これ買いました平成20年12月

 

20.12.27 帰省前に(買い納め)。

城之内早苗/寺内タケシとブルージーンズ

伊奈町音頭

17cmLP ソニー YGES12

伊奈町制施行記念の伊奈町長作詩のやりたい放題盤。おニャン子加入前の城之内早苗がブルージーンズをバックに歌う。言われないと全くブルージーンズだと気が付かない普通の音頭。続く「マーチ伊奈」は「伊奈町音頭」をマーチとしたもの。二ヶ所で豪放な寺内タケシらしきギターのソロが聞けるが基本的にはマーチバンドが前面に出ている。B面は永岩亜由美がブルージーンズをバックに歌う「ポップス伊奈」で、これもアレンジを変えただけで「伊奈町音頭」と同じ。名前に反してこぶしも効いていて演歌チック。ブルージーンズの演奏は「ルネッサンス」あたりに似ている。キーボードとブンブン言うベース、ハードロック的なギターが効いていて快調に飛ばす。歌との落差が凄すぎる。最後の「フュージョン伊奈」も同じで「伊奈町音頭」をフュージョン・インストにしたもの。流石に上手い。これが一番完成度が高いと思われる。それにしてもどの曲もタイトルがストレートすぎる。ブルージーンズが演歌系統の自主制作盤のバックを勤めている例は間々あるのだが、ディスコグラフィーが詳しいサイトにも載っていないので自力であたるしかない・・・。

高山ナツキ

貴方のぬくもり

EP ビクター SV729

この人はポップスのイメージが強いが、和装ジャケ。ビート時代を反映して鋭いギターのカッティングが力強い印象を与えるが、この時代ならではの哀愁歌謡だろう。よく出来たポップスでもあるのでキューティーポップと言っても不当な扱いではない。ただし多分に和風である。こうじはるか作詩。B面は「涙がかれるまで」を更にビートを強調したかのようなホーン入りビート歌謡。こちらも鋭い。むしろこちらの方がむき出しのビート感に支配されていて迫力と言う点ではA面の数段上だろう。両面ともよい。

ポピーズ

ソウル恋の奴隷

EP 東芝 TP10185

昭和40年代最高のダンスポップグループがディスコテックに両面奥村チヨをカバー。A面は正直、単にディスコにしてみましたという以上のものはないが、この手のグループにありがちな歌唱の破綻が全くないのは凄い。なんで売れなかったのかさっぱり判らない。B面はCD化済み。こちらは文句なしの名唱。

鈴木やすし

俺は太陽

EP コロムビア JPS18

最近この人を見ないが何をやり給うか。サックス入りのテケテケエレキ歌謡。コロムビア・シャドウズなるバンドがバックを勤めているがエレキバンドのシャドウズの事かもしれない。泥臭い青春歌謡のトラックだけがエレキ化され、不良性のあるボーカルが載っているがフレーズやリズムにはラテンの味があり、アメリカのサーフミュージックと同根が見える。B面はエレキのイメージをオノマトペで表した何だかすごそうな感じを与えるもっちゃりとしたエレキ歌謡。こちらも演奏はコロムビア・シャドウズで地味なテケテケ入り。

ザ・メッセンジャーズ

復活

EP シャローム SRF7401

日本のフォークグループだが、聖書のヨハネ伝をフォーク化したというもの。日本にもホワイト・ロックがあったということで、吃驚して買った次第。長大なチープなオルガンのソロで始まり、中身は意外にも綺麗なポップスで、ゴスペルというよりもソフトロックと言った方がよく、グルーヴィー且つ歌も相当に上手く相当な実力があることが窺われる。アンコにバラード調というか馬子唄のように部分があり演劇的な要素も取り入れている。正直余り期待していなかっただけに驚きが大きい。B面も主と基督を称える歌を二曲収録している。前者は映画音楽風のポップバラード、カバー曲らしい。後者は賛美歌風からフォーク・ポップスへ。これも見事なソフトロックに仕上がっている。演奏音が大変にチープであるけれども、コーラスの流麗さも見事で、歌のこころが伝わってくる。宜しき。宗教ものはその宗門教派に限らずいい曲が多い。げに信仰の力は偉大というべきか。

ザ・ディメンション

この素晴らしい愛を

EP ビクター SV1143

強烈なソウル・コーラスグループ。エコーマシンを使ったイントロから一気にスローテンポへ落ちまた一気に加速するブラスロック風青春アイドル歌謡。ボーカルのフィリピン訛りが強烈だが、コーラス濃度は低い。鳥井実の作曲だが、あまりその色はなく、寧ろ編曲の筒美京平の色の方が強い。B面は英詩のアメリカンポップスで、こちらの方が洗練されているが、異常に編曲が凝っていて細かい仕掛けが多くて目を見張る。どちらもこのグループに期待されるサウンドの水準をクリアしている。

マキとマッキーズ

あなたを知って

EP 東芝 TP2133

A面CD化済み。謎のメンバー構成が指摘されている歌謡ポップスグループ。B面はガッツ&リップとか20代前半の若さの微塵もない温泉街の場末で掛かっていそうな日本のブルース。三島敏夫とそのグループ辺りがやりそうな曲で、こんなに保守的な曲をやっているとは思わなかった。

20.12.26 まあ、いいや。

テレフォン・シスターズ

涙のチェリーボーイ

EP キング BS1547

「幻の名盤」。これも10年ぐらいずっと欲しかったレコード。最近そういうものが見つかるので嬉しい。今年前半不遇を食らった分が今返ってきているのだろう。ワウギターも凄まじいグルーヴ歌謡。こののりのいいトラックを使って正統派のコーラス風に歌い上げるのだからえらいことになっている。チェリーボーイの意味を本人たちがわかって歌っているのかがよくわからないが、とりあえず真面目な人たちなんだと思う。これはよく出来ている。B面は激しい曲のボトムにありがちな穏やかなナンバーだが、こちらもサビでベースが大暴れするなど十分にビート歌謡の範疇に入ってくるものだろう。この人たちは一体どういう人たちなのか。

黒沢明とロス・プリモス

たそがれの東京

EP ビクター SV1093

 初めてのデートに浮つく女心を見事に表した煌びやかな歌。ロス・プリモスにしか出せない軽妙さを最大限に利用したアイデアの勝利。B面はサックスの咽び泣くティピカルな耐える女を歌う保守的なムードコーラス。両面で見事な対称をなしていると言えようか。

森雄二とサザンクロス

その名はレイコ

EP クラウン CWA117

 荒んだ3拍子歌謡。軽妙なこのバンドの曲としては珍しく燃えるような感覚のボーカルと言うべきであろう。しかし何とも物悲しく、かつ地味な曲というべきか。B面はよりこのバンドの個性にあった曲で女性の立場から男性へ訴えかける歌。もう少しでソフトロックになりそうでならないもどかしさに狂う。こっちの方がA面より出来がよいように思われる。

森雄二とサザンクロス

せめて聞かせて

EP クラウン CWA175

 タンゴ歌謡。可もなく不可もなく。このバンドのいつもの調子。丁寧な作りではあるが、それまで。B面はややメロディーに無理があるが、アップテンポの中庸な純歌謡。よく取りまとまっているが逆にこれと言うところに欠けるか。このバンドはチャート上ではヒットが一つしかないがなんのかんのとずっとレコードを出し続けられた理由がよくわからない。

ピープル

恋人たち

EP ワーナー L1082A

オックスの後身のソフトロック系アイドルバンド。下にあるハニーパイの曲と殆ど同じ時期の曲であり会社も同じせいか似たような路線。A面は別途アナログアルバムを所持。日本ソフトロックの名曲。B面は「花の首飾り」に端を発するマイナーで病的なアイドルロックの系譜。コーラス多用だがソフトロックというよりはGSの尻尾。始めからそういうものだと思って聞けば佳曲ではあるが、自分にはちょっとロック過ぎる。

小畑実

星のない渚

EP ビクター SV6199

晩年の小畑実はモダンなイメージがある。基本的には朗らかな声のことであるから悲劇的な歌は似合わないはずなのだが、軒並みそういう歌ばかりヒットしているのは日本の歌謡の特性か。昭和52年の曲だが、詞・曲ともにGS時代の曲のようなセンチメンタルバラード。B面はノンクレジットのシンガーズスリーを従えて昭和47年前後の女性アイドルが歌いそうなフォークバラード。枠組みの構築部分が前に出ている割に肉付けがそれに追いついておらず、プレハブ住宅の如き趣のある歌・

中井あきら

星降る街角

EP ポリドール DR6134

元コロラティーノのボーカルの人。オリジネイター。ラテンの色が極端に強いアレンジで、案外こわもてなリズムの中を中性的な高くソフトな歌声が泳いでいく。ハッピー&ブルーの諸バージョンと比べても特に見劣りする部分はない。B面はアップテンポなルンバでこちらもノリのよいサウンド。ノリのよいとは言っても、このノリは明らかに夜のリズムであろう。狭いムード歌謡の観念を打破するのに十分なインパクト。この人もしかしルックスとボーカルが一致しない。

 

20.12.23 奉賀天長節。

克美しげる

史上最大の作戦のマーチ

EP 東芝 JP5171

有名盤。ポールアンカの名曲をリアルタイムで日本語カバー。奇妙な歌詞だと一部の書籍に紹介されているが、そんなこともない。誠実なローカライズだと思う。B面は、スタンダードの「聖者が街にやってくる」を英語のままカバーしているが、こちらは然程の出来でもなく、ペットリとした英語も見るべきところなく、ボーカルのアレンジがどうにも間が悪くて本格的な演奏に対して浮いてしまっている。

三沢あけみ

君待節

EP ビクター PRA10982

千葉市か何かのイベントの記念品か。落ち着いたスローな演歌で、この人の持つ明るさは余り全面に出ていないが、きっちり仕事をこなしていると言う感じの歌唱。そつのない曲。B面は三浦弘とハニー・シックス「ふたりのふるさと」でフルートで幕を開けるが、割合に演歌的なこのバンドとしても演歌よりな曲。こちらもそつがない。こちらも千葉をテーマとしている。

西東京テレヤーズ

夫婦きどり

EP ビクター VNR107

ベイブルースとは別曲。迫力のあるイントロ一発目には驚くがするするとかけあい演歌に。次々とボーカルを取る人が変わるが、人によってレベルの差が大きすぎる。最初に歌う女声ボーカルはよいけれども、あとはなんとも粗い。何気にベースがかっこいい。カラオケ同好会の記念シングルか。B面は小川奈美「花嫁ごころ」でこちらは嫁入りする娘が両親に感謝を述べる穏やかな演歌。ボーカルはやや破れているが、下手とはいえない。

ぱんぷきん娘

ロックよさこい囃子

EP キング K07S5266

何から何まで訳がわからない。シンセドラムも軽快に飛ばすがこの場合はロックとは言っても演歌の基本リズムたるのロックのこと。冒頭に「よさこい節」を導入して強引に一曲でっち上げたような曲。この繋ぎ方は凄い。荒削りではあるが下手ではない。ルックスを思い浮かべなければ歌がピチピチしておって微笑ましくもある。毛利大介の「社長さんは涙だため息だ」と並聴したい。B面は純粋な音頭。これも粗いが、民謡出身の人でそういう関係のユニットなのだろうなと納得できる程度には手馴れた歌い方。

ダニー飯田とパラダイスキング

だ・い・て

EP 徳間 ORF129

 当然ながら森高千里とは別。平尾正晃による些かアナクロ的とも言える男女掛け合いアダルトポップスで、「カナダからの手紙」をもう少しテンポアップさせたような作品。アダルトポップスとしては良品。B面は彼らの洋楽の出自を思い起こさせてくれるジャズコーラス風のしゃれたポップス。同じアダルトポップスでも右の端と左の端が裏表に配されているようなものでこのバンドの一筋縄でいかなさが現れている。しかし、B面の詞は散漫に過ぎる。

並木ひろしとタッグ・マッチ

男のなみだ

EP 東宝 AT1036

ヒット曲だが持ってなかったなぁ・・・。単音オルガンの音も高らかになる演歌調の楽曲。ややわざとらしいボーカルが大仰に過ぎるが、ぴんからトリオの音楽的な部分の一部が並木ひろしから出ていたことは確認できる。演歌として見れば出来は非常によいが、やはりコーラスが全く入らないのが残念。B面は物悲しい3拍子の割合に近代的な歌謡。系統としては「涙化粧」とかあの辺りの系譜。こちらも全くのソロだが、ボーカルが尾崎紀世彦やフランツ・フリーデルのようなバタ臭い歌い方になっている意図がよくわからない。こちらもよくバランスが取れている曲というべきか。ぼちぼち。

吉田ヨシオとチャームエコーズ

女の未練

EP キング NCS684

ええええ、二枚目があったとは・・・。というかこちらの方が古いのでこれがファーストか。単音オルガンを大胆にフィーチャーして三浦みちゆきとプラネッツの代表曲をカバー。こちらの方が貧弱ではあるがその分軽快な印象も受ける。コーラスも多めで、所謂いい湯加減に仕上がっている。スネアの音が独特。B面は更に演歌風味が強いがこちらでも単音オルガンが荒れ狂う。恐らく演奏も本人たちだろう。「噂の女」をモチーフにしたと思われる本歌取り歌謡。

20.12.22 裏をかかれる。

ジャックス

レジェンド

3CD EMI TOCT95008−9

ジャックスの「ジャックスの世界」、「ジャックスの奇蹟」、「エコーズ・イン・ザ・ラジオ」にコロムビア時代などのシングル音源、ラジオ音源などを加えたもの。持っているCDを切り替えるために購入した面もあり。唯一初めて聞いたヤマハライトミュージックの音源はまことにジャックスらしい危うさがある。この危うさを下手ととるかチャームと取るかがこのバンドをどう見るかに繋がる、と自分は思うのだけれども、ライナーなどを読んでも自分がこのバンドが好きな理由であるところの「GSだから」ということは全く歯牙にもかけられておらず、自分が好きな理由はどうも理由としては異常であるらしい。いやそもそも、自分がこのバンドを好きなのは自分の耳で聴いて宜しいと感じて好きであるのか、そもそも政治的な立ち位置としてこのバンドが好きだと頭で考えておるのかと色々と考えてしまう。自分としては耳で聴いて好きになったつもりだが、自分の心というものを自分が判るほど精錬されておらない。

V.A.

ビクター・レコーディングス1 1928〜1937

2CD ビクター VICL62903〜4

ビクターの昭和初期のヒット音源を取りまとめたもの。これも切り替えのため購入。

ビクターはポリドールほどではないにしても戦前の歌謡曲に対する扱いが甚だ冷淡で、大歌手でないスマッシュヒットとなるとこういう機会でもないとCD化されない。しかし、まだそのランクの歌手なら納得できないこともないが、ビクターは戦前の大歌手ランクに属する人々、灰田勝彦、渡辺はま子、市丸、小畑実、柴田陸睦、新田八郎といった辺りまで押しなべて戦前の録音を使ったちゃんとしたまともな単独ベスト盤が出ないのは一体どういうわけか。吉田正作品にあらざればビクターの曲にあらずといった態度は改めるべきであろう。

このCDはそういった点で、珍しくよく考えられた選曲で一般CDでは長らく廃盤だった「無情の夢」や市丸の音源が嬉しい。基本的に発売順に並べられているが、せっかく最後にヴィンセントロベツ楽団をバックにした藤原義江の「鉾をおさめて」が入っているのなら、最初も一箇所だけ発売を逆にしてオリジナルの「鉾をおさめて」で始めれば美しいのに。いや、これは僻事。

V.A.

ビクター・レコーディングス2 1938〜1947

2CD ビクター VICL62905〜6

上の続編。同様の目的で購入。このシリーズがよく考えられているのは、普通なら戦前戦後の区切りを大きく捉えて、ことにオムニバスならば、一枚のCDに両期間の曲が同居するということが余りないが、それを戦前戦後の歌謡曲に一貫した流れがあることを上手く提示していることである。このシリーズは発売順に曲が並べられているのに、灰田勝彦の「小さな花」が昭和18年発売にもかかわらず、昭和19年発売の「ラバウル海軍航空隊」の後に置き、昭和22年発売の平野愛子の「港が見える丘」の前に敢て置いている。「小さな花」は聞けば判るが敗戦の色濃くなってた時期に発売されたとはとても信じられない、非常に洗練された愛らしくモダンで美しい小品のポップスであり、いかにも戦後に作られたような体の曲である。これを発売順に並べれば戦前のジャズ(ポップスのこと)の伝統はすべて戦争で破壊され全く新しく戦後の歌謡曲が立ち上げられたような印象が過度に与えられてしまうところだが、「小さな花」をこの位置に置き、更に戦後の曲を数曲続けることで戦前の集積の上に戦後の華が咲いていることが見事に提示されている。

オムニバスアルバムは、主題にあった楽曲を選び出せばそれで足りるわけではない。その選曲とともにどのように提示をするかも匿名なり顕名なりの編者の腕の見せ所であり、発売順という原則を立てながらこのようにポイントでこれを崩し、その曲の後ろに流れる大河をさりげなく提示するのがオムニバスアルバムという形態に課せられたる使命である。そしてこのCDは、とにもかくにもその使命を完全に全うしていると私は考える。

選曲面では押しも押されぬ大ヒット曲に混じり新田八郎の「南洋航路」や南京陥落後の状況を反映した歌詞に変えられた波岡惣一郎の「荒鷲の歌」(初めて聴いた!)が珍しいほか、灰田勝彦の楽曲と軽音楽が重要に取り上げられているのがいいスパイスになっている。

V.A.

ビクター・レコーディングス3 1948〜1947

2CD ビクター VICL62907〜8

更に上の続編。同様の目的。上で褒めたのでこちらでは難陳してみる。このシリーズの前半は妙に洋楽色が強すぎて、これはこれで誤解の元。バランスのよい選曲かと言われるとそうではなく、ビクターという会社に対して本当に貢献した流行歌を網羅しているとは言いがたいし戦時歌謡があまりに省略されすぎている。またもう一つ、歌詞の検討が甘く、歌詞カードが明らかに誤っているものが散見される。戦前の歌謡曲は確固とした歌詞カードが失われていることも多いが、諸賢の検討により、その考証は20年前よりも相当に当を得た復元が進んでいるのであって、昔のカードをそのまま転載したり、或いは更に後退した解釈を示すのはやや怠慢だろう。多少の解説も欲しい。これも有名な大ヒット曲の間に洋楽色の強い曲を挟みこんだような構成になっており、ナンシー梅木が二曲も取り上げられているのはこの選曲者の主張と見るべきであろう。極端にCD化が遅れている小畑実もヒット曲ながらなかなか聴けないナンバーが収められており落穂ひろいを丁寧に行なっている様子が伝わるが、一方で吉田メロディー全盛直前の土着的なヒット曲を含む重要曲が外されている(この部分ナンシー梅木らの曲が入っているので或いは差し替えがなされたか。)のは手落ちというべきか。吉田メロディー全盛以降は昔ながらのビクターのコンピらしい選曲だが、それだけにこの通巻6枚目の前半までの果敢な選曲は何ともいじらしい。いずれにしてもその規模と最近の歌手の選曲部分を差し引いても80年の歴史を統括するに非常によく練られたコンピだと思う。

ザ・ハプニングス・フォー

マジカル・ハプニングス・ツアー

CD 東芝 TOCT11175

下記の通り。事実上買い替え。このバンドこそステージとアルバムで全然違うことをやっていたのだろうに、ただ音楽性が高いと言われるだけでそこの葛藤が全然語られないのは何故だ。レコードでは歌謡化してステージではニューロック化していた普通のバンドなら色々と言われているだろうに、なまじ色々なことを精力的にやっていただけに却って物事が語られにくい。「アウトサイダーの世界」なんかいいように作られただけなのに自発的に作ったようにずっと言われて来たり、こうなると才能があるのも一概にいいことばかりではない。他意はないが、このバンドの全アルバムがカタログに残っているのにブルコメやスパイダース、テンプ辺りのアルバムがカタログにないのは異常な状況だと認識している自分は変なのだろうか。

ザ・ハプニングス・フォー

引潮・満潮

CD EMI FJSP54

これは上と合わせて昔CD化されていたが、都合により一曲抜けていたので、気持ちも悪いので買い替え。日本のプログレアルバムの最も古い例として定評のあるアルバム(の割に今回が完全な形としては初めてのCD化というのは一体どういうことか。)でもうGSではなく、その後身のトランザムへ繋がっていく早すぎたニューミュージックと言えば理解が早い。このバンドのイメージよりは素直な曲が多い。それはそれとして、「引潮・満潮」や「長い旅」はいい歌だとは思うが、曲としてよくても売れなかったら歌謡としてはダメだったと判断せざるを得ないのでは。解説者と歌謡の概念が違うのだろう。最後は50代で死を予感させる詞で終わっているが、本人たちが60代になった今、どのような感慨があるのだろう。

20.12.20 とりあえずストップ。

原みつるとシャネル・ファイブ

くやし泣き

EP キング BS1848

A面はCD化済。B面は自作。跳ねるリズムを使ったシックな曲で、いわゆるアダルトポップス路線。渋いが、地味。申し訳程度ではあるがファルセットのコーラスが絡むのは気分がいいが、ダイナミック演法と言うのには躊躇せざるを得ない。

矢吹健

むらさきブルース

EP テイチク US668J

筒美京平。「くれないホテル」の姉妹編的作品。矢吹健の歌唱には嘗てのディープさの残り香は漂うものの、自体は大変軽くなっておって凡庸な歌手への転向が進んでいる。したがってあまり印象に残らない。B面はソフトタッチなアダルトポップスで、これも小品ではあるが、こちらの方がすっきりと洗練されている。

20.12.18 えいやあヤケクソ。

秋庭豊とアローナイツ

新・中の島ブルース

EP ビクター 7HB17

アローナイツも末期も末期。この新○○というのはこの時期に集中しているが何かあったのだろうか。旧「中の島ブルース」とは全然違う曲だが、こちらも木下あきらの歌い上げまくる見せ場が充実している。但し曲としては旧に及ばない。ベースが妙にかっこいい。B面はニックニューサっぽいフォークなのかニューミュージックなのかムードコーラスなのかよくわからない作品。ボーカルの力強さが印象に残るが、全く木下のソロ。イントロだけならカーペンターズっぽくもあるのだが・・・。

ハトポッポ

あの人は受験生

EP キャニオン 7AD229

女性デュオ。学生同士の恋愛のモジモジした心情を歌ったフォークソング。なんとも可愛らしくて微笑ましい曲。B面も無垢な恋愛を歌ったフォークバラード。昭和50年代後半という時勢においては無垢なことこの上なさ過ぎてヒットを狙っていたのか疑問はあるが、清涼剤としてこういうものもたまにはあったほうがよい。

アラジン・スペシャル

がんばれジャイアンツ!!

EP トリオ 3A111

A面CD化済。「幻の名盤」。シュールなヒット曲。B面は曲頭・曲間に歓声を被せた擬似ライブ盤で、ずうとるびのようなクールでかつ突飛なブルース歌謡。A面の奇妙さに比べると非常にまともな曲と言えるだろう。カレーの福神漬けやラッキョウの様なものである。

パール原田

思い出の小貝浜

EP ビクター PRA10830

茨城のご当地もの。アローナイツ的な余り重くない三連バラードのムード歌謡。あっさりと歌っているが、もっともっとドロドロした歌い方で、例えば花菱エコーズの「西海ブルース」のような感じの方が、似合いそうな歌。B面は穏やかなフォークバラードで、さとう宗幸あたりの直系の楽曲と言うべきか。この歌手も多分に怪しげではある。

梓みちよ

小心者

EP ソニー 07SH836

シャンソン歌謡、とのことだったが、歌謡の色が強すぎてシャンソンの色は少ない。何とも宜しからず。特に記すところなし。B面も精気のないアダルトポップス。自分には採る所なし。

20.12.17 目ン玉焼き中。

V.A.

ソングス 都倉俊一ソングブック

5CD ビクター VICL63148−52

本人の言動と出てくる曲のギャップが凄いビート天国都倉俊一作品集。メロディーなしにビートに頼る曲と出自に忠実なフォーク調の楽曲が多いが、本人としてはバカラック調をやりたかったらしいということが判る。有名曲が多いので割合と平然と聞ける中、売れそうにないけれども全く凄まじい強烈なハーモニーとたぎるビートが驚きを与えるフラッシュの「電光石火」が文句なしに存在感を放っている。やはり本人が選曲したというディスク4が異色で採算を度外視したかのような奇矯な曲が揃っている。ただし自分の好みとはそれほど被っておらない。

殿さまキングス

ザ昭和歌謡殿さまキングススペシャル

CD ビクター VICL63160

いちいちレコードを出してくるのがめんどくさいのでベスト盤を買ってみた。前に買ったのとは微妙に選曲が違う。宮路オサムの芸術的な下品声が大爆発。昭和50年代のムードコーラスの大変革を担った殿キンの全部とは言わないが、表向きのところが大体つかめる。ディスコグラフィーがついていたのがありがたかったが、まあベストは一つあれば普通は十分。

殿さまキングス

なみだの操

CD ビクター VICL41201

殿キンのファーストアルバムの復刻。二曲を除き流行の歌や戦前の曲のカバー。宮路の芸術的な下品ボーカルが大活躍しているのは言うまでもないが、森進一のカバーなどで見られるそれ風のしゃがれた悶絶ボーカルもこのグループの実力の奥深さをよく示している。チャダのアルバムもそうだが、オリジナル、当時の流行歌、戦前の流行歌という構成になっており、戦前の流行歌も「野崎小唄」では間奏だけテンポアップするなどの漫然としたカバーの域を超えたアレンジがなされており、ムードコーラスの歴史を一変させた革命児ののりにのった快調な飛ばし具合が堪能できる。一方、このバンドらしいコミック味は全く見えず、森進一風が普段のステージでの鍛錬の賜物だとしても、純粋な演歌のアルバムという域を超えてはおらない。

ニック・ニューサー

ゴールデン・ベスト

CD BMG BVCK38112

これも。BMG時代のシングル盤は全部買ったがめんどくさいのでベスト盤を買った次第。A面曲全てとB面曲・アルバム曲数曲を加えている。福岡のダイニングバー出身のバンドの割りに大阪を題材にした曲が多く、自分が小さい頃に上方のバンドだと誤解していた根源はここにあるのだろう。サウンドの印象よりは泥臭くなく、大阪よりも関東のりの曲の方が嵌るような気もするが、今からそんなことを言っても詮無い。しかし、何と言ってもこういう独自なサウンドを完成させたバンドというのは最大限の賞賛がなされるべきであろう。

内山田洋とクール・ファイブ

ゴールデン・ベスト

CD BMG BVCK38109

以前ベスト盤を買って持っているのだが、微妙に選曲が違うので購入。これだったらボックスを買えというところ。前川清の歌には常にダイナミックさが付きまとっていて聞き応えがある。個人的には余りクールファイブはピンと来ず、人が言うほど買っていないので今までほっておいたが、一応ムードコーラスの王者だし、そろそろ聞かず嫌いも卒業しようという次第。ちなみにブックレットにクールファイブのディスコグラフィーが載っているが、甚だ不備があるので、これなら載せない方がよかった。

チャダ

チャダ伝説

CD ビクター VICL63202

インド人演歌歌手の全貌。多分「面影の女」以外はこれが初CD化。チャダの歌い方は澄んでおり、甚だソフトタッチであり、たどたどしさは全くない。但し、ラ行の発音がまくことがあることと、油断をしたときにやや音程が乱れることが観察される。外見のインパクトもあるが、実はこれが外国人らしさを強調しておって、チャーミングで、それがとにもかくにも一応の成功をした重大な要因の一つだと思う。彼のインタビューが収録されているが、彼の実直な人柄が伝わってくるのとともに、彼の気に入っている曲のセンスがえらく自分に近いので驚いた。彼の24曲中16曲を復刻しているが細川たかしの「心のこり」のカバーが実に宜しい。成る程、高音の伸びが傑出している一方でこぶしがやや弱く大作りの彼の歌い方によく配慮されているというべき。演歌の色が非常に強いが比較的に軽めのサウンドだから多くの人に聞き安いだろう。カットされた戦前歌謡のカバーも聞いてみたかった。オリジナル曲もキワモノと切って捨てるのは惜しい曲が揃っている。大橋巨泉、信楽潤らとの当時の想い出も興味深い。

いしだ・あゆみ

ステレオ・ハイライト

CD ビクター VICL63179

ビクター時代のいしだあゆみの待望の一枚もの。ビクター時代のその又初期音源を集めたものなので全ての音源を集めたものではないが画期的。いずみたくが全般的に楽曲を提供しておって、その色が大変に強い。一部でエレキが入っている曲もあるが昭和30年代のポップス系女性歌手としては突出した部分も特に見受けられず極々標準的な出来といえよう。コロムビアに移ったことやビート時代に差し掛かったこと、筒美京平を得たことなど全てが激甚の幸福であったとしかいいようがない。もっともこの路線で20数枚のシングルが出たことはけして周りがほっておけるような歌手でなかったということは示しているが、それでは何をどうすればよいかという答えが中々でなかったのであろう。ビクターはついでに麻里圭子も出してほしい。

ザ・ドリフターズ

全員集合!!

CD EMI TOCT26718

ドリフターズのファーストアルバム初復刻。コント部分が初CD化。奥村チヨらの既存の音源も使用しつつモテないコントを繰り広げながら曲が次々に継がれていて完成度か高い。メインの川口真とデビュー曲両面のみの荻原哲晶の編曲の違いも浮き彫りになっていて興味深い。仲本工事と加藤茶のどちらをメインにしようか悩んだあとも如実でこれも歴史が感じられる。(仲本工事のボーカルについては自分は相当にかっている。)加藤の切れキャラが前面に出ている時代のアルバムだけにボーナストラックとの断絶具合がちょっと気になる。

ザ・ドリフターズ

再び全員集合!!

CD EMI TOCT26719

同セカンド。「赤盤」を売り払うために事実上買い替え。A面部分が彼らのシングル曲、B面は彼らのルーツたるウエスタンものを日本語でコミックソングとして料理。全てなかにし礼作詞も川口真編曲で纏め上げている。

ザ・ドリフターズ

ドリフの軍歌だよ全員集合!!

CD EMI TOCT26720

同サード。文字通り軍歌を原詩のままビッグバンドをバックにカバーしたもので、曲間は多くコントで繋げてある。シングル曲のトラックを流用したものもあるが、メンバーのソロも聞け、出来としてはまあまあか。「酋長の娘」のみが初CD化。3枚聞き通すと、音楽ユニットとしてのドリフターズにおいて、ソロが2枚の殿軍に収められていること、デビュー曲においても殆どトップボーカルを担っていることなど、如何に仲本工事が重要な役割を演じていたかということが痛いほど痛感せらる。

V.A.

喫茶ロック 風をあつめて 東芝EMI編

CD 東芝 TOCT10768

この項は読まぬが吉。合わないのは判っているが店頭でCDが声を出して泣いていたので買ってしまった。何かこのシリーズのCDは店で泣いていることが多い。これはバラバラな傾向を持つこのシリーズの中では極めてソフトロック色が強い一枚。URCの系統の人たちが多い中、後半のトワエモア、イーストらのボサノバものが清涼感を提供している。ただ、自分ははっぴいえんどを聴くと他のものがまともに聞けないぐらい嫌いなので、始めからこれを抜いて聞けばよかった。大分このシリーズの壷も判ってきたしいろいろと曲も聞いたのでそろそろはっぴいえんどに免疫ができているかと思ったがまだだった。仕方ない。とにかく松本隆の詞が大嫌いで、「九月の雨」とか例外もあるが、この人の詞は訳がわからなく、情があるわけでもない、歌謡曲を殺した張本人だと思う。松本隆が詞を書いていなければ多分筒美京平ももっと好きだったのだろうし、細野晴臣ももっと手軽に聞いていたに違いない。最近の「風をあつめて」がやたらにカバーされる風潮も気持ち悪くて気持ち悪くて仕方ないし、とにかくこういうどうしようもないバンドを日本のロックの源泉みたいに言うのは本当に気に入らない。これが日本のロックの源泉なら日本のロックなんてものは須らく駆逐されるべきだと思う。朝にテレビのCMで「風をあつめて」を聞いてしまったりすると、禍々しい限りで、その日一日何も上手くいかなくなるので本当に気分が重くなる。自分にはこういう地雷の様なグループや歌手がいくつかあるので、それは直さないといけないのだが、聞けば直隷に怒りに行き着いてしまうので体質の改善も出来ない。どうしたらいいのだろうか。こういう地雷になっているグループや歌手はみな「音楽通」の人に評判のいいバンドや歌手ばかりで、そういうインテリぶり、相手を見下すための道具を提供している体が憎悪の対象に映るし、それが歌謡曲を痛めている様にも見受けられる。(S、r某という歌手もこの類。これも全然ものが整っておらないのに、音楽通は好きでないといけないような風潮で、何より世間で歌謡調の歌手だと思われているのがとにかく嫌で、これが好きな人とは絶対に話が合わないし、好きなのならばそれで百年の恋も冷めるほど大嫌いだったりする。昔これを理由の一つにして相互リンクの申出を断った。火種が明らかなときはこれを取らないのがよい。)はっぴいえんど以外の曲はこれという強烈な曲はないが、とりまとまっていてBGM用によいかもしれない。上記の様な理由で評価は敢てしない。

V.A.

喫茶ロック 夕暮れにさようなら ビクター編

CD ビクター VICL60908

これはその横で泣いていた。SFレーベルを抱えているせいか、このシリーズの中ではフォーク度が高い。柘植章子「一瞬」がかなり異色。他にチェリッシュの「出逢い」が見事なソフトロック、加藤知典「地球への旅」がエコな悪夢を見ているようでそれぞれ印象に残る。これも「好きではないがよい歌」が揃っている。BGM的であるのは変わりないがこの辺りの人たちも一概にこういうものという偏見を持って見るのは良くないということを痛感。

青山ミチ

ミッチー音頭

EP ポリドール DJ1334

A面はCD化済の「ホワッド・アイ・セイ」をベースにした、言わずと知れた名曲。B面も鋭いビートのロカビリーでこれもダイナマイトな歌唱が爆発する。自己紹介ものなのにアイドルに行かずロックに行くのがこの人らしい。スローテンポで始まり急加速する曲調も青山ミチらしい。キュートなんだか何なんだかよくわからない台詞が奇襲するなど利き所はあるがやや地味か。 

伊丹幸雄

ボンジュールお目目さん

EP ソニー YESA30

やたらに評判の高いCMソング。会員限定配布のプロモオンリー盤。アラン・シャンフォーのシャッフル・ナンバーを日本語でカバーしたもの。フレンチポップスらしい繊細な感覚をもつ楽曲で、化粧品のCMソングらしくお洒落。「ソフトロックドライヴィン」に入っていても違和感がない。B面は聴取者に歌詞を付けていただきたいということで伊丹サチオはスキャットに回って事実上のカラオケになっている。こちらの方が曲の繊細さがよく味わえる。

ミヤビひこ

流れの花

EP ファンシー FR1001

有名なストリッパーによる物凄いジャケで有名な「幻の名盤」。中国民謡を本人の訳詩で。ソフトタッチなワルツに仕上がっているが、歌唱は流石に本職の歌手のようにとはいかず、声が一本通っておらないのが悔しい。ただし原詩で歌われる四番はなかなか堂に入っている。「くれないホテル」に似る。B面はミヤビ作詞による別歌手(志摩きよ美)の曲。トランペットのなくミドルテンポのムード歌謡で、サビ以降が和風のメロディーのしっとりした曲。端正に過ぎる気は過ぎるが非常に上手い歌手と言えよう。

他にCDR7枚を頂く。南米オリジナルガレージは発音が母音が多いこともあり日本のGSに似た部分が多いことを再確認。加山雄三の楽曲もカバーされており、しかも一曲は割合に流暢な日本語で歌われるということで現地ではGSがヒットしていたという都市伝説も信頼できるのかもしれない。所謂GS歌謡というか純歌謡というのは絶対に世界に通用するのだと思う。他は本当にGSもので依頼していたもの。

20.12.16 本当に調子悪いわ・・・。

V.A.

涙の太陽 グランド・ヒット・パレード第2集

LP コロムビア PS1216

ブルー・ジーンズが単独でコロムビアに残した珍しい音源を収録した洋曲カバー盤。エミー・ジャクソン、ムーヴィーランド・シンフォネット、スカイライナーズ、ブルージーンズと恐らく渡辺プロの絡みと思われる面子だが収録曲は半分がムーヴィーランド・シンフォネットのオーケストラ又はビッグバンドの演奏で占められているが、「朝日のあたる家」のようなエレキバンドにやらせてもいいような曲をこのバンドがやっていて過渡期のアルバムという気がする。ブルージーンズはやや匿名性が強い演奏とはいえ、鈴木のドラムの歯切れが異常によく、早弾きも随所に聞け充実期の第一次ブルージーンズの演奏が楽しめる。スカイライナースは手堅く、エミー・ジャクソンはシングルと同テイク。

橋幸夫

若者の子守唄

EP ビクター SV599

リズム歌謡の凄い名曲なのに何故か影の薄い一枚。A面CD化済み。B面もバイヨンみたいな跳ねるリズムを使っていてただの青春歌謡というよりはリズム歌謡の方を向いている曲。ただしカラリとした曲でないのでなかなか評価はされ辛そう。本来の橋幸夫の音楽性にも配慮されており、A面とのバランスということでは非常に素晴らしい配曲。

西浜鉄雄

ディープ・ロマンス

EP 徳間 BMA2012

有名レコード。本番映画「白日夢」の主題歌である。お洒落な感じで取りまとめようとしたニューミュージック風のバラードだが、五社協定崩壊後の日本の映画主題歌の例に漏れず、整っておらない。宜しからず。可も不可もなし。B面も似たようなもの。道理でジャケットに比して中身のことが語られないはずである。

日吉ミミ

東京チカチカ

EP ビクター SV7273

轟夕起子のカバーかと思ったら違った。佐久間正英の弾けた編曲にいつもどおりの突き放したようなボーカルが躍動する望郷演歌。毛色は変っているがコミックソングにも徹し切れておらずどこを狙っているのかよくわからない。B面は「男と女の」シリーズ。打って変ってワルツを使ったアダルトポップス。この編曲も曲に比して奇抜だが、それ以上のものはなし。

演歌太郎

うしろ指

EP トリオ 3A148

一節太郎風をもっと若くしたようなボーカルで歌われる岡千秋作品。整っておらず、やや乱暴に取りまとめていて、これがいかにもいきなりに聞える。単音オルガンと琴の編曲は気になるが、それまで。洒落なのか洒落じゃないのかがよくわからんのであります。B面は演歌ではあるがロックがかったムード歌謡と言った方が実態に即した曲。取りまとまってはいるが、歌手名がこれで楽曲がこれというのでは納得しがたい。名前が本人の力で受け止められないような大きさを持つものであると、悪いようには作用しても、いいほうには余り作用しない。

ヘドバとダビデ

朝もやの中

EP RCA SS2108

彼らの出自をいかして国際的な感覚を煽る「ナオミの夢」の追撃弾として出た両面日本語盤。葵まさひこの編曲が利いたさわやかなポップス。いかにもらしいソフトロックな仕上り。シモンズあたりが歌いそうな曲ではあるが、Kとブルンネンもやっていたような気がする。B面はKとブルンネンもやっている万博ムードを反映したソフトロック系ポップスだがややたどたどしい歌い回しがメロディーの流麗さを帳消しにしており残念。トラックもなんとなく歯切れが悪い。

20.12.15 調子悪いというか、なんかダメだ。

ミッキー・アンダーソン・オーケストラ

これがエレキだ*クラウンヒットパレード

LP クラウン LW5091

有名盤。クラウンのヒットした青春歌謡やもっと本道に近い曲をエレキインスト化したものだが、完全にオーケストラの人がエレキ楽器を弾いているというメンタリティーであり、一曲も所謂サーフ的なメンタリティーで弾かれている曲はない。熱情よりも落ち着いた吹流しの様に腹の中に何もない演奏で貫かれている。「6番のロック」ですらも一切の熱情から解放されている。その意味では「出世子守唄」が静寂というか、音の空白が鮮烈に刻まれており、このバンドの演奏としてはよく極められたものと言えるかもしれない。ジャケットは西郷輝彦。

シーゲル・カジワラ

イングリッシュ歌謡曲

LP キング SKA255

有名盤。梶原しげるがヒット歌謡を英語でカバー。A面は演歌ティナー・シーゲルカジワラがアメリカでラジオ番組出演そして公演をするという設定で演歌を英語で歌う。ただし所謂演歌らしい演歌は「昭和枯れすすき」だけで他はポップ演歌乃至歌謡曲の範疇に入る歌である。態々カラオケ然としたバック演奏でコーラスも態と日本語で入れてあるものの上からカタカナ発音の英語で歌われる。繋ぎのトークもしょうもなかったり臭かったりするが、飲みの席で生まれた企画らしい。B面はGS、ポップス、ニューミュージック系の曲を英語でカバー。こちらは繋ぎに脈絡がないが、ややましなトラックになっている。言い方は酷いが。両面とも冗談レコードであることを目いっぱい主張している。

ひまわり姉妹

涙は嘘つき

EP ビクター SV939

彼らの曲の中で一番キューティーポップな曲と言われているもの。余り見ないらしいが、あっさり見つかった。シェイクのリズムを使ったやや重いビートを伴った目まぐるしい展開をするビートポップス。彼らの曲の例に漏れず大変にキュートな楽曲。吉田正はビート時代にちゃんと対応しようとしていた節が窺えて興味深い。B面は三味線とエレキコンボを使ったキュートなポップスでこの時期にたまに見受けられる「メイビーアイノウ」の日本式翻案歌謡。これがA面でも彼女たちの代表的なビート歌謡とはなったであろう。とにかく弾けている。メロディーは「明日はお立ちか」を引いているけれども、気にしない。

いずみ・たくシンガーズ

別れの色彩

EP ワーナー L1244W

フィフィ・ザ・フリーの後身の売れなかったシングル。ラテンのニュアンスを入れ込んだモラトリアム的なコーラスを厚くかけた物悲しいソフト・コーラス・ポップス。B面はジャズを念頭に置いた更に洗練されたポップスで、溌剌としたコーラスがソフトロックの情緒を満たす。どうも最近凄いお洒落なソフトロック歌謡が中古屋で売られているのをよくみるから、世の中ソフトロック歌謡というのは一時に比べて極端に評価が落ちているのかもしれない。

ハニーパイ

愛するハーモニー

EP ワーナー L1079R

ニューシーカーズの大ヒット曲をフォークグループがカバー。A面は別にアナログアルバムで所持。B面もA面に負けず劣らずの素晴らしいハーモニーを聞かせる、適度にグルーヴも効いたソフトロックの佳曲。こちらも青木望編曲でその仕事を完璧に行なっている珠玉の一編。

石坂江里奈

愛し合う二人

EP ポリドール DR1513

有名盤。キューティーポップの範疇に入るのだろうが、何とも焦点の定まっておらない曲である。伊藤きよ子らの台頭に対応して出してきたフォーク・ポップ調のナンバーというべきであろう。キューティーポップスからアイドルポップスへの移行状況をしめすような作品。B面も同様にキューティーポップスからアイドルポップスへの移行状況をしめすような作品だが、こちらは物悲しさが先に立っておりビートポップス色も強い。詞は辺見まりや夏木マリらの世界を先取りしている。

20.12.14 調子悪いというか眠いと言うか。ずっと本読んでたり。

C.C.ガールズ

ウゴウゴ・ルーガ/C.C.ガールズがうたうおねえたまどうよう

マキシ ワーナー WPCL793

初代C.C.ガールズが童謡を果敢にカバー。サイケデリック・トランスの魁の様なアレンジだが、C.C.ガールズらしいゴージャスさやエロさが表に出ておらず、或いはサディスティックさもアダルトテイストも余りなく、変なアレンジで抑揚なく歌っているだけという域に留まっているのが残念。「かもめの水兵さん」はつぎつぎ変転するバックトラックがあまり歌とリンクしておらず、なんとも口惜しい。このシリーズではCoCoが同様の趣向でミニアルバムを出していて編曲も同じチームが担当しているが、それに収録された「てるてるぼうず」の打ちのめされるような衝撃は、やはり突然変異であったのだろうか。

内山田洋とクール・ファイブ

オン・ステージ

2LP RCA JRS9043〜44

ライヴ盤。玉置宏を司会に迎え、チャーリー石黒と東京パンチョスをバックにし「高いところからははじめて」というステージを音盤化。A面は「長崎は今日も雨だった」を始めとしたオリジナルを固めてご挨拶。「捨ててやりたい」のボサノバアレンジが秀逸。B面では普段ソロを取らないメンバーも含め長崎をテーマにした歌謡曲をものをメドレーで6連発。ここで既に茶目っ気のあるステージというか前川清の朴訥としたステージングに客席が沸き返っている。C面では普段見せないクールファイブということで前川がソウルフルに歌い上げる「ヴィーナス」から始まり「男と女」「アンドアイラブハー」「白い恋人たち」というスキャット3連発、そして「イエスタディ」を被せて最高潮に盛り上がったところでジミーオズモンドの「ちっちゃな恋人」をぶつけて大肩透かしをくらわせるという手のこんだ大ネタを忍び込ませるのは流石なのか何なのか・・・。D面では最新のシングルを含むオリジナル曲を再び演奏。大御所でなく新進のグループであった時代のクールファイブの生真面目で緊張した面持ちが偲べる貴重な記録。既に定評のある一枚。

寺内タケシとブルー・ジーンズ

エレキ一本演歌で勝負

LP キング SKD32

タイトルは演歌だが戦前から昭和40年代までの任侠歌謡に一部キング原盤の懐メロを加えた選曲。これをエレキ・インスト化。第二次ブルージーンズ時代の編成なので音がバニーズ時代の強引なガレージ編曲の面影が大変に強く残っている。任侠ものよりも三橋美智也や春日八郎のカバーの方がワイルドで、特に「上海帰りのリル」「リンゴ村から」「別れの一本杉」の三連発にはテリーシュなフレーズがてんこ盛りで聞き所。タイトルで損しているアルバムだと思うが、流石第二次から第三次初期のブルージーンズの無茶苦茶なアルバム群の一角をなすアルバムの一つではあるというとんがり具合。

和田弘とマヒナスターズ

いとはん可愛いや

EP ビクター SV138

和風のメロディーを強調したもので「お百度こいさん」のサウンドを縮小再生産。一箇所だけに入るエレピの音が何だか耳に残る。三番でのボーカル陣総攻撃はこのグループならではの情緒がある。B面は吉永・三田の「二人の心斎橋」でこれは三田明のベスト盤で所持済。

大橋節夫とハニー・アイランダーズ

あの星はママの星

EP 東芝 TP1267

彼らの自作自演盤。自作自演なれどハワイアンの情緒たっぷりで本物のハワイアン楽曲の中に混ぜ込んでも全く違和感がないであろう。時代を反映しているのか、当時の初期フォークやカレッジフォークの歌詞との共通項があり、フォークグループの少なからぬ部分がハワイアンから出てきたグループであるということを思い起こさせる。B面は吉田正が作ったと言っても通用しそうなマヒナ調のマイナー歌謡で、こういう曲がなければ世間が納得しなかったのかなぁなどと余計な詮索をしてしまう。曲としては沈鬱でよし。

畠山みどり

ツキツキ節

EP コロムビア SAS50

A面はボックスに入っていてCD化済。B面の「ホンコの恋ならドンと来い」はヒットしていたと思うが、これは昭和30年代の歌謡曲らしいお座敷歌系のコミックソング。特になし。

永井江利子、山下洋治とムーディ・スターズ

八丁堀小唄

EP クラウン CW757

ファンシーなジャケ・・・。本来は優秀な演奏者集団だったムーディ・スターズの面目躍如の軽快な演奏と素晴らしいコーラスに艶っぽい歌が載る小唄。歌自体は取るに足りない小唄歌謡なのと一箇所ボーカルがキーが低すぎて声が出ていない部分があるのが惜しい。B面は名前の通りの日本の三連ブルース。長大なボーカルのソロだけになる部分が挿入されているのが珍しい。こちらにはムーディ・スターズは絡んでいない。両面とも広島のご当地もの。

大矢英美子

友情の花

EP キング BS1194

売り物の「バニーガールできたえた脚線美」を強調したジャケは凄いが中身はそうでもないという評判だが聞いてみないと、ネ。軍歌調のマーチ。唸りを揚げるボーカルもジャケットと全く結びつかない。「365歩のマーチ」に追従したものか。まあ、ちょっと遅すぎるか。何とも掴み所のない曲である。B面は発売(昭和45年)を5年ぐらい遡ったようなフォーク何だかお座敷もの何だかよくわからないぬめっとした曲でこちらも素晴らしいジャケットとはかけ離れた歌。もともと都々逸や端唄が得意と書いてあるから本来は楽曲のほうが本人の志向に近いのだろうけれども・・・。

加賀城みゆき

フーさん

EP コロムビア SAS916

演歌の御祖、おのろける。スチールギターが先導するお座敷ソングだが、速射砲の様な余興の場を劈くボーカルが予断を許さない雰囲気を醸しだす。こんなに軽い歌なのに、これだけ本格的に聞えてしまうのは演歌の御祖だからこその荒業。B面は頭打ちビートの本格演歌。本領発揮だがそつなくこなしているという印象が強い。複雑なサビの歌い回しをさも当然と言うようにあっさりと歌いきっているのはこの人の腕によるものと言わめ。

ヤン・シスターズ

子供すぎる彼

EP キャニオン A204

台湾出身の演奏可能な姉妹ダンスグループのデビュー盤。これも肉を大量に食いそうなえらい勢いであおりまくるアメリカ的なグルーヴを持つビートを重視したダンサブルなR&B歌謡。フィンガー・ファイブをもうちょっと年上にして女性版にしたものを狙ったと見た。B面も特撮の主題歌の様な肉食グルーヴ歌謡。突き抜けるようなストリングスとコーラスの応酬が聴いているだけでお腹いっぱいにさせてくれる。両面とも千家和也、鈴木邦彦、竜崎孝路というスタッフ。

川辺妙子

ミッドナイト東京

EP フィリップス FS25

A面はCD化済み自分の中ではワンダースの「赤い花びら」と並ぶ筒美京平の最高傑作。B面はこの時期の筒美京平がムード歌謡系の曲を作ったときにありがちと言っていいのか、適度に湿って入るがややフックがない地味な曲。ただし本人の西田佐知子好きはよく伝わってきて好感。

みね藤子

ひとり寝の宿

EP 東芝 TP17634

歌手名だけで買った。多分何の変哲もない演歌なんだろうな。と思ったらスタッフが妙にフォーキーだ。多分「哀しみ本線日本海」が当たったのでフォークの人に演歌を作らせようという企画意図であったのだろう。清楚な歌い方がサビで感極まったように雪崩を起こすのが面白いが、却って奇矯な印象を与える。B面はニューミュージック色が強い。石川さゆりにありそうな歌だが、演歌というよりは完全にアダルトポップスの領域に入っている。但し歌唱が楽曲に追いついておらず、甚だ粗い。

20.12.13 ネットというのは凄いです・・・。

ピンキーとキラーズ

恋人の賛歌

EP キング BS1104

A面は既に定評ある和製ソフトロックの名曲でCD化済み。B面はA面とはタイプの違う純歌謡的なグルーヴもの。いずみたく路線のほかを探す試行錯誤の中での曲ではあるが、いずみたく路線の延長にある作品と言えそう。このバンドらしいジェントルなコーラスもばっちりと入っている。

ピンキーとキラーズ

愛に生き平和に生きる

EP キング BS1310

いずみたくのライフワークであるミュージカルの方を向いた作品で、歌詞の内容もピースフルな歌い上げスローバラード。「見上げてごらん夜の星を」を思わせる曲調と豪華なオーケストレーションが豪勢な印象を与える。B面は寺内タケシとブルー・ジーンズとの競作の「明日へ行く汽車」で、こちらは抑制された沈鬱な雰囲気の中でベースだけが暴れ回り、走り抜けていく汽車に焦点が当たるブルージーンズのバージョンと対照的に汽車が駆け抜けていく曇天や灰色の大地の方に焦点が当たっているようなアレンジ。どうもシベリア送りになったような聴取後の感覚が残るが。全然違う発想による競作というのはこういう歌の多面性に光が当たって面白い。

寺内タケシとブルー・ジーンズ

明日へ行く汽車

EP キング 17A12

その。これはリハーサル風景を収録した非売品EP。A面は「歌のない歌謡曲」に収録されているバージョンの前後に寺内タケシとメンバーのやり取りが収録されている。いくらなんでもこうはあっさりとレコーディングが進まなかろうから、台本があるのだろうが、そうは言っても幾分かは真実が含まれているのだろうし、大体ロックのアレンジと言うものはこんな感じで決まっていくものだ。寺内の豪放な親分というイメージをレコードに落とし込んだ貴重な記録。B面はこれでしか聞けない伊東ゆかりの「愛のきずな」をインスト化したもの。更に豪放なやりとりで、セッションでやってみましたという体で収録している。出来は普通。

沢村和子とピーターパン

赤い星のボレロ

EP コロムビア LL10108J

10年以上探していたので無茶苦茶嬉しい。GSとニューロックと歌謡ポップスの真ん中にいたバンドのファースト。A面別のアナログアルバムに収録済み。B面は憂さ晴らしの様なオルガンのソロで始まるが要はポールアンカ風の三連ロッカバラードで、ストリングスと男女の大コーラス部隊を引き連れた大時代的なもので、これでゴーを出した感覚は余りにもアナクロ。なお、レコードデビュー前はザ・スピードというグループ名だった。

香月サコ、ミチ&ユキ

霧のロマネスク

EP ポリドール SDR1441

A面は本体入手。この人はあと3年違えば八代亜紀みたいな立ち位置に立てたかもしれない。B面は「女ですもの」のような始まり方をするが、これは以前師匠のチャーリー石黒が自主制作盤(「ゴールデンゲイトの夜」)で彼女自身を使って歌わせた「恋の赤坂」の改変リメイク。コーラスが破れており、旧盤の方が出来がよいように思われる。

バーブ佐竹

サハラ砂漠

EP クラウン CWA711

この人はちょいちょいこういう変な素材の歌を出してくるので油断できない。中身は歌詞にサハラ砂漠などという単語もまったくでてこない中道的なムード歌謡。タンゴ調のラテンナンバーにするつもりであったと思われるが、その意図は成功しているとは言いがたい。スペイン語のサビがこなれておらずえらく浮いている。B面は完全に演歌で特にこれというところもない凡庸な歌だが、作詩が細木数子なのが特記事項といえば特記事項か。

20.12.9 買って兜の緒を締めよ。

ダニー飯田とパラダイス・キング

パラダイス・キング・ヒット・アルバム

CD EMI TOCT26673

30年代最高のポップグループ、パラキンの当時出たベストアルバムの復刻。殆ど持っているがボーナストラックの「朝日のあたる家」を目当てに。手放しで褒めるというのは少し難しいが、昭和30年代最強のバンドの名に恥じない。他に「ポッカリ歩こう」「道はとこしえに」など。ちゃんと全部の音源を網羅したボックスセットを出してほしい。

V.A

喫茶ロック〜ドライブ日和〜ショーボート/トリオ編

CD ショーボート SWAX114

聞かず嫌いで来は来たが、敢て聞いてみれば、ああ、そんなに全然理解できないということもなかった。非常にBGM的であってまったりとしておる、と言えばまさにこのシリーズの本来の編集意図そのままであるのだが、アコースティックながらフォークでもなく、ロックという名前ながらロックでもなく、宜しいポップス揃いというべきか。ただし、あくまでも流して聴くには心地好いというものであって、相正対して聴くには薄い楽曲が多い。つくづくはっぴいえんどみたいなバンドをシリーズの看板に持ってくるからみすみすと好機を逃せるのだ。可も不可もなし。これという曲もないがあえて言えば荒木和作とやまだあきらがやはりモンドが入っていてグッと心を引き込む。多分このシリーズは全部似たような感想になるであろう。

ザ・リンクス

山口の夜

EP 東芝 H4R8007

山口の余り活動していないローカルグループでフォークを自称しているけれどもムードコーラスにしか見えない・・・。聴くと、さとう宗之に似たボーカルを擁するニューミュージック風の青春バラードで、ところどころ音程が狂うが然程おかしな出来ではない。全編にコーラスが入っておってなかなか感じである。アダムスの「地球はせますぎる」が思い起こされる。B面は今井久張りのギターが聴けるパープルシャドウズ風の曲。というかタイトル「二人のスナック」からして影響受けまくりだが。グループサウンズがやっていてもおかしくない素晴らしい青春歌謡。ニューミュージックグループなのかもしれないが、でも題材とかムードコーラスだよな。ちゃんと人を圧倒できる演奏が出来ているので満足。メンタルはインディーGSの諸グループに近いのかもしれない。

ザ・リンクス

我が青春の椹野川

EP 東芝 TP17191

上が切っ掛けとなったのかメジャーデビューできたようで、これは叙情フォーク・バラード。本人たちも演奏に参加しているのだろうが、オーケストレーションされていて、非常に整えられているが、上で見られたグループサウンド的側面・ムードコーラス的側面は全く見られない。なるほどフォークグループだ。とにかく穏やかな作品。B面はカラオケ。タイトルは「わがせいしゅんのふじのがわ」と読む。椹野川は山口市内を流れる川で、このバンドの発想がニューミュージックグループのそれではないことの証左。

緑川アコ

夢は夜開く

EP クラウン CW569

A面CD化済。自分が60年代で一番好きな女性歌手といえばこの人。本名を水鳥川桜子といい、本名の方がかっこいいのはどういうことか。そのデビュー曲にして最大のヒット曲。競作多数あり。B面はチープなオルガンをバックに、この人の中では比較的に軽めなサウンド。軽くてこれ、ということに彼の真価がある。三連ロッカバラード。所謂日本のブルースの系譜。

緑川アコ

カスバの女

EP クラウン CW668

彼女のもう一つのヒットだがあまりCD化されない。エト邦枝のカバー。クラウン時代の殆どの曲と同じように、かなりマンネリズムではあるが、ハニー・ナイツのコーラスで始まる日本のブルース(作ったのは韓国人だが)。漆黒の様な彼女の声が聴くものを包み込むようで、出色の出来。B面も日本のブルース路線でサックスが咽び泣く漆黒の日本のブルース。これだけの人が時代を築けなかったのだから40年代は罪が深い。

水戸浩二

君を信じて

EP クラウン CW664

新御三家の一。そのデビュー盤。女声コーラスにマンドリン、のっぺりとしたメロディーとやや急ぎ目のテンポ、きっぷのいいボーカルと典型的にも典型的過ぎる青春歌謡。黒木健の「霧にむせぶ夜」になんとなく似ている。B面はマンボのリズムにのっぺりとしたメロディーが被さる、こちらもいかにも青春歌謡にありそうな曲。しかしいずれにしても昭和39年に出してくるならともかく、42年に出してくるには古臭いにも程がある。西郷輝彦よりも時代がはるかに逆行しており、当時においても既に古臭い感じを与えたのではなかろうか。

ベル

コーヒー一杯の幸福

EP エレック AIS13

この人たちはアイドルグループになるのだろうか。小泉正美作品。エレックお得意のこぢんまりとしたフォーク調の作品だが、ルックスと全然合っていない。B面の自作曲の方がポップで、こちらなら「喫茶ロック」あたりに入っていても全然違和感がない。昔からヤマハはデビューさせれば何とかなると思ってフォローを全然しないけれども、これも適切なプロモートが出来ていたらどうなっていたのだろうか。

法面

EP 東宝 AT1052

前から気になっていた人たち。のどかなブルーグラス系フォークだが、編曲はウエスタン色が綺麗に払拭されている。一箇所男を歌うときだけ転調するのがツボといえばツボか。最近流行ってきているどぶろっくのネタで歌っている歌に似ているが偶然だろう。 B面はフォーク色を強調した人生応援歌。とにかく死ぬなと歌う。

5カラット

ジンギスカン

EP テイチク HD6

ジンギスカンの「ジンギスカン」のわけのわからないカバー。訳詩じゃなくて作詩とクレジットしてあるのが姿勢をよく表している。男臭さが充満しているが、コーラスには女声コーラスも聞える。ジンギスカンの日本語歌詞は元がドイツ語だからか滅茶苦茶になることが多いが、これは、原詞からはかけ離れているものの、まとも。編曲は一部原曲にない部分があるが、まあ穏当。「ホホホホ」の部分は笑い声も被せて原曲よりも豪放。B面はカラオケ。〈追記・このバンドは、ダウンタウンブギウギバンドのメンバーが作ったラテンバンドとのこと。一体どこにラテンの要素があるのかさっぱりわからないが、ハコバンで鍛えられているからこそのディスコサウンドなのだろう。〉

どんぐりコール

塾なんか行かない

EP 徳間 7WWR4

元赤い鳥の後藤悦次郎作品。所謂ガキもの。フォークではあるが穏やかなポップス。これはこれであらまほしき子供像を所与のものとして子供に歌わせているというものであろう。B面はリコーダーをフィーチャーして同じ路線。特にあらず。

鶴岡雅義と東京ロマンチカ

追憶

EP コロムビア X6

ロマンチカには全くコロムビアのイメージがない・・・。コンガが目立つ哀愁歌謡。絶叫演歌になりそうなところを三条正人の上品さが上手いことまとめている。鉄琴やハモンドの音がやや鋭すぎてバランスを失しているかもしれないがギターの妙技が平然と織り込まれているのが聞き所。B面は五木ひろしのようなポップ演歌な編曲とアナクロなメロディーの組み合わせにたじろぐが、聴き終えるとなんとなく小さくまとまっていたように感じてしまうB面らしい曲。

鶴岡雅義と東京ロマンチカ

恋はここまで

EP テイチク SN978

自作。のどかなワルツ。「星空のワルツ」の影響下にあるか。ボーカルもこのバンドらしくなく演歌に傾いたものになっており、完全に便乗したものと言い切ってよかろう。サビにはファルセットのコーラスが確認できる。B面は、このバンドの通例らしい戦前の古賀メロディー風作品。間奏には「高原の駅よさようなら」のようなギターフレーズが聞ける。こちらもいつもよりもこくの深いボーカル。クール・ファイブらに比べて「通」に受けが悪いのはこの反ロック的な姿勢に依るのだろう。

黒沢明とロス・プリモス

城ヶ崎ブルース

EP クラウン CW845

この時代のロス・プリモスは両A面扱いとか両面名曲とかが揃っている。A面CD化済み。B面は底が抜けた詞と今ひとつ固い歌い方にロスプリモスの若気の至りを感じてしまうお座敷小唄物。伊豆に引っ掛けたものだが強引な歌というべきか。

黒沢明とロス・プリモス

恋の銀座

EP クラウン CW880

「銀座三部作」の中でとりわけ地味な曲。A面CD化済み。B面はブレイクも取り入れたこのバンドらしい物悲しいラテン歌謡。一目ぼれについての絶妙な表現が印象に残る、勢いのあるバンドにしか出来ないシックながらも強引な曲。フルートがいい具合に効いている。

黒沢明とロス・プリモス

ヘッド・ライト

EP ビクター SV904

彼らの代表曲だがよく考えたら持ってなかった。A面CD化済み。B面はA面とはタイプが違うがいかにも筒美京平がムードコーラスグループに書きそうな曲。ひと段落したあとにサビが来るのは新機軸。跳ねるリズムを使った比較的ポップな歌。「雨に歩けば」がモチーフか。

黒沢明とロス・プリモス

小雨のアムール

EP クラウン CW1873

ダークフェローズのカバー。重苦しいオリジナルに比べ大分ライトタッチな仕上がりになっている。どちらがよいかと言われると、それぞれ長ずる部分が違うので何ともいえないが、50年代のオリジナルの形ばかりが尊重されて魂が全く考慮されていない言わば像法の時代の曲としては大殊勲賞だろう。B面は、なんとアンジェラスのカバー。これも同じようなアプローチだが、こちらは印象が大分原曲に近い。こちらの方がコーラスの多用振りが見て取れるが、しかしなんという渋い曲を取り上げたものか。

大原武

男はよわい

EP ポリドール DR1466

女性上位時代を象徴するかのようなコミカルな歌かと思いきや、真剣に恋愛の苦悩を歌ったラテン系ムード歌謡。甲高いボーカルからすると青春歌謡歌手なのかもしれない。まともな歌なのだがこの時代のポリドールのわけのわからない時空の曲がり方の影響があるのか不思議に妙な雰囲気が漂っている。サビの「好きになったら、男はア弱い」のアがポイント。B面は驚きのビート歌謡。軽快なエレキをバックにフラワー的な雰囲気を垂れ流しながらすっ飛ばしていく。但しサビはやや重い。実直さ、野暮ったさとビートが出会う、この時代ならではの楽曲。「帰り道は遠かった」に少し似ている。

天ヶ瀬美和

流れ町ブルース

EP テイチク SN1037

山倉たかし。やや早い三連バラード。クールファイブや青江三奈らのムード歌謡の戦国時代に他に後れまいとする気概は感じるが、不足。B面は尺八も入る古賀メロディーの流れを汲む演歌。こちらの方が歌手に向いているようである。時折入るティンパニーの音がディープな雰囲気を与える。但しそこまで。

あそ邦子

みんなの幸せ

EP コロムビア SAS2031

なんだかよくわからないけどサイケなジャケで御座る。石本・船村という演歌の黄金コンビによる演歌もの。堂々とした歌いっぷりに満足だが天下一家云々とか社会がどうのこうのという歌詞であるから、宗教とか社会運動に関連する曲であろう。当然未来展開の明るい曲である。B面も同一コンビによる作品で同じテーマを扱っているが、ビートポップス的なアプローチがなされている。ウキウキとした編曲でこちらの方が親しみやすい。こういうところでも所謂万博ポップスの影響があるのだなと慨嘆。(追記・これは歌詞にあるそのままで、ねずみ講で話題になった所謂「天下一家の会」事件の天下一家の会の関連グッズであるようだ。この会は最後は宗教団体になって崩壊したから、その反映とも、あるいはその志向が表れていた貴重な記録と言えよう。今でも旧本部である廃墟の床にはこのレコードと思われるレコードが大量に散乱している、と廃墟探検のサイトに記述があった。)

ジェニファー

輝く星座

EP キング TOP1408

「ヘア」のカバーもの。「輝く星座」から「レット・ザ・サンシャインイン」へいく定番のスタイル。ややもさいが、ベースが太くてよく支えている。土台がしっかりしているけれどもペンキの塗り方が粗い壁の様なプレイ。B面はソフトロックに入るのか、所謂AORの範囲だろう。歌はやや融通が効いていないが上手い方だろう。「ヘア」の出演者とのこと。

 他にCDR一枚を貰う。これでダウンビーツが気楽に聞ける!

20.12.8 えらい日に買う。

三沢郷

大全

2CD コロムビア CDCP35285〜6

番組主題歌で有名な作曲家の作品集。元はフォーコインズという何だかよくわからない本格的コーラスグループにおられた人であるが、よくわからないのも当然でプロなんだからということで全く仕事を選んでおらなかったとのこと。番組主題歌のほかJガールスや中村洋子、兼田みえ子らへ提供した歌謡曲、BGMなど手広い選曲。同じ本格的コーラスグループ出身の葵まさひこと同じようにソフトロック的なアプローチが顕著に見られるが作詩・作曲・編曲を一貫して本人がやっているのは珍しい。残した全曲が収録されているJガールスを聞くと、本人の作詩した曲と他人が作詩した曲で全くアプローチが異なっており、曲作りの思想が垣間見えて面白い。本人のインタビューを中心としたライナーも大変丁寧で大杉久美子に関する評価はこの人の価値観を見事に表している。聞けば度肝を抜かれるアニメ版「月光仮面」の主題歌が何故あんなことになったのかも見事に解き明かされている。監修の濱田高志の趣味に忠実な選曲・傾向か。ぼちぼち。

ザ・ピーナッツ

ニッポン放送だよピーナッツ!

CD キング KICS1408

ラジオ番組「ザ・ピーナッツ」の今月の歌として録音されたナンバーをレコード化されているものはその音源、されていないものは当時のラジオ音源から引っ張ってきて取りまとめたという貴重音源集。宮川泰の初期仕事としても大変貴重。僅か10分の番組のために作られた、身内で済ませた楽曲とはいえ、そこは名を残す人がよってたかって作ったものらしく、ザ・ピーナッツのシングル曲と比べても見劣りしない作品が揃っている。商業的にはやや売りがないようにも見えるが、ラジオ歌謡よりももう少しポップな路線という当初の狙いには当にずばりと嵌った楽曲群といえるか。この音源を保存していた関係者は大変に素晴らしい。そのインタビューもついている。

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