60年代から生き残った「北海道のブルーコメッツ」

ザ・キッパーズ

The Kippers

実はオリコン100位以内に入ったGSの楽曲の中では一応最後にCD化された作品。


 GSはご存知のとおりライブとレコードでぜんぜん違う傾向の歌をやっていることも多く、シングル曲なんてやらないバンドもあった。レコードに残っている曲がムード歌謡ズブズブでもステージではストーンズやビージーズやジミヘンなんかをやっていたのである。つまり、GSというジャンル分けとレコードの音はあんまり関係がないということである。とは言っても今となってはバンド自体消滅してしまっているからレコードの音でしか往時のサウンドは偲べない。そんな中、GS時代から解散することなく生き残ったこのバンドなどは当時のステージを偲ぶのに最適であろう。このキッパーズもレコードではムード歌謡ばっかりリリースしていたバンドである。しかし、彼らもステージではロック系統の洋楽曲を演奏していた。

 キッパーズは38年4月に結成され、やがて北海道放送のレギュラーバンドとして「北海道のブルーコメッツ」の異名を頂くほどの人気バンドとなった。43年にアポロンから8トラカセットをリリースしたあと、44年9月にコロムビアから「風のふるさと」でデビューした。これはかつてブルコメのシングル「愛の終わりに」を手がけた北海道放送のディレクター彩木雅夫が作曲した曲であり、北海道放送の番組のテーマとして2年間使われたという曲である。これはエレキフォークを狙った曲であったが実態はムードコーラスとあまり区別がつかない楽曲だった。この曲はスマッシュヒットしたがGS時代は結局このリリースだけで終わった。その後徳間から古くからのオリジナル「はまなすの恋」などを出したり、トリオレコードに移籍したりしたが、全国的なヒットには恵まれなかった。しかし、現在もライヴバンドとして自分たちの店キッパーズを中心にオールディーズなどを演奏し客を楽しませ続けており、唯一解散を経験していないGSとして活躍中である。また、色々なロック歌手らの北海道でのライヴにメンバーがバックとして駆り出されることも多いらしい。

 このバンドのレコードでの楽曲はロック的要素こそあまりないものの、アダルトテイストでシックで穏やかな楽曲が多く、「北海道のブルーコメッツ」の名は伊達じゃないと思うのです。なんにせよ、レコードと実際の音が現役で比べられるのはこのバンドだけでしょう。現在のライヴではGSのほか一世代前の所謂ポップスや「青い影」なんかを演奏しておられる。なお、北海道では超有名バンドで「はまなすの恋」などは道民の愛唱歌になっているとのこと。レコードなどは手に入れにくいでしょうが、それを聞き込み、改めてライブを体験すると、また、その情緒に深みが感じられるのではないかと思います。・・・なんて書いてたら平成時代のライブ盤CDがあることが判明したうえに、今年(平成16年)結成四十周年を記念して未発表曲を含むCDが発売された。(詳細/伴う改訂は実物入手後に行う予定。)パワフルに前進し続ける現役GSグループに栄光あれ。

 本ページにつき、POOHSAN43さま有難うございました。


パーソネル

(デビュー時)

伊藤美智弘 リードギター

渡辺康雄 ドラムス(伊藤の弟)

田村昌彦 オルガン

関東忠勝 サックス

浜祐次 ベース

池田純 ボーカル

(平成8年時)

渡部弘康 リードギター・コーラス(=伊藤美智弘)

渡部康雄 ドラムス・ボーカル

関東忠勝 サックス・ギター・ボーカル

幸山稔 ベース・コーラス

大西ちあき キーボード・コーラス

菊池純一 ボーカル(=池田純)

西島利恵 ボーカル


ディスコグラフィー(変色しているのは既CD化)

発売日 カタログ番号 タイトル 作詞 作曲 編曲 オリコン順位 備考
44.9.25 コロムビアP77 風のふるさと 有馬三恵子 彩木雅夫 郷徹也 78位

0.8万枚

 のどかな北海道の大地が眼前に広がる穏やかな心に染み入る歌謡曲。一見陳腐なクールファイブ調のワワワワというコーラスはこの時点では最先端なので、果敢に挑戦という表現のほうが似合う。完成度の高さに比して押しが弱く、あまりヒットは狙えそうにない。最初のサックスはヴィレッジシンガースの「悲しい星空」を思わせる。(こっちのほうがいい歌だが。)間奏はサックスのソロ。
星のロマン 山田亮 彩木雅夫 郷徹也  出来のいいムードコーラス。フルートなどが入り、メリハリが利いた曲調でヒットしなかったのが不思議。自分でヒット性があるなどと解説に書くぐらいの自信作であるが、じゃあなんでB面にしたのだろう。A面よりいい歌です。
48.3 徳間ダンVA23 はまなすの恋 高柳公 彩木雅夫 竜崎孝路 ランク外  サックスにストリングスが絡みつく急流なイントロで一気に引き込む歌謡曲。歌本編は落ち着き払った印象が強いが、メリハリの利かせ方はさすが。70年代的な音だが曲そのものは60年代の香がぷんぷんし、GS情緒を満足させる。
夜明けのファンタジー 三谷ケイ 彩木雅夫 竜崎孝路  典型的な70年代ニューミュージック系歌謡。ヤマハ臭プンプン。ピアノ主戦のバラード。夜明けの情景は見事に描ききっているがもはやGSじゃないな。
49.5.1 徳間ダンVA38 星のコーラス 三谷ケイ 星秀明 竜崎孝路 ランク外  あまり知られていない徳間での二枚目のレコード。ジャケットはまるっきりムードコーラスっぽい。ニューミュージック時代のホームソング。ポニーズの「ブルーエンジェル」に似ていないこともないが、トランザムの影響が多分に見受けられる。自分たちで演奏しているのか判定しかねる。
小雨の風景画 三谷ケイ 星秀明 竜崎孝路  ニューミュージックの臭いが強烈だが、仄かに60年代の香りも漂う絶妙な作品。ビクター時代のブルーコメッツを思わせるのは渾名の故か。(両面のデータについてPOOHSAN43さま有難うございました。)
56.4 トリオ3B702 結婚します 中川新司 彩木雅夫 竜崎孝路 ランク外  もっと知られていないトリオから出したシングル。単なるアダルトポップス。グループサウンズとして聞いてはいけない。ニューミュージック流れのバラード。ボーカルのキーが合っていない。
ほほえみながら 中川新司 彩木雅夫 竜崎孝路  A面と同じ路線だが更に演歌より。ムードコーラスですらない。キーは合っているが、まるで堀内孝雄のような臭さがあって、自分的には一番どうでも良い曲調。こちらは音そのものはいかにもなキッパーズらしさが漂っているだけに惜しい。

 他に43年にアポロンから「はまなすの恋」や「廃墟の鳩」「さよならのあとで」「おかあさん」「悲しくてやりきれない」「エメラルドの伝説」「青い果実」「いつまでもいつまでも」(←なぜかインスト)「ガールフレンド」などを演奏した8トラをリリースしている。これはノンオーケストラながらGSというよりは若手のムードコーラスバンドとしてのグルーヴが先にたつ演奏を披露し、ことにフルートが効果的に使用されている。聞いた中では「ガールフレンド」の出来がよく、実直なボーカルと遠くで多重に燃え上がるコーラス、嘆きのフルートと本家に勝るとも劣らない情緒ある演奏を披露している。(もられすさまありがとうございました。)ほかに「北海道作詞家協会10周年記念」(日音NRC・N6063)というオムニバスアルバムのバッキングに参加しているが、まるっきり演歌のアルバムで、匿名のトラに徹しており、聞いて面白いものではない。また、事実上のベストアルバムである「はまなすの恋」(ミュージックキャップトーキョーMCKP01)では未発表曲でムードコーラス調の「薔薇の追憶」(作詞曲・彩木雅夫、編曲・佐々木ヒロム)が平成15年新録音源で収録されている。なお、同アルバムには「はまなすの恋」「結婚します」のムービークリップも収録されている。(もこもこたろうさま有難うございました。)

 平成8年にインディーズでライヴ盤「マイ・バック・ページ」(ビヨンド・BRP002)をリリース。平成7年の「クリスマス・ナイト」というライヴの様子を収録しているもの。殆ど間を取らないまま一時間におよび22曲を一気に演奏するタフネスにして手堅い職人魂を垣間見られ、その営業で鍛えた腕を堪能できる。収録曲は「シェイク・ラットル・アンド・ロール」「ロコモーション」「悲しき足あと」「アイ・ラヴ・ハウ・ユー・ラヴ・ミー」「アイ・ニード・ユア・ラヴ・トゥナイト」「好きにならずにいられない」「ファイヤーボール」「アイル・ビー・ホーム」「ルシール」「ヴァケーション」「シェリー」「ダイアナ」「メドレー ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド〜悲しき雨音〜ルイジアナ・ママ〜悲しき街角〜恋の片道切符」「ヴェヒクル」「ラブ・ミー・トゥナイト」「ブルーシャトウ」「バラ色の雲」「想い出の渚」「風のふるさと」「はまなすの恋」「ハウンド・ドッグ」「ア・ビッグ・ハンク・オ・ラヴ」。(パンジーさん有難うございました。)

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