七三分けのリアルガレージ・青春アクター達の魂から汗がほとばしる

山内賢/日活ヤング・アンド・フレッシュ

Ken Yamauchi,Nikkatsu Young and Flesh


 日活ヤング&フレッシュは、日活の若手俳優らが集まって加山雄三のザ・ランチャーズに先駆けて昭和37年に結成されたバンドで、同年11月に石原裕次郎ら日活とテイチクに所属しているスターによるオムニバスアルバム「歌う日活スター・クリスマス・パーティー」のバッキング、インスト曲演奏でデビューした。その後しばらくレコードは出なかった。しかし、中心メンバーの山内賢がスターにのし上がり、また、折からのエレキ・ブームに乗ったことから、昭和40年にバンドとして映画に出演するようになり、翌年から翌々年にかけてスパイダースらを脇に置いて彼らが主役を張ったエレキを主題とする映画が日活で次々に作られた。これらの一連の映画の中で彼らはルックスに似合わない度肝抜くほど格好いいエレキ歌謡の演奏や激烈なサイケデリック・サウンドを披露している。この時分には山内らがテイチクから東芝へ移籍しており、映画出演に並行して41年に主演映画の主題歌「青春ア・ゴーゴー」で浜田光夫やスパイダースと競作する形で再デビューした。彼らの名義ではシングル数枚を残しただけだが、これに限らず山内賢のこの頃の作品には神がかっているものが多いので是非お聞きになることをお勧めします。なお、41年、山内は歌手に専念すると称して日活を退社しているが、この後歌手及びバンドとして商業的な成功は得られず、山内自身がしばらく低迷に甘んじることとなってしまった。


パーソネル

山内賢   リード・ギター

和田浩治  ドラムス

杉山元   ベース

木下雅弘  サイドギター


ディスコグラフィー(変色しているものはCD化済み。)

(シングル)

発売日

カタログ番号

タイトル

作詞

作曲

編曲

オリコン順位

備考

41.3.15

東芝TP1239

青春ア・ゴーゴー

青島幸男

脇野光司

川口真

開始前

 自身の主演した映画の主題歌。性急でこれぞ青春ポップスという名曲。暑苦しいボーカルが強引にメロディーを割っていき、青春の一途さを見事に表現している。バンドサウンドにホーンが被さった一風変わった編曲でこと最後のホーンの入り方は、この曲がGSと青春歌謡の橋渡しであることを印象づける。スパイダース、浜田光夫と競作。

ただお前だけ!!

沢ノ井千江児

飯田紘久

飯田紘久

 シャープ・ファイブをバックにした山内のソロ名義作品。荒んだ心象を歌い上げる重苦しいフォークバラードだが、山内の若さに溢れた声に希望が感じられ救いとなっている。

42.5.5

東芝TP1416

僕だけのエンジェル

山内賢

山内賢

川口真

開始前

 本人自作による先進的なバブルガムポップス。軽快にリズムを刻むスキャットとやたらに厚いコーラスを駆使した清新な作品。所謂マージービートを臆面もなく前面に持ってきたアイデアの勝利。弾ける若さも耳に心地よい。

きっと何処かに

山内賢

山内賢

川口真

 清新なAメロのコーラス主体の歌唱とBメロからサビでの血管ぶち切れそうな歌い上げの対比が面白いフォークロック。「想い出の渚」の後日談のような唄。

42.

東芝TP1514

空は夢の泉

浜口庫之助

浜口庫之助

川口真

開始前

 ストリングスを厚くかけた圧倒的なイントロで始まる力強いフォークロック。フジテレビのドラマ「青春」の主題歌。なお、この両面はヤング&フレッシュはノンクレジット(歌詞カードには載っている。)。

チビのジュリー

浜口庫之助

浜口庫之助

川口真 

ザ・スパイダースとの競作。ブラスやストリングスも入った本来この歌が意図したであろうアレンジに仕上がっており、寂しさ炸裂。

(その他の音源)

 前述のとおり彼らを主演として撮影された映画が多く、しかもそれらはバンド映画であるから、劇中での演奏シーンも数多い。幸いなことに、ポリスターから平成13年に出た「メラ・メラ・メラ」というCDとその前年に出た「ザ・ニュー・テスタメント・オブ・GS・ソース」、そして平成19年に出た「カルトGSコレクション日活編2東京ア・ゴーゴー」にそれらがまとめられていて数曲聞ける。七三分けにアイビーファッションやダークスーツに身をつつみながら演奏は弩ガレージパンクが多いのでギャップが楽しい。これらCDで聞けるのは映画「涙くんさよなら」から「涙くんさよなら」「チビのジュリー」「かなりや」、映画「夕陽が泣いている」から「インストゥルメンタル」2曲、映画「二人の銀座」から「二人の銀座」、映画「東京ナイト」から「健のロック」、「初恋のひと」。映画「青春ア・ゴーゴー」から「セイ・ママ」「リトル・ロビー」、映画「ザ・スパイダースのゴーゴー向こう見ず大作戦」から「きっと何処かに」。スパイダースやジュディオングらとの合奏もあるので、詳しくはGSのCDカタログのページを参照してください。ちなみに演奏シーンはもの凄く格好いいです。

 他にデビュー音源である「歌う日活スター・クリスマス・パーティー」(テイチクNL2029)に単独演奏二曲を含む俳優陣のバッキングを披露している。また、35年頃にゲストのドラムとして石川晶を迎え、「最新ヒットリズム」という3枚組フォノシートを残しており、「太陽の彼方に」「パイプライン」など10曲を披露しているという。ただこれらについては未聴。

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