GS第三の先制弾
アイドルス
(旧名=ザ・ジャイアンツ/異称=ワイルダーズ)
Idols
(old name:The Giants/other name:Wilders)
これが問題のジャケット。紋章がお洒落。
日本最古のGSの一つである。もともとは川崎のクラブ「フロリダ」などで活躍していたエレキバンド「ザ・スペイスメン」のボーカル部隊。昭和39年にこれが独立し、一人加わって楽器を持つようになり、ザ・ジャイアンツと名乗った。所謂和製ビートルズと言われるグループの一つではあったが、他のグループが結局楽器を弾かないメンバーがいたりして演奏にサポートメンバーが加わったりしていたのに対し、彼らは自分たちだけで演奏歌唱OKという完全なビートルズスタイルであったのがこの時代のバンドとしては大変珍しかった。そうこうしているうちに昭和40年9月にはビクターからエレキ歌謡的な「恋愛射撃隊」でデビューした。この歌は各社から競作されたもので、たまたま彼らに白羽の矢が立ったようなものだったが、B面ともども、この時代の、言わばプレGS時代のバンドの演奏が聞ける音源として貴重である。しかし、ジャイアンツとしてのレコードのリリースはこれだけに終わり、翌年1月にはアイドルスと改名した。結局スパイダースに次ぐ早い段階でのレコードデビューが果たせたにも拘わらず、あまりに早すぎてブームに乗れなかった。やはりまがりなりにもGSのブームは41年のブルコメ「青い瞳」を待たねばならない。さて、改名後このバンドは全員が譜面が読めたうえ所属事務所が映画音楽などに強かったこともありテレビや映画のサントラ関係に担ぎ出されることが多かった。ただし、「非常にそつなくこなしていた」という話が大筋だが、一部で「演奏に乗り気でなく何度も音楽監督に注意されていた」という目撃談もあってよくわからない。また、バッキングの仕事もこなしている。アイドルスとしてのデビューはポリドールの歌謡曲番号帯からであったが、43年8月と既にブームも絶頂に達していた頃でやや遅きに失した。ポリドールでは続いてバッキングの仕事をこなしつつ、いかにもGSらしい楽曲を2枚出した後極端に歌謡曲化したシングルを一枚リリースしただけでヒットには恵まれなかった。なお、ポリドールでの活動に平行してキングからワイルダースという名前でいかにもGS時代の演奏で押し通すビートインストのアルバムが2枚出ている。テレビへのバンド役でのエキストラ出演も多かったらしい。44年末解散。
パーソネル
〔旧〕ザ・ジャイアンツ
今井志郎 ドラムス(元 ザ・スペイスメン)
田中光男 サイド・ギター(元 ザ・スペイスメン)
石橋一夫 リード・ギター
中村秀雄 ベース(元 ザ・スペイスメン)
アイドルス
中村ヒデミ リードギター(元 〔旧〕ザ・ジャイアンツ)
丘マサミ ドラムス
田中ミツオ サイドギター(元 〔旧〕ザ・ジャイアンツ)
浅賀トモミ ベース
江見ヨシオ オルガン
ディスコグラフィー(変色しているものはCD化済み)
〈旧〉ザ・ジャイアンツ
EP
発売日 |
カタログ番号 |
タイトル |
作詞 |
作曲 |
編曲 |
オリコン順位/枚数 |
備考 |
40.9.15 |
ビクターSV294 |
恋愛射撃隊 |
水島哲 |
新田光 |
原田良一 |
発足前 |
いかにもエレキ歌謡。まるで寮歌のような歌で、歌い方も寮歌のよう。これでもかと入る豪放なテケテケエレキが痛快で、キッチュな魅力を放つ。競作だがほかの人のバージョン聞いたことないな。親父が知ってたぐらいなのでそこそこ知られた歌のようだ。 |
あと五分だけ待ってみよう |
春名美幸 |
原田良一 |
原田良一 |
循環コードを使ったアーリー60’sアメリカンポップスで、曲としては別にどうということもないが、資料として貴重。 |
他に未発表曲として田中が作ったオリジナル「女の子の唄」があり、CD化されている。口笛がフィーチャーされたこぢんまりとした地味な青春歌謡だが、エレキバンドの意地を感じるテケテケしたイントロが聞き物。
他にすっかり存在を忘れていたが、「若いダンスパーティーVol.2」にもスペイスメンに混じって音源があり、そのうち日野てる子をエレキインストとしてカバーした「夏の日の想い出」がCD化されている。なお「若いダンスパーティー」にもジャイアンツと名乗る前の彼らの音源が収録されている。
アイドルス
EP
発売日 |
レコード番号 |
タイトル |
作詞 |
作曲 |
編曲 |
オリコン順位/枚数 |
備考 |
43.8.5 |
ポリドールSDR1369 |
夕陽よ燃えろ |
山口あかり |
中島安敏 |
中島安敏 |
ランク外 |
「ビートにハワイアンの甘さを加えたサウンド」が売りだったが、何処がハワイアンなのかよくわからない穏やかなフォークバラード。「天使の誘惑」をやろうとして制作陣によく意図が伝わらなかったのではないか。このジャケットを撮りに太平洋岸へ行ったが、関東の近場に夕陽の入るところなどあるはずもなく、結局合成写真になったらしい。って君たちは映画「グリーンベレー」のラストシーンか。リードボーカルは丘。 |
まぼろしのシェラザード |
大前きよを (補)信楽順 |
信楽順 |
中島安敏 |
安いオルガンの音が何処までも鳴り響くアラビア調の純歌謡。このバンドの中では最も所謂GS的な曲。ベースがよく動いている。 |
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44.4 |
ポリドールSDR1418 |
嫁ゆかば |
世志凡太 |
小林亜星 |
小林亜星 |
ランク外 |
立花京子名義で、アイドルスはこれにバックをつけている。ジェントルな雰囲気のコーラスと演奏だが、曲自体は別にどうと言うこともない普通の純歌謡。アイドルスもゲスト出演した同名ドラマの主題歌。 |
恋の伝説 |
大前きよを/みや・ゆきひこ(合作) |
永作幸男 |
永作幸男 |
GSの秘宝。ウォーカーブラザーズの「孤独の太陽」とアダムスの「旧約聖書」を混ぜ込んだような歌で、強引な展開に感動を覚える。詞もGSでなければそもそも表現すら出来ない、ギリシャ神話を下敷きにした幻想的なものだが、よく聴くと悲恋のすえの自殺の暗喩になっている。もちろんこのバンドの最高傑作。 |
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44.9 |
ポリドールSDR1450 |
あの日の君に |
北ゆうこ |
益山ひろし |
中村友禅 |
ランク外 |
ギターの音以外特にみるべき所のない歌謡曲。 |
さよならは朝が来てから |
清水真智 |
新城健史 |
永作幸男 |
「雨のバラード」に似たイントロを持つ臭目の純歌謡。穏やかな導入だが、サビでほんの少しテンションがあがるなど、レオビーツに通ずるところがある。作曲はリバティーズの人。 |
この他、叶修二のシングル「抱きしめて抱きしめて」「いつまでも愛したい」の両面でバッキングつけている。前者はニューロックとは違った壮絶なワウワウギターが聞けるので、必聴のこと。他に「服部良一魅力の全て」で二曲を披露しているのは比較的有名だが、都はるみの「花のステージ第5集」でも「東京ブギ」「アイレ可愛いや」を披露している。こちらはアイドルズがわざわざバックをつけている意義がよく解らないところもあるが、或いは同一音源か。他に「平四郎危機一髪」の主題歌など、サントラ関係の仕事も残っている。
このほか、未発表に終わった「幸福への招待状」(?)なる曲がある。これはストリングスもばっちり入ったハッピーなソフトロックで、発表された一連のアイドルズの曲とは全く異質な曲。完成度も高いがヒットを狙うにはやや地味か。「愛の伝説」と音が似ているので当初は「幸福へ・・・」と「愛の・・・」をカップリングにしようとしていたところ、「嫁ゆかば」が入ってきたため急遽外されたものと推測する。
ワイルダース
LP(全曲未CD化。)
発売日 |
カタログ番号 |
タイトル |
収録曲 |
備考 |
43.7 |
キング SKK449 |
ビート・イン・ディスコ |
A愛の園/神様お願い/砂の十字架/バラの恋人/あの時君は若かった/亜麻色の髪の乙女 Bレディ・マドンナ/ホリデー/ディ・ドリーム/雨に消えた恋/チ・ビ・チ・ビ・ダ/シーズ・ア・レインボウ |
当時のヒット曲をインストにしたもの。A面には邦楽、B面には洋楽を並べている。ファズを前面に押し出した演奏であり、グルーヴもそれなりにはあるが、ビートの切れはいまいち。また、ストリングスの多用も評価の分かれるところかも知れない。個人的には好きな選曲で「愛の園」がファズインスト化されているのには思わずニヤリ。それにしてもこのやる気のないジャケットはどうにかならなかったものか。 |
43.11 |
キングSSK473 |
ロック・ビート・ア・ゴーゴー ルシア |
Aルシア/ダイアナ/ビー・バップ・ア・ルーラ/愛しておくれ/冷たくしないで/カンサス・シティ B恋の片道切符/ハート・ブレイク・ホテル/監獄ロック/君はわが運命/ジェニー・ジェニー/メンフィス・テネシー |
往年のロカビリーなどをエレキ化したもの。ファズギターなどを駆使した演奏はいかにもGS時代の音ではあるが、全体的には今ひとつといったところ。ただし「恋の片道切符」はエレキ情緒を強く感じさせ、このアルバムでは唯一合格点をクリアしている。(matさまありがとうございました。) |
他に「ヒット速報’68」があるとされているが、現物を入手したところ「ビート・イン・ディスコ」から数曲取った単なる喫茶店伴奏用オムニバス盤だった。