どす黒い「真珠入りロック」

シャープ・ホークス

Sharp Hawks

史上ここまでハーモニーを無視したコーラスグループがあったでしょうか。


 全てのGSの中で唯一バンドでなかったのがこのシャープ・ホークス。(後期はバンドになりますが。)しかしシャープ・ファイブとくんだ作品群はガレージ・パンク、パンク・バラードの傑作揃い。明らかに先輩格のダークダックスや同期のジャニーズ、後輩のフォーリーヴスといった連中とは全く方向性が異なり破壊力を前面に押し出したコーラスが特徴だった。これはもう世界でも珍しいガレージコーラスグループといって差し支えないでしょう。

 ホークスは「ウエストサイド物語」の影響を受けて昭和38年に結成された。当初は加古幸子(のちに金髪演歌で一世を風靡するサリー・メイ)を含む5人組で既に安岡力也らGS時代のメムバー3人が参加していた。このころは演奏部隊にキャラバンを従え、唄って踊れるアイドルグループを目指していた。やがて、演奏部隊はウエスタンキャラバンの残党が担当するようになり、「シャープホークスとそのグループ」に発展、女性メンバーが入れ替わったのち40年に演奏部隊がシャープ・ファイブとして独立した。このとき女性が一掃され、男ばかり4人のコーラスグループとなった。41年にはシャープ・ファイブをバックに早すぎたガレージ・チューン「ついておいで」でデビュー。これが小ヒットし、続く同じくシャープ・ファイブがバックをつけたすぎやまこういち作曲の「遠い渚」が大ヒットした。メンバーチェンジを挟みながらも以降も「海へ帰ろう」「レット・ミー・ゴー」、「オーケイ!」とヒットを連発した。しかし42年12月にシャープ・ファイブがキング・レコードを退社。彼らがバックをつけることは難しくなり彼ら自身が楽器を持つ羽目になった。名前もGSらしく「ザ・シャープ・ホークス」となった。しかし結局以降はがたがたとなり44年解散。続いて安岡力也ひとりが残り「安岡力也とシャープ・ホークス」を起こしたが成功は得られなかった。


パーソネル

シャープ・ホークス/ザ・シャープ・ホークス

野沢 裕二  ボーカル、ドラムス

鈴木 忠男  ボーカル、サイド・ギター

安岡 力也  ボーカル

小山 真佐夫 ボーカル(42年春迄)

ジミー・レノン ボーカル(42年春から)

三島 哲也 リード・ギター(43年から)

秋月 克衛 ベース(43年から)

 

(安岡力也とシャープ・ホークス)

安岡 力也 ボーカル

福山 元一 リードギター

津島 啓人 ベース

川島 信一 ドラムス

麻紀 タケシ キーボード(元・エクサイターズ、ジ・エドワーズ)


ディスコグラフィー(全曲CD化済み。)

シングル

発売日 カタログ番号 タイトル 作詞 作曲 編曲 オリコン順位 備考
41.9.1 キングBS489 ついておいで 尾中美千恵 鈴木邦彦 古屋紀 発足前  三根信宏の暴力的ギターに野放図なコーラスがからみつき勢いだけで聞かせる驚異的なガレージポップの大名曲。
キュン!キュン!キュン! いとうあきら 野沢裕二 古屋紀  A面よりポップなナンバーだが、ここでもコーラスの壊れっぷりが素晴らしい。グルーヴ満点。
41.12.1 キングBS549 遠い渚 橋本淳 すぎやまこういち 古屋紀 発足前  胸にしみいるフォークバラードの大傑作でこのバンドの代表的作品。センチメンタルここに極まる三根のギターソロと小山のドスの利いたソロがかっこいい。すぎやまこういちの出世作。
いつものところで 小佐和志帆 野沢裕二 古屋紀  やたら速いテンポで進行するポップ調の佳曲。決めのブレイクが印象的。
42.4.1 セブンシーズHIT705 若い夜 鈴木邦彦 鈴木邦彦 古屋紀 発足前  哀愁に片足をつっこんだやや重めのポップス。
愛の土曜日 尾中美千恵 鈴木邦彦 古屋紀  これもやたらに速いテンポで進行するポップス。軽快にのりまくっていて心地よい。
42.8.1 セブンシーズHIT714 海へかえろう 橋本淳 すぎやまこういち 古屋紀 発足前  「遠い渚」の続編的作品。よりセンチメンタルに走ったイントロや間奏のギターソロが涙を誘う。コーラスも耽美的。
星のカーニヴァル 鈴木邦彦 鈴木邦彦 古屋紀  のどかな風景が目に浮かぶラテン調のポップス。メリハリの利いた展開が鮮やか。
42.12.20 セブンシーズHIT721 レット・ミー・ゴー! 野沢裕二 野沢裕二 三根信宏 78位

1.3万枚

 三根信宏のギターががんがん引っ張るビート・ナンバー。ファンの嬌声とファズギターによるギターリフが印象的な好ナンバー。イントロ一発のギターのフレーズは絶品。
ロンリー・ラヴ 尾中美千恵 鈴木邦彦 古屋紀  やや古い感じの曲調だがオルガンにのってちょっと引き気味に唄われる、小気味のいいポップス。
43.1.20 セブンシーズHIT724 オーケイ! ハワード・ブレイクレイ ハワード・ブレイクレイ 古屋紀 98位

0.2万枚

 デイブディーグルーブのカバーだがカーナビーツのカバーと比べるとどろどろした印象を受ける。嬌声と掛け声の落差に注目のこと。
テル・ミー ミック・ジャガー キース・リチャード 古屋紀  何故か過度の暖かみを感じるローリングストーンズのカバー。
43.8.1 セブンシーズHIT736 ジーザス! 野沢裕二 野沢裕二 高田弘 ランク外  悲劇的な歌い上げバラード。ウォーカーブラザーズの「孤独の太陽」を下敷きにしたような曲だがさびの唄い回しが変だ。
スオミの乙女 尾中美千恵 松宮庄一郎 ザ・シャープ・ホークス  やや早めのナンバーだが、コーラスなど端々にセンチメンタリズムが溢れていて寂しさ炸裂な気分に浸れる。
44.4.1 セブンシーズHIT745 この胸に十字架を 橋本淳 すぎやまこういち 高田弘 ランク外  オルガンと女声コーラスで始まる洋楽よりの悲劇的歌い上げ歌謡曲。Aメロだけ開放感がありするする閉塞歌謡曲に寄っていく。
愛の砂丘 橋本淳 すぎやまこういち 高田弘  暗い三連ロッカバラード。オーケストラの嵐が吹きすさぶ。「ジーザス」を踏襲?

アルバム

発売日 カタログ番号 タイトル 収録曲 備考
43.1.20 キングSKK408 ゴーゴー・シャープ・ホークス Aレット・ミー・ゴー!/ロンリー・ラブ/海へ帰ろう/花のネックレス/星のカーニヴァル/ワイオミングの兄弟 Bオーケイ!/孤独の太陽/テル・ミー/アンチェイン・マイ・ハート/サニー/ホワッド・アイ・セイ  A面をオリジナル、B面をカバーで固めた唯一のアルバム。シングルカットしていないオリジナル「花のネックレス」はマイナー調ながらもシャープホークスらしい豪放なコーラスが堪能が出来る哀愁歌謡。同じく「ワイオミングの兄弟」は壮大な大草原が眼前に広がる雄大なウエスタン賛歌。B面では「アンチェイン・マイ・ハート」と「ホワッド・アイ・セイ」が出色の出来で前者は野沢裕二のソロでラテンのにおいが強烈だが、それとともに三根信宏のまろやかなギターが素晴らしい。「ホワッド・アイ・セイ」はこのバンドのむちゃくちゃさが堪能できて素晴らしい。

 この他、「若い夜」の別バージョンがオムニバスアルバム「レッツゴービートキャラバン」で聞ける。

 また再結成の音源では「さよなら日劇ウエスタンカーニバル」で「ドゥ・ユー・ラブ・ミー」「ホワッド・アイ・セイ」が聞けるが相変わらずむちゃくちゃである。


カバース

「ついておいで」ハルヲフォン

「遠い渚」マリアンヌ、スラップスティック

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