これ買いました平成20年7月

 

20.7.28 これで今月はストップ。

林伊佐緒

林伊佐緒のジャズ民謡

CD キング KICS8169

大ヒットした「真室川ブギ」をフィーチャーし、自作自演の元祖が民謡のリズム化に果敢に挑む意欲作の復刻。こういうものがヒットしたというところがまずすごいが、輪を掛けてバックの演奏の充実振りが旬の時にしか出ない瑞々しさがあって素晴らしい。それだけの素晴らしい演奏をバックにしながら強引にヘッドバットを食らわせているかのように無理矢理ねじ伏せる林伊佐緒のボーカルの暴走具合が唖然とさせる。一応本人が編曲をやっているので判った上でやっているはずなのに、なんだこの焼餅の上にバニラクリームをかけたような違和感は。林伊佐緒といえば昭和一桁デビューなのでもうこの時点で相当のベテランだし「出征兵士を送る歌」や「ダンスパーティーの夜」などの歴史に残る大ヒットを叩き込んだあとなのにこのチャレンジ魂はすごい。服部良一のような本格的な味よりも、あくまでもさあ企画でやってみたけどどうだというのりがあり、妙ないさぎの良さを感じる。リズムものではあるがザ・バーンズのアルバムのように全曲リズムが違うということではなく、過渡の形態と言えよう。

 

20.7.26 今月は駄目だな。

津々美洋とオール・スターズ・ワゴン

エレキ・ギター・クリスマス

LP コロムビア JPS5163

穂口雄右在籍時の最狂期オールスターズワゴンがコロムビアから出したクリスマスアルバムにして彼らのラストアルバム。シャープファイブの同時期のアルバムもそうだがコロムビアはエレキバンド単独演奏に何か偏見でもあるのか思い切りオーケストラを被せたりして彼らの持ち味を生かしているとは言い難い。殆どストリングスに埋もれているような曲もあり態々オールスターズワゴンがやる意味を考えてしまうような作品も多い。しかし、彼らが単独で演奏している作品はやはり鋭く、前作までの無茶苦茶さが影を潜めているとはいえ相変わらず弾き倒す穂口のオルガンがスリリングに鳴り捲っているし鈴のような津々美洋のギターも快調に飛ばす。「小象の行進」のような「赤鼻のトナカイ」は淡々とリフを弾くギターと調子っ外れなスタッカートのオルガンの対比が面白い。もっとも彼ららしい気風のいい演奏は「サンタ・クロースがやって来る」で、ややキンクスっぽいリフやこの時期の彼らを象徴するオルガンのアドリブ、的確にメロディーを弾き出すギターなどが聴ける。しかし栄光に彩られた彼らのアルバムとしてはすっきりしない点も多く、やや寂しい終焉である。

平尾昌章とオールスターズ・ワゴン

ミヨチャン

EP キング EB325

これ自体も有名だが、ザ・ドリフターズでさらに有名になった歌のオリジナル。同時期のオールスターズ・ワゴンの演奏と同じくスチールギターがリードを取る見事なウエスタン系ロカビリー。この音でコミックソングをやろうという気になるのがこの時代のロカビリアンのえらいところ、というかこの人がえらいだけか。B面は後の狂おしい平尾メロディーが既に完成しているのを見て取れるが、「星は何でも知っている」の成功を敷衍している間奏で台詞が入るバラードもの。

ザ・ヴァイオレッツ

銀座マギーの歌“誰れかが私を・・・”

EP CPMクリエイト CM4001

銀座の衣料品店だった銀座マギーのプロモ盤。明るく愛らしいアメリカン・ポップス調の小品でCMソングとしてよく出来ている。実力のある歌手だけに安定したテクニックを駆使して安心して聞ける。ちなみに作曲は村井邦彦。B面も同じ歌で、トラックもおそらく同じなのだが、これを岩崎京子という人がやっている。ジャケットにはデビュー直前と紹介があるが、この人は太郎ズと「草原の涙」をデュエットしている人と同じ人なのだろうか。声質は似ているが歌い方がかなり違う。こちらはかなり清楚である。もっとも、太郎ズのメンバーの姉という人からある人が聴いた話では、その人は校歌や企業の歌を吹き込んでおったと言うことだから、この人が岩崎京子なら色々な謎が解ける。そうであれば、これもその人の言う企業の曲の一つであろう。自主制作盤ではありながら演奏等まで含めかなりレベルの高いものと言ってよいかと思う。

クール・キャッツ

もっと寄りそって

EP コロムビア SAS471

ダンスユニット時代に出したカバーもの。A面はジェイとアメリカンズのカバーで「ラ・バンバ」を思わせるラテンフレーバー溢れる仕上がりで、パーカッションのいきがよろしい。このグループの曲としてはかなり洗練されている。B面はパット・ブーンのカバーでアメリカン・ポップスの陽気さが溢れている。こちらの方が格段に出来がいい。岩谷時子による「滑りこみアウト」というフレーズが何ともおかしい。

ポーリン小川

カラマーゾフの兄弟

EP RCA JRT1055

有名レコード。そのタイトルと同じ小説を題に取った曲だが、郷伍郎という人が特異なのは、フォーク調に持っていくのが普通だと思う題材だろうがそうしないで極めて純歌謡路線で片付けようとするところだと思う。これもロシア文学なのだし、プロレタリア的な発想をしそうなのに、そこを微妙にかいくぐっていくのがスリリング。曲としては可も不可もなし。B面も同じで、フォークの発想が出てきそうな題材なのに何故か歌謡曲で処理された曲で、「フランシーヌの場合」に通じる挫折左翼的なひんやり感が全体を覆っている。こちらの方がどちらかといえば自分の好み。

なお、この人は現在もジャズ歌手として現役でやっておられるそうである。

堀内美紀

愛の矢は放たれた

EP コロムビア P185

ビート時代は遥かに昔、グルーヴ歌謡の真っ盛りにはこの人もそれに対応するような曲を出していたのである。ビート時代からすると大分ドスの聞いた歌唱になっているが、シャンソン歌手でもあるので歌い方が流麗であり、激しくグルーヴィーな曲によく対抗している。殊勲賞の曲。B面は不安を煽るイントロから始まるが、グルーヴ歌謡時代のアダルトポップス。殆どムード歌謡の領域ではあるが、これも高度な歌唱技術が過不足のない世界を表現している。ややこの人にしては役不足な感もあるかもしれない。

20.7.22 まさか林伊佐緒のCDだけ手に入らないとは思わなかった。

V.A.

バック・ラム・イン・ジャパン/エコーズ・パスト&プレゼント

2CD キング KICS8171/2

キングの誇る二大正統派コーラスグループを使ってオリンピックに合わせて外国人向けにリリースした二枚のアルバムを一緒にしたもの。

一枚目はプラターズのプロデューサーであるバック・ラムが日本の民謡や国民歌謡系のヒット曲を厚いポップオーケストラやダークダックスを使って流麗なインストに料理した今で言うイージーリスニング盤である。しかしながら、そういった既存の曲を編曲したものよりも本人が書き下ろした作品のほうがかなり情緒深い。まさに山下毅男の世界そのままのようなすさんだ情景が浮かび上がる「東京たそがれ」(「ウナセラディ東京」とは別の曲。)、のちの倍賞千恵子のような世界が繰り広げられる「かわいい蝶々さん」、緊迫した都会的な情景を間抜けな蕎麦屋のチャルメラが引き裂くミスマッチが面白い「そば屋さん」とどれも傑作揃い。一方民謡のカバーは裏目裏目に行っており特にひばり児童合唱団の使い方が曲を興醒めにする。

二枚目も同様の趣向だが、こちらはオリジナルはなく、全曲菊川迪夫が編曲している。すべてラテン風になっているが、一枚目と併せて聴くと欧米人と日本人の発想の違いが図らずも現れているようであって大変に興味深い。こう見ると日本人であること(日本文化の中にいること)が必ずしも日本人に馴染みのある曲を編曲するに当ってはアドバンテージにならぬと言うことがしみじみとわかる。

「北上夜曲」が共通して収録されていることに当時の情勢が伺えるが、結局昭和30年代の喫茶店BGMものは昭和40年代のものに比べてどうも抜けが悪いようであり、良くも悪くもキングらしさを感じた。

ヴォーチェ・アンジェリカ

わらべうたイン・ムード

CD キング KICS8170

ビッグネームなのに今やすっかり忘れ去られたグループの名盤。この人たちは軍歌のアルバムがあってそれが凄まじすぎる出来なのだが、まあ、音楽よりも思想を優先する時代だから何かの弾みで出ると言うこともなかろう。

この人たちはルックスに比べて出てくる音の若々しさが尋常でない。この人たちの姿形を知る前はてっきり少女合唱団みたいな人たちかと思っていたぐらいだ。とはいえ、それは合唱能力が低いと言う意味ではない。ここでも戦前以来の合唱グループから一ランク上に上がったハーモニーが聞ける。アレンジもストレートなものが多い童謡アルバムに一線を画し奇抜なアレンジが多く耳を驚かせる。但しそれが「イン・ムード」なのかは判断に苦しむが。また、自分たちがサイドボーカルに回るものがあるのも斬新。クールさが横溢しているが人を選ぶアルバムだろう。

井上宗孝とシャープ・ファイブ

若いギター1

CD キング KICS1380

買い替え。オリジナル盤の復刻。歌のない歌謡曲だが、それに留まらない名盤。欲を言えば、シリーズ3枚ともだが、簡単でいいから解説を付して欲しかった。

井上宗孝とシャープ・ファイブ

若いギター2

CD キング KICS1381

同上。

井上宗孝とシャープ・ファイブ

若いギター3

CD キング KICS1381

本体入手、と言っていいのか。これの「何処へ」は数あるシャープ・ファイブのインストの中でも屈指の名演。

20.7.19 久しぶりに脳みそがぶっ壊れたような買い方をしてしまった。

井上宗孝とシャープ・ファイヴ

エレクトリック・ギター・センセーション

6CD コロムビア・ファミリー GES31671〜31676

コロムビア時代の全音源を網羅した画期的なコンプリートボックス。しかもレコード音源だけでなく8トラ音源なども含んでいる。レコード音源については6曲を除き全て持っているが、こうしてCDで聴くとバックやメインでないところでも様々な小技を聞かせまくっているのが判ってびっくりしたり、或いは聞き直しでかっこよさに気がついたりするトラックがあったりして、非常に楽しめた。レコードで持っているものをCDに買い換えた時には迫力が落ちるようことがあるけれども、今回に関してはより演奏の意図がはっきりしたものが多くて、まさに買って正解だった。もっとも初めて聞いた8トラ音源は後期の音源のせいかやや精気がない。これに限らず67年を川上にして69年までどんどんテンションが下がっていっているように感じる。これは時代のせい、というのが大きいのだろう。エレキブームが去り、さりとて全く新しいことをやるには生々しすぎた時代のせいなのかもしれない。これでCDやレコードを結構な数売り払える。どうでもいいが解説の「影を慕いて」のオリジナルレコードの発売日は正確にはその前の月なのではないか。

V.A.

古賀政男 黄金時代の集大成

6CD テイチク TECS157271〜6

古賀政男のワンマンレーベルの如きだったテイチク専属(というか役員)時代の作品集。「軍国の母」は別テイクらしい。これを聴くと所謂古賀メロディーはこの人の作るメロディーの極々一部の類型であることと意外に他で作った曲を使いまわしをする例が多いことがわかる。案ずるに、最近は服部良一を持上げて古賀政男を下す風潮があるけれども、古賀政男の音楽を聞くと他に洋楽風の曲を作る人間がいなかったときはその時々の流行を取り入れたハイカラな曲を作っておって、十分にそちらの感覚もあった人であり、その辺りを回りも本人たちも服部良一が請け負うのがよかろうという判断に落ち着いたその結果であるに過ぎない。それが証拠にジャズ風の曲も多いし、ブルース歌謡を作ったのも古賀政男が先だし、とりわけ服部冨子については服部良一の妹のイメージを崩さぬあっけに取られるような軽快なジャズ風の曲をつけていて、その引き出しの多さにこれぐらいは出来るよとでも言いたげな顔が浮かんでくる。またギタープレーヤー、歌手としての実力の高さも伺える。しかし、役員としてスタッフとして大いに盛り上げたテイチクの社内でゴタゴタが続き古賀おろしが起こってからはテンションが下がったのか大きなヒットもなくやや気乗りが薄くなったるか。まあ、前に上げた服部冨子の曲はこの時期だから腕が腐っているわけでは全然ないが。奥山愛子を見直したのと、ともかく楠木繁夫のまとまった音源が手に入ったのが嬉しい。

藤山一郎

SP盤復刻による懐かしのメロディ

CD コロムビア COCA10755

 「銀座セレナーデ」を小さい頃に聞いてよい歌だと思い、欲しかったのだが、たまたまずっと買うのを後回しにしていたので意を決して購入してみた。正直に言うとこの人の歌唱法はやや固くて好みではないのだが、それを押し切って感動させる技量があるのだからやはり珍重されるべき歌手であろう。これだけ正統的に歌えるという人は絶後。「僕の東京」が「なつかしのメロディー」と「東京ラプソディー」と「りべらる銀座」を一緒にやっているようないかにも戦後らしい歌謡曲で宜しい。服部良一かと思ったら原六朗だった。歌いまわしに難があるが、虚飾がなくて情深い。

山村貴子

平成セクハラ数え唄

CDS クラウン CRDN98

何だか判らないがえらくやさぐれているので買ってみた。作詞曲・小暮伝衛門。・・・、ますますよくわからない。物凄く安っぽいキーボード一本の打ち込みで全て済ませており、殆ど歌いっぱなしのスタイルもあってとてもポンチャック濃度が高い。サビのコード展開がちょっと変っているが基本的には昭和30年代の都はるみ辺りが歌いそうな曲。カップリングはアダルトポップスだが、Aメロが意表をついたメロディーで歌手の音程が微妙なのかそういうメロディーの曲なのかかなり悩ませる。こんなところで人を不安させられても困る。サビはちゃんと歌えているから外れてしまっているわけではないと思うが、カラオケ譜を読むと微妙に違うので何ともいえない・・・。いずれにしても狙い通りに時代錯誤な歌である。

ロス・インディオス

淋しくないかい

LP ポリドール MR2226

度肝を抜かれるジャケットだが、「別れても好きな人」の直前ぐらいだからか、選曲にいろいろと悩んでいる様子が伝わってくる。他の歌手の歌謡曲のカバーのほかオリジナル、シャンソンなど手広い選曲。基本的には通常のアルバムだが、売り上げ対策のためか「コモエスタ赤坂」と「大阪ものがたり」というこの時点での二大ヒットがオリジナル音源で収録されているが、これを除けばボサノバを基調としてピアノとこのバンドの特徴的なハープを駆使したシックで落ち着いたもので固められており、演歌や歌謡曲に傾斜しておらない、洋楽的な香りが適度に残っているラテン系ムードコーラスグループの面目躍如の素晴らしい出来のアルバム。ただし派手な曲は少ない。とりわけ出来が良いのは歌謡曲物のカバーで、「京都の夜」は見事なブルースマーチにアレンジされていて(琴が使われているのに全く和風に聞こえないのも素晴らしい。)冷え冷えとした感触が何とも刺激的だし、石原裕次郎の「粋な別れ」は重苦しいパーカッションが先導する見事なボサノバ風味でオリジナルを凌駕している。オリジナルも上記のとおりで独特なクールさが全編を貫いており、「冬ものがたり」「酔いしれて」「自由ヶ丘の夜」などはこのバンドにしか出来ない正にムードに溢れた楽曲。なかなか宜しい。全体的にB面に佳曲が集中している。表題曲も素晴らしいのだが、自分が買ったこれは針飛びがあってまともに聞けないのが残念だ。

ゴールデン・スターズ

ゴールデン・ヒット・メロディ第3集

LP コロムビア ALS4297

くるみ敏弘らの編曲によるGS時代リアルタイムのうたのない歌謡集。プレイヤーは道志郎とか横内章次とか。非常にビートが鋭い一方でエイトビートのグループサウンドや和製ポップス陣の楽曲でも非ロック的。思えば、自分がこういうこの時期の喫茶店用BGM集みたいなものが好きなのは数がやたらにあることと共にロックへの反感みたいなものがあるのかもしれない。道四郎のエレクトーンの音が非常にチープでこの時代のこの手の音楽にしかないわびさびがある。とりわけ素晴らしいのは「風が泣いている」で原曲を凌駕する情緒がある。この他「いとしのマックス」等気風のいい演奏が多い。ただし特に落ち込んで悪いトラックもない代わりに全体を通して聞いたときの灰汁の少なさはやはり気になるものがある。

寺内タケシとブルー・ジーンズ

レッツ・ゴー・ハワイアン

17cmLP キング SS138

第一次ブルージーンズによるハワイアンのエレキ化。このあたりのまともにアルバムにもならずに大量に作られたコンパクト盤は要注意で実に傑作が多い。大滝詠一は60年代にオリジナルのサウンドを作った日本のアーティストとしてクレイジーキャッツとブルコメと橋幸夫を挙げたけれども、ブルージーンズも実にその一角に挙げられていても全く不思議ではない。というよりも、彼らは本当に世界基準のバンドになってしまったバンドであって、独自の音ではなく皆が目指す音、オンリーワンではなくナンバーワンになったのであるからローカルとしての日本を背負った三組とは対比も出来ない。どれもビートの効いた素晴らしい演奏だがとりわけ4ビートでジャングルを強引になぎ倒していくような「南国の夜」が濃密。暑苦しいほどの密度の濃い演奏が繰り広げられ、キングのほかの演奏よりも東芝の演奏に近い。まさに第一次ブルージーンズのハイライトと言ってよい素晴らしいひらめきに満ちた演奏である。

こういうものを聞く前に拒絶するような日本のロックがGSのあとから始まったと思わされている者はまことにかわいそうである。日本のロックはGSが滅んで始まったのではなく、GSとともに滅び去ったのであります。

ザ・スペイスメン

ハワイアンサーフギター

17cmLP 東芝 TP4040

同名アルバムからのチョイス盤で、本体入手。みなよい演奏たり。

寺内タケシとブルー・ジーンズ

森の石松

EP キング HIT797

浪曲のエレキ化という、もうまず考え付かない企画を実際にやってしまうのがすごいが、そんなアルバムからの独立シングル。厚いというかもう乱暴なぐらい物凄いウーマントーンが全開に爆発している。廣澤虎造のものを下敷きにしているが途中に入る寺内タケシの口上が完全に人を食っておってどういう意図でこれを作ったのかさっぱりわからない。とにかくおいていかれること必至。この時期の寺内タケシの企画力の飛ばし方は余人の追及を許さない。B面はウーマントーンに三味線ギターが絡むバックでベンチャーズ風のリズムがついて耳がぶっ飛ぶ。驚きに満ちた両面。企画で言えばこの時代の寺内タケシが一番すごい。

ロス・インディオス

夜を泣きたい

EP ポリドール SDR1400

お世辞にもこのバンドの個性を活かしているとは言い難い「浮草」風、唱歌風の三拍子歌謡。レキントギター一辺倒の編曲もこのバンドには似合っていない。あまり有名ではないが、B面が筒美京平作品で、これもロス・インディオスらしくはないが、適度に湿り気のあり、まとまりがよく、この時期の筒美作品らしい感じ。ただしヒットさせるにはフックがない。この時期の筒美作品の「外れ」には似たような傾向が見られる。イントロの弦の入り方が「さよならのあとで」に似る。

ロス・インディオス

君去りし夜

EP ポリドール DR1620

両面とも外国曲(シャンソンだろう)のカバー。A面はみやざきみきおによる詞が強烈。だって、あなた、歌いだしが「死ぬ・・・行かないで」ですよ。なお、すぐ上にあるアルバムにも収録されている。B面は「東京モナムール」(カバーなのにこのタイトルは何だ。)。ラテンとフランス語と東京のローカルぶりが渾然一体となっているが、期待よりはこじんまりとしている小品。ピチカートファイブに同名曲があるが、これを念頭においているのだったらすごい。

南有二とフルセイルズ

一緒になろうよ

EP 東芝 TP17160

曲調はまるきり演歌。男女掛け合いにコーラスがからむ。「くちなしの花」とかあのあたりの路線。可も不可もないが、女性ボーカルはムードコーラスの定石に忠実。B面「おりゅう」はCD化済み。そういえばそのCDの解説に書いてあることが全く理解できなかったが、それが彼我のムードコーラスに対する理解の深い断絶なのだろう。現物をしかと見てもやはりその謂いは理解に余る。

東京モナルダ

神戸で別れて

EP ビクター SV808

A面はCD化済みのムードコーラスのヒット曲にして基本楽曲。B面はレキントギター、単音キーボード、ストリングスを三本柱とする適度なビートを持ったソフトタッチの楽曲で、「たそがれの銀座」ののりをもう少し良くした様な感じの小品ながら佳曲。

黒沢明とロス・プリモス

夜のブルース

EP ビクター SV937

ビクター時代のロス・プリモスは要注意。特に筒美京平の三連作以後のテンションの高さはこのバンドの最高潮だろう。残念ながらセールスには結びつかなかったが。明らかに「伊勢佐木町ブルース」の影響下にあるが、「港町ブルース」の系譜も引いており、同時期のロマネスクセブンの「新宿エトランゼ」によく似た色に仕上がっている。B面はビクター時代の基調となった筒美メロディを引いており、適度なビートと川口真らしいベースラインの心地好さが森のテンションの高いボーカルと相俟って素晴らしい安定感を打ち出している。

ジャイアント吉田とシンフォニック・マッド

洋子の港

EP フィリップス FS1858

もとドンキーカルテットのジャイアント吉田が作ったグループ。分厚いテナーサックスをかけたジャズ系ムードコーラス歌謡。イントロに効果音入りの長大な寸劇が入る。こういう正面切ってジャズっぽい編曲で通した曲というものは難しい。コミックソングではない。B面はキングトーンズを思わせるR&B歌謡。というかそのまま。チークタイム用の楽曲といったところ。これも非常にシリアスで売れそうにはないが志が高い。

小桜姉妹

あなたなしでは

EP ビクター SV184

何だかジャケットの発色がいい。両面とも小畑実の編曲でB面に至っては作曲も行なっている。A面は「まつのき小唄」ばりの三味線入り小唄歌謡。曲自体はいたって普通ではあるが、ドドンパのリズムを使用しており、茶目っ気に溢れたアレンジで小畑実のハイカラさがストレートに反映されている。B面も「ブンガチャ節」のような曲だが、自分たちのテーマソングだろう。キャッチフレーズがおぼこってすごい。この時代の歌謡曲には天然の破壊力が溢れている。

まりかとカオル

誰もさびしい広場の子らよ

EP ビクター SV2237

昔から気になっていた人たち。両面とも作詩は阿久悠。A面は何とも分裂した曲でAメロがロシア民謡風の青春マーチでサビはグルーヴ歌謡。サビはいいのだが、そこまでが辛い。女性ボーカルが主メロ、男性ボーカルがハーモニーをつけるのだが、この録音バランスがおかしく、非常に不安定な印象を与える。女声は非常に安定しているが男声はややボーカルとしては苦しいので余計に目立つ。B面はメロディーがいい純歌謡だがAメロの役割分担は逆のほうが良かったのでは。両面とも非常に詰めが甘いと言うか、制作の人に意図を聞いてみたい気分に襲われる。

竹越ひろ子

夜の恋うた

EP コロムビア SAS1408

「ワゴンマスター」と「北帰行」を足して二で割ったような唱歌風バラード曲。ウエスタンブームを見込んだものか。特になし。B面は悲劇的なカンツォーネ歌謡。これも特になし。この人もそこら中からレコードを出していてよくわからない人である。

坂本千夏

ワープボーイ

EP ビクター KV3053

テレビアニメ「らんぽう」の主題歌。A面はショーグンのケーシー・ランキンの作・編曲のシンセサイザーが唸りまくる素晴らしいニューウェーブ歌謡で80年代テクノブームの大トリを飾ると言ってもいい大傑作。坂本千夏は主人公の声をあてている声優だが、ヤマハで歌の修行をしていた時期があり、歌える声優としてこの時代に既に定評があったけれども、80年代の中頃にこれだけ素晴らしいシャウトが出来る歌手と言うのはほかに類例がない。パンクロックやジャズの女性ボーカリストでもここまで思い切ったシャウトはまず聞けない。ヤマハ臭のせいかややトム・キャットを思わせるところもあるが、とても本当の子供と間違えられた声を持っている人とは思えない豪放な歌い方である。まことに声優歌謡というものはこういうことがあるから舐めてかかれない。アニメの本編との釣り合いが取れないほどかっこよすぎる、とんでもない拾いもの。B面がエンディングに使われていた東郷昌和の「気まぐれムーンライト」で、これをずっと聴きたかったのでこのレコードを買ったのだが、完全にこれを食っている。こちらはマージービート歌謡で自分の人生の中で無意識ながらもその手のものに触れた最初期であるので印象が強かったのだろう。マージービート歌謡としては普通の曲と言ったところ。ビートルズネタが散りばめられているが、実はハーパースビザールやピーターとゴードン辺りを意識しているのかもしれない。

それにしても「らんぽう」は、単なるドタバタ青春学園ギャグアニメなのに、異常にというか無駄にというか音楽に凝っている。主題歌の選定に当ってはコーツ時代の甲本ヒロトもコンペに参加させられた(しかも落とされた)というから、とんでもないことで、景気のいいお金があった時代の神話のようなお話だが、この主題歌の出来のよさでは、その結果は極めて公正だったとしか言い様がない。ちなみにこれの後番組が「北斗の拳」。なるほどヤマハ絡みということで一貫しているのか。ジャケットの絵が80年代している。たしかまだCDになっていないと思うが、これはすばらしい。

20.7.14 駆けずり回った。

チャンソラ

1集 愛しています

CD イェダン YDCD770

韓国の女性トロット歌手のアルバム。たまたまタイトル曲をテレビで聞いて感動してしまった。その「愛しています」はえらく安いシンセサイザーによる打ち込みだが昭和40年代の日本歌謡曲の情が色濃く残っている。今の日本では歌謡曲とポップスと演歌とアングラものがそれぞれ心得違いをして入れ子状態になっているけれども、ここにはその混乱状況が無く非常に綺麗な歌謡の情がある。声もよく通っており難が無い。それ以外では「さよならをするために」がよれたような歌などややあくが強いがいわゆる純歌謡の色が強い。ラテンとか他の音楽の意匠を取ってきても歌謡(トロット)の色の方が大分強烈に香ってくるのもちゃんと作っている人間がわかってやっているからに他ならない。但し歌手の基礎にあるのはラテンなのかもしれない。適当な貧乏感もあってすばらしいサウンドメイクになっている。例えば、安いアメリカン・ポップスが始まったと思わせて、歌が始まった途端に一気にトロットの世界に引きずり込むのだから、これはてに汗を握らずにいられない。とにかく情緒が深く、この辺りはアングラを歌謡と捉えていたり歌謡をポップスと捉えている御仁には理解しがたいかもしれない。一体日本の音楽業界、特に歌謡歌謡と騒がしい辺りの人たちは一体何をやっておるのか、と問い詰めずにはいられなくなってくる。ああ、ハングルが読めないのが憎い!なお。カラオケつき。おすすめする。

20.7.12 DVD一枚を頂く。貴重映像。良くも悪くも特異な個性だ。それが伝わる。

20.7.9 演説状態。

李香蘭

私の鶯

CD コロムビア CA4382

真の大歌手はこの人。日本人でありながら戦前から中国人の女優・歌手として大活躍しのちに国会議員になるなど波乱の生涯を送っている人だが、この人の真骨頂はやはり歌手である。恭聴、この人の歌い方は昭和一桁前半のクラシックの歌手がそのまま流行歌の歌手であった時代の歌い方を残しながら、それが服部メロディなどの昭和10年代後半のエキゾなどのある程度洗練された楽曲を歌うというところに強い訴求性があったのではないかと思われる。歌い方にはやや荒削りなところもあるが、圧倒的な実力をもって力技でそれをフォローしている。大東亜戦争の時代を反映して日華の作家の作品の他フィリピン民謡などもやっている。圧倒的なのはやはり「私の鶯」で、一曲の中でこれほどドラマがある歌謡曲というものは他に知らない。これもこの人の圧倒的な表現力による。「売糖歌」や「夜来香」など戦前の上海百代公司音源も当時の上海租界の洋楽消化具合が知られるが、こういうものはどんなに頑張っても、いや頑張っているからこそ不思議に地元の風土が反映されるのが面白い。満映時代にリリースした曲でのベストと言えるが、一部戦後になってから唐土で再録音した際の音源もある。

山口淑子

夜来香

CD コロムビア CA4383

同。ビクター音源なども含む、非常にジャズ色の強い作品を集めたものである。戦前のジャズと聞いて頭に浮かぶ音が流れる。ジャズというものはそもそもクラシックに対する対抗音楽として出てきたもので、これはサーフがラテンに対する対抗音楽として出てきたのと同様で、その基礎となる部分には共通的な要素が高い。そのことが確認できる一枚である。また、日本人山口淑子の苦悩が表れた楽曲も多く、この人の生きた道を知っておれば二重三重に楽曲の持つ意味の深さが味わえてその情に感嘆してしまう。

竹山逸郎

異国の丘

CD ビクター VICL60336

工場を焼かれ、歌手も殆どいなくなってしまったビクターを支えた歌手のベスト。戦後という時代を象徴する名曲「異国の丘」で知られているが、今日あまり省みられないがこれ以外にも「泪の乾杯」や「月よりの使者」などのヒットがある。この人が仮初にもビクターという大会社の看板になったのは戦争という異常事態があったからこそで、専属になったときには伊藤久男の曲を歌ったそうだが、これと系統は異にし、小野巡や塩まさるといった辺りの味のある歌手の系統に属する人だろう。そういう人が看板にならざるを得なかったビクターの台所事情が良く偲ばれる。このあと、小畑実が加入するが、コロムビアやキングに対抗できる程度に男性歌手の陣容が整うのは三浦洸一以下の「吉田学校」出身者が揃ってくる昭和30年代に入ってからである。そういったわけでこの時期の同格の歌手に比べると声の表情が暗いきらいがあり特筆する部分はほとんどないようにも思えるが、昭和20年代前半のビクターの色というのは正にこの人である。割合に早く亡くなってしまったので今その遺訓が垂れておらないのが残念だ。この人の色とはとても言えない「青春ブギウギ」が異色。他にもヒット曲があるのでボックスセットか何かを出して欲しい。

藤山一郎

ベスト

CD ビクター VICL41180

大歌手のベスト、といってもこの人のキャリアの中ではマイナーなビクター時代の、ではあるが。テイチクやコロムビアでの華々しい活躍を知っているとやや淋しく、大ヒットというと「僕の青春」ぐらいだろう。この時期はまだ声楽家としての自我が確立しておらず、故に自信が漲っておらないようにも聞こえる。また、この人が得意とする伸びやかな歌唱をいかせる曲もあまりないのが一層この時代を地味にしておる。スキーを題材にした「銀嶺に躍れ」は本人が感じたとおり「スケーターワルツ」風でのどやか。

「涙の渡り鳥」をあまり評価していないのでちょっとと思っていた小林千代子が二曲でデュエットしているが、実に可愛らしくて、この人の楽しみ方が判ったのが収穫。

どうでもいいが「僕の青春」のパクリで裁判になった楠木繁夫が変名で歌っている「俺の青春」あたりはやはりCD化は不可能なのかしら。

20.7.5 人のつながりによる。

奈見英生とザ・ココナッツ

柳ヶ瀬小唄

EP ミノルフォン KA56

題材が渋すぎる。スティールとウクレレを強調した演奏はハワイアン転びの情があるが、ボーカルやコーラスの湯加減のよさが妙に能天気さを感じる。ビクターのマヒナをミノルフォンの解釈でやるとこういうカルト的なものが芽生えるという見本のようなもの。何故「お座敷小唄」みたいな内容なのにこの悲しさが必要なのか。不思議な曲。B面も全然統制の取れていないボーカルとコーラスの湯加減のよさが暴走しているが、こちらは曲自体が呑気なせいか、硬さはあるが妙な雰囲気はない。

20.7.2 辛い出会いと言うべきなり。

V.A.

超空想オリンピック

CD コロムビア COCX32834

結構前に出たスポ根アニメ、スポ根ドラマの主題歌を集めたもの。コロムビアの音源を中心に東宝レコードなどの音源を使っている。採り方にも拠るが如何にバレーボールの人気が高かったのか偲べる。楽曲としては御馴染みのものが多いが、音盤としては手許になかったものが多くて助かった。それにしても収録曲の発表年が25年に及ばんとするのが統一感がないというか歴史の進化を偲べるというか何ともいいようがない。

V.A.

ニッポン・シャンソンのすべて

CD コロムビア COCP34859

日本人の、多く宝塚のスターが歌ったシャンソンの名曲カバー集。特にないが「モンパリ」は戦前に宝塚の生徒が歌った奴の方が出来がいいのでそちらでもよかった。解説でも日本でシャンソンが伸張したのは戦後のような書き方がされているが、実はそんなこともなく、戦前でも結構フランス発の楽曲は親しまれておったし、ムーランルージュやフレンチカンカンの踊りなどは戦前の歌謡曲でも相当の影響があったのではその辺りも少し書いてくれると良かった。あと、本筋には関係ないけれども、日本とフランスは先の大戦で戦闘をしていないので「敵性音楽」と思われていたかもしれないが「敵国音楽」というのは間違い。何か典拠があるのだろう。コロムビア盤の越路吹雪の「愛の讃歌」が手に入ったのが嬉しいが、他に芦野宏とのデュエット「モア・モア」がいかにもシャンソンのパブリックイメージそのままの曲で、これが思いのほか良かった。ほとんど女性歌手なのに二曲だけ男性歌手による楽曲が入っているのがちょっともどかしい。そのうちの一曲は。そうそうたる面々に伍して監修者の歌唱で、歌唱は宜しいが演奏の音が薄いのがやや興醒め。もう一つは岡田真澄の曲。そういえば昔キングから高島忠夫のシャンソンのアルバムが出ていたと思うが、あそこは夫婦揃ってフランスづいておったのだなぁ。カバーは何故か内藤ルネ。なんでまた。

V.A.

3ばか大将

CD ウルトラヴァイヴ CDSOL1225

やや古い外国TV映画の日本語版主題歌集。実写もアニメもあり。掲示板の方で触れてみたので買ってみた。幻のGSフォア・ジェッツの「少年シンドバッド」を収録しており、これがとんでもないガレージ音源。但しこちらは学生っぽさがなくなっている。これも「ファイトだ!ピュー太」と同じく萩原哲晶の作曲なので渡辺プロに所属しているバンドの変名なのかもしれない。但し一分もない。既に出ているCDと被っている曲が特に後半に多いがそのCDではないとされていた音源が収録されていたりして気が抜けない。やはりグリーンブライトという、バンドなのかコーラスグループなのかよくわからないが、このグループの曲は傑出している。個々の番組に関する解説等は甚だ薄く、楽曲ごとの解説もないのでこのレーベルのCDとしては不親切な部類。なお、解説によれば「ミスター・エド」の歌手、上馬キリ子とは実は黒柳徹子という。

前の月 次の月 最新

inserted by FC2 system