これ買いました平成21年1月

 

21.1.31 1月も終り。今年ももうすぐ終り。

松原留美子

ニューハーフ

LP 東芝 TP900096

男性ながら「六本木フェニックス」というビルがポスターに起用した六本木美人に選ばれ(「美女」でなく「美人」だったので応募したと言う。)ニューハーフと言う言葉を有名にし、しばらく女優として活躍した人のアルバム。意外によく見るので売れたようである。この人は下半身をいじっておらない人だったそうで、多少高いけれども全く男性の声で、ピーターあたりに声質が近く、見た目がえらく美人な人なのでギャップが楽しい。演歌ではなくニューミュージック寄りのアダルトポップス路線で固められており、ボサノバから軽いディスコ、ハードロックなどアダルトポップスの制限の中でなるたけ色々なタイプの曲に挑戦している。ドゥーワップ調のコミックソングまであって(展開がJJSの「ベルサイユの薔薇」っぽい。)、作り手が徹底的に歌手で遊び倒そうとしている様子が見て取れる。「恋のスターダストタウン」は「機嫌を直してもう一度」の翻案か。歌唱はややおっとりとしているが、愁いと色気を含み、苦しいところもなく、歌手として出てきた人でないということを考えると殊勲賞の歌唱であろう。三木たかし、たきのえいじの二人の作品で10曲中6曲を占める。陳腐な言い方ではあるが男と女の両方を知っているということで何気ないフレーズの中にも唄を構築するべき要素を深く多面的に捉えているのかもしない。内容としては色物的な部分は殆どなくムードコーラス上がりのボーカルの人のソロアルバムだと言っても通用するだろう。これはよかった。シングルの「砂時計」も含めたベスト盤や、まだお元気に第一線で活躍されているそうなので、続編も出していただきたい。

黒沢明とロス・プリモス

夜の横浜泣いてる私

EP ビクター SV6335

ビクターでのラストシングル。ギターのカッティングがかっこいいバラード。基本的には三連ロッカバラードだがサビの一部を跳ねさせないで表情を上手くつけている。もう平成が近いサウンドだが、オカリナを聞かせたアレンジが泣ける。B面はビクターに対して別れを告げるかのような内容のアダルトポップス。ニューミュージック風というか山本正之風というか。しかし作詞作曲はたきのえいじ。この時点で今に繋がるメンバーがだいぶ揃っている。

敏いとうとハッピー&ブルー

どうするつもりなの

EP テイチク US840

A面CD化済。B面は敏いとう作曲の花の残り香のようなほのかな雰囲気が漂う歌謡バラード。このバンドらしいアレンジだがシンセサイザーを使っているのが時代を表している。

21.1.29 CDR1枚を頂く。思わぬおまけまで頂きまして。ああ隠されたる超カルトGSの真相。そしてメジャーデビューGSにも猶残る闇!

21.1.27 探さないで。

津々美洋とオール・スター・ワゴン

裕次郎ヒット・メロディー

17cmLP テイチク SS153

タイトルそのまま。裕次郎をエレキ・インスト化。このバンドのサウンドとしては異例なほどの泥臭さに満ちている。チープなのに重々しいオルガンのサウンドが土着的なわびさびを紡ぎだしている。元が荒んだ純歌謡というだけでは説明が付かないほどの荒みよう。B面に至って「二人の世界」はようやくこのバンドらしい北欧調のアレンジで津々美の早弾きも聞け安堵。ここでもロックバンドのそれとは異なるリズム感が味わい深い。続く「雪国の町」は洋楽的な要素は見出せないがそれでもこれを必死にスプートニクスに近づけようとする努力が涙を誘う。

津々美洋とオールスターズ・ワゴン

戦場の星

EP キング BS7156

本体入手。和製エレキ・インスト屈指の名曲。

三沢あけみ

やーんだまだまだ

EP ビクター SV449

有名盤。エレキの効いた調子のいい小唄もの。底の抜けた幸せ感が充満している。別れの辛さが一回転して妙な明るさになってしまったということなのだろう。ハマクラ作品。B面は三連譜の使い方のセンスが異常にいい悲しみを含んだお色気歌謡。いろいろな意味ではじけた両面。

三沢あけみと東京エコーズ

天国に結ぶ恋

EP ミノルフォン KA354

徳山lのカバー。人間椅子の同名曲とは別。テイチクのムードコーラスグループの東京エコーズをバックに従えて歌う。ややまとまりに欠けるコーラスではあるがこれが却って迫力を増している。この曲に迫力が要るかどうかはよくわからないけれども。もとが名曲なだけに死角なきワルツ。B面は擬古の新作演歌。フルセイルズの「涙化粧」をもう少し和風にしたような曲。単音オルガンが泣ける。

ピオニーズ

消えた想い出

EP ポリドール DP2051

儚い女性フォークデュオによるノスタルジックなフォークバラード。澄んだ歌声が心に刺さる。44年の発売ということからするとやや素朴すぎるのかもしれないが、しかしシモンズに先駆けること数年と考えると先駆け的な価値があるのかも。B面CD化済で屈指のグルーヴものとして有名。

克美しげる

夜霧のロンリー・メン

EP 東芝 JP5195

ジョニーハリデイのカバー。思えばロカビリー歌手の中で彼ほどロカビリーらしい曲をロカビリーらしく歌っていた歌手はないかもしれない。B面は紀本ヨシオもやっている「ブロークン・ギター」だが、あれとは詩が異なる。こちらの方が熱っぽくてロカビリーらしい。ところでこの曲は誰がオリジナルなの? この人は上手いのにあんなことになってしまってつくづく残念だ。

向井はつえ

南の海に浮かぶしん気楼

EP ローヤル RQ712

A面本体入手。有名盤。「しん」位漢字で書いてほしい。有名なA面ほどではないがB面もなかなか強烈な唄で「ルルルルンナルンナ」というフレーズが耳に残る歌謡ブルース。ローヤルレコードの曲というのは何故こうどれもこれも常軌を逸した部分があるのか。

銀座ローズ

女の運命

EP テイチク 44−103

カルーセル麻紀に先んじて完全性転換をしたり男性と「結婚」したりしたことで日本一有名なブルーボーイだった人の自主盤。有名盤。美人な上にセクシージャケットである。この人はカルーセル麻紀よりも一回り上だったので世に出た期間が些か短くあまり世に残っておらないのが残念。44年と言うと全盛期からやや過ぎた時期のリリース。中身は所謂荒んだ日本のブルース。ファルセットを使って女性らしいボーカルを聞かせるがやはり息継ぎや音の抑制などに素人の臭いが付いて回る。B面も60年代特有の捨て鉢ブルース。こちらも多少拙いところはあるけれども違和感のない仕上がり。

21.1.25 一年の運を使い果たしたのであろう。

さいたまんぞう

あゝ東京カントリーナイト

CDS キング KIDX223

かつてデュエットでリリースした「東京カントリーナイト」をテレビで披露したところ好評を得たことから歌詞を変えて再リリースしたもの。元バラクーダーのベートーベン鈴木作曲の東京近郊の地名をこれでもかと盛り込んだものづくしの伝統を踏んだ中道ムード歌謡。トップはJR編としてJRの駅名、カップリングは私鉄編として私鉄の駅名を盛り込む。したしみやかい朴訥とした微温コミックソング。本人出演のライヴに言ったら抽選会で当ったのであります。こういう幸運な目は30年以上生きてきて一度もなかったので却って恐縮するばかり。そのライヴでは客からお題を取ってリクエストのあった地名を入れ込んだ替え歌にして披露しておられた。というかそういう作りが出来るような配慮がしてある曲である。

21.1.23 どうも経過がよくない。

ザ・ピーナッツ

可愛いピーナッツ

CD キング KICS1429

大復刻企画。シングルデビューから半年で出た彼らのファースト。後年のややビブラートの入ったパワーで押し切る歌唱はまだ見えず、初々しさが残る歌唱が何とも清廉。既にヒット曲を出していたとはいえ、録音技術やアレンジなどの問題もあり嵐の前の静けさといった印象がある。ロック革命の前ではあり、オリジナル曲もないがポピュラーヒットや民謡などの様々に伸びる唄の道を洋楽ノリで歌いこなしていくという後年のピーナッツの姿を彷彿とさせるものが見えている。デビュー直後に録音された未発表曲1曲が追加されているが、歌い上げバラードで、声の絞り方を聴くだけで既に相当の実力が備わっていたことがわかる素晴らしい歌唱。ともかくザ・ピーナッツの栄光は小川が大河となりやがて大洋に注いでいく様に似ているものを、その水源として何とも感慨に襲われるアルバムと言えよう。

ザ・ピーナッツ

ピーナッツ民謡お国めぐり

CD キング KICS1430

同。セカンドにしていきなり企画物。解説ではこの手の民謡の洋楽化は江利チエミから始まっているように書いているが、キングレコードでは林伊佐緒が戦前に「木曽節ボレロ」をリリースしていて、戦後更にそれを発展させているので、この人の業績に触れていないのは残念。キングのお家芸がかの様な事であれば、平尾昌章が民謡をロカビリー化したのも逆にペギー葉山が和製ペギーマーチから「南国土佐を後にして」へ行ったのもキングレコードのお家芸であるということが理解されるのである。そしてこれがさらにヴォーチェアンジェリカの民謡アルバムやブルージーンズの「津軽じょんがら節」へ繋がっていくことも容易に理解される。実に点でなく線で繋がる巨大な大河の様な全貌が現れるのである。そして時代から逃れられぬバッキングの演奏のトレンドもジャズとラテンが圧倒的な存在感が感ぜられる。ピーナッツ自体はまだ冬に車に乗るときにエンジンをかけて少し待っているような佇まいというべきか。解説でも触れられているが民謡とはいい条、童歌などもあってそのあたりは余り厳密でない。キングレコード所属の歌手としてのピーナッツという面が最もよく前面に出たアルバムと言えるかもしれない。後年リリースした同趣旨の8トラから4曲追加されており、これにはGS時代を通過したファズギターを駆使した演奏もあって演奏のトレンドがどのようなものであったのかの比較が出来るほか、ピーナッツが約10年の間隔をあけてどれほど成長したのかも比べられる。

ザ・ピーナッツ

ピーナッツの“ザ・ヒット・パレード”

CD キング KICS1431

同。サード。全て外国曲のカバーだが、キュートではありながら後年のパワーで押し捲る凛々しいツインボーカルのイメージが確立されており、ようやく駿馬が駆け出したかのような、言わばピーナッツの伝説がいよいよ本編に入った、その最初に位置する記念すべきアルバムであり、宮川泰とともにもう一人のピーナッツの音楽を大きく支える大黒柱となったすぎやまこういちがはじめて関わったアルバムでもある。真のピーナッツがついに姿を現した記念すべきアルバムである。シックスジョーズのジャズ的なサウンドにも見るべきものが多い。カバーで固められているとはいい条その中でいろいろなタイプの曲に挑戦しており、意欲も高い。まず入門用とでもいうべき素晴らしい一枚。アルバムはモノ録音だが、ステレオ音源が残っている6曲を追加収録している。

ザ・ピーナッツ

夢をあなたに《ピーナッツのポピュラームード》

CD キング KICS1432

同。フォース。シックス・ジョーズの流麗なジャズ演奏をバックにしたスタンダードポピュラーのカバーアルバム。事実上買い替え。穏やかな曲が多いが「シャボン玉ホリデー」の開始など勢いに乗るピーナッツの凄まじさがにじみ出ている。当時モノ、ステレオの両バージョンがアルバムとして出ているので、両方のバージョンを収録。モノの各曲は初CD化。

ザ・ピーナッツ

ピーナッツのザ・ヒット・パレード〈第2集〉

CD キング KICS1432

同。フィフス。日本のロックの本当の目覚め。事実上買い替え。オリジナルヒットの「ふりむかないで」が出る直前に出した全曲カバーで固めたアルバムで。ここに至って完全に我々が今日頭に思い浮かぶピーナッツが完成したと言えよう。カバー全盛期らしく英米のヒットに留まらない雑多な曲からネタを引っ張ってくるバラエティの豊富さも魅力。シックスジョーズを中心としたバッキングトラックもジェントル、元気と類型あるもよく整っている。これもモノ、ステレオの両バージョンを収録。

V.A.

昭和ガールズ歌謡レアシングルコレクション2〜あなたがほしいの/いとしのキャティリオン〜

CD クラウン BRIDGE134

裏キューティーポップコレクションの第二集。

CD化されているものは避けたとのことが書いてあるが、城野ゆき「経験」は近年CD化されているので、これを買うような層はみな持っているだろうに、何故入れたのかしら。それと快活な柴山モモ子はそこら中で指摘されているから改めて言うのも忍びないけれども、環ルナの前身でのちの大杉久美子のこと。鈴木氏くらい色々な歌謡曲CDのライナーを書いている人が全く存じておらなかったということが却って意外。ちなみに篠ヒロコの「水色の風」も15年ぐらい前に出た「珍品堂ほっ!あの人がこんな歌を・・・。」に収録されているのでこれを外したのかと思ったら、そうでもなかったということがわかってこれもちょっとえええという感じ。まあ大勢に影響はない。

キューティーポップから青春歌謡、リズム歌謡、ムード歌謡まで1970年前後の様々なタイプの歌謡曲が収録されている。ザ・プレイボーイがバックコーラスをつけているということでずっと聞きたかった奈里田町子の「あなただけなのよ」とこれもずっと聞きたかったザ・ツインの「フルール・ダルーム」が収録されているのがうれしい。前者はGSがコーラスを付ける意味がわからない和風の曲。田中真規子という凄い名前の歌手の「ラブ・ムーン」は「慕情」を思いっきり引っ張ってきているが、声が奇矯でなんとなく印象に残る。評判の中田めぐみ「しあわせに狂って」は自分にはフレンチ歌謡ですなということ以上には特に感想なし。

何と言ってもこれだけ初CD化だらけの選曲という一枚は貴重で、それは素晴らしいが、しかし、どうも自分の歌謡観にはあまりしっくり来ない。やはり「キューティーポップスコレクション」が基本だと再認識した次第。草間ルミがそこまで皆に持上げられる意味もよくわからない・・・。佐野ひろ子の「かわいい涙」はソフトロック歌謡で大変にさわやかだが、逆に言うとこれとこれに続く八田富子の「夜明けの涙」、フレンチポップスの極めて和風の翻案である柳亜矢「夢みる子猫ちゃん」などすっとする曲はあまり多くない。小杉仁三作品に傾斜しすぎているのが選曲者の個人の趣味が強く表れているのであろう。自分の趣味はどうも歌謡曲の趣味の正統派から大分隔たったところに流れてしまったようである。歌謡曲は普遍であり、普遍でないと意味がないと思っている自分には辛い現実。

なんのかんのと好企画なので第三弾に期待。

 

21.1.15 レコードラッシュ終了。あさってぐらいに少しレコードCD本の類少し売り払います(雨天中止)。

ひまわり姉妹

花笠踊り

LP ビクター SJX42

和服ビートガールズ民謡を歌う。この人たちはGS時代の後期ぐらい活躍したのだけれども、その時代のビート感をそのまま詰め込んだようなビッグバンドにエレキを加えたアレンジが心地好い。60年代のコーラスグループの中でも屈指の実力とチャームな歌声を持っているけれども、これは上手いながらも本格的に流れずポップで手軽なアレンジに流れているから聞き易い。ややビートが甘い曲もあるが、総じて昭和元禄の雰囲気が残っておってホンワカとした和みが溢れている明るいアルバムである。可。

井上宗孝とシャープファイブ

映画専科

LP キャニオン C1033

本体入手。映画音楽のエレキ化。GSシャープスの最後の光。

ザ・レンジャーズ

エレキ・ギターのすべて

LP コロムビア JPS5049

GSのレンジャーズとは別のエレキバンドのファースト。エレキの定番にプレスリーが混ざるといった選曲だが当時の日本のエレキバンドのアルバムとしては珍しく正統派と言えるだろう。彼らの有名な曲はとろとろとしたビート感の余りない曲が多いが、2枚のアルバムを通して聴くとそこまでビート感のない人たちではないように感じられる。全体の一面だけをみて全体を知ったような気になるの愚。もともと格好いい曲ということはあるが「太陽を探せ」や「バードロッカー」は米国のサーフ・インスト・バンドの中に混ぜても容易に判別できなかろうという出来で、このバンドがどの程度までエレキインストの壷が判っていたのかという貴重なドキュメントというべきだろう。野口武義が編曲をやっているので或いはリードギターは彼によるものかもしれない。

松岡計井子

ビートルズをうたう第2集 ゲット・バック

LP 東芝 ETP8121

奇盤として有名なビートルズの日本語カバーアルバム。この人は日本語でビートルズ乃至ジョンレノンの作品を歌うと言うことをライフワークにしていて、雰囲気が69年ぐらいの退廃的な雰囲気の横溢している人である。考証が進んだ現在の水準から見れば演奏の再現と言うことでは物足りない部分があるのかもしれないが、本人の雰囲気と相俟ってサイケデリックな風合いが大変に濃厚。ビートルズの曲はそれ自体の好みが出るからどれがどうとは言わないけれども、「和モノ」の初期から注目トラックとされてきた「ゲットバック」はクリークに嵌ったような感触がありながらも出色。

カーニバルス

光をさがそう

EP テイチク B6

本体入手。ジョー山中が在籍していたR&B系GSが70年代になってから出したバラードもの。ボーカルはジョー山中ではないが、そっくりな声をしている。編曲・補作詩は両面とも立川直樹。

ザ・キャラクターズ

いろは恋唄

EP キング BS(L)1451

A面CD化済み。B面はブラスロックを意識した曲でアルバムで披露した「よこはま・たそがれ」のサウンドを更に発展しR&Bと歌謡ポップスを見事に融合させている。この見事な編曲は上田力。見事なフックが一箇所ある。いよいよこの時代に注目すべき編曲家とするべきだろう。作曲・谷山浩子。こちらの方が俄然いい。

シャンバロー

やってるネ

EP テイチク NS658

浅草芸人。炭坑節の様な手拍子入りお座敷ソング。しょぼくれ路線。クレイジーキャッツの革命が起る前から続くコミックソングの平和な地平が見渡せる。B面も三味線とスチールギターをバックにした伝統的なコミックソング。ロカビリーブームを意識しているものと思われるが、テイチクGSの泥臭さはこのあたりのコミックソングと全然意識が変っていなかったことに原因があるのだろう。「C調」という言葉に時代を感じる。

椿まみ

シーサイド・ブルームーン

EP ローヤル RA1132

日本の女オーティスレディングのそれなりに有名盤。昭和元禄をフィーチャーしたフラワーソング。但し、根底にはハワイアン歌謡やフォーク歌謡の如きを作ろうとしていたのであろうという節が窺える。彼女の、或いはローヤルレコードの曲としては非常に明るい曲である。B面は逆に70年代風とも言えるガットギターを全面に置いた純歌謡。館山を題材にするとは珍しい。

サンとロペ

偽りの女

EP ビクター E1019

物悲しいバイヨン調ララバイ。このグループに通底する絶望感、やさぐれ感が炸裂している。編曲が割合カラッとしているのと妙に複雑なメロディーが必要以上に暗く仕上がるのを抑制している。B面は、「プレイガール」のテーマにも似たブッカーTとザ・MGズ風のR&B調レズビアン歌謡で、二人が二人で一人であることを強調する余りに異次元に突入する自己紹介数え歌。全く以って悪夢を見ているような曲で、こういうのはサイケデリックとは言わないのだろうか。

21.1.13 眠くて痒い。

すみちゃんとステゴザウルス

ハイウェイ・レポート必死の逃亡者

EP ソニー 07SH1098

まさか彼らが時代を超えて紅白に出るとは・・・。このバンドになってからだとセカンド。プレスリー調のロックンロール。車を運転中に次々に起る出来事を面白おかしく歌い上げる楽曲。毒のないコミックソングだがオチでのベースラインが少しぶっ飛んでいる。。B面は「東京節」で始まる他愛もないズッコケソング。これもまるで毒のない曲でサラリーマンほのぼの四コマ漫画を読んでいるような趣。段々人間が丸くなるの例。

21.1.10 休息が必要だ。

緑川アコ

星の流れに/上海ブルース/夜霧のブルース/錆びたナイフ

17cmLP クラウン LW1157

クラウン時代の後期。シングル発売曲も含め嘗て大ヒットした懐メロのカバー4曲を収録したコンパクト盤。菊地章子、ディックミネ、石原裕次郎が原曲でいずれもテイチクのブルースであるのが面白い。全てまぶちゆうじろう‘68オーケストラの侘しい小コンボをバックにしているが43年ももう終りというのにGS時代と言うよりもエレキ歌謡時代の雰囲気を残しているのも面白い。出来の方はこの人の実力から言えばボツボツと言ったところか。特に「夜霧のブルース」は消化し切れていない。

黒沢明とロス・プリモス

ゆく春を

EP クラウン CW838

A面CD化済。ヒット曲。B面は序があって一番、ついで二番という曲構成が大変に珍しい侘しいナンバー。序はロシア民謡か子守唄かという悲しみに満ちたフレーズで、本編も、これまた侘しい、物悲しいラテンものになっている。

ダニー飯田とパラダイスキング

サーフ・ボンボン

EP ワーナー L219A

これもオールディーズメドレー。「サーフィン‘77」のインスト部分に「ミスターベースマン」風のボンボンコーラスをかぶせて無理矢理短縮したもの。ボンボンつうのはそういう意味なのか。繋ぎが荒っぽいのとエコーがえらいことになっているのが気になる。効果音等も改めてダビングしなおされているが、粗いことには変わりない。B面は「サーフィン’77」のB面と同テイク。

21.1.9 誕生日だったり手術したり。

大野喬とナイト・シックス、亀井信夫とザ・スペイスメン

エレキギターでヒットメロディーを

LP ビクター SJV140

二つのバンドのミーツアルバム。どちらのバンドも相当に上手い。ナイトシックスはジャズグループにスペイスメンのエレキギター隊が加わって演奏されているようで両バンドともよく似た演奏をしている。ところが、ライナーが混乱していて、ライナー本文にはA面がナイトシックス、B面がスペイスメンの演奏と明記してあるが、その上の曲目表では両面とも両バンドの演奏が入り混じっていて本当はどちらの名義でなされた演奏なのか掴みづらい。或いは別にそれぞれ元となる音源があるのかもしれないが例えば後で作られたCDなどでもこのアルバムから演奏が取られていることがあり、実際にどのようなクレジットをつけているのか混乱しているようであり、明らかに同じ演奏に対して違うクレジットが付いている例が見られる。蓋しライナーは17cmLPと共通の文章か。一体ジャズバンドの音であってもスペイスメンもジャズの心得のあるバンドだから簡単に同定が出来ないのである。

津々美洋とオール・スター・ワゴン

ヤング・フォア・シリーズ第6集 1−2−3/太陽のかけら/空の終列車/太陽にキッス

17cmLP テイチク SS116Y

エレキ・インスト。「1−2−3」はなんともロック的でないリズムのとり方がいかす。ピイプウと可愛い音をだすオルガンものどかで昭和41年というエレキとGSの間の時期を写しているかのようだ。「太陽のかけら」は本体入手だが、気だるく、数あるこのバンドのプレイの中でも屈指の一作。コーラスも彼ら自身がやっているのだろうか。「空の終列車」は同時期の「戦場の星」を思わせるオルガンから始まるやや粗い演奏だが、本家スプートニクスとタメを張る快演。一体日本のエレキバンドにはこの曲を得意とするバンドが多い。「太陽にキッス」も男性コーラスを従えて軽快に演奏しており、この時代の営業的な側面のあるバンドでないとこの味は出ない。自分が今のサーフバンドに求めても仕方ないと思っている部分がこういう部分である。

ジャッキー吉川とブルー・コメッツ

ピーナッツ

EP ビクター SV6111

無茶苦茶嬉しい。全くのディスコティックで「バスストップ」のリズムを使ったと思われる曲。ブルーコメッツがやる必要性もなければ、ブルーコメッツらしさもない曲。ただしディスコティックとしてみればポップでこの大変にグルーヴィーであり、成功していてビクター時代のブルーコメッツでは屈指の好演。B面はラテン的な、サンタナ的なニュアンスを付加した軽いボーカルが入るだけのスキャット・インストに近いものでサックスが延々とソロをとる完全なディスコティック曲。ハコバンとしてのブルーコメッツの営業の様子が目に浮かんでしまいあな哀しや。哀しい少女。曲としては素晴らしいが背景から素直に感動できないのがなんとも歯痒い。

中川浩夫とアンジェラス

京おんな

EP ポリドール DR1561

ヒット曲。「うしろ姿」によく似た耽美な曲だが、アレンジには大正琴を使って和風の色をつけている。よく動くベースが不自然なほどかっこいいが、曲としては何とも地味。B面は破れかぶれで半死半生な荒んだ心象を描く。両面とも平尾メロディーながら、こちらは島倉千代子の「捧げる愛は」に通じる部分がある。

三浦正弘とハニー・ブラザーズ

イライラ東京

EP 東芝 LP1201

A面CD化済。B面はゆるいけれどもビートポップスの範疇。コーラスとの掛け合いがバンド名を体現している。とろけるような60年代サウンドが展開している。これに関してはA面の10倍ぐらいB面の方が出来がよい。

チャロ&サミー、マミオ

リメンバー東京

EP BMG JRT1053

ボリビア系メキシコ人と日本人のラテントリオ。正統的なラテン楽曲に近いムードコーラス曲に仕上がっており、メキシコ人が歌うのに相応しい体裁を整えた風格のある楽曲。哀愁のメロディーがレキントギターの上に弾んでいる。アイジョージを思わせる本格派。B面も同路線だが、自作と言うこともありより激しいギターが入っている。佳。他に少なくとも一枚レコードを出しているようである。

ソウルフル・ブラッズ

波止場のブルース

EP フィリップス FS1099

夕樹秀がボーカルを勤めていたグループ。R&Bバラードを狙ったらフォークバラードになってしまった曲。歌唱力の高さは存分に見せ付けられるが役不足の感は否めない。B面は讃美歌風のバラード。カバーだが、これのオリジナルを知らない。伊集加代のスキャットを全編にフィーチャーしたワルツ。

チャコとアップリーズ

ここでさよなら

EP ミノルフォン KA316

 津軽洋子・桂子「汽車コさ乗って」やひまわり姉妹「今年も来ました渡り鳥」と合わせて聞きたい田舎ビートものの傑作でフラワーポップス。ビート感十分。衝撃的な終わり方も特筆もの。サビはムードコーラスに似たようなのがあってフレーズまで浮かんでいるが具体的な曲名が浮かばない・・・。B面はビート感はあるが演歌の範疇だろう。ユニゾンの魔力か。この時期にしかありえない編曲。

麻里圭子

危険な春

EP ビクター SV934

この人は集めがいがあります。トランペットで始まる日本風のワルツ。台詞部分の淑女ぶりと歌部分の秘めたる小悪魔ぶりの対応が期せずして出来ており、面白い対比が出来ている。B面は打って変ってビート歌謡。ただしこれも吉田正の作編曲と言うこともあるのかかなり和風。「ヘイジーポートナガサキ」などと並べて聞きたい。

レイコとミツコ

愛して愛して

EP フィリップス FS1033

昔のレモンレモンズ。このレコードについては手に入れるまで色々あったのであります。ザ・ピーナッツを激しく意識した三連ロッカバラードで厚いストリングスに荒んだボーカルが絡む。不良的なエレキギターやよく回るスネアも大暴れし手が付けられなそうな体になっている。B面はA面の重苦しさを吹っ飛ばしたラテン・ロック歌謡でますますピーナッツ度が高い。オルガンとバスドラが景気よく鳴りまくっているので人によってはガレージ歌謡と取るかも。

緑川アコ

庄内ブルース

EP クラウン CW832

ダークフェローズとは別曲。横山パンチ作詩。「恍惚のブルース」ばりの破壊力を持つ日本のブルース。例の如くでハニーナイツのコーラスが入っているがかなり薄め。作曲は奥村英夫で或いはジェノバらの「帰り道は遠かった」の発売と何らかの関連あるか。B面は自らヒットさせた「カスバの女」を本歌取りさせて更に大阪の酒場の女の心情を歌うと言う、これだけ聞いたら何の事だかさっぱりわからない日本のブルース。この人独特の情念は十分すぎるほど込められている。

長崎元洋&グローリアス・ファン

EP ライム LM093

 自主制作だから致し方ないが、お金の掛かっていないボサノバ歌謡。ニューミュージック剥き出しの編曲で自分の好きなタイプの曲ではないが、軟弱な心象を歌に昇華させておって、曲としては宜しい。もっとお金があって編曲に凝ることが出来ていたらと何とも惜しい。B面もサンバ歌謡。本人の志向か、編曲でギターの小笠原正修の趣味か。こちらも隙ではないが曲としては宜しく、もう一つお金があればと悔やまれる曲。一部ボーカルのキーを超えるメロディーが使われていて破綻する部分があるが、あまり気にはならない。ただし何故この曲のこの題材にこの編曲なのかということの解明については難解である。

 

21.1.5 今月もゴーゴー。

パープルシャドウズ

恋しくて愛

EP 東芝 4RS1518

更にこのバンドが生き残った理由を解明せねばならぬ。今井久の兄がメンバーだったという慶応大学サークルの人が作ったアダルトポップス。その縁で森本毅郎がメッセージを寄せている。誰がどう聞いてもアダルトポップスの男女カケアイムードコーラス。サビで女性ボーカルがへたるのがえーと思う。澄んだ繊細なギターは控えめに入ってるが、パープルシャドウズの曲がこれかと思うとちょっと悲しい。曲としてはそつがなくアルバトロスを思わせる。B面はA面よりはギターが入っているが、これもパープルシャドウズと言われると、という曲。物悲しい三連バラードで高田みずえ辺りを思わせる。女性ボーカルのソロでやや音程が不安定。ライナーの記述からすると最後の日劇の直後ぐらいに出たシングルと思われる。

南有二とフルセイルズ

恋占い

EP テイチク SN1072

A面はCD化済。ヒット曲。B面はブンチャカド演歌。ボーカルの南有二の声質には演歌が合うかと思いきやそれほどでもない。これに気がついたか、この曲のあとのリリースはハチャメチャな曲が多くなるのでその歌の母になれるか。

殿さまキングス

北の恋唄

EP ビクター SV1137

A面CD化済。ヒット曲。再デビュー曲。B面はブンガチャ演歌。ぴんからトリオの「女のみち」にかなり似たラインの曲で、彼らのレコードリリースにどういう狙いがあったがよくわかる。一番だけサビの最後で力尽きるのに何とも言えない緊張が伝わってくる。

殿さまキングス

北の宿

EP ビクター SV1148

A面CD化済。ヒット曲。B面はサックスの咽び泣くスローテンポの演歌。前作に比べて大分レコーディングになれたようでここではすでに芸術的に下世話な宮路オサムのボーカルの安定性が既に確定されており、次のシングルでのメガヒットの萌芽が見られる。

殿さまキングス

夫婦鏡

EP ビクター SV1178

A面CD化済。ヒット曲。殿キン整備。B面は近代風の演歌。コロンコロンと転げまわる宮路のボーカルが心地好い。が全くのソロ。しかしそれにしてもブルコメ初期のロックインストと同じ彩木雅夫が作っているとは思えないアナクロぶりでこの辺りが歌謡曲の醍醐味なのであろう。

殿さまキングス

おんなの運命

EP ビクター SV1205

A面CD化済。ヒット曲。同上。B面は男臭くした「ゾッコン作戦」というか三島敏夫とそのグループやジョージ山下とドライボーンズ辺りの昭和40年代の二番手ベテラングループがやりそうなお座敷風小唄歌謡。コーラスもムードコーラスらしく入っており、このバンドの曲としては極めて異彩を放っている。ジャケットがかっこいい。

殿さまキングス

浮草の宿

EP ビクター SV1218

A面CD化済。ヒット曲。同上。B面はクールファイブがやってもおかしくない三連ブルースだが、前川清とは違うタイプの天才宮路オサムが下世話に下世話に解釈して殿キンの歌世界に無理矢理引きずり込んでいるのが見事。まあ作っているスタッフは共通しているから、クールファイブ調と殿キン調がどう違うのか見るのには最適な資料なのかもしれない。

殿さまキングス

裏町ブルース

EP ビクター SV1284

ヒット曲。同上。川内康範、北原じゅんという風雲急を告げるスタッフによる作品だが、三連バラードでクールファイブに範を取った日本全国縦断ブルースもので、余計な部分を全てそぎ落としたようなシンプルな作品に仕上がっている。この手の作品としてはちょっと遅すぎの時期はずれ。B面は演歌・ザ・トリオの「お待ちしてますゆう子です」に似たメロディーで始まるが、タイトルの「激情」に相応しい怒涛の追い込みで、歌手の度量の広さが伝わってくる。これも同じスタッフ。

殿さまキングス

あなた探して

EP ビクター SV6356

ヒット曲。同上。タンゴ歌謡。情熱的な演奏に燃えるようなボーカル、冷却材のように被ってくるコーラス、これでもかと入るご当地地名と、詰め込めるものをとにかく詰め込んだスタミナ歌謡。ウーマントーンのギターよりもカッティングするガットギターの方がかっこいいのも珍しいがゴージャスなつくり。何故注目されないのかわからない。B面は中道演歌だがちょっとアイドラースっぽい。可も不可もないが、このバンドらしさは十分に伝わってくる。

鶴岡雅義と東京ロマンチカ

君は心の妻だから

EP テイチク SN737

A面CD化済。バンドを代表するヒット曲。ロマンチカ整備。B面はA面と同路線の戦前の古賀メロディーの系譜を引く三拍子叙情演歌。このバンドはアナクロな曲だと発想がすぐに戦前に飛んでしまうのがずっと貫く家風。

鶴岡雅義と東京ロマンチカ

別れの誓い

EP テイチク SN926

A面CD化済。ヒット曲。同上。B面はアコーディオンとギターが哀しい調べを彩るシャンソン風北方歌謡。三番でソロから合唱になるのに多少のドラマティックな工夫あり。

鶴岡雅義と東京ロマンチカ

秘密

EP コロムビア X283

ヒット曲。同上。情熱的なラテン歌謡。のっぺりとしたメロディーと対を成すような狂熱を秘めたトラックが面白い。ボーカルの抜き差し自在で熱さと何処かで冷めたような部分の同居が見事に表現されている。アップテンポな曲でも手放しで陽気にならないのがこのバンドらしい。B面は猪俣公章のもう一つの顔、映画音楽風の楽曲で、千賀かおるが歌えばフォークと評されたであろう耽美な小品。両面ともお洒落也。

鶴岡雅義と東京ロマンチカ

愛は砂漠

EP ソニー 06SH496

同上。イントロや間奏にピアノをフィーチャーした悲劇的なバラード。後期の彼らはまったりとした中に上滑りするような激情を絡めた歌い方をするような曲が多いが、これもそう。特に何と言うこともない。B面はギターを大フィーチャーした演歌風の楽曲。というか完全に演歌。小品。昭和54年にもなって楽曲名の英題表示があるのは昔の遺風を伝えていて好感を持つがそれ以上はなし。両面ともテレビがらみ。

鶴岡雅義と東京ロマンチカ

まわり道

EP ユピテル YS94

同上。オーボエが印象的な渋めの乾いた感触のあるアダルトポップス。湿った三条のボーカルに対して浜名ヒロシのボーカルはドライである。そのドライなボーカルに相変わらず鶴岡の繊細なギターが絡み付いていく。音は大分近代的になっているとはいえ、構造は変っていないはずなのに換骨奪胎されているような気がするのは何故だろう。B面は、昔シングルカットした曲の再演。旧ロマンチカ色が復興されており、ドライな感覚が抑えられ、多分にウェットなタッチに描かれている。

森雄二とサザンクロス

ひとり占め

EP クラウン CWA215

サザンクロスはあるけど集めづらい・・・。伝統的なクラウンのムードコーラスの作りに忠実な三連バラードだが、このバンドにしてはやや演歌臭が強すぎるか。アローナイツ辺りがやりそうな曲といえばいいか、中央突破をするべき曲調であって繊細に歌のエッジを刈り込んでいくこのバンドにあってはあまり合っていないかもしれない。ただそれを歌いこなしているのは流石。B面はノスタルジックな戦前ジャズ風の曲で一部キーが吹っ飛ぶところがあるけれども繊細さがよく生きた極になっている。気だるい感じがグッド。アパッチとは別の曲。

ダニー飯田とパラダイスキング

サーフィン‘77

EP ワーナー L163A

この時代ぐらいのパラキンともなると訳がわからない。オールディーズメドレー。本人たちが演奏していないと意味を成さない選曲なので多分本人たちが演奏しているのだと思うが、これは流石にこの時点でキャリア20年になんなんとしているバンドだけあって隙が全くない強烈な演奏をしている。ダニー飯田のスチールギターも随所に聞けるが、発想自体は企画もののバンドの様なものになってしまって却って有難味が・・・。しかし彼らのアイデンティティがカバーポップスにもインストにも両方に向いていたことが示されていて貴重な資料。B面は「ミスターベースメン」の再演。音が近代的なのが興を削ぐけれども出来自体は悪くない。梅谷佳代という女性ボーカルもノリがよく、上手い。

船乗りシンドバッド

なみだの宿

EP コロムビア P208

昔から気になっていたけれども、この人って何なの?ギター一本、流し・演歌師の雰囲気で片田舎での様々な情景を歌い上げる台詞入りの船村演歌。上手さではなく味わいで聞く歌手か。B面も「国境の春」のようなイントロで始まる東海林太郎が歌いそうなメロディーが続く復古歌謡。但し詞が多分に現代的。演歌とフォークの真ん中の様なスタンスの歌手なのだろう。

尾藤イサオ

ワークソング

EP 東芝 TP1357

日米ブルース対決。A面はCD化済み。B面はキングスメンの「ルイルイ」のように始まるプレビートルズ時代の空気を充満させた重苦しいマージービート風のモッド歌謡。階級社会を排撃する攻撃的な狂おしさが全編に充満している。バックを勤めるブルーコメッツのこの時代特有の黒さがよく出ている。ザ・ゴールデンカップスや伊東ゆかりのヒット曲とは別。

五木ひろし

夜汽車の女

EP ミノルフォン KA439

無茶苦茶な藤本卓也。手許にあったほうがよかろうという判断。日本の1970年代を代表するハードロックの名曲。激しく動きまくるベース、見境なく叫びまくるウーマントーン、激しいドラミング、絶妙なホーンパート、訳のわからない女性コーラス、と通常の理解には余る狂気のサウンド。B面は藤本卓也の(これでも)ソフトな面が出た三連ロッカバラード。こちらはそこまで悩みを抱かせるような曲ではない。

美加マドカ

いっちゃダメ!

EP ビクター SV7368

昭和59年当時に「花は見せても春は売らない」をキャッチフレーズに活躍していたストリッパーとのこと。ダブルミーニングのエロ歌謡。アイドル歌謡ともアダルトポップスとも付かぬ微妙な立ち位置のメロディーで歌唱も微妙だがサビから曲終にかけてのメロディー展開に躍動感がある。B面はニューミュージックというか完全にアダルトポップスで、こちらの歌唱は相当に辛いが、A面に対してありがちな女性の不幸をメランコリックに歌い上げる。曲としてはどちらもあまりパッとしない。

21.1.1 買い初め。

戸川純

トガワレジェンド

3CD ソニー MHCL1285−7

本人選曲のオールタイムベスト。近年変な注目をされた「ラジャ・マハラジャー」が初CD化。

この人は本当に歌が上手い。例えばギターなら楽器と演奏者があるというのは自明であるけれども、歌手というのは楽器が即演奏者であるので、実に楽器と演奏者があることがわかりにくい。その点を考えて、クラシック調、童謡調、歌謡調、パンク調、ニューウェイブ調とこれだけ色々なタイプの曲をしっかりと歌いこなせる歌手というのは希であり、しかも声色も七色十色でこれが同じ人かと思うような物凄い幅を持っている。もともとは女優であるからであろう、歌の本来持つ呪術性を受けて歌の世界の構築が全うしておって、まさに自分の思う理想の歌手に近いのである。歌謡曲のカバーもやってはいるが、ロックなどの他分野に近い人たちの発想で組み立てられているから、80年代のうちに吉田正とか本当に昭和20年代・30年代の歌謡曲を作っていた人たちに当時の音を再現するようにいじってもらいたかった。本人が嫌がるかもしれないが、なんとも口惜しい。周りがいじり方が判らなかったのかもしれないが、適切な騎手がおれば大ヒット曲も連発できる美空ひばりの後釜になってもおかしくなかった逸材だと思う。この人は時代という個人ではどうしようもないものに押し流された人なのだろう。自分は松本隆の曲は好きではないものが多いが、例えば「月世界旅行」などは例外であって、そのような例外が集中しているのは歌手の力に負うところが多いと思われる。なお、どうも自分が好きな歌はロックの人やニューウェイブの人からは不評な曲が多いようである。ああ、感嘆。

リンリン・ランラン

ゴールデン・ベスト

2CD ビクター VICL63230〜1

この間初めてまともなベスト盤が出たと思ったらすぐにこんなシングルとアルバム収録曲のすべてを取りまとめたものが出るのだからえらいことです。

彼らの歌には、日本の歌手にありがちな悲しみというものが極端にない。ここで悲しみというのは、明るい歌を歌っておれば悲しみがないというものではなく、声そのものに源を発する秘められた湿っぽさの様なものである。何も屈託のない楽曲では弾けるゴム鞠のような魅力があるが、一方で、他のアイドルのカバー曲で顕著だが、土着的な哀愁を含む曲では、要するにそれこそが歌謡曲なのであるが、彼らの世界構築と楽曲の世界観が合わず、ミスマッチの効果をも伺えないほどの乖離がそこに見られる。これは風土の問題なるか。逆に宜しいのはオールディーズのカバーである。もちろん「恋のインディアン人形」のヒットという勢いの問題もあるだろうけれども、母語が英語である(英中ハーフの香港人)ということもあって、非常に素直な歌唱を披露している。斯様に、彼らは歌謡曲のフィールドにいながら歌謡曲のメンタリティがほとんどないという珍しい体況をなしているのである。思えば、以前の「エッセンシャルベスト」を謹聴して思えた違和感は実にここに発しておって、水面に見える蓮の華を見て水の下がわからなかったようなもので、このように全貌がわかると合点がいくものである。「ミスターベースメン」が、バックの付け方等も新鮮な魅力と手堅さもあって、ベスト・トラックか。

吉永小百合

吉永小百合ベストヒット/愛の世界

CD ビクター VICL63085

42年に出たアルバムの復刻。世界広しと言えどもトニーズを目当てで買ったのは俺ぐらいのものだろう。トニーズがそのバックを付けた3曲が全て収録されている。清楚なボーカルに控えめなエレキやアコギ、厚いストリングスがからむものが並んでおり、前年からこの年前半にかけてのフォークブームを反映している。一方例えば「みんなで行こう」のような明朗快活なリズム歌謡もあるがこれも健康的である。この作曲者はヘンリーで、要はこれもフォークブームを当て込んだものだろう。中村八大の曲なども快活で同様の路線といってよかろう。この人はある時期までは意外にも流行を取り入れた曲や話題づくりを念頭に置いた曲専門だったりするが、その色が非常に強いアルバム。どうでもいいがビクターはさっさとトニーズの単独盤をリリースすべきだ。多分俺しか買わないけど。

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