最後のGS
オリーヴ
Olive
↑これぞGS
GSを語るときに忘れてはいけないのが、後年のロックバンドなどが見せたアンチ・コマーシャリズムの毒牙に掛かっていないという点であり、現在で言うところのアイドルグループとしての役割も持たされていたということで、これを見落とすと、その全貌や動向がさっぱり見えてこない。これはGSが決して単なる音楽ジャンルではないというか、音楽ジャンルとしてはきわめて曖昧で実体がないにも関わらず、統一性のある「音」をしており、また、ジャンル全体が一つの方向に向きだすと、ジャンルあげてその方向に突っ走ってしまうという、(一部の人にとっては忌避すべき)歌謡曲の縮図としての宿命を背負ってしまっている一つの要因となっている。そんな中でアイドル・グループとしてのGSという観点からとことん突き詰めたコンセプトをもって活動していたのがブレイズ、アップルとこのオリーヴ。(他にもピーターズとかもいるけど、こちらはまだ演奏バンドとしてのコンセプトの方を強く感じる。)この3バンドをフィリップスの三大アイドルバンドと仮に名付けるが、その中で楽曲に一番捻りがあったのがこのオリーヴだ。
オリーヴは日本初のツイン・ドラムをフィーチャーし、「第二のオックス」を目指してホリプロが売り出したバンド。44年5月にスカウト合戦の結果元ヴァンドッグス山根、元レンジャーズ森下、シルクロードの前身バンドにいた上原らを中心にして結成された。途中山根が抜け、元アップルの水野が加入した。意外や前歴のあるメンバーが多かったのだ。メンバーが元々所属していた5バンドは全て解散に追い込まれてしまったという。要するにスーパーバンドの類なのだ。GSとしてのアイドル路線を追求し、デビュー当時公称平均17才という若さも期待されたが、デビューにこぎ着けた頃にはすっかりGSブームは収斂してしまったあとで、事務所側の期待通りにはいかなかった。結局最後発のGSとして如何にも時代遅れなスタイルを保持することに難渋した。デビューシングル「君は白い花のように」の売り上げは芳しくなく、フィリップスからのレコードはこれだけに終わった。しかし、偶然このころ大ヒットした「新宿の女」を歌っていた藤圭子がこのバンドのグルーピーだったことから、藤圭子が担当のディレクターに紹介し、彼女と同じRCAに拾われた。ここではぽつぽつと3枚のシングルを発売したが、良質の作品もあったにも関わらず、やはりあまり恵まれた結果は残せなかった。ただし、ブロマイドの売り上げなどはかなりよく、東京の女子中高生を中心とした層にはある程度の膾炙があったことは忘れてはならない。この時代の都心と地方の情報量格差は激しく、都内のジャズ喫茶で動員力のあるバンドも地方公演や全国的なレコードの売り上げはさっぱりということがよくあった。このバンドの他、ヤンガーズあたりもこのパターンに当てはまった。バンド自体はかなり遅くまで存続していた。なお、藤圭子の「圭子の夢は夜開く」の歌詞に出てくる男の名前はこのバンドのメンバーのニックネームから採られているらしい。
オリーブはことボーカルに青少年特有の青臭さがあり、情趣が大変高く、聴いているうちに何とも甘酸っぱい気持ちでいっぱいになる。切なさを描き出すと言う点では百余のグループサウンズでもランチャーズと並び最高の部類に入ると思う。
パーソネル
森下春雄 ドラムス 元・ザ・レンジャーズ
竹屋かずみ リード・ギター のち・ヴィーナス
木村みのる ボーカル/ドラムス
水野ジュン オルガン 元・ジ・アップル
ディスコグラフィー
(変色しているのはCD化済み)
発売日 |
カタログ番号 |
タイトル |
作詞 |
作曲 |
編曲 |
オリコン順位 |
備考 |
44.10.25 |
フィリップスFS1098 |
君は白い花のように |
西川瞳 |
利根常昭 |
小谷充 |
ランク外 |
売りのツインドラムを前面に押し出したむちゃくちゃかっこいいドラムソロから始まるが、それだけ。するすると甘ったるいムードコーラスに寄っていくカルト楽曲。全体的には地味な曲だが台詞に僅かにアイドル的要素を感じる。しかもこのドラムはメンバーによるものではなく石川晶のプレイを重ねたものだという。 |
愛のめぐり逢い |
利根常昭 |
利根常昭 |
利根常昭 |
凍り付いた純歌謡。アイドル・ソングとムードコーラスが渾然一体となった神代の曲。オーケストラ入りの心痛な曲。なお、映画ではメンバーだけの演奏によるバージョンも聞けるが、どうということもない。 |
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45.9.5 |
RCAJRT1107 |
ハートブレイク・トレイン |
石坂まさを |
山田祥二 |
池田孝 |
ランク外 |
野分が吹きすさんでいるようなもの悲しく緻密な情緒に優るマカロニウエスタンを下敷きにしたポップス。つぶやくようなボーカルが淋しさ炸裂。またスキャット、それを追うコーラスにも悲しみが詰まっており情緒を盛り上げる。全体的には訥々と積み上げていく哀愁ものながらも、サビで堰を切ったように感情が爆発する妙作。 |
小さな初恋 |
オリーヴ |
オリーヴ |
池田孝 |
ワイルドワンズ「青い果実」に音色から何からそっくりなイントロで始まるハプニングス・フォー「夜明けのバラード」路線のムードコーラス。サビには僅かにポップグループとしてのグルーヴがある。台詞と絶叫入り。 |
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45.11.25 |
RCAJRT1131 |
カム・オン・・・! |
片桐和子 |
村井邦彦 |
大野雄二 |
ランク外 |
和ものブームの中で再発見されたニューロック的なギターを先導に若さが爆発するグルーヴ満点の和製バブルガムポップスの傑作中の傑作。「カモン」の掛け声が烈火の如し。全体的に地味な演奏との対比が面白い。ピコ「アイ・ラブ・ユー」、浅丘ルリ子「シャム猫を抱いて」と並べて三大和モノと被称。ついにCD化。 |
愛ある国へ |
南杜夫 |
南杜夫 |
土持城夫 |
ホーンも賑やかな妙にほの明るい曲調のバブルガムポップの小品。昔はこっちの方が評価が高かった。南杜夫とは同じ事務所の井上陽水のこと。 |
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46.12 |
RCAJRT1205 |
マミーブルー |
長恭子 |
ジロー、トリム |
青木望 |
ランク外 |
当時麻疹的に流行ったスペインのポップ・トップスのヒット曲の日本語カバー。元が名曲なので足し引きはあまりないが、なかなか情緒に優る出来。 |
君と別れて |
石坂まさを |
はやしこば |
池田孝 |
イントロは「ブルーシャトウ」っぽいが、歌唱技術が追いつかないで振り回されている感が強いムードコーラス。東京ロマンチカじゃないと思うが、類型のムードコーラスグループが思いつかない。はっきり言っていくら何でも似合わない。 |
なお、これに遅れて「惜春」「真紅のバラ」をリリースしたオリーブがいるがこれは全く無関係のバンドと言う(情報提供・町井さま)。