボーカルは一体何を範に取っているのかよくわからないがとにかく強烈。B面は「粋に別れて」といいサックスが咽び泣く都会派歌謡で相変わらずボーカルが強烈だが、このバンドのダイナミックさがよく生きていて出来がよい。似たタイトルの石原裕次郎の曲と比べると、向こうは「粋な別れをしようぜ」と言ってそこで別れるのが本当に粋だが、こちらは「粋に別れて」のあとに「縁があったらまた会おうぜ」と加えてくるのが全然粋じゃないが人として情がある。宜しい。

小松おさむとダーク・フェローズ

庄内ブルース

EP クラウン CW7271

A面はCD化済み。横山パンチ作詞。このグループの中では平凡で取るにたらぬ。B面は「女のボサノバ」というが、軽快さや御洒落さは全くなく、ひたすら端鬱で単なるラテンを基調としたムードコーラス曲にしか聞越えない。このバンドの中では然程取り立てて何と言うこともない一枚。

中川浩夫とアンジェラス

ヨコハマ物語

EP ビクター SV1149

A面は「マイ・ガール」を応用したCD化済みの超有名盤。B面は激しいカッティングとホーンセクションから始まりそこにニューロックなオルガンが被さる丸でサンタナの様な曲で、ドラムのキックの入り方もかっこよく、曲自体も「秘密諜報員」風のサビも含めてメリハリ効いたボーカル
・演奏共に文句をつける部分がない。素晴らしい楽曲。インディーズの一枚を挟んでポリドールからビクターへ移籍の第一弾。

ハニー・ナイツ

港のためいき

EP コロムビア CD66

60年代のこのグループには珍しい歌謡曲盤。阿久悠作詞。ワワワコーラスから始まるクールファイブ「長崎は・・・」の影響大のR&B調歌謡。端正なコーラスのこのグループだが必至にムードコーラス風にしようと努力しているのが見て取れて面白い。B面もジャズ風味に仕上げていてこれもクールファイブを見据えているが、寧ろダークフェローズ風といった方がいいかもしれない。

松井久とシルバースターズ

からゆきさん

EP テイチク US828

彼らの最大のヒット曲。下にある一寸法師と親ゆび姫の曲とは全く違う曲。琴がところどころでなり響く「浮世絵の街」のようなエキゾチカ・ジャポネスクが下地にある曲だが、彼らの曲としては新奇なところがないような気もする。お得意のシンセサイザーの駆使は至る所に見えてそれはそれで満足ではあるが・・・。B面は典型的ラテン系ムードコーラス曲だが破格なさびがやや面白い。全編女性ボーカルがもう少し乗っていて欲しいようにも感じるが致し方ない。

チャーリー&マッシー

恋の赤坂

EP ビクター SV2354

これもA面はCD化済みの超有名盤。双子がどぎつく歌う。B面は歌唱は暑苦しいが極々普通の演歌。A面のぶっ飛び具合を期待して聞くと、肩透かしを食らう。但し、多少ゴツゴツしてはいるが上手い。これは作り手にとっては使い方を物凄く悩むグループだろうな・・・。

里見洋と一番星

ミツコの運命

EP ワーナー L1060W

本体入手。空前絶後の絶叫歌謡。両面とも彼らの曲としてはまあまあ平凡だがムードコーラスとしては恐ろしくレベルの高い一枚。

一番星・絵川たかし

女ひとり宿場町

EP ワーナー L1116W

本体入手。たいした歌ではないが、あれば買わざるを得ない。

丸山修とロス・パリエンテス

花街ブルース

EP キング BS1060

A面はCD化済み。やがてデュオグループになる。B面はしゃがれたボーカルが森進一風に悶えまくる、ジ・アーズの方式による楽曲だが曲が軽いだけに異物感が物凄い。曲としては平凡。

南有二とフル・セイルズ

おんな占い

EP テイチク SN966

両面ともCDで持っているけれども体面を気にして購入してみた。このレコードは、ジャケが二種類あるが、有名な方のジャケ。

南有二とフル・セイルズ

十三番「末吉」

EP テイチク SN1165

鼓や琴なども挿入しているが不思議に和風に聞こえない曲でおみくじの小吉を引いた色々な人たちの生活の一こまを見事に活写した可愛らしい小品でコミックソングのうちに入るだろう。オチは残ったおみくじを引いた神主が「職業変る」と書いてあるのを見て考え込むというもの。これは愛らしい。B面は李香蘭のオペラ歌謡のように始まるが本編は彼らのヒット曲「涙化粧」をリメイクしたかのような原点回帰の一作。

南有二とフル・セイルズ

おんなみなと町

EP テイチク SN1165

 レーベルメイトである八代亜紀で有名な曲の競作盤。ギターの弦をこするピッキング音から始まり重いビートが炸裂し、見事にブルースの域に達している。八代盤を上回る迫力で歌い上げるボーカルが軽く、必要以上の重さにならないように配慮されており、バランスがよく取れている。これが売れなかったのは時機によるとしか言いようがない。B面はありがちといえばありがちな曲で、取り立てて書くところもないが、よくは出来ている。

岡田みのるとヤング・トーンズ

銀座の雨

EP ビクター SV852

どうもこのグループはコロムビアのグループという先入観があっていけない。ほぼ全編コーラスが入りっぱなしでユニゾン、ハーモニー、バッキングが次々と立ち現れる。さびが国民歌謡の「やさしい親鷲」に似ている。銀座というよりも京都を舞台にしたほうが似合う曲調。コーラスの辺りは非常にソフト。B面は典型的なラテン歌謡。こちらもコーラスの入れ方が素晴らしい。こちらも非常に穏やかな作品。

アイドル・フォー

女みれん町

EP 東芝 TP20065

「天才バカボン」の主題歌で知られるボーイズグループ。「「アホー」とお呼びください。」と紹介されている。A面はアーズ路線をややソフトにしたような曲で、この手のグループにありがちな演歌っぽい曲。コーラスが少し入っているのでよい。B面はCD化済み。

原トシハルとB&B

愛のすべて

EP コロムビア LL10091J

準GSの改名移籍の第二弾。A面は作詞曲、浜圭介。このバンドの長いキャリアにそぐわないサックスとストリングス、ビブラフォンが濃厚な印象を与える三連ロッカバラードのズブズブなムードもの。泣きのボーカルが熱唱するが、このバンドにはこんなことは要求しておらない。ハモンドもいつものポップ的な印象を全く与えない。B面もまるでダークフェローズかサムソナイツかというようなしみじみとした三連バラードのムードコーラスもので、寂しい終焉をよく象徴している。Wジャケの片面はブルー・ファイアっぽい。

阿木譲

錆びた十字架

EP 東芝 DTP1518

本来の新御三家の一人。後に某ロック雑誌の編集長になったことで有名。これは昭和30年代の影を引きずるロッカバラード調青春歌謡でとてもGS時代に作られた曲とも思えない。山田真二のような曲だ。B面はバイヨンをしようとしたのだろうが、出てきたものは東海林太郎だったというぬめっとした民俗音楽風歌謡。

ゴールデンハーフ・スペシャル

月影のドンチュッチュッ

EP 東宝 AT4034

いいグループだと思うが、さほど売れなかったのは胡散臭かったからだろうか。彼女たちの二枚目。A面はCD化済み。B面も本家にならいアチラのポップスのカバーもので、このグループに似つかわしくない爽やかな仕上がりになっている。この頃にはまだ彼女たちに本家の名を継ぐような志向があったということが伝わってくる。この曲以降どんどんと本家のイメージからかけ離れた楽曲に移行していくことになるが、それはまた別の話である。

港孝也

パッション

EP コロムビア SAS888

A面は解放済みの超有名盤。B面も昔「タモリ倶楽部」で紹介されたことがある。B面はハープで始まり神話的なニュアンスを持たせてそこから一気に湘南サウンドへもっていく展開が現実と心象の重ね合わせになっていて面白い。暑苦しいボーカルであってヤング&フレッシュの一連の作品を聞いているのと同じような感触がある。この時代の曲としては長め。

ジャニーズ

栄光のマーチ

EP ビクター SV292

このグループは事務所社長の人脈のせいかやたらに豪華なスタッフが関わる。これは作曲團伊玖磨。アメリカ風の陽気なマーチナンバーで当時流行っていたコンバットなどの主題歌を思わせ、これに苦難を伴う若者の青春賛歌が載せられる。戦後の若者という言葉が頭に浮かぶ。B面は高峰秀子の「森の水車」を思わせる。もちろん音はビッグバンドにエレキが入る近代的なサウンドだが、一枚で昭和を偲べるという意味ではお得なレコードなのかもしれない。

ジャニーズ

ガールハッピィ

EP ビクター SPV46

本体入手。両面ともバックがブルコメのスイムもの。どちらもアチラの曲のカバーである。

ジャニーズ

若い夜

EP ビクター SV217

A面はジャズ歌謡の傑作でCD化済み。B面も映画音楽風の彼らのもともとのコンセプトに忠実なジェントルなナンバーで良質なポップス。こういうものを聞くとジャニーズのベストが出ないのには本当にため息が出てしまう。

ジャニーズ

おーいわーいチチチ

EP ビクター SV450

ハマクラ作品。フォークブームを受け、これもフォーク調でまとめている。就寝前の一時に流すのにぴったりな穏やかなナンバー。あまりこれから番組が始まるよ、というような曲ではないようにも思えるが。B面は、これもフォークのつもりなのだろうが、えらく田舎臭いエレキ青春歌謡に聞える。悲しい曲調とおかしいのだか悲しいのだか感情が入り混じった詞が印象深い。

アイリー・隆

カスバの女

EP テイチク SN468

エト邦枝のヒット曲のカバー。同時期のクラウンの緑川アコに対抗したものだろう。分厚いサックスから始まるこの歌のイメージによくあったキャバレー風の演奏に魅力のある低音が炸裂する。ただし、曲の出来としては平凡で緑川のバージョンの方が良い。B面は三界りえ子によるこちらも同曲のカバー。こちらは演奏はナイトクラブ風にまとめてあるが、演歌風にコブシが回るのがあまりこの歌の情緒にあっておらない。

20.9.27 CDR1枚を頂く。無理言ってすいません。すごく助かりました。しかし自分のを聴くと前半よくないな。反省。

20.9.25 目がいかんねー。

ゴールデンハーフ

ゴールデンハーフでーす

CD EMI TOCT26688

彼らのファーストの復刻にボーナストラックをつけたもの。事実上の買い替え。

ゴールデンハーフ

CD EMI TOCT26627

同セカンド。「マミーブルー」だけ聞いた事がなかったので購入。彼女たちはビート(GS)歌謡の時代からグルーヴ歌謡の時代への突入をドリフターズとともに顕著に表す存在だけれども、彼女たちの残した3枚のアルバムの中でも最も陽性で、ロック系の曲のカバーが多いことからゴールデンハーフの現在まで続くパブリックイメージにもっとも忠実なものだろう。彼らのコーラスは荒っぽくて、紙やすりで顔を洗っているような感覚があってよい。

尾藤イサオ

ワーク・ソング

CD EMI TOCT26677

CDの時代になってから初の尾藤イサオのオリジナルアルバムの復刻。バックはボーナストラックを除けばジャッキー吉川とブルーコメッツがつけている。ロッカビリー時代とGS時代の端境期に出たアルバムで、丁度ブルコメがモッドモッドしていたころの作品なのでかなり黒っぽい仕上がり。日本初のファズ使用曲とも言われる「ワーク・ソング」以下ブルコメのセンスが炸裂した演奏に乗ってソウルフルな尾藤イサオのボーカルがねじりこむように肌に刷り込まれる。実にひりひりとしている。12曲のうち8曲が洋楽のカバーで、その選曲については時代の制約が見て取れるけれども、60年代中盤リアルタイムでの洋楽の受け入れ具合がその広い選曲から伺え却って興味深い。その中でも異色な選曲の「ユー・アー・マイ・サンシャイン」がぶっ飛んだ編曲でまいった。一体もともとのアイデアは何処から出てきたんだ、これは。ボーナストラックは殆ど以前一度以上CD化された事があるシングルを収録しているが「センチメンタル波止場」だけは聞いた事がなかったのでありがたい。

20.9.20 二ヶ月ぶりに脳みそがぶっ壊れたような買い方をしてしまった。

ブレイン・ウォッシュ・バンド

ロックン・ローリング・スピリット〜コンプリート・コレクション

2CD ウルトラ・ヴァイヴ CDSOL1261/62

GS壊滅以後、ネオGS登場以前にスラップスティックと共に数少なくGSの音楽的な部分を発露させておった名グループの全音源に未発表ライヴ音源を加えた驚愕のベスト。これを歌謡というのは、理解しがたいという人がいるかもしれないが、これこそが正統なのです。聞けば、人はこれをロックンロールと呼ぶだろうし、事実彼らはストレートなロックンロールバンドの系譜としてはキャロルと横浜銀蝿の間に横たわる巨大な大河であります。しかし、それ以上に、ものが一点つきぬけた楽曲というのは、その外見が如何にロック、ジャズ、ハワイアン、ファド・・・であっても、実に歌謡を究めた楽曲に他ならぬのであります。一発録音で走り抜けていく魂で歌う生き急ぐロックンロールの嵐は、既にロックであってロックでなく、歌謡でなくしてその本質は歌謡なのであります。こういうストレートな所謂ロックンロールバンドというのは度胸一番にセンスを持って当れば全く以って無敵だが、さりとて、このバンドのように突き抜けた領域まで行くのは殆ど見ない。「コールドレイン」という名曲があることは以前書いたとおりだが、これを含む僅かな例外を除き全てストレートなロックンロールで構成されており、作詞・上田茂、作曲・上田宏の曲が多くを占めるが、これが全く退屈な印象を残さずついつい全曲に聞き及んでしまう。このバンドのボーカルは取り立てて技術的にうまいわけではない。しかしながら、ここに溢れるロック的なセンスを見よ。技量より儀容をと言っている儀容とは実にこういうことである。ああ、願わくは今の若手バンドにこのような度胸がとめどなく溢れるバンドの現れんことを。これは名盤と言ってよかろう。2枚目はかつてNHKで放送されたライヴ音源。ここでは後期の曲をやっているが、見事なロックンロールっぷりが発揮されている。

これを聞くに、一体自分がGSを愛しているのは所謂歌謡だからなのか、ロックとして唯一真を捕らえているからなのか判らなくなる。

フィーバー

ファースト・フライト

CD EMI TOCT26638

彼らのファーストアルバムの復刻。MCで繋ぐディスコティックの香豊かなアルバム。確かに標準以上の出来ではあるのだが、これ、というものが今ひとつ薄かった。その中で圧倒的に出来が良いのは「RAINRAIN」。「シンクイットオーヴァー」と並ぶ、ほとんど冒頭のこの二曲が一番の山で聞き所。これらは日本語で歌われている。他は特になし。

スーパーフライ

スーパーフライ

CD ワーナー WPCL10477

最初は何も思っておらなかったが出てくる曲出てくる曲宜しいものが多いので、購入。今のソロ歌手の人也。結論から言うと、これは大変に素晴らしい。有職が大変によくわかっている。1970年前後の空気を非常によく現代風に昇華している。殆どの曲を多保孝一が作曲しているが、この人の作る曲はディフォルメされた1970年前後がちゃんと目に浮かんでくる。この人の編曲ではないが「愛をこめて花束を」のベースがブルブルしていてよい。これに限らず非常に人力な部分を感じさせる演奏がまたよい。逆にその要素を一切切り捨てた「i spy i spy」は悪くはないが激しく浮いている。音がクリアーすぎるのが残念といえば残念だが、音が汚ければ普通は引くので仕方ない。ボーカルは、やや現代的な潰れ方をしている昔のラブサイケデリコにやや通じるかともの思うが、非常に視界が良好で見通しが素晴らしい。但し、70年志向とはいえ、あまりにも全方向なのがやや印象が散っているようにも感じたが、これはそのうちに揃ってくるだろう。やはり1970年前後を再現するにはお金をかける事が必要だということがよくわかった。

V.A.

ボサノバ・タイム〜魅惑のボサノバ歌謡ヒットパレード〜

CD ソニー MHCL1354

70年代以降のちゃんとボサノバがどういうものなのか伝来したあとのボサノバを使ったリズム歌謡集。洋楽編と連動している珍しい企画だが、選曲としてはヒット曲を中心としたもので極めて妥当で入門編といったところか。自分の様な素人には大変優しい。編曲には鈴木茂や大野裕二らの名前が並んでいるが、あまり誰かの作品に偏っていると言うことはない。戸塚修の編曲がやや多いか。聴き比べると麻倉未稀の「ミスティ・トワイライト」ってよく出来た曲だな。森山良子「雨上がりのサンバ」は再録。

ブルー・ジャッカス

理想の女

EP フィリップス FS1857

里見洋と一番星の後身。漫画ジャケ。ぎりぎり歌謡ポップスのラインに留まっているムードコーラスとの境界に位置する作品だが、コーラスの上手さは相変わらずで、複雑に絡み合う掛け合いコーラスと躍動感溢れる演奏がレオ・ビーツ以来伝統を感じさせる。B面もいかにもアダルトポップス然とした哀愁のバラードながらただのムードコーラスとは違う雰囲気で、コーラスの入れ方が絶妙でジェントルさが残っている。レオ・ビーツの末路としては落ちぶれた感が全くないのでこれはこれでいいのでは。

ジ・アーズ

盛り場の女

EP ビクター SV2218

この人たちはもっとヒットが多くても全然おかしくないのに何故一発屋で終わってしまったのだろう。鳥井実・猪俣公章による「盛り場ブルース」の本歌取り。この人たちにしてはあっさりとした歌い方だが、なおサザンクロスよりもねっとりした歌い方なので初めて聞いた人には異常に粘ついた歌唱に聞こえることだろう。サビの盛り上がり方はこのバンドの持つ無茶さが良い方に出ている。B面はアローナイツを思わせるトラックだがこのバンドらしい暑苦しいボーカルと闇雲なコーラスが被さり、彼らの最大のヒット曲「長崎ごころ」やそのB面「長崎非情のブルース」を思わせる、いわばいかにも彼らな歌謡バラード。サビ前のメロディーがファンタスティック。

黒沢明とロス・プリモス

想い出の女

EP ビクター SV2132

橋本淳・吉田正という組み合わせが新奇。黄金期ビクター時代のロス・プリモス。もう少しテンポが速ければ何とかなったかもしれない和風のラテン歌謡。切れがやや悪い。B面はこの時期のロス・プリモスの調子のよさを示すお洒落なジャズ歌謡。吉田メロディーにも関わらず筒美京平の臭いが香り立つ佳曲。ハミングバーズの「恋のティー・フォー・トゥー」を思わせる。

黒沢明とロス・プリモス

雨に濡れて想うこと

EP ビクター SV2348

浜圭介。このぐらいなると色々とどうしようか路線を探っておったのだろうな。東京ロマンチカばりのレキントギターの速弾きがフィーチャーされるが、本編はアンニュイな雰囲気が横溢するモダンでお洒落なソフトロック的なラテン歌謡。突然激しさを加えるサビ部分の転調が印象的。B面もレキントギターが大活躍する転調しまくる曲だが今ひとつ地味に終わるのが残念。

原トシハルとBアンドB7

世界中の娘達は僕の恋人

EP ビクター SV464

タイトルのスケールがでかいな。小さいことに拘らなかった時代らしいジャケットも凄い。フルートが導入する陽気なアメリカンポップス調の作品でパラキンの「それが悩みさ」を思わせる底抜けな小品。これがおそらくデビュー曲。B面も大人しいフォーク調の小品でこのバンドの微妙な立ち居地がよく現れている。ノスタルジックで上品ではあるがその先がない。

ジェイド&ペッパー

コーヒー天国

EP ポリドール DP1770

シンガポールのグループの日本盤だがあまりにも凄いジャケットだったので思わず買ってしまった・・・。そのジャケットとはかけ離れた軽快なポップスでオカリナの様なオルガンをバックに快調に飛ばしまくるアメリカンな雰囲気いっぱいのグッドな小品。70年代の声を聞いているようには聞こえないがノリが素晴らしい。B面はシタールの鳴り響くバラードでやや油こいボーカルを抜かせば中期のタイガースを聞いているような気分に襲われる。今にも加橋かつみが歌いだしそう。

一寸法師と親ゆび姫

からゆきさん

EP RCA JRT529

大所帯のフォークグループがからゆきさんを歌う。九州(博多地方?)の女性がシンガポールへ出稼ぎに行く悲壮な心情歌う。タイトルそのままなので説明が難しい。いかにもな和風フォーク。異国での死を予感させて終わる。B面はこの頃にありがちなとにかく暗いアングラなフォークバラードだが、一つ間違えばソフトロックになっていたかも。筋の通ったボーカルは魅力的だが・・・。

ダスター・ポット

女学生への手紙

EP コロムビア LL10157J

ボーイズもの。三保敬太郎作曲。なぜかCDにならない。大仰なティンパニとド派手なホーンセクションを厚く利かせた台詞入りビート歌謡。スローテンポになるところがあるが、ほかは「ミュンヘンへの道」を思わせる。同時期同趣向のドリフより一世代感覚が古く多少無理がある。絶叫女性上位歌謡(いいすぎ)。B面はどんぶり鉢節にハレルヤが入れ子になっている構造で、腰折れ歌謡とでも言っておこう。グルーヴ歌謡ではなくビート歌謡の感覚がこちらでも残っている。

モップス

森の石松

EP 東芝 LTP2531

本体入手。「月光仮面」のヒットに被せた企画物シングル。

BIB

インディアン・ギヴァー

EP キング GK263

1910フルーツガムカンパニーのヒットをディスコバンドがカバー。既に当時発売されたオムニバスアルバムを持っているのでB面目当て。リーダーでギターの松井裕二の筆によるオカリナのようなアナログキーボードの音色が印象的ないなたいミドルテンポのソウル・ポップス。ちなみにA面は傑作。

フレンズ

熱いおくりもの

EP ワーナー L1169A

ジュークボックスの後身だったような気がするが覚えていない。A面は解放済。こちらはアイドルロックの名曲。B面「星空のロマンス」はピンキラとは別曲。サビはA面と似ているがAメロはこまどり姉妹の「恋の風車」を思わせるやや古めの曲調。ホーンセクションとかが入っているし井上忠夫作品なのでロックぽい音のはずなのだがロックに全然聞こえない。サックスはどうせ井上本人だろう。

ザ・ブルー

ローラに好きだと言ってくれ

EP ワーナー L1216A

何だかよくわからないデュオによるレイ・ピーターソンのヒット曲の日本語カバー。情なし。清純派アイドルの様なピアノが引っ張るトラックに乗って漫然と歌っておるだけでよくない。B面は狩人風のR&B系バラード。こちらの方が合ってはいるが、珍奇なサビは無理が目立つだけであって散漫。ズーニーヴーのぱっとしない曲を聞いているような気持ちに襲われる。

こおろぎ‘73

お寺のおしょうさん

EP コロムビア CK626

下のもそうだが「おじゃまんが山田くん」の主題歌は傑作揃い。これはまだCDになってなかったはず。軽快なサンバ歌謡だがわらべ歌や河内音頭なども盛り込んだ激しい曲展開がこおろぎ‘73の開けっぴろげなコーラスに乗って繰り広げられる、ノベルティー職人はやしこばらしい作品。ベースがなかなか唸っている。B面は小林亜星作曲のワルツでシンセサイザーが時代を表す。こちらはまあ可もなく不可もないといったところこうやって見ると山本正之という人はつくづく小林亜星と因縁が深い。

三橋美智也

いいじゃありませんか

EP キング K06S3035

これも「おじゃまんが山田くん」の主題歌。三橋美智也は昭和30年代に全盛だったスターらしく、ユーモアのある曲が多く、ディスコものや、晩年にも「ゴエモン音頭」のような曲を出しておるから、そういう系統の曲ばかり集めたコンピを出せばいいのに。これは、三橋美智也のパブリックイメージに即した曲であるが、後期らしいややくすんだ歌声になっているのが残念である。B面は更に全盛期のイメージを強調した楽曲で、しみじみとした情趣が聴取後に残るペーソス溢れた佳曲。

20.9.17 帰省してきた。

伊武雅刀

伊武のすべて

2CD ソニー MHCL1357−8

アルバム「Mo^n−jah」全曲を含むトラットリアに残した音源を網羅したベストアルバム。「Mo^n−jah」は歌手でない、声優であったからこそ出来た破天荒なアルバムで、特に秋元康のゲテモノな歌詞世界が然程奇異に感じないよく取りまとまったアルバムだが、今猶古さがない。ヒット曲の「子供達を責めないで」、復古エレキ歌謡「銀座の爆発野郎」、モンドな「月の裏側」、ロシア民謡風の「ユーラシアロマンス」など、ある程度の枠組みがはめられた中で好き勝手やっている、高級ごった煮の趣。スネークマンショーのせいか関係のないトラックもアルファレコード臭が充満している。後ろのほうでニューウェーブを腐した歌もあるけれども、その実この曲を含め80年代に出した曲群はニューウェーブと呼ぶに相応しかろう。

ザ・ベンチャーズ

ウルトラ・レア・トラックス2

CD Pヴァイン PCD860

「ゴールデン・イアリング」ほか彼らの秘曲集第二弾。なんと全曲未発表音源で構成されたイギリス発売盤の日本盤。昭和36年の音源が過半数を占めており、この頃のベンチャーズのパワフルな活動振りが偲べる。未発表と言っても、キャッチーとは言えないものの発表された音源との落差のようなものはない。始めはやや軽いビートでこのバンドらしくもないが、進むにつれてこのバンド独特の力強いビートが段々現れてくる。中盤はハワイアン系の曲も鮮やかにカバーし、後半は40年ごろの力強いワイルド(ガレージではないけれども。)で背筋が凍るような演奏の曲が連続。一体なんでお蔵入りしたのか全くわからない鋭い楽曲群に目を白黒。「ライテス・アウト」、「無敵艦隊」、「ハーレム・ノクターン」は貫禄ある横綱相撲の趣。オリジナルでないなどという文句はまことに些細なものに聞こえる。懐メロでない、偉大なるバンドとしてのベンチャーズがここにある。

ザ・ベンチャーズ

ウルトラ・レア・トラックス4

CD Pヴァイン PCD17161

同第四弾。「3」がなかったことによる。未発表曲のほかドン・ウィルソンのボーカル曲、擬似ライヴアルバムの歓声等を抜いたバージョンなどで構成される。これもキャッチーではないが安定したサウンドが聞ける。ベンチャーズらしさが完成したあとの重いビートで奏でられているため安心して聞ける。とりわけすごいのはドン・ウィルソンがボーカルを取る楽曲で、ベンチャーズの高い演奏力は当然として魅力のあるボーカルが炸裂しており、ちゃんとやっておれば世界的にも日本と同じようなビートルズとのライバル関係が築けたかもしれない。ワイルド。このバンドのビートの鋭さは一体何なんだろう。通常のビートもののほか南欧民謡らしい「ブラックタランテラ」のような泥臭いナンバーやホーン、ピアノを大胆に導入した「ビューティフル・オブセッション」のようなムード音楽的楽曲も情緒深くこなしており、このバンドの力任せでない器用さが炸裂している。

ザ・スプートニクス

レア・フレンチ・60‘sテープス

CD ヴィヴィッド VSCD5223(1)

このスプートニクスは有名な、フィンランドの方のグループ。彼らがフランスで出したテープというレア音源をまとめたもの。ただし解説では昭和35年から38年にかけてノルウェー製のレコーダで録音されたのではないかと推定されており、今ひとつどういう音源なのかわからない。インストの雄の彼らだが、ここでは定番曲やウエスタンをエレキインスト化した曲などに混じって実に24曲中7曲ものボーカル曲が収録されている。ボーカルの多くはウエスタンである。しかし、この喉のほうもやや荒削りながらなかなか堂に入ったコーラスを聞かせており、僅かにあとのビートルズが突然出てきたわけでないということもこれを聞けば了解できる。高々数百キロを隔てただけで彼らは同じ大気の下におったのである。ボーカル曲でもラテン的な彼らの演奏のフィーリングがよく響いている。繊細な北欧インストは殆どなく音に豪放さを含む陽気なナンバーやそうでなくともロマ音楽調のナンバーが多いため本職のウェスタンバンドを聞いているような気になってくる。これを聴くと日本での彼らのイメージと大分違う印象を受けるかも。

つちやかおり

哀愁のオリエント急行

CD 東芝 TOCT26629

涙涙の名曲、表題曲を含むアルバムの復刻。表題曲が世紀の名曲になったのは卓越したメロディーや悲しみ極まるテクノ編曲なども大変な要素だけれども、この人の持つやや固めのボーカルの独特な雰囲気によるところも大きい。このアルバムでは半分を60年代の洋楽のカバー(但し日本語)が占めているが、これが何故かこの人の硬い声に合わない選曲ばかりで、あまり自在に声をまわすことが出来ないというアラが目立つ結果になっている。その点では、彼女の特徴を上手く捉えて声質を進退窮まったようなところへ持っていくオリジナル曲の方が分がある。しかし、所謂テクノ歌謡的な曲(自分は完全にサウンズとかムスタングスの流れのヨーロピアンエレキインスト歌謡の系譜だと思うのだが)は表題曲のみでこの時代のアイドルのアルバムとしてはやや地味に流れ、そうかといって悲壮さまでは出てこないのが歯痒い。

神田広美

「待ち呆気」+シングルコレクション

CD ポニーキャニオン PCCS00036

スタ誕全盛期にデビューしたアイドルなのに何故かフォーク・NM系のサウンドで売られてしまい地味な印象になった人のベスト。最大のヒットである「顔見知り」は穂口雄右でキャンディーズの色が濃い。サンタナっぽい曲もあったりするけれども、ダカーポや太田裕美を思わせる清楚な声質は彼女が売られた路線と安易に結びつきやすいけれども、あと一歩、音程が不安定な部分やあともうひとつ伸びが欲しいところ、歌がどたどたしたところなどがあって、本職のフォーク出身者や太田裕美といやでも比べてしまうだけに、不利に働いてしまう。初めから「ドンファン」のような気風のよい歌を歌っておれば、また違う展開があったかもしれない。ああ、時代!松本隆の詞が相変わらず自分にはすとんと胸に落ちてこないのも不利なところではあろうが、何とも切ない。「虹のある風景」はフォーク・NM系の曲としてよく出来ており、これと「いつのまにか雨」という及川恒平・佐藤寛・馬飼野俊一というチームの作品は無理がなく馴染んでいるが傍流だ。同じ松本作品でも馬飼野作品ではそれなりにこなれているところを見ると、穂口作品は無理をさせすぎているのだと思う。結局「ドンファン」のような、ただ清楚で終わるようでない芯の太い曲をもっとやるべきだったのだ。結局フォーク・NMというものは作り手の意識よりも先に時代の方が行ってしまっておったのだ。本来多才でそれも豊である人なだけに、こういう結果を見るとプロデュースとはどういうことなのかをつくづくと考えさせられてしまう。

20.9.10 このページは本編の参考資料に過ぎぬのであります。

V.A.

激熱ラテン歌謡オーレ!

5CD コロムビア・ファミリー GES31677〜31681

コロムビアに残された日本人歌手によるラテン名曲集。「ラテン歌謡」と銘打たれているが、実際は5枚目の曲を除き全てカバーもの。「歌謡」とつけて営業担当をだまくらかしたか。内容が本格的な哀愁ラテンカバー集なのに「激熱ラテン歌謡オーレ!サンバ、ルンバにチャチャチャ」っていうタイトルはどうなのよ。内容はよいのだが、「激熱」でも「歌謡」でも「オーレ!」の掛け声もなく、サンバ、ルンバ、チャチャチャもないわけではないが、タンゴとかギター一本の所謂ラテンものの方が印象深い。
 思うに企画した人の意図と制作した人の意図が異なるのだろう。企画した人が本格的なボックスを作ったが売れなさそうなので歌謡曲ブームだしラテンといえば「ウッ」って奴でしょと制作した人がパッケージを変えたか、或いは企画はラテン歌謡を集めようとしたのに制作が歌謡よりは本物の方がいいでしょとこんな内容になったか、或いは本当にネタがなかったか。
 主な収録歌手はアントニオ古賀、トリオ・ロス・チカノス、アイ・ジョージ、ジュン池内、牧秀夫とロス・フラミンゴス、美空ひばりほか。これも貴重な音源が多いが、歌謡として聴くのには5枚目を除きちょいと困る。沢村みつ子の「マンボイタリアーノ」がやや甘えた声で歌われ非常にチャーミング。

 いずれにしても名が体を表しておらない。コロムビアには井出せつ子やキューバンを筆頭に素晴らしい歌手が色々といるのに何でこの面子を揃えたこの内容をこんな名前で売るのかしらん。
 思うに「敢て」ということが判らないような奇抜な命名や内容を誤解させるような名前はよくない。これはどんなものでもそうで、とりわけ人に名前を売らないといけないものはそういうものである。

五枚目だけが名実が揃っているが、多くは別のCDでも聴けるが、アイジョージの再録ものとアントニオ古賀、朝丘雪路、金井克子などが珍しいか。とりわけ朝丘雪路の「ジャジャンボ娘」はこのボックスのタイトルを体現する唯一の歌と言ってよい存在。服部良一作曲。もっとも、その中にはそれはラテン歌謡じゃなかろうというタイプの曲も入っている。ロス・フラミンゴスがここに入っていないのが惜しいが、これならラブサントスとかその辺りの曲を入れた方が余程に誠実ではなかろうか。
  ロス・フラミンゴスはシングルにも素晴らしい曲が多いのでこれを機にいろいろとCDを出して欲しい。

20.9.5 技量と儀容の葛藤などというものがあろうはずがない。後者が圧倒的なのだ。

シ・ショーネン

シンギング・サーキット

CD Pヴァイン PCD1336

これも下と同じシリーズで、テクノ歌謡のシリーズ。このバンドは人脈的に往古と現代を繋ぐ超重要バンドなのだが、あまり表だって顕彰がなされておらないような気がする。

始めは超絶的なドラムテクニックと「極東ポップス」で売り出したとライナーにあるとおりで、これもコンピュータをいじり出してテクノ化されたアルバムと言い条、テクノというよりもクラシカルなストリングアレンジや夢の中にいるようなふわふわとした曲世界のせいもあって、無機質さとは無縁でファンタジー味いっぱいの、触れば壊れてしまいそうな小品といったところ。歌謡味も極めて少なく、繊細なポップスというべきであろう。歌謡を力んだグループが却って歌謡から遠のき、ロック・ポップスと叫ぶグループが歌謡に肉薄するの妙。

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