アップルエイジのアイドル
ジ・アップル
(オチ、ジュンとジ・アップル)
The Apple
Ochi,Jun&The Apple
究極のGSって言うのも頷ける。
グループサウンズの大流の一つとしてロックやポップ或いは歌謡曲の流れと言う音楽的な面の他に、ティーンエイジ・アイドルとしての役割が課せられていたことは言うまでもない。そういったアイドル路線を前面に押し出したGSと言えばもちろんオックスであるわけだが、これに続けとばかりにアイドルっぷりを強調し、ただでさえねじ曲っていたグループサウンズのパブリックイメージをさらに妙な方向へ持っていった一群のアイドル路線バンドの代表格がこのアップルである。
このバンドは昭和43年4月に浜松で「佐伯一郎歌謡教室」を開いていた作曲家・佐伯一郎がGSブームに乗るため弟子達を集めて作ったグループである。もともと楽器経験のないメンバーがいたことなどからあまり演奏は得意ではなく、必ずしもモチベーションの高いバンドではなかったが、当地の浜松南自衛隊記念日の歌謡ショーでステージをこなす等の活躍をしていた。やがて原盤制作会社の預かりになり、五反田のキャバレーで一ヶ月間「社会勉強のため」に演奏するなどしたのち、フィリップスからデビューすることとなり、ビートルズのブティックの名前をとって「ジ・アップル」と命名され、前述のようなアイドル路線を徹底的に追及する方向のシングルを発売した。路線に対する不満等はなかったという。極々一部の女子大生サークルが強烈なファン活動を行ったため文化放送の「GS人気投票」では上位に食い込んだものの、事務所の弱小さ等から仕事は殆ど無く、したがって商業的には成功とはいかなかった。やはり時勢を配慮したセカンド・シングルをリリースしたがこれも反応なく、程なくして解散した。メンバーの水野は同じくアイドル路線を突っ走ったオリーヴで活動を続けた。
パーソネル
安田正彦 ドラムス
豊田幸宏 ベース
大場ひろし リード・ギター
新村建 サイド・ギター
水野じゅん キーボード(のち、オリーブ)
越智まもる ボーカル
ディスコグラフィー(変色しているものはCD化済み。)
発売日 | カタログ番号 | タイトル | 作詞 | 作曲 | 編曲 | オリコン順位 | 備考 |
43.9.5 | フィリップスFS1056 | 王女の真珠 | 万里村ゆき子 | 佐伯一郎 | 川口真 | ランク外 | 鴨川つばめが「究極のGS」と賛辞したアイドルとしてのGSを徹底的に追及した極北の超絶歌謡曲。甘ったるさもここまで行けば狂気に近い。青少年の心の不安定さと儚さを躍動感にまで高め、逆説的にパンクとも言える過激さを持ってしまった奇跡のバラード。GS屈指の名曲の一つ。ソロは安田。 |
ふりむかないで | 勝まさる | 佐伯一郎 | 川口真 | これも多少シンプルではあるがA面に匹敵するアイドル歌謡の名曲。泣き出しそうな水野のソロとそれを援護射撃するユニゾンのコーラスにはこの時代の青年の生の姿の一断面が詰まっている。 | |||
44.5. | フィリップスFS1081 | 夕日のふるさと | 佐伯一郎 | 佐伯一郎 | 大柿隆 | ランク外 | 沈むGS昇るカレッジ・フォークの御時世を反映した偽フォーク歌謡。いかんせん地味で、カレッジフォークのやおいの世界をアイドルGSが再現するのには無理があった。 |
ごめんね、でも、ありがとう | 林春生 | 三木たかし | 大柿隆 | 前作の世界観を延長した過激な甘さを持つアイドル歌謡。これも青少年特有の青さを活かして曲によく反映させている。多少気が抜けており、また重すぎるが、よく出来たバブルガム・ポップス路線の曲。こちらをA面にすべきだった。 |