破壊と再生のカルトGS

ブラック・ストーンズ/ザ・シェリーズ

The Black Stones/The Sherrys

カルトレコードではあるがよく見るシェリーズのファースト・ラストシングル。名盤。


 知ってます?ブラック・ストーンズとザ・シェリーズ。東芝キャピトルが送り出したGSの中では珍しくまるで目立たなかったバンドです。でも残した曲はどれも素晴らしい。

 ブラックストーンズはキャリアのあるロカビリー歌手藤枝省二を中心に結成されたフォークロックバンド。作曲家中島安敏(「涙の太陽」)が横浜にレバーステーキを食べに行ったとき発見したという。黛ジュンの「恋のハレルヤ」のバックバンドとして有名だが単体としてもかっこいいフォークロック「ヘイ・ミスター・ブルーバード」でデビュー。小ヒットしたものの本格的なGSブームになる前の42年夏にメンバー間の対立から解散した。黛ジュンの第二弾「霧の彼方に」でもバックを勤めたがこのレコードが出たときにはバンドは陰も形もなくクレジットもしてもらえなかった。ちなみに黛の「真っ赤な太陽」のバックはブラックストーンズでもワイルドワンズでもなく実兄の三木たかしのギターだ。

 ザ・シェリーズはそのブラックストーンズの残党が立ち上げたGSであか抜けない演歌的歌唱とピヨピヨオルガンが特徴。デビューにあたって長時間連続演奏に挑戦し、32時間にわたってデビュー盤の二曲だけを交互に繰り返すという狂気のステージを繰り広げた。そのかいあって「想い出のシェリー」は小ヒット。ソノシートやテレビの主題歌も手がけたが、今度もメンバー間の対立によりデビュー盤だけで解散してしまった。その後全く別のメンバーで再建されたがレコードデビューには至らなかった。しかしこういうのは果たして再建と呼ぶのだろうか。

 ブラック・ストーンズは何かにとりつかれたように弾きまくるギターがとにかく印象的。かっこいいとか悪いとかセンスがいいとか悪いとかとは別次元でこころに引っかかるものがある。全体的に牧歌的な雰囲気と所謂GSの雰囲気を併せ持った味わい深いバンドです。

 シェリーズは色物GSの先駆者。なかなか壺をついた曲でマニアにお薦めのバンドです。

 ・・・こうやってみると全然音楽性が違うな。


パーソネル

ブラック・ストーンズ

宮川豊   ベース

藤枝省二 ボーカル(元・ロリーポップス)

長瀬洋二 リードギター

谷迪弘  ドラムス

小椋正和 サイドギター

仲吉朝和 ボーカル

 

ザ・シェリーズ

宮川豊    ベース(元・ブラックストーンズ)

木村栄三  リードギター

富倉みつる オルガン

谷迪弘    ドラムス(元・ブラックストーンズ)

木村達男  ボーカル


ディスコグラフィー(シングルは全曲CD化済み)

ブラックストーンズ

発売日

カタログ番号

題名

作詞

作曲

編曲

オリコン順位

備考

42.4.5

キャピトルCP1002

ヘイ・ミスター・ブルー・バード

なかにし礼

中島安敏

中島安敏

発足前

 歪んだギターが絶えず鳴り響く軽快なビートフォークロック。間の取り方にしびれる。詩をよく読むと同性愛を唄っている。「太陽の剣」がセックスのことを唄っているのと並ぶ問題作だったのか。

誰よりも君が好き

なかにし礼

中島安敏

中島安敏

 こっちはまっすぐなギターがひっきりなしに入る、正統的なフォークロック。牧歌的な面が強調され、4.9.1を彷彿とさせる。

ザ・シェリーズ

発売日

カタログ番号

題名

作詞

作曲

編曲

オリコン順位

備考

42.11.5

キャピトルCP1009

想い出のシェリー

ザ・シェリーズ

ザ・シェリーズ

鈴木邦彦

発足前

 「シェリー」にビートを加えて醤油につけ込んだような自作自演曲。元気丸出しの叫びや、からまりつくコーラスとオルガンがかなりガレージ。体育会的で男臭いがさわやかな印象で青空が眼前に広がる。

あの空は遠い

ザ・シェリーズ

ザ・シェリーズ

鈴木邦彦

 間奏が二つあるジェノバに通じるGS演歌。さびのたたみかけはグルーブ感満点。歌詞は完全にうらぶれていて大正時代の唄ですと言っても通用しそう。あと少し結成が遅かったらかなりかっこいいR&Bが出来たのではと夢想する。

 ソノシート(ザ・シェリーズ)

 TBSテレビ・非売品「ヤング720・Xマスソング」A面・踊ろうクリスマス(B面・「星のクリスマス」高山ナツキ) GSというよりもエレキ歌謡的な泥臭さが残ったポップスの小品。

 他に前述の通りドラマ主題歌の「夕陽よお前も仲間になれよ」を吹き込んでいるが、これもやや時代錯誤的なエレキ歌謡。

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