謎の濃厚バリトンボーカル
ファイブ・キャンドルズ
Five Candles
このバンドについては「日本ロック紀」においてもアリバイ的に触れられているだけで、メンバーの構成や概要はよく解りません。「蒼いムードのGSナイト」(新星堂PSW10031)のライナーなどに拠れば、昭和41年に城西高校の学生らによって結成されたグループで、ルックスに拠って言われているようなおじさんグループでも、相当なキャリアのあるグループでもありません。43年10月にコロムビアから「アイ・ラブ・ビイ・ビイ」でデビュー、結局コロムビアに3枚、テイチクに移籍して2枚の計5枚のシングルレコードを残しました。(「日本ロック紀」の記述は誤り。)しかし、ヒットには縁遠い所でありました。最後にリリースされたレコードから察するに44年の末から45年中盤には活動は後退していたと思われます。
ヴァイヴを置くなどどちらかといえばムードコーラスに近い構成であったようですが、メンバーの石田と池田がデビュー曲のA・B面を作曲したことや、またそれ以降の曲でも学生フォーク的な感覚が強く打ち出ていることでもわかるとおり、典型的なムードコーラスグループとはかなり距離感があります。ビートを重視していたことやいわゆるやおい的な詞をもつ曲が多いことからブルーベルシンガーズやディ&ナイツと同じ様にGSとカレッジフォークとムードコーラスの境界線上で右往左往していたグループと言って良いかと思います。
このバンドはデビュー曲の「アイ・ラヴ・ビイ・ビイ」は「ロック画報」でガレージ調GS曲の筆頭に置かれるようなファズを厚くかけたグルーヴ満点のダンスチューンですが、これは全く突然変異的な曲と言って良く、かといって「大阪の娘」以外にムードコーラス色の強い曲もありません。このあとは非常に落ち着いたシックな曲調のフォークソングが主流です。こういった訳でGSというのには難しいかもしれませんが、しかしハイローズがGSであるとする以上、このバンドを排除するいわれはないと思われます。
(パーソネル)
石田敏彦 ギター(テナー)
萱場憲司 ヴァイブ、パーカッション(リードテナー)
五十嵐一正 ピアノ、オルガン(バス)
前岡進 ベース(バリトン)
池田栄太郎 ドラムス
(ディスコグラフィー)変色しているものはCD化済み。
発売日 |
カタログ番号 |
タイトル |
作詞 |
作曲 |
編曲 |
オリコン順位 |
備考 |
43.10. |
コロムビアP43 |
アイ・ラヴ・ビイ・ビイ |
石田敏彦 |
石田敏彦 |
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ランク外 |
攻撃的なファズギターと快活なパーカッションに朗々としたバリトンボーカルとファルセットコーラスが絡むグッド・グルーヴ・チューン。ビィビィとはおそらくブリジッド・バルドーのことだろう。彼女に対する恋文か。石田はメンバーかも知れない。ジャケットはファイブキャンドルズという名前なのに3本しか蝋燭が立っていないというつっこみで有名。 |
大阪の娘 |
真家宏満 |
池田栄太郎 |
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元ジャニーズの真家が作詞、メンバーの池田が作曲したマイナー調ムードコーラス曲。女性への幼児的な憧れを綴った歌詞といかにもチープなオルガンをフィーチャーしたアダルトなダークダックスのような曲調の対比が面白い。コーラスの挟み方はかなり考えられている。 |
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44.2. |
コロムビアP52 |
夕陽にさよならを |
保富康午 |
藤家虹二 |
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ランク外 |
彼らの本質だと思われるトニーズあたりに通じる素直なフォークロックで、流行のカレッジ・フォークのやおいの世界に肉薄。なんとなくダウンビーツの「白い珊瑚礁」に感触が似ている。 |
愛をあげよう |
椿もとみ |
椿もとみ |
石田敏彦 |
躍動感溢れるイントロで始まる、いかにも子門真人の作りそうな愛情溢れる視線で作られたビート・ポップス。 |
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44.6. |
コロムビアP62 |
逢いたくない |
一谷伸江 |
小川よしあき |
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ランク外 |
ブルー・コメッツの「悲しき玩具」にバブルガムポップを被せたようなドライなのにセンチメンタルな曲だが全くキャッチーな所がないのが惜しい。 |
気になるあの人 |
一谷伸江 |
葵まさひこ |
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チューリップの「僕の作った愛の歌」を六〇年代フォークロックグループのメンタリティで唄っているような歌。 |
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44.9. |
ユニオンUS630J |
はてなき旅 |
吉田央 |
ヘンリー |
高原哲 |
ランク外 |
ヴィレッジシンガーズの「ブルーロビン」風に始まるが、その後はフォークバラードとも純歌謡ともぬめっとしたソフトロックとも言いがたい何ともつかみ所のない曲が歌われる。バリトンボーカルにハーモニカが絡むが少しキーがあっていない部分が見受けられる。よくはない。 |
悲しみの彼方に |
ルーベン・オルティス(訳)島村葉二 |
スティーブン・オルテス |
高原哲 |
落ち着いたクラシカルなアレンジのバラードで外国曲の台詞入り日本語カバーだがオリジナルがよくわからない。ややべた付いたボーカルが気になるが、ハーモニーが付けられるという強みを生かした曲。ソフトロックブームに乗った曲であろう。原題は「I Wait For You」。 |
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45?.. |
テイチクA57 |
風とボクとの小さな秘密 |
石田敏彦(補)落合武司 |
石田敏彦(補)落合武司 |
青木望 |
ランク外 |
オルゴールを駆使して少年時代の想い出を歌い上げる、紛れもないやおいの世界の典型的カレッジフォーク曲。当然小品。 |
恋のゲーム |
石田敏彦 |
石田敏彦 |
青木望 |
やたらにキャッチーな曲調と手堅いボーカルのギャップが楽しいビートポップス。詞がやたらに純情でGSとは全く違ったメンタリティが基礎にあることがよく解る。 |