山岸英樹とサムソナイツ
Hideki Yamagishi & His Samsonites
いかにもムード歌謡。彼らが一年前はGSであったことなど誰が想像できよう。クラウンらしい良いジャケ。
山岸英樹とサムソナイツというバンドは音楽的にはサザンソウルの影響下にある、所謂アメリカ系のバンドである。新潟のクラブなどで活動を始め、地元では「信濃川慕情」という自作のオリジナル曲が評判となっていた。44年にはついに東京へ進出、クラウンからレコードを出すに至った。しかし、会社側がムードコーラス路線に不安に思ったのか「リンガース」というR&BGSとして売り出された。この第一弾「恋はふりむかない」はめちゃくちゃかっこいい歌だったが、退潮気味のGSブームの中では注目されることもなく終わってしまった。ところが、この頃クールファイブやキングトーンズらが台頭し、本格的なムード歌謡ブームが巻き起こった。そこで演歌ならお任せのクラウンは彼らにもう一度ムードコーラスに戻るよう命じ、同年9月1日からサムソナイツとして活動するようになった。再デビュー曲「こころがわり」はオリコン37位に入る中ヒットとなった。その後ヒットを出すことはなかったが
このバンドの持ち味はクールということに尽きる。いや、熱唱はしているんだけども、どうにも音がクールなのだ。音の隙間を感じさせ、そこが涼しさを醸し出しているような気がする。
パーソネル
山岸英樹 サイドギター
明田川勝美 ベース、ボーカル
田中昇亥 ドラム、ボーカル
竹島哲夫 リードギター
斎藤好夫 オルガン、ボーカル
ディスコグラフィー(変色しているのはCD化済み)
発売日 |
カタログ番号 |
タイトル |
作詞 |
作曲 |
編曲 |
オリコン順位 |
備考 |
44.5.1 |
クラウンPW59 |
恋はふりむかない |
阿久悠 |
三木たかし |
井上忠也 |
ランク外 |
リンガーズ名義。ファズギターが暴れ回る和製R&Bの傑作。かすれ気味のドラムス田中のボーカルが情緒満点。 |
二人だけの愛の言葉 |
下里英道 |
下里英道 |
井上忠也 |
オルガンが主戦のイントロから、田中によるあっさりとした純歌謡がストリングスにのって熱っぽく歌われる平庸な歌。遠くでサイケ。 |
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44. |
クラウンPW72 |
こころがわり |
岡田憲和 |
三ツ矢豊 |
高見弘 |
57位 3.9万枚 |
サザンソウル系のサウンドを取り入れたムードコーラス屈指の名曲。田中の絶唱が光る。女性コーラスの使い方やオーケストレーションも非常にセンスがよい。 |
港の女 |
高橋穣治 |
新井靖夫 |
馬飼野俊一 |
埋め草。 |
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45. |
クラウンPW88 |
世間知らず |
尾中美千絵 |
高見弘 |
高見弘 |
ランク外 |
このバンドの最高傑作。前作を踏襲しつつ、さらにセンチメンタリズムを押し進めた作品。開放感溢れるイントロから入りボーカルがさびで入れ替わるところが女性の心情を見事に表しており、作品世界に浸れる。ジャケットも見事だ。ベストセラーズとは別。 |
芦屋夫人 |
尾中美千絵 |
高見弘 |
高見弘 |
印象の薄い歌。タイトルは良いけど、それだけ。 |
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45.12 |
クラウンPW98 |
夜の手帳 |
高橋譲治 |
久保雄峰 |
馬飼野康二 |
ランク外 |
冒険心の足りない保守的なムードコーラス。かつての志はどこへ。 |
女ひとりが |
高橋譲治 |
久保雄峰 |
馬飼野康二 |
田中の中性的なボーカルを生かして女性の心情を切々と歌いこむ三連バラード。クールファイブ調だがタイトルとイントロにはデュークエイセスの「おんなひとり」をダブらせるようなつくりになっている。 |
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46. |
クラウンPW100 |
港町ホテル |
尾中美千絵 |
高見弘 |
高見弘 |
ランク外 |
サザンソウル路線ではあるが安易にまとめた感じがする。このバンドのシングル曲の中で最も印象の薄い曲のひとつ。尺八を導入したイントロのサウンドメイクはなかなかよい。 |
女の身の上 |
尾中美千絵 |
高見弘 |
高見弘 |
聞いたことすら忘れてた。彼らには似合わないクールファイブっぽいジャズ系ムードコーラス。これ聞くとやはり彼らはR&Bバンドが本領ということがよくわかる。出来不出来以前に痛々しい。 |
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46.6 |
クラウン |
ひとり暮らし |
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ランク外 |
未聴。未確認。 |
今夜の私 |
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未聴。未確認。 |
まだあるかも。「ムードコーラススペシャル」のブックレットでは全5作としているが・・・。
その他の音源
「恋はふりむかない」のラジオライヴ音源を聞いたら意外や意外、中期ビートルズがベースになっている曲だと言うことが解ってひっくり返った。ファズも薄目。