最強のボーダーGS

チコとビーグルズ

Chiko & Beagles

女王様と奴隷みたいなイメージが何故かある


 このバンドに関してはGSじゃないという方もおられるかもしれませんが、ピンキーとキラーズに比べまったくラテン色がなく、ベイビーツあたりよりもかなりロック度が高いので私はGSにしてやってもいいじゃないのと思います。なによりファズをはじめとしたサウンド面でのGSっぷりは特筆すべきものがあると思いますが・・・。

 ビーグルスは昭和43年に大阪で結成されたバンドで当初は「チコとバッファロー」と名乗っていた。単数形なのでおそらく近鉄のニックネームから取ったものと思われる。(←この部分については下参照)大阪のクラブ出演中に橋幸夫にスカウトされ、折からのピンキラブームとビクターのGS潰し政策によって早くも同年12月にコロムビアのジェノバとの競作という形で「帰り道は遠かった」でデビューした。この歌はオリコン14位に入るヒットとなった。しかし後に近田春夫に「10年たったら確実にいないバンドとわかった」と評されたピンキラの二番煎じっぷりが当時から鼻につき、翌年4月発売の第二弾「遊びつかれた帰り道」は早くも大幅な売上ダウンとなった。もっとも本人はピンキラよりうちのほうが古いと言い張っていたらしい。なお、この間メンバーの一部が元フレッシュメンのメンバーに入れ替わっている。9月には気合を入れた筒美京平作品「新宿マドモアゼル」をリリースしたが、これは名曲ながらヒットしなかった。しばらくリリース期間があいたあと「夕日に祈りを」、次いで「オンボロ汽車ポッポ」をリリースしたものの、近田の予感どおり、ここで打ち止めとなった。

 ビーグルスのサウンドは当時の日本の女性ビートシンガー特有の拳の利いた吸い付くようなハスキーな歌唱がいうまでもなく特徴だが、意外なロック度の高さにも注目されるところだ。おそらくレコードでは自分たちで演奏はしていないと思われるが、どの曲もまとまった演奏が聞けて大変グループがある。また、適度な歌謡曲くささも壺が抑えられており、ピンキラとは違うあくの強さ、雑草ゆえの強さが漲っていて歌謡曲ものには大変ありがたいバンドとなっている。

 なお、女性のメンバーがいたGSは他に全員女性だったピンキーチックスをはじめ、ボーカルで参加していた初期のダウンビーツ、沢村和子とピーターパンがいるが、ほかにも、レコード発売まで行かなかったバンドも多くあり、その中ではサファイヤーズや東京ピンクパールズなどが書籍に紹介されたため比較的有名である。映画などを見る限りではピンキーチックスは多分結構ちゃんと演奏できそうな気がする。

 

※上の文について元メンバー・富岡さまから丁重なメールを頂きましたので、以下の通り訂正させていただきます。

「当初は「チコとバッファロー」と名乗っていた。単数形なのでおそらく近鉄のニックネームから取ったものと思われる。」

チコを加入前のもともとのグループ名は「バッファローズ」と言う名で東京を中心にバンド活動を行っており、その後、ビクターレコードのオーディションを受けた頃から、グループ名を新たにビーグル犬からとり「ビーグルス」と言う名前に変更した。なお、はじめは男だけのグループで、R&B 系のバンドとしてビクターからデビューする予定だったが、暫くたったある日、ビクターレコードの方から、大阪のドンショップと言う店で歌っている「チコ」と言う女性ボーカルを、グループに加えて見ては、との依頼があり、チコをビーグルスの一員として加えたとのこと。
 また、彼らの所属していた橋幸夫のオフィス(ワールドプロモーション)は当時、赤坂にあり、後に「ピーター」や「アン真理子」等もこのオフィスに在籍していた。


パーソネル

チコ(硲 千鶴子) ボーカル

ジョージ 堀 ボーカル(一枚目まで)

土屋 健二 リードギター(一枚目まで)

富岡 隆広 ベース(※「パーソネルの欄で、『富岡 盛広』と記載されておりますが、これは当時一部の雑誌等が誤って記載したもので正しくは『富岡 隆広』です。」と富岡様ご本人からご指摘がありました。)

鈴木 篤 エレクトーン(一枚目まで)

吉田 俊夫 ドラム

関森 清 キーボード (元・ザ・フレッシュメン、二枚目から)

石橋 治虫 ギター  (元・ザ・フレッシュメン、二枚目から)


ディスコグラフィー(全曲CD化済み。)

発売日 カタログ番号 タイトル 作詞 作曲 編曲 オリコン順位 備考
43.12.5 ビクターSV785 帰り道は遠かった 藤本義一 奥村英夫 寺岡真三 15.5万枚/ 14位   まるで馬子唄のように始まるこのバンドのデビューヒット。明らかにスタジオミュージシャンによる演奏だが、チコのボーカルがうねりをあげてあおりまくり、妙にグルーヴ感がある。ジェノババージョンとイントロが違うがこちらのほうがオリジナルに近い。
思い出だけで 白藤丈二 英げん 寺岡真三  少しジャズの入った中庸な歌謡曲で、さほど面白い曲ではないが誠実に歌い上げる。
44.4.5 ビクターSV821 遊びつかれた帰り道 藤本義一 奥村英夫 寺岡真三 0.3万枚/78位  前作のリフをそのまま流用した二番煎じの二番煎じとも言うべき恐ろしく軽薄な曲。練りこみが足らないとしか言いようがない。
いとしのジェニー 藤本義一 奥村英夫 寺岡真三  ハモニカが目立つ霧に包まれたようなサウンドメイクのむちゃくちゃ重苦しい馬子唄風R&Bの小品。石橋をメインにチコと交互に歌われる。えらい退廃的だが原因は地獄の底から滲み出てきたようなチコの声のせい。荒んだ雰囲気が情緒満点の佳作。
44.9.5 ビクターSV879 新宿マドモアゼル 橋本淳 筒美京平 筒美京平 ランク外  このバンドの最高傑作。嵐のように巻き上がるファズギターとそれをさらに燃え上がらせるストリングスのイントロから、落ち着き払って始まるボーカル、緊張感あふれる白熱したギターソロ、ちょっと意表をつく展開など山場てんこ盛りの大快作。特に橋本淳の作詞の魅力が爆発おり、「夕陽のようなカクテル飲んで」という言葉の鮮烈さにはめまいさえ覚える。大好きな曲。
港のマリー 橋本淳 三原綱木 筒美京平  ブルコメの三原綱木が作曲。リフなど前作までの路線を引き継いだ歌謡曲。リズムなどがジュリーとバロンの「ブルーロンサムドリーム」を思わせるが、特にオルガンの音はズーニーヴーを連想させる。いいタイトルだ。
45.4 ビクターSV2007 夕日に祈りを 橋本淳 寺岡真三   ランク外  ホーンを前面に起用したいなたいマイナー・ビートバラード。妙なメロディーやこぶし回しなどが起用され、典型的和製60年代ガールポップとなっているのがいじらしい。
傷だらけの人形 橋本淳 寺岡真三    ロスプリモス「ヘッドライト」を思わせる夜の臭いがプンプンするアダルト・オリエンテッドなマイナー・バラード。全くのラテン系ムードコーラスだが、メンバーのコーラスなどグループとしての気配は一切なし。キングレコードのバンドみたいな音。
45.9 ビクターSV2066 オンボロ汽車ポッポ 石坂まさを 石坂まさを 池田孝 ランク外  殆ど言及されたことのないチコビーのラスト・シングル?SF的なコミックソングで呑気なことこの上ない。曲調はカントリーでR&Bは何処へいったんやというような長閑さ。奇襲攻撃的なチコの台詞が赤面もの。しかし、これでは売れないよ。
愛の掟 石坂まさを 野々卓也 池田孝  B面は所謂世間でいうところの「昭和歌謡」の典型的な曲で、場合によってはDJユースも可能なベースの唸るグルーヴィーな歌。これも石坂作品で、それらしく捨て鉢なことこの上ない。

カバース

新宿マドモアゼル 渚ようこ

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