キュロットスカートの悪魔
ザ・クーガーズ
The Cougers
普通のかっこをし出したころのガレージの大傑作。
ザ・クーガーズは幾分有名ですね。(そうなんだって!)キュロットスカートを着用したいかしたガレージバンド。
もともとは「クライクライクライ」をリリースしたことのある倉光薫が41年10月に結成したゲーターズというエレキバンドだったが、42年9月、クラウンのやけくそなGS政策にのってデビューする際に「想い出の赤いパラソル」(高石友也の「想い出の赤いヤッケ」の本歌)で既にデビューしていた出光功をボーカルに加えてこのバンド名になった。この時クラウンから他のバンドとの差別化を図るため丸坊主になるかスカートを履くかどっちかにしろと命令され、スカートだったら家で脱げるけど丸坊主だったら家でも丸坊主という理由でスカートを履くことになった。このスカートはなかなか好評で、地方公演でタキシードで興行したとき抗議されたという。また、スカートめくりの被害にもあった。クラウン・PWの第一号タレントとして泉アキ、レインジャーズ、サムライズと一緒にデビューしたが、このときまだ本格的でなかったGS路線に対する安全策としてバンド名義のシングルと青春歌手とバックバンドという形のシングルを同時に出すという変則的なデビューになった。しかし、この二股作戦にも関わらずどちらもあたらず、以降のシングルも大ヒットに縁遠かった。あまりテレビには出ず、クラウンレコードの番組以外では露出は少なかった。
なお、やや遅れて「ホンキートンクウィメン」というグルーヴィーなアルバムを出した同名のバンドがいるが、これは石川晶らを中心とした匿名スタジオミュージシャン的なジャズバンドで全く無関係。
このバンドはなんといっても演奏がかっこいい。すかすかなビート演奏にびりびりなファズギターがかぶさり闇雲なコーラスが混ぜ返すという完璧な構成を持っている。情熱だけで演奏しているという感じが凄く伝わってくる。人によってはそれをボーカルがぶちこわしという解説をするけれども、これはこれでこのバンドの味です。大好き。もしかしてこのバンドあたりだと当時の人はありがたみが解らなかったのかも。
また訃報が。出光功(溝口伸郎)様のご冥福を謹んでお祈りいたします。
パーソネル
松本嘉朗 リードギター
林 靖雄 サイドギター
出光 功 ボーカル
島田宏昌 ベース、のちビジー・フォー(現・島田与作)
倉光 薫 オルガン
土志田正夫 ドラムス
ディスコグラフィー(変色しているのはCD化済み)
発売日 | カタログ番号 | タイトル | 作詞 | 作曲 | 編曲 | オリコン順位 | 備考 |
42.10.10 | クラウンPW2 | テクテク天国 | 水沢圭吾 | 竹村次郎 | 発足前 | 衝撃のデビュー作。元気な女の子たちをバックに従えて脳天気で少し湿ったテクテクテクテクという狂おしいコーラスとファズギターがおりなすクラウン独特の妙な世界を背景としたグッド・ガレージ・チューン。やや軽め。 | |
アフロデティ | 春名美幸 | 原田良一 | よりビートを強調したナンバー。青春歌謡的なボーカルが生々しくいやらしく感じる。コーラスのかぶせ方がいかにもこの頃って感じで素晴らしい。 | ||||
42.10.10 | クラウンPW4 | あこがれ | なかにし礼 | 三木たかし | 発足前 | 田舎の祭りとかの喉自慢のバックに呼ばれるようなどさ廻りの営業バンドを思わせる音。布施明を安く冷静にしたような歌。 | |
こころの恋人 | なかにし礼 | 三木たかし | 日本歌謡史150年の中でも最上位にランクされるべき完成された歌謡曲の大名曲。涙を流さずにはいられない情緒にまさる感傷的ナンバー。全体的に「ブルーシャトー」を意識していると思われる曲。 | ||||
43.2.1 | クラウンPW10 | 好きなんだ | 倉光薫 | 倉光薫 | ランク外 | これもグッド・ガレージ・チューン。メインボーカルがじめっとしている分吹っ切れたようなシャウトの爽快感が心地よい。これは完全に自分たちのオリジナルなのでいつもこんな音だしてたんだろうと推測。 | |
J&A | 水沢圭吾 | 小杉仁三 | いかにもGSな歌詞で、「白鳥のバラード」や「バラの想い出」がガレージに転んだような歌。これ農協のCM曲とかで流して欲しい。 | ||||
43.5.1 | クラウンPW22 | 青い太陽 | 水沢圭吾 | 鏑木創 | ランク外 | スキップのリズムを使ったオーケストレーテッドされた青春歌謡。青春歌謡以外の何者でもないやけに嬉しそうなボーカルが印象的。いい歌といえばいい歌。小林幸子主演ドラマの主題歌。 | |
可愛い悪魔 | 水沢圭吾 | 鏑木創 | オルガンを全面に出した小品。ロックではないがガレージの範疇。畳みかけるような歌。 |