吼える地獄のエンターテイメント集団

ファンキー・プリンス

Funky Prince



グループサウンドの最異端曲。


 遥か服部良一先生の昔から日本のポップミュージックにおいて大阪という土地は重要な地位を占めてきた。GS時代も例外ではなく、タイガース(出身は京都だが)、オックスの二大バンドを筆頭に、ライオンズ、リンドなど数多くの名バンドを生み出し、スパイダース、フラワーズなどにも大阪出身者が参加していた。また、レコード未発売だがスパイダース以前にリバプールスタイルのバンドが存在していたらしい。そんな大阪のGSシーンの中で特に大きな存在感があったのが「ナンバ一番」というジャズ喫茶である。ここは当時のトップジャズ喫茶として知られていたが、ここでリンド、ファニーズ、ライダース、オックスらに次いでトップバンドとなったのがこのファンキープリンスである。

 「泥臭い王子様」という示唆的な名前をもつこのバンドは、演芸出身者を中心に昭和43年3月に結成され、同年5月にははやくも「ナンバ一番」の専属となった。俳優平井昌一のバックバンドをしながら経験を積んだ。手品などを取り入れたステージングが評判を呼び、44年にはナンバ一番のトップにのしあがり、関西ではかなり名の通ったバンドとなった。なお、このころ奈良あやめ池で開かれたショーで5000人の動員を記録したという。この年の5月、ビクターから出色の名曲「おやすみ大阪」でようやくデビュー。この曲は関西ではそこそこヒットしたようだが、全国的な知名度の低さとGSシーン自体の冷え込みに泣かされ、オリコンチャートに登場することはなかった。その後埋め草のようなシングルが一枚出ただけで終わってしまった。 このバンドがステージでどのような音を出していたのかはレコードからは殆ど窺い知れないが、ちゃんとしっかりとした演奏は出来たとのこと。

 このバンドは末期GSのもつ怒涛の歌謡曲化の波に乗ったところに大きな特徴があるが、ベアーズやブルコメと同じくこれを肯定的に捉え果敢に新たな可能性に挑戦していったという点が特筆される。


パーソネル

水谷ひろし ヴォーカル(現・司会者)

吉原淳 ベース

太田健 サイド・ギター

直川良 ドラム

坂井修 エレクトーン

原田進 リードギター


ディスコグラフィー(全曲CD化済み)

発売日

カタログ番号

タイトル

作詞

作曲

編曲

オリコン順位

備考

44.5.5

ビクターSV843

おやすみ大阪

山上路夫

大野正雄

近藤進 

ランク外

 ファズギター一発で始まるGSによる歌謡曲としては屈指の名曲。泣きそうなボーカルに熱っぽいストリングスが絡む。大阪を舞台とした純愛を歌い上げるが、湿っているため地に足がついた子供の手にはなく、その割に夜の世界やどろどろとした恋愛感情や事情とは無縁の独特の世界となっている。

港で二人は

山上路夫

大野正雄

近藤進 

 大人の港町・神戸のおしゃれなイメージをそのまま体現したような佳曲。押さえ切れない感情がついに爆発し堰を切ったかのようなさびでの転調が見事な純歌謡。ムードコーラスと似て非なる独特の曲調が印象的。

44.11.

ビクターSV910

涙のイヤリング

中村小太郎

城二三八

近藤進 

ランク外

 キングトーンズあたりを意識したような遥か遠くでR&Bの匂いがない事もない、どうにももりあがらないメロディーのバラード。吹っ切り方の足りないサビは欲求不満も募らせるが声のひっくりかえし方にはGS魂を感じさせる。もともとはチェック・メイツというバンドのデビュー曲に予定されていた。

雨と風とリボン

伊藤アキラ

葵まさひこ

葵まさひこ 

 穏やかな三連ロッカバラード。透明感あふれる国民歌謡の後裔的作品。布施明あたりが歌ったらはまるような気がする。

 この他「恋人同士」というオリジナルがラジオ放送されたことがある。これは激しいギターとチープなオルガンが印象的な極めて歌謡化されたGまことにSらしいパンクバラード。

カバース

「おやすみ大阪」 渚にて

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