予め虐げられた巨人たち

ザ・ジャイアンツ

The Giants

俺たちは噛ませ犬だ!(両面とも良い唄です。)


 オリコン1位をとったことがあるGSは、タイガース、テンプターズの2バンドだけ。あと括弧付きでブルーコメッツ。他オリコン10位以内にヒットをたたき込んだのはワイルド・ワンズ、ヴィレッジ・シンガース、バニーズ、オックス、スパイダーズ、パープル・シャドウズ、ダーツ、そしてこのジャイアンツである。他のバンドに比べて二つも三つも格下だ。

 ジャイアンツは42年の夏頃銀座のビア・ガーデン「四季」で演奏していたところを永井秀和のバックバンドとしてスカウトされた。この年の永井秀和のタイガースを押しのけてのレコード大賞新人賞受賞の影の立て役者になった。・・・とでも言ってやらないとあまりに可哀想である。翌年、フォーク・クルセイダーズの「帰ってきたヨッパライ」でまきおこったアングラブームの第2弾として、巷で流行っている作者不明の「ケメ子の歌」でデビューした。誤解されているがレコードリリース的にはこっちがオリジナルである。この歌はダーツに比べれば劣るものの大ヒット。小山ルミ主演で映画化され、その映画では添え物だったが準主演の扱いで出演している。第2弾もアングラ路線だったがこれは全く売れなかった。ここで彼らは路線変更し、ド歌謡曲にいってしまうが、状況は変わらず、最後のシングルは永井秀和のB面扱いと全く尻つぼみだった。しかし、このラストシングルが彼ら最大の輝きとなって今に残るのだから解らないもんだ。オックスと並ぶ「ビクター陰謀バンド」である。

 なお、アイドルスの前身バンドの「ザ・ジャイアンツ」とは全く無関係のバンドである。

 リーダーの鈴木氏は規模は不明だが音楽活動を続けておられるらしい。


パーソネル

鈴木 晴夫 ベース・リーダー

谷 しげる ドラムス

飯田 久雄 ギター

原 道雄 リードギター


ディスコグラフィー(変色しているのはCD化済み)

シングル

発売日

カタログ番号

タイトル

作詞

作曲

編曲

オリコン順位

備考

43.1.25

ビクターSV680

ケメ子の唄

(馬場祥弘)

浜口庫之助

(馬場祥弘)

浜口庫之助

寺岡真三

6位

14.0万枚

 テープの早回しとブラスを導入した賑やかなコミックソング。ジャイアンツの声は日本人に珍しく全く悲壮感がないのが素晴らしい。「フォークル」の真似だと評判の悪いアングラソングだが私にとってはダーツ版より好きな愛聴盤。ちなみにシングルレコードでは最後にケメ子からの熱いメッセージが入る。なぜか既発のCDではカットされていたが「カルトGSモンスターズ」は完全版で収録されている。

豚のしっぽ

浜口庫之助

浜口庫之助

寺岡真三

 愛らしくほのぼのとした自虐的なコミックソング。長閑。ビートルズの「ピッグ」の影響下にある説あり。ブー。

43.4.15

ビクターSV704

どうしても女に勝てなかった悲しい男の唄

倉安人

加藤和彦

寺岡真三

ランク外

 陽気なハワイアン歌謡で効果音入り。なかなか練った唄だが前作の二番煎じの印象強し。

涙のエンゼル

松井ひさし

松井ひさし

寺岡真三

 ベースラインやサイドギターがかっこいいファズ歌謡の大傑作。マイナー調のフォークロックの系譜。ナゲッツに入ってても不思議じゃありません。

43.9

ビクターSV750

遠い夏

林春生

村井邦彦

村井邦彦

ランク外

 頼りない主唱に引っ張られる寂れた無理なメロディーの純歌謡。アジア的な雰囲気。でも面白くない。

素足の乙女

小黒恵子

松井ひさし

近藤進

 一世代古い青春歌謡。こっちのほうが出来がいい。高原の散歩を思わせるこれはこれで出来上がった小品。じゃあこっちを表にすればヒットしたかといえば、絶対ヒットして無いと言い切れるけど。

43.11

ビクターSV767

ヤッホースケーター

 

 

 

ランク外

 永井秀和とスクールメイツによる唄。未聴。

スケート野郎

佐伯孝夫

寺岡真三

寺岡真三

 あまりにもくだらなくて底が抜けてしまい永遠の輝きを獲得した溌剌青春歌謡。やはりこのバンドただ者ではない。まさか自分たちで演奏をやってるのでは・・・。だとしたらGSでも屈指の演奏力のあるバンドだ。コーラスはBMシンガース。(誰か知らないが。)

アルバム

発売日

カタログ番号

タイトル

収録曲

備考

43?・?

フィリップスFS5023

グループサウンドと歌おう

A北国の二人/モナリザの微笑み/好きさ好きさ好きさ/君に会いたい/青空のある限り/バラ色の雲/風が泣いている B霧のかなたに/北国の青い空/真っ赤な太陽/シーサイド・バウンド/マリアの泉/いとしのジザベル/陽はまた昇る

 なんとこれ、本当にこのジャイアンツだった。思い切りのいいエレキエレキした演奏が心地いいインストもの。特に「好きさ好きさ好きさ」は殊勲賞。なぜか両面取り上げた(村井邦彦関係者なのか?)「いとしのジザベル」「陽はまた昇る」はこれはこれで味がありカップスとはまた違った魅力がある。「シーサイドバウンド」は市民プール。ほかの曲も出来不出来はあるが聞けないという曲はなく、エレキファンなら全曲充分に楽しめる。65年位のバンドみたいな音である。ギター練習用に片チャンネルにリードギターだけが入っている。ガレージ風味あり。自分的にはかっこいいの範疇。

44.3

ビクターSJV397

可愛いスーちゃん

A可愛いスーちゃん/ズンドコ節/ダンチョネ節/荒鷲の歌/特幹の歌/ハバロフスク小唄 B麦と兵隊/シャンラン節/戦友/加藤隼戦闘隊/守備兵ぶし/ラバウル小唄

 彼らのセカンドアルバム。何故か歌入りの軍歌集。軍歌といっても勇壮な曲ではなく、所謂反戦軍歌の系統の曲が並ぶ。おそらく彼ら自身によると思われる演奏で通していて、ファズを使用したリ彼ららしい細かいギタープレイが随所に聞けてなかなか味わい深い。ややボーカルが弛緩しているが、まあ、このバンドのボーカルとしてはこんなものだろう。サイケでもロックでもないが、ガレージであることには間違いない。一曲目の表題曲こそ多分その場で楽譜を渡されて演奏させられたんだろうなという感じのする微妙な出来だが、その後はファズとハードボイルドが合体して妙な迫力のある演奏が聞ける「ズンドコ節」とこの時代らしいブルース・ロックの影響が濃厚な「ダンチョネ節」、ビートバンドの演奏にちゃんとなっている「荒鷲の歌」、「特幹の歌」、「麦の兵隊」本当に一瞬だがバニラファッジのようなイントロからいきなり土砂崩れのように泥臭くなる「ハバロフスク小唄」とGSのボーカル&インスツルメンタルの水準をちゃんと保っている。オルガンが入っているトラックも多いが、これは編曲の近藤進によるものか。全体としては発売日が隔たっているのにもかかわらず「涙のエンゼル」の時の音に近い。似た選曲のドリフターズと比べてみるのも一興かも。楽しいアルバムだが、何故ジャイアンツがやらなければならなかったのか、建前すら立てなかったのはいさぎがよすぎるかもしれない。ビクターのGSで一番凄いのはやはり彼らなのかもしれない。

 「ケメ子の唄」の両面にナレーションを入れたプロモ盤があるらしい。話によればアレンジも違うらしいが未聴。

カバース

「ケメ子の歌」ザ・ダーツ、ザ・イーグルス、松平ケメ子、オールスターズ・ワゴン、ロイヤル・ロック・ビーツ、加瀬邦彦とザ・ワイルド・ワンズ、SAMPLY RED(菅野よう子)、保田圭ほか、等々

戻る

inserted by FC2 system